創業者の持ち株、幹部社員に贈与・セブン&アイ伊藤氏
セブン&アイ・ホールディングスの創業者である伊藤雅俊名誉会長が、個人で保有する同社株の一部を社員に贈与することが明らかになった。対象はグループ社員のうち幹部ら5000人超で、拠出額は時価換算で計60億円程度に上るもよう。少子高齢化や消費低迷で小売業の経営環境が厳しさを増す中、前身のイトーヨーカ堂設立から今年で50周年を迎えるのを機に社員の士気を高める。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080430AT2F2804Y29042008.html
【CFOならこう読む】
一六堂(http://cfonews.exblog.jp/7300426/)やテクノアルファのケース(http://cfonews.exblog.jp/6969550/)と同様のインセンティブプランであると思われます。
贈与税がどうなるか気になるところですが、課税が生じない形で実行されるものと思われます。
人間売買により株式を譲渡した場合、時価よりも譲渡代金が低くても、課税対象となるのは実際の譲渡代金であり、時価で課税されることはありません。一方譲受人には贈与税が課税されます(「M&A実務ハンドブック第3版」 鈴木義行編著 中央経済社)
無償譲渡を受けた者が、その対価と株式の時価に相当する金額を、譲渡人から贈与によって取得したものとみなされ、納税の義務を負うことになります(「租税法第11版」 金子宏著 弘文堂 488ページより)が、贈与税には基礎控除が110万円あるので(平成19年4月1日現在法令等)、譲渡された株式の時価がこれ以下であるなら贈与税は課税されません。
新聞記事によると、対象の社員は、ヨーカ堂やセブンーイレブン・ジャパンなどの幹部や勤続年数が長い社員とのことです。
半期報告書を見ると平成18年8月31日現在の社員数は、
コンビニエンスストア事業 27,589名
スーパーストア事業 19,045名
となっています(臨時従業員は含まれません)。
この中から5千人を公平な基準により選択するのは大変そうですね。
【リンク】
なし
株主保護 問われる実効性 東証・監査役協会など検討
特定の企業や投資ファンドに株式を割り当てて資金調達する第三者割当増資に厳しい目が向けられている。一株利益が減るため株価下落につながりかねず、既存株主に不利としてかねて問題視されてきた。ところが実施企業が急増しており東京証券取引所、日本監査役協会などが規制の検討を始めた。株主保護に向けた実効性の高い規制を打ち出せるか、注目される。
(日本経済新聞 2008年4月28日 16面 法務インサイド)
【CFOならこう読む】
2006年夏に、王子製紙が北越製紙に対し敵対的TOBを仕掛けた際に、三菱商事が北越の第三者割当増資を引き受け、24%強を出資する筆頭株主になることにより、敵対的TOBが阻止された事件を皆さんご記憶だと思います。日本では授権株数の範囲内であれば、第三者割当増資は取締役会の決議で行うことができます。したがって、第三者割当増資を買収防衛策として利用することが取締役会決議のみでできるのです。上記記事にもあるように、第三者割当増資の違法性が問われる場合もあります。
「一つは株主総会の特別決議を経ずに株式を市場価格より特に有利な価格で第三者に割り当てる「有利発行」。もう一つは発行の主要目的が資金調達でなく、企業の支配権の維持や移動を目的とした「不公正発行」の場合だ。いずれも会社法で禁止されている。」
つまり資金の使い道が決まっていて割当価格が大幅に安くないケースでは第三者割当増資が認められるのです。北越の事例でも、第三者割当増資は設備投資のために行われることが発表されていました。これを規制するために「東証の自主ルールで規制する」すなわちニューヨーク証券取引所のように20%を超える株式を発行する場合、株主総会決議にかけるようにするというのは、一つの方法であると思います。しかしこれだけでは、ブルドック事件以降加速している、株式持合いを含めた安定株主作りの流れを一層強めることになりかねません。
上場会社の増資は原則公募増資とすべきです。取引所は第三者割当増資を例外的なものととらえ、一定規模以上のものは個別に審査をするという位の規制をしないと日本では機能しないと私は思います。
【リンク】
なし
ホンダ、1500億円申告漏れの可能性…国税局が調査
自動車大手「ホンダ」(東京都港区)は25日、中国での乗用車の生産・販売を巡り、東京国税局から法人所得の海外流出を防ぐ「移転価格税制」の調査を受けていると発表した。
