衣料品店を展開する企業で契約社員やパートタイム・アルバイトを正社員として登用する動きが広がり始めた。ファーストリテイリング傘下のユニクロは1万6千人のパートらを正社員にする方針。
(日本経済新聞2014年3月20日11ページ)
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「ファーストリテイリングで販売を担当するパート・アルバイトは国内850の店舗で3万人いる。この半数以上を勤務地や店舗を限定した正社員として登用する。」(前掲紙)
パート・アルバイトの需給逼迫により、良い人材を確保することが難しくなりつつあることが背景にあります。
3月11日に柳井会長兼社長は、半年に1回開かれるコンベンションで4,100人の幹部社員や店長を前に、店長が主役の会社から店舗のスタッフ一人ひとりが主役の会社に変わることを宣言しています。
そこで述べられたことは多くの会社にとって参考になります。
全文が日経ビジネス・オンライン(2014年3月20日)に掲載されていますが、そこから特徴的な言葉をいくつか抜粋してみます。
- 一番大きな失敗が、「店長」を主役とした会社にしようとしたこと
- (スタッフの)生活を守ることが、我々の一番の仕事
- 部下は部品ではない
- 今後は、販売員に(会社の経営)情報をシェアしていきます
- 店長は、自分の時間の9割を、販売員と話すこと、聞くことに割いてもらいたい
- (販売員の)安定した生活を守りますが、その代わりに個店の水準をもっと上げてもらう
- 「店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる」
- (今の店舗運営は)パートやアルバイトが主ですが、今後は彼らを正社員にしていきます。一生託せる会社、成長していける環境を作ります
- 「全員経営」ですから、全員がトップの経営者のつもりで働いてもらいたい
- そのうえで、販売員と繋がってもらいたい。それができないような経営者はいらない。経営者が行ったら、販売員がおびえるような人はいらない。販売員が寄ってくる会社にしてもらいたい
今更何言ってるんだ、という声があちこちから聞こえてきそうですが、稀少な資源である人的資源をいかに確保するかが最も重要な経営課題である今、柳井氏の方向転換は多くの企業にとって一つの方向性を示しているように思います。
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なし
6日の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債利回り0.615%と前日に比べ0.0005%高かった。30年物国債の入札結果がやや弱く、既発の現物債にも売りが波及した。
(日本経済新聞2014年3月7日18ページ )
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「きっかけは公的年金改革の動きだ。厚生労働省の専門委員会が同日、国内債中心の運用を見直すよう年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に求める報告書案を提示。債券からの資金シフトを期待して株価が上昇し、代わりに債券売りが膨らんだ。」(前掲紙)
安倍政権が進めるGPIFの改革で、現状60%の国内債券への資産配分比率を引き下げ、株式、外国債券、外国株式などの比率を引き上げるよう運用の見直しを進めようとしていますが、反対意見も根強くあり、見直しがどこまで進むか不透明である、というのが今日のニュースです。
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なし
企業倒産の歴史的低水準が続いている。東京商工リサーチが10日に発表した1月の全国企業倒産件数は、前年同月比7・5%減の864件だった。減少は15カ月連続となる。
(日本経済新聞2014年2月11日1ページ )
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「円安・株高で企業を取り巻く経営環境が改善。金融機関は中小企業金融円滑化法の終了後も企業の返済猶予の要請に対し柔軟に対応しており、件数の減少につながった。」(前掲紙)
一方、中小企業の資金需要は総じて見るとまだ弱い(鹿野嘉昭 同志社大学教授 2014年2月11日経済教室)。
中小企業が設備投資に前向きになり、銀行からの借り入れが増大するかどうかがアベノミクスの効果を測るポイントになります。
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なし
財政問題の深刻さ、解決には歳出削減か増税しかないことは誰でも知っている。真の問題は、政治家が選挙を恐れ、有効な策が取られないことだ。財政運営に中立的な専門家の意見を反映する制度的工夫が考えられる。財政予測や政策の財政的な影響の分析などを担い、海外では実践例もある。
(日経ヴェリタス2014年2月9日51ページ 異見達見 小峰隆夫日本経済研究センター研究顧問 )
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「独立財政機関に期待する役割としては、つぎのようなことが考えられる。
第1は、マクロ経済、財政予測の提供である。
(中略)
第2は、特定の政策が取られた場合の政策への影響についての分析の提供である。
(中略)
