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政府、のれん非償却検討へ

政府は企業がM&A(合併・買収)をしやすくするため、日本の会計基準を改める検討に入った。買収後の費用負担を軽くできるように欧米式の会計基準に合わせる。企業がM&Aで新事業を開拓し、利益を伸ばすのを後押しする。会計基準を策定する民間団体に要請し、新制度を6月に作る成長戦略に盛り込むことを目指す。
(日本経済新聞2014年1月27日1ページ )

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「経産省が約300社の国内企業を対象にM&Aが進まない理由をたずねると、45%が「のれんの評価が難しい」と回答した。経産省幹部は「のれん代の償却義務があるので買収に踏み切れない企業が多い」とみている。のれん代の償却がなくなると、利益が増えて法人税の納税額が増える可能性もある。今後は税制上の負担軽減策もあわせて検討する。」(前掲紙)

国際会計基準に合わせ、のれんを定額償却しないということになると、買収先の業績が悪貨した際などに一括で減損処理をしなければならなくなるため、見直しに慎重な声も多く聞かれるところです。
しかし、昨年公表され、2015年4月1日以降開始する連結会計年度から適用になる新企業結合会計基準は、

• 子会社株式の追加取得時の追加取得持分と追加投資額との差額をのれん(負ののれん)とする処理を改め、資本剰余金とする(基準22号28項)。
• 支配関係が継続している場合の、子会社株式の一部売却時の売却持分と売却価額の差額を売却損益の修正とする処理を改め、資本剰余金とする(基準22号29項)。

等の点ですでに国際会計基準に整合しており(その結果プランニング如何により損益が変わります)、すでにトリガーは引かれたと言えます。
遅かれ早かれM&A会計については、日本基準と国際基準との差異はなくなることになるのでしょう。

ただしそうなったとしても是非とも税務上は引き続き定額償却を認めてもらいたいものです。

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持分法適用会社を子会社化することによる段階取得に係る損益ー良品計画

総合雑貨店「無印良品」を展開する良品計画は19日、2014年2月期の連結純利益が前期比56%増の171億円になりそうだと発表した。従来予想を35億円上回る。49%出資する台湾の合弁会社を連結子会社にすることに伴い、保有株の簿価と時価との差を特別利益として計上する。
(日本経済新聞2013年12月20日17ページ )

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良品計画は業績予想修正理由の中で本件について次のように説明しています。

「同日発表した「子会社の異動を伴う株式取得(子会社化)に関するお知らせ」にてお知らせい
たしましたとおり、平成 26 年1月6日をもって、持分法適用関連会社である台湾無印良品股份有 限公司の株式 51%を当社が取得することにより、持分法適用関連会社から連結子会社に異動する こととなりました。
これに伴い、従来の持分に関連した「段階取得に係る差益」が生じ、特別利益約 3,500 百万円 を計上する見通しとなったため、通期連結業績予想を修正いたします。」

連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針8項は、

「支配獲得前から保有していた当該会社の株式にも支配獲得日の時価を付すこととなるため、連結財務諸表上、支配獲得時に以下の差額を段階取得に係る損益として処理することになる。
(1) 省略
(2)関連会社株式として分類していた場合
 支配獲得日における時価と、持分法による投資評価額との差額」

と規定しています。

つまり49%分の株式についての支配獲得日における時価と持分法による投資評価額との差額が約3,500億円ということです。

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OKI、年金財政好転により営業利益押し上げ

OKIは年金財政の好転が、2015年3月期から営業利益を年間10億~20億円押し上げる見通しだ。過去に実施したリストラや年金制度変更の効果が出るうえ、退職給付信託として拠出した株式の価格が大きく高まったため。
(日本経済新聞2013年11月29日19ページ )

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「年金資産に組み入れている、持ち合い関係にあった不動産大手ヒューリック株の上昇。発行済み株式の5%を退職給付信託に設定しており、前期末の簿価は約230億円と年金資産の2割強を占める。同株価は前期末から2倍強に上昇。来年3月末時点の株価に左右されるが、運用好転分は一定期間をかけて損益に反映していくため、利益押し上げ要因になる。」(前掲紙)

これにより来期は10億円程度の増益が見込まれるとのことです。
株価の上昇による年金資産の運用収益の改善が増益要因になる会社が増えそうです。

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法人減税に伴う繰延税金資産の取り崩し

法人課税の実効税率の引き下げが税制改正論議の焦点になっている。企業業績の底上げに向け、まずは2014年度に2%強下げる案が有力だ。税率を国際水準まで下げ、企業の競争力を増す改革に市場関係者の期待は大きい。ただし、13年度決算には減益要因になる側面も知っておきたい。
(日本経済新聞2013年11月4日3ページ)