関係者によると、対象の期間は2006年3月期までの数年間で、計約1500億円の申告漏れを指摘される可能性がある。同社は追徴課税に備えて、08年3月期決算で約800億円を引き当てたことを明らかにした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080425-00000059-yom-soci
【CFOならこう読む】
ホンダは伝統的にタックス・コストには寛容であるといったイメージが私にはあります。しかし競合他社、特に日産の実効税率は30%を切ろうかという水準にあり、ホンダとしてものほほんとはしていられないという認識があるのかも知れません。
有価証券報告書から税引前利益と法人税等の内訳の推移をまとめてみました。

国外で獲得する利益は一貫して増えていますが、全体の利益に占める割合から見ると極端に増加している訳ではありません。しかしながら国外分の実効税率が減少していることから、税負担の軽減されている国で利益を獲得する方向にシフトしていることがわかります。
次の表は、実効税率の推移と法定税率との差異の内訳の推移を私がまとめたものですが、この表からも上の傾向は見てとれます。海外連結子会社の法定税率との差異が増加していることに注目してください。但し、日産の▲5.4%と比較すると特段大きい訳ではありません。それでも多少無理をしている部分があるのかもしれませんね。
※クリックすると拡大表示されます。

なお連結ベースでは、米国会計基準を採用しているホンダは。FASBの解釈指針48号「法人所得税の申告が確定しない状況における会計処理」の”法人税等に関する税務処理が最終的に認められない可能性がある場合、期末日現在の状況等に基づく見積もりにより、関連負債を認識する必要がある”という規定に基づき、2008年3月期の連結財務諸表に引当金計上しています。
引当てられたのは、調査対象となった06年3月期までの5年間だけでなく、「将来発生しうる税務リスク分」も含めて08年3月期までの7年間分の計約800億円です。単独決算ではこの引当金を計上していません。プレスリリースでは、この点、「単独決算には日本の会計基準および会計慣行に照らして当該事象による影響を反映しておりません。」との説明があります。個人的には、税務調査も終了していない時点で引当計上する、というのは少し早い感じがします。
【リンク】
2008年4月25日「中国四輪事業の移転価格に関する税務調査について」本田技研工業株式会社
http://www.honda.co.jp/news/2008/c080425b.html
西武鉄道株虚偽記載、一部個人株主へ賠償命令・信託は請求棄却
西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載発覚による株価下落で損失を被ったとして、個人株主約290人が西武鉄道側に総額約13億円の損害賠償を求めていた訴訟の判決で、東京地裁(難波孝一裁判長)は24日、176人、約2億3000万円分の支払いを西武鉄道側に命じた。一方、信託銀行4社が計約120億円の損害賠償を求めた訴訟では、信託銀行側の請求を棄却した。
【CFOならこう読む】
今回の判決は、虚偽記載公表後に株を売却した176人について、虚偽記載公表日の終値(1081円)と売却価格との差額分の損失を被ったと認定する一方、計2億3千万円の賠償を命じたものです。現在も保有している株主は、1株当たり評価額が1081円下回っていないと損害を認めませんでした。2004年12月の証取法(現金商法)改正で虚偽記載による株価下落で損害を被った株主を救済しやすくする規定が盛り込まれました、西武鉄道のケースは改正前のため適用されません。
金商法21条の2第2項は損害の額を次のように計算すると定めています。すなわち、有価証券報告書等の虚偽記載等の事実が公表されたときは、その公表日前1年以内に当該有価証券と取得し、その公表日において引き続きその有価証券を所有する者は、その公表日前1ヶ月間のその有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の平均額から公表日後1ヶ月間のその有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、虚偽記載等により生じた損害額とすることができる、としています。
今回の地裁判決の算定方法はこれとは異なるものになっています。