第3は、財政政策に関する種々の提言である。」(前掲稿)
2012 年 2 月、OECD は「独立性のある財政評価機関(IFI: Independent Fiscal Institution、 以下 IFI)に関する諸原則(草案)」を発表しています。また、2013年6月には、「国会に独立将来推計機関の設置を」との超党派議員による提言が行われています。
【リンク】
DRAFT PRINCIPLES FOR INDEPENDENT FISCAL INSTITUTIONS [PDF]
アベノミクスによる円安・株高を機に、日本企業による業績回復の波が広がりつつある。今年はTPPへの参加、国家戦略特区を舞台にした規制緩和など、実現すれば一段の追い風となる施策も相次ぐ。日本の製造業が今年、本格的に復活するための条件は何なのか。新春インタビューの最終回は、国内電機大手の中で、日立製作所をいち早く成長軌道に乗せた中西宏明社長に聞いた。
(日経ヴェリタス2014年1月25日10ページ )
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−日本のものづくり産業は生き残れるでしょうか。
「まず今の日本のものづくりとは何かということを考えなければいけない。(生産の海外移転を進めてきた結果)、日立の国内工場の製造現場の社員は約4万人。『匠(たくみ)の世界』の熟練しか残っていない。国内生産を続けていけるのは、技術開発、製品開発などで高度なノウハウを持つ分野だけだ」(前掲紙)
中西社長は、大量生産型の工場は日本にものづくりではない、と断じています。
しかし日本では依然大量生産型のものづくりで生きていくという前提のもと、政策や制度が動いています。
例えば海外からの企業誘致に成功しても誰も彼も仕事にありつける、ということにはならないのです。
労働者の方でも高度なノウハウを身につけるべく精進しなければならない、ということになります。
そういう社会で生きていくのは大変ではありますが、個が自らのオンリーワンを目指し、それを主張し合うというのは決して悪いことばかりではないと思います。
それにしても、相変わらず優秀な工員を育てることに邁進している日本の学校教育は、今すぐに方向転換する必要があります。
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政府は16日、有期雇用の期間を最長5年から最長10年に延長する方針を固めた。企業の雇い止めを防ぎ、パートや契約社員が5年を超えて働きやすくする狙いからで、来年の通常国会に労働契約法の改正案を提出する。解雇ルールを柔軟に設定できる政策は地域限定の「国家戦略特区」で、対象企業などを絞り込むことになった。
(日本経済新聞2013年10月17日4ページ)
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「特区での雇用ルールの弾力化は、労使が解雇など雇用条件をあらかじめ決めておき、それが裁判例をもとに国がつくった指針に沿っていれば解雇などを認めるものだ。企業の都合による解雇が増えるとの見方もあるが、政府は「ルールの明確化により雇用拡大を目指す」(首相)との立場だ。」(前掲紙)
雇用ルールの弾力化の対象を、外国人が多い企業や創業間もない企業に限り高度な技能、知識を持つ人だけにするという案があるようですが、重要なことは対象を限定し多くの人には無関係であるといった体裁を繕うことではなく、皆が安心感を持てるような制度を作ることだと思います。例えば解雇時に解雇された労働者が次の仕事を探すのに十分な期間の給与を保証するといったルールを盛り込む必要があると思います。
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・企業は国・地域の比較優位に応じ生産分散
・生産の特化は「仕事」の比較優位で決まる
・高度人材の養成・都市政策なども大きな課題
(日本経済新聞2013年8月16日24ページ 経済教室「広域FTAの時代」白石隆 政策研究大学院大学学長)
【CFOならこう読む】
「そこで重要なことは付加価値が国際価値連鎖の中でどう分配されるかである。ジュネーブ国際問題高等研究所教授のリチャード・ボールドウィン氏はこれを「スマイルカーブ」を使って明快に説明する。スマイルカーブとは、価値連鎖の上流・中流・下流がそれぞれどれくらいの付加価値を取れるかを示したもので、人間が笑ったときの口の形のように、両端が少し上がった形の曲線になる。
1970年代にはスマイルカーブはなだらかだった。しかし、生産システムの細分化、地理的分散、業務のオフショアリング(海外への委託)によって、その勾配は近年、きつくなっている。別の言い方をすれば、商品の企画、製品の設計、部品生産、製品の組み立て、マーケティング、アフターサービスなど、国際的な価値連鎖の中でどのような「仕事」に特化するかによって、どれほど付加価値を取れるか、国としても、企業としても、大きな違いが生まれることになった。」(前掲稿)
ジェトロとWTOが共催したシンポジウムでリチャード・ボールドウィン氏が講演した際のレジュメに「スマイルカーブ」についての説明があります。

