アベノミクスで上昇を続ける日本株相場。原動力は外国人の買いだ。今年3月末の外国人持株比率は28.0%と過去最高を更新した。
(日経ヴェリタス2013年12月10日1ページ )
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「バブル崩壊以降、日本のガバナンスの歴史は不祥事対応に焦点が当たることが多かった。粉飾決算などが発覚すると、コンプライアンスの観点から社外取締役や監査役に元検事の弁護士などが起用された。しかし高い資本効率などを求める外国人株主の存在感が高まったことで、ガバナンスの目的が企業価値の向上へと変わりつつある。」(前掲紙)

外国人持株比率が高いことで企業価値やガバナンスのプレッシャーが高まりROEや社外取締役の比率が高まっているというより、高ROEを指向する会社はガバナンスへの意識も高く外国人株主の比率も高い、ということだと思います。
ただいずれにしても会社は誰のものか、という哲学論争ではなく、経営者は企業価値や株主価値を向上させることが責務である、という共通認識が形成されつつあるように感じます。そしてそれは戦後変わることがなかった日本的経営の大いなる変化を意味しています。
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なし
武田薬品工業は2014年3月期から16年3月期までの3年間、1株当たりの年間配当額を180円に据え置く見通しだ。大型のM&A(合併・買収)は16年3月期までは抑制する方針。利益率が高い新薬を増やして収益回復を図る計画を進めており、配当や投資を抑える代わりに、事業活動で得た資金を新薬の研究開発などに振り向ける。
(日本経済新聞2013年11月19日17ページ )
【CFOならこう読む】
「武田のフランソワ・ロジェ最高財務責任者(CFO)が日本経済新聞の取材で語った。
(中略)
前期の通期業績を大幅に下方修正する一因となった、武田株の上昇に応じてグループ会社幹部の報酬額が増える株価連動型の報酬制度については、同制度が幹部社員の士気を上げ経営効率を高めるプラス面も大きいとして「今後も維持していきたい」と述べた。
」(前掲紙)
2013年3月期において、子会社である武田ファーマシューティカルズ・インターナショナル Inc.、武田ファーマシューティカルズ・インターナショナル GmbH、およびミレニアム・ファーマシューティカルズ Inc.で採用する報酬制度のうち、武田薬品の株価を参照する株価連動型報酬についての費用計上額は、3人の取締役合計で1,520百万円でした。
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なし
経営者の仕事として一番重要なことは社員がどんな考えを持って働いているかを明らかにすることだ。企業は資本・経営・労働の3つで構成される。役割は分担され、報酬や利益も分配される。もし社員が仕事を「つまらない」「給料を得る手段」とだけ考えていたら残念だ。社員自ら、仕事を「おもしろい」と取り組めれば、新たな発想も続々と出てくる。
(日本経済新聞2013年10月22日15ページ)
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「小さな企業でも、家族や取引先などを含めれば関係者は何万人に上る。経営者はその全員に対して影響力がある。経営者としての最大の仕事は、「働く社員が、生きがいを持って人生を送れるかどうか」。それができれば、自然に企業は発展し、顧客満足度向上や社会や国家の発展にもつながっていく。」(前掲紙)
全面的に賛同します。
こういう話を聞くと、”一番大切なステークホルダーは云々”という議論に意味がない、ということがわかります。
従業員が楽しく働き、顧客が満足し、社会や国家の発展につながること、つまり国富(世界の冨)を創造することが企業には求められるのです。従業員が楽しく働けない企業は、中長期的に国富を創造し続けることはできません。
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なし
日本経済新聞社と、日本取引所グループ、東京証券取引所は30日、現在共同で開発を進めている新株価指数を発表した。
(日本経済新聞2013年7月31日5ページ)
【CFOならこう読む】
「銘柄選定に活用する指標として、資本効率の高さを示すROEを採用。このほかコーポレートガバナンスなどの経営の定性的な要素や市場での取引量も考慮する。」(前掲紙)
年内に算出が開始されるとのことです。
日本企業の資本効率に対する意識が変わるかもしれません。
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なし
米投資会社サーベラスは17日都内で、西武ホールディングス(HD)に対するTOBの終了後
初めて記者会見した。
(日本経済新聞2013年6月18日11ページ )
【CFOならこう読む】
「同社の西武HD株の持株比率はTOBを経て35.48%になったが、買い取り上限である44%に届かなかった。「西武HD株主からの問い合わせの中には『(サーベラス主導の改革で)企業価値が向上するなら株式を持ち続ける』と当社に期待する声もあった」(サーベラス鈴木社長)という。」(前掲紙)
サンフォード・グロスマンとオリバー・ハートが1980年に発表した、「TOBによる敵対的買収の不可能性」という有名な論文があります。
この論文は、敵対的買収者の見通しが正しければ、その会社の株価は将来必ずそれ以上に上がることになるので、買収を仕掛けられた会社の株主はTOBに応じないのが合理的、と論じています。
この理論に従えば、サーベラスのTOBに応じなかった株主が必ずしも現経営陣支持というわけではないので、今後の動向はまだまだ不透明ということになります。
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なし