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「14年度から税率が下がる分を13年度に繰り延べ税金資産から取り崩さねばならない。税引き前の利益から差し引くため、見かけ上の利益が減る要因になる。
 東証1部上場企業(金融、電力・ガスなど除く)全体でみると、今年度の予想純利益22兆円の1・2%に相当する2700億円の繰り延べ税金資産が取り崩しの対象になる見通しだ。」(前掲紙)

現在のところ、復興特別法人税が前倒し廃止され2014年度に税率が2%強下がる案が有力です。

具体的な会計上の取扱いは以下の通りです。

「◯税効果会計に係る会計基準
第二.二.繰延税金資産及び繰延税金負債等の計上方法
2.繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払いが行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする。

◯税効果会計に係る会計基準注解
注6 税率の変更があった場合の取扱いについて
法人税等について税率の変更があった場合には、過年度に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債を新たな税率に基づき再計算するものとする。」

当期中に法人税率の変更があった場合、当期において繰延税金資産の取り崩しの処理が必要となります。

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日本ESOP、2年で導入3倍

従業員への報酬の一部を現物株で支給する企業が増え始めた。月例賃金や一時金の増額の代わりに自社株を給付し、待遇の改善を狙った動きが目立つ。導入した上場企業は2年で約3倍の52社に増加した。
(日本経済新聞2013年7月1日3ページ )

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「従業員に自社株を給付する仕組みは「日本版ESOP」と呼ばれる。業績や業務成績に応じて従業員にポイントを付与し、達成の度合いに応じた数の株式を退職時や在職中に渡す仕組みだ。制度の運営は信託銀行が主に手掛ける。」(前掲紙)

今年の主なESOPの導入企業は次の通りです。

20130701_00

「退職金制度が未整備など福利厚生が充実していない新興企業の導入が多い」(前掲紙)

とのことで、時価総額も比較的小さな企業の導入が多いですね。

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HOYA、移転価格税制に関し200億円申告漏れ

HOYAが海外子会社との取引を巡って東京国税局の税務調査を受け、移転価格税制に基づき5年間で約200億円の申告漏れを指摘されていたことが26日、分かった。税務上の赤字があり、地方税や過少申告加算税を含めた追徴税額は約33億円。
(日本経済新聞2013年6月27日43ページ )

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HOYAはIFRSを任意適用していますが、日本基準であれば、法人税等の更正、決定等による追徴税額は、過年度遡及修正の対象になる可能性があります。

「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)では、次のように記述されています。

「法人税等の更正、決定等による追徴税額及び還付税額は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基づき処理することになる(過年度遡及会計基準第55項参照)。なお、これらが過去の誤謬に起因するものでない場合には、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す名称を付した科目をもって記載する。ただし、これらの金額の重要性が乏しい場合には、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することができる。」

更正処分が、過去の誤謬によるものであれば、過年度遡及修正の対象になります。
しかしHOYAは、プレスリリースで「今回、当社の主張と東京国税局の見解は、明らかに相違が あるため、速やかに、法令に則り、更正処分の取り消しを求めてまいります。」と宣言しており、見解の相違ということになれば、過去の誤謬ではないので、過年度遡及修正の適用はないものと思われます。

【リンク】

2013年6月26日「移転価格税制に基づく更正通知書の受領について」HOYA株式会社 [PDF]

 

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国際会計基準と日本基準の折衷案

2013 年 5 月 28 日 コメント 2 件

金融庁は上場企業に国際会計基準(IFRS)の採用を義務付ける時期について結論を当面見送る方針だ。企業会計審議会(金融庁長官の諮問機関)が7月にもまとめる報告書に、強制適用の時期を明記しない。国際会計基準を任意に適用できる企業の範囲を拡大する案は盛り込む。最短で2016年とされていた強制適用は先送りとなる可能性が高まってきた。
(日本経済新聞2013年5月28日1ページ)

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「国際会計基準(IFRS)の導入義務付けの結論が当面見送られる見通しになり、金融庁は日本基準とIFRSの折衷案となる新たな会計基準作りに乗り出す。」(日本経済新聞2013年5月28日4ページ)

日本基準とIFRSの差異を極力小さくしていくという方向性があるなかで、何のために折衷案なるものが必要なのでしょうか?

こういう玉虫色の解決は役所の得意とするところですが、混乱を招く弊害の方が大きいと考えられるので止めて頂きたい。

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ニコン円安効果により、営業益67%増

ニコンは9日、2014年3月期の営業利益が前期比67%増の850億円になりそうだと発表した。急速な円安を追い風に大幅増益となる。
(日本経済新聞2013年5月10日15ページ)

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「今期の想定為替レートは1ドル=95円、1ユーロ=125円と、それぞれ前期より12円、18円円安の水準とした。同社の売上は8割以上が海外で、為替変動が収益を大きく左右する。今期は円安効果だけで営業利益を330億円押し上げ、営業増益幅のほとんどを占める計算になる。
(中略)
円安効果によって全体の売上高は1070億円増える見通しで、為替の影響を除けば売上高は微減となる。」(前掲紙)

