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従業員持株会の効用

「持ち株会」が10位以内の大株主 上場企業の半数

従業員や取引先による「持ち株会」が、株式保有比率10位以内の大株主になる上場企業が増えている。2008年3月末で1900社超と上場企業全体の約 5割に上り、保有比率が上がった企業も多い。従業員の福利厚生や安定株主確保を目的に企業は持ち株会の株式取得を促している。株価下落で買い増ししやすくなったことも保有拡大につながったようだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2D05002%2007072008&g=E3&d=20080707

【CFOならこう読む】

記事によると、持株会が10位以内の株主に名を連ねるのは1902社で、1年前より13社増加。持株会の保有比率が上昇した企業(新規上場などで新たに加わった企業を除く)は811社と、比率が低下した企業(639社)を上回ったとのことです。

EVAのG.ベネット・スチュワートは、著書「続EVA創造の経営」(井手正介監訳 東洋経済新報社)は従業員持株会導入のメリットを次のように指摘しています(正確にはESOPという米国特有の従業員持株制度について書かれています)。

・従業員持株制度は、現在の利益の一部ではなく、企業価値の一部を従業員に与えるものである。より正確には従業員持株制度は従業員に彼らが退職する遠い将来の時点における企業価値に対する持分を与えるものである。従業員の関心の中心を短期的パフォーマンスから、長期的な価値最大化に変えるメリットがあると考えられる。
・従業員持株制度によるインセンティブは時と共に累積していく。従業員が従業員持株制度を通じて所有する株式数は、毎年の配分によって増加する。そのことは時間の経過と共に、企業に対する従業員の金銭的な、そしておそらくは精神的な関与をも大きくする。これと対照的に、キャッシュ・ボーナスプランは累積効果は持たない。投資がある年から翌年に繰り越されることはない。

記事の中で、「株主への説明がしづらい企業間の株式持合いに比べ、従業員の士気向上などの意味合いもある持株会は、安定株主を確保する手段として導入しやすい」という意見が紹介されていますが、安定株主確保というより、従業員主権ともいうべき日本企業の統治構造に適合しているという点で、株主価値創造に資する資本政策となり得ると私は思います。

買収防衛策の一環としての安定株主確保という視点で従業員持株会を捉えるべきではないと、私は思います。

【リンク】

続EVA創造の経営―財務リストラ戦略
G.Bennett,3 Stewart 井手 正介 河田 剛
4492521275


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