政府は今後、成長戦略で掲げた目標の実現に向け、具体的な政策をどう打つのか。秋にかけて作業は目白押しだ。企業支援策を巡り、経済産業省は産業界で課題となっている供給過剰の是正を目指し、産業競争力強化法案を秋の臨時国会に提出する方針。政府・与党は企業の投資減税も検討を急ぐ。派遣労働の見直しなど労働規制の改革論議も始まる。秋には消費増税の実施判断も控え、成長に向けた道筋を描けるかが問われる。
(日本経済新聞2013年6月13日5ページ )
【CFOならこう読む】
「政府は施策の裏付けとなる産業競争力強化法案を臨時国会に提出する方針だ。複数企業が共同出資した合同会社(LLC)と親会社との間で損益通算を認めることにより、法人税額を圧縮できるようにすることが税優遇の柱となる。」(前掲紙)
具体的な内容がわかりませんが、LLCを受け皿にJVを使った場合、出資元企業が構成員課税(パススルー課税)を選択できる制度を創設するということのように読めます。もしそういうことであるなら、LLCの使い勝手は少し良くなるように思います。現状、労務出資の課税関係について不明な点があるので、これも合わせて明確にしてもらいたいと思います。
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なし
西武ホールディングス(HD)は14日、早期の株式上場を目指すために「上場に向けたガバナンス推進有識者会議」を同日付で設置したと発表した。社外の有識者が同社の取締役会に助言することにより、ガバナンス体制を一段と強化するとしている。
(日本経済新聞2013年3月15日11ページ)
【CFOならこう読む】
「西武HD株式の32%超を保有する筆頭株主米サーベラスがTOBで株式の買い増しを表明しており、当面この課題に対応する。」(前掲紙)
サーベラスは現在の保有比率32.4%を、最大4%引き上げて36.4%を取得することを表明しています。
西武HDは、有識者会議の設置目的について、
「なお、当社は、2013 年 3 月 12 日より開始されたサーベラス・グループの関連事業体で あるエス-エイチ ジャパン・エルピーによる当社株式に対する公開買付けに関する当社と しての意見表明につきましても、当該有識者会議での検討内容および当該有識者会議から の当社取締役会に対する助言等を踏まえ、慎重に検討を重ねて参る所存です。」(2013年3月14日 リンクのプレスリリース)
としており、実質的にはサーベラスのTOBの諮問のために設置されたものと思われます。
サーベラスは2006年に、約1000億円の出資を実施しています。西武HDは昨年中の上場を目指していましたが、サーベラスと現経営陣との間で、IPO価格などの上場条件を巡って意見の相違が深まっていると報道されています。
PEファンドであるサーベラスは、IPOの売出で一部Exit するので、その際の価格が決定的に重要です。TOBによる出資比率引き上げにより、取締役の派遣など経営への影響力を強め、Exitの極大化を図るものと思われます。
【リンク】
2013年3月14日「「上場に向けたガバナンス推進有識者会議」の設置について」株式会社西武ホールディングス [PDF]
三原たち鴻海チームが乗り込んでから3ヵ月。SDP(堺ディスプレイプロダクト)の7〜9月期の税引前利益は黒字に転じた。2012年3月期にシャープが計上した大赤字の「主犯」とされた工場が、にわかに息を吹き返したのだ。鴻海は一体どんな魔法を使ったのか。
SDPと取引のある部材メーカーの幹部が種明かしをする。「歩留まりを上げ、販路を広げた。それだけのことです」
(日本経済新聞2012年11月22日2面)
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「高機能なら売れる」。技術への過信から売れないパネルを作り続けたシャープ。ドイツ証券シニアアナリストの中根康夫は「無理に在庫を積んで工場の稼働率を上げ、利益を創出する体質になっていた」と手厳しい。鴻海が正常な形に戻したとたん、堺の赤字はぴたりと止まった。」
(前掲紙)
これって随分前に日本でも話題になった、ゴールドラット博士の「ザ・ゴール」の世界ではないか!?
ゴールドラットは、「ザ・ゴール」の日本語版の出版をなかなか許可しませんでした。
その理由が、「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一流だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」ということだったのは有名な話です。
「ザ・ゴール」の日本語版が出版されたのは2001年のことでした。
しかし10年たっても「ザ・ゴール」のTOCの考え方は、あまり浸透していないようです。
セクショナリズムから抜け出せず、会計上の利益のみを重視し(「ザ・ゴール」ではスループット会計という直接原価計算の一種を提唱しています)、在庫の山を積み上げる。これは、ジョナ先生のアドバイスを受ける前のユニコ社の工場そのものです。
日本企業は外圧によってしか変革することができないのでしょうか?
【リンク】
企業会計審議会(金融庁長官の諮問機関)で議論している国際会計基準(IFRS)の上場企業への強制適用の是非をめぐる判断が、2013年以降に持ち越される可能性が高まっている。金融庁は2012年をめどに判断を示す方針だったが、審議会では推進派と慎重派で意見が割れ、議論がまとまらないためだ。
(ロイター2012年10月2日)
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「今年7月に米証券取引委員会(SEC)がまとめたレポートでは、今後の見通しについての言及がなく、米国が実質的に判断を先送りしたとの認識が広がっている。米国では今後、大統領選を控えており、米国での適用の判断に向けた動きがあるのは13年央以降になるとの見方が出ている。日本の対応もそれに引きずられそうだ。」(前掲)
年内はIFRS関連の企業会計審議会の開催の予定はなく、強制適用の判断が来年以降に持ち越されるのは、
ほぼ確実な情勢です。
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