円安効果といったときに、外貨ベースの商品価格低下による輸出量の増加の効果と、海外子会社のPLを日本本社が連結する際の換算の効果を分けて考える必要があります。

ニコンの場合の円安効果は後者によるものです。海外子会社が従来稼得していた1ドルの営業利益を80円で評価していたのが、円安により100円で評価することになって円ベースで評価すると営業利益が増えますというだけのことで、この利益が現地で再投資されている限りにおいては、実質を伴うものではありません。

大企業の多くが生産・販売拠点を国外にシフトしている現状では、実質的な意味で円安効果がどの程度のものであるのかをしっかり見極める必要があると思います。

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資生堂、米子会社で減損

資生堂は24日、2013年3月期の連結最終損益が147億円の赤字(前の期は145億円の黒字)になったと発表した。従来予想は105億円の黒字だった。
(日本経済新聞2013年4月25日9ページ)

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「買収して以来、業績苦戦が続いている米子会社について、「のれん」の価値を引き下げる減損で286億円の特別損失を計上する。最終赤字は8年ぶり。年50円の配当は予定通り実施する。」(前掲紙)

特別損失の内容は次の通りです。

「(1) 特別損失の計上見込み額
Bare Escentuals, Inc.(以下、ベアエッセンシャル社) に係る無形固定資産(のれん)の減損損失として 28,600 百万円

(2) 特別損失の発生およびその内容 当社は、2010 年 3 月に買収を完了し、当社の子会社とした米国の化粧品会社ベアエッセンシャル社について、 買収後、グループシナジーの発揮に向け、米州における資生堂の生産・物流拠点およびバックオフィスとの機 能統合や強化、米国外における資生堂の販売インフラの活用、研究開発や商品開発分野での取り組み等を工 程どおり進めてきました。その結果、シナジー効果も徐々に表れ、売上も伸長していましたが、期待通りとはな っていない状況であったため、ベアエッセンシャル社の売上の大半を占める米国において、市場規模の大きい リテール事業を育成すべく、2011 年度より、テレビ宣伝等のメディア投資を実施しました。しかし、認知度や関心 は高まったものの、リテール事業の拡大に想定以上の時間を要していることなどから売上は計画を下回って推 移し、特に直近数カ月間においては乖離幅が大きくなっています。 このような状況を総合的に勘案し、4 月に入ってからではありますが、長期計画を見直して減損テストを再度実 施した結果、2012 年度に特別損失が発生することとなったものです。 なお、ベアエッセンシャル社は、今回の長期計画の見直しにより、2013 年度に、不採算直営店舗の閉鎖等、構 造改革を断行するとともに、一旦、マーケティング投資を拡大し、2014 年度以降の成長への基盤を整えます。成 長に向けては、「QVC」や「インフォマーシャル」といったダイレクト販売事業を強化することに加え、リテール事 業では、これまでのメディア投資から店頭マーケティングへ投資をシフトさせ、まずは既存店舗の強化に最優先 に取り組みます。これらの取り組みにより、ベアエッセンシャル社の本来の強みである「ダイレクト販売とリテー ル販売の相乗効果」を生み出す「独自の強いビジネスモデル」に磨きをかけ、グローバルメガブランドとして、持 続的な売上成長を果たしていきます。」
2013年4月24日「特別損失の発生および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社資生堂 [PDF]

のれんの減損については、判断が難しいのですが、“売上は計画を下回って推 移し、特に直近数カ月間においては乖離幅が大きくなっています”というのは一つの重要な兆候になります。

 

【リンク】

2013年4月24日「特別損失の発生および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社資生堂 [PDF]

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IFRS任意適用要件緩和へ

金融庁の企業会計審議会は23日、国際会計基準(IFRS)の導入について議論し、任意適用の要件を緩めることでおおむね一致した。
(日本経済新聞2013年4月24日5ページ)

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「上場していることや海外に資本金20億円以上の子会社を持つなどの要件を緩めて、IFRSを採用する企業を増やしていく方針だ。」(前掲紙)

IFRSを任意適用できる企業は連結財務諸表規則第1条の2に「特定会社」として定義されています。
その具体的な要件は以下の通りです。

(1)次の要件のすべてを満たすこと
①発行する株式が、金融商品取引所に上場されていること
②有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組み に係る記載を行っていること
③指定国際会計基準に関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、指定国際会計基 準に基づいて連結財務諸表を適正に作成するこ とができる体制を整備していること

(2)次の要件のいずれかを満たすこと
会社、その親会社、その他の関係会社又はその他 の関係会社の親会社が、
①外国の法令に基づき、法令の定める期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること ②外国金融商品市場の規則に基づき、規則の定める 期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること
③外国に資本金20億円以上の子会社を有していること

このうち(1)①や(2)③について要件が緩和されるとのことです。
これによりIPO時の財務諸表もIFRSに基づき作成することが可能になるかもしれません。

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なし

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