「スマイルカーブの経済学的ロジックは単純である(Baldwin 2013)。加工・組 立工程はどの国でも容易に実現可能である。その結果、加工・組立工程が「商 品化」され、先進国の企業はこの工程をどこに移転するかについて無数の選択 肢を持つ。一方、製造をサポートするサービス業は「商品化」されていない。 こうしたサービス業では、専門的な技術を持った技能集団が複製しにくい価値 を生み出している。大量生産の技術は製造の段階には有効だが、その前後を取 り巻くサービス業においては機能しない。先進国では、製造の仕事は「悪い」 仕事になり、それをサポートする仕事が「良い」仕事となった。この考え方は 米国のアップル社やフィンランドのノキア社の経営戦略に如実に表れている。
政策的な視点から重要なのは、先進国においては、都市が 21 世紀型の工場に なったということである。賢明な政策立案者は、今後、都市政策をグローバル 化政策および産業政策に組み込んでいくべきである。非熟練労働者に用意され た製造の仕事は、先進国ではすでに過去のものである。それらは国内ではロボ ット、国外では中国の生産力に取って代わられている。良い仕事、すなわち、 突発的に海外移転されることのない仕事は、有能な人材を広範かつ厚く集積し た都市にこそ生まれるのだ。」
(http://www.ide.go.jp/Japanese/Event/Sympo/pdf/2013WTO_Keynote1_Baldwin_paper_jp.pdf)
白石氏は、付加価値の大きいところに日本として比較優位をもてるようにするために必要なことについて次のように論じています。
「高度人材・グローバル人材養成のための教育政策、そういう人たちを外国人もふくめ引きつける魅力的な都市作りなど、通商政策を大きく超える課題が、通関手続き、法人税制、雇用制度などの改革と並んで課題となる。」(前掲稿)
この課題に取り組むことこそが成長戦略なのだと私は思います。
【リンク】
http://www.ide.go.jp/Japanese/Event/Sympo/pdf/2013WTO_Keynote1_Baldwin_paper_jp.pdf
米大手ファンドのフォートレス・インベストメント・グループは1日までに、別のファンドが保有していたシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県浦安市)を約500億円で買収した。2006~08年の不動産のミニバブル時にファンドが高値で買収した後、大幅に値下がりした首都圏の大型優良物件に新たな資金が流入し始めている。
(日本経済新聞2013年8月2日13ページ)
【CFOならこう読む】
4月以降にファンドなどが物件を取得した主な事例は次の通りです。
物件名 |
買い主 |
購入額 |
神谷町セントラルプレイス(オフィスビル) |
ヒューリック |
500億円 |
渋谷フラッグ(商業施設) |
森トラスト総合リート投資法人 |
320億円 |
赤坂ガーデンシティ(オフィスビル) |
米系ファンドとケネディクス |
300億円 |
ヒルトン東京ベイ(ホテル) |
ジャパン・ホテル・リート投資法人 |
260億円 |
舞浜シェラトンホテル(ホテル) |
フォートレス・インベストメント・グループ |
500億円 |
(出典:前掲紙)
「みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所によると、2013年1月〜6月の不動産取引額は2兆3601億円と上半期ベースでは2008年(1兆7506億円)を上回り、2005年以降では最高になった」(前掲紙)
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政府は残業や解雇などの雇用条件を柔軟に設定できる規制緩和を、地域限定で検討する。安倍晋三首相の主導で決める国家戦略特区を活用し、成長産業への労働移動など人材の流動化を進め、日本経済の活力を高める。参院選前は世論の反発を招きかねない労働改革に踏み込まなかったが、特区に絞って抜本的に規制を改革する。
(日本経済新聞2013年7月26日1ページ)
【CFOならこう読む】
「国家戦略特区は地域を限って大胆な規制緩和や税制優遇に踏み切る仕組み。政府は8月末にも東京、大阪、愛知の三大都市圏などを特区に指定する。
中略
政府はこの特区で規制緩和する項目をさらに10~20項目上積みする。内閣官房が雇用、医療、農業、エネルギー、クールジャパンといった分野で約130の検討項目をまとめ、各省と協議に入った。第2弾の項目の関連法案は来年の通常国会に提出し、来年中の早い時期の実現を目指す。」(前掲紙)
ん、クールジャパン?
まさか日本企業だけ優遇するのではなかろうね。
内外無差別ですよ。
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安倍晋三首相は5日、成長戦略第3弾の講演で、国家戦略特区で都心の容積率を緩和する方針を打ち出す。都心での高層マンション開発を促し、主に外国企業のビジネスマンが働きやすい環境を整える。
(日本経済新聞2013年6月5日1ページ )
【CFOならこう読む】
「国家戦略特区は国際的なビジネス環境を整え、外国企業の誘致につなげる狙いを明確にする。容積率緩和だけでなく、外国人医師が国内で診察行為をしやすくするなどの規制改革を実施する。首相は「国家戦略特区に聖域はない」と強調する。」(前掲紙)
外国企業を誘致するために最も重要なことは、すべての日本人が外国人に対し心を開き、共に生きる覚悟を持つことです。
外資だからという理由で、遮二無二買収防衛に走るなどという国が外国企業を誘致することを国家戦略として掲げるなんぞ笑止千万です。
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