なお、金商法の損害賠償請求権者は、上の規定からも分かるように、公表日前1年以内に株式を取得し、その公表日において引き続き保有する者に限られます。市場価額を引き下げるような虚偽記載等(例えば虚偽の損失計上)によって売却して損害を被った者は、保護されません。この点立法論としては学説に批判があります(証券取引法読本 河本一郎・大武泰南著 有斐格)。
【リンク】
証券取引法読本
河本 一郎 大武 泰南

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特措法空白期間中でも 交際費、損金算入認めず
租特法の期限が切れたために企業負担が一時的に減るものもある。例えば、赤字になった企業が前期に納めた法人税の一部またはすべてが還付される「欠損金の繰り戻しによる還付」に関する特例。租特法の還付対象は設立5年以内の中小企業だけだが、同法の失効期間中に決算を迎える企業はすべて対象になる見込み。この項目は決算期に有効な法律(4月時点では租特法が失効)を適用するのが原則となっているた
めだ。
(2008年4月24日 日本経済新聞 5面)
【CFOならこう読む】
この件は、当ブログで4月7日(http://cfonews.exblog.jp/7689307/)にお話ししました。今日はその続報です。
欠損金の繰戻し還付制度とは、欠損金の生じた年度において青色確定申告を行い、かつ過去の関係年度において青色確定申告をしていたことを条件として、欠損金を当該事業年度の開始の日前一年以内に開始した事業年度に繰り戻し、これらの事業年度の税額を計算しなおして、その差額の還付を求めることを認める制度です。この制度が租特法により、適用が中止されているのです。
これが租特法の期限切れにより、失効期間中に決算を迎える企業はすべて還付対象となる、というのが今日のニュースです。4月7日にお話しした通り、「法人の事業年度は、もともと事業成果を期間損益の形で算定するために人為的に設けられた期間であるから、企業の成果を長期的に測定するためには、ある年度に生じた欠損金は、その前後の事業年度の利益と通算するのが妥当」(租税法 金子宏 弘文堂)であり、その適用を中止するということに理論的根拠はありません。
また、たまたま決算期が失効期間中であったかどうかで、還付対象となったりならなかったりするのは、課税の公平性という点で大きな問題があります。さらに、米国とのイコール・フッティングの観点(米国はすべての法人について欠損金の2年の繰り戻し、20年の繰り越しが認められています)からも、今般の租特法の改正案から繰り戻し還付中止の項目を削除し、すべての企業が欠損金を繰り戻せるようにすべきであると私は思います。
【リンク】
なし
野村社員ら3人逮捕・東京地検、インサイダー容疑
野村証券社員らによるインサイダー取引事件で、東京地検特捜部は22日、同社の内部情報をもとに上場会社株を購入したとして、同社の香港現地法人社員の中国人、れい・ゆ容疑者(30)=同日懲戒解雇=ら3人を金融商品取引法(旧証券取引法)違反容疑で逮捕した。3人は計21銘柄を売買し、4000万円前後の利益を得たとみられ、特捜部と証券取引等監視委員会はインサイダー取引の全容解明を進める。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080423AT1G2205S22042008.html
【CFOならこう読む】
インサイダー取引をやる人の思考回路は正直良くわかりませんが、少なくとも確実に儲かると思うからやるのでしょう。M&Aの場面で、未公表の買収対象会社のバリューと市場価格が大きく乖離している場合、”重要事実”を利用して「濡れ手で粟」の利益を得ることができます。ところで新聞記事にある富士通による富士通デバイス(FDI)の完全子会社化の際に、「濡れ手で粟」のチャンスが本当にあったのでしょうか?3分の2超の持分を有する子会社の完全子会社化する際に統合比率が市場価格と大きく乖離していたというのは少し違和感があります。 気になるのでちょっと調べてみました。
完全子会社化の概要は次の通りでした。
1.日程
平成19年5月24日 取締役会決議
平成19年5月24日 株式交換契約締結
平成19年6月22日 株式交換契約承認株主総会(FDIのみ)
平成19年8月1日 株式交換の効力発生日
2.株式交換比率
富士通:FDI = 1 : 2.70
3.株式交換の算定根拠
富士通のアドバイザーは、CFAコーポレートファイナンス、FDIは、野村證券富士通及びFDIは両社がともに上場されていることから、市場株価平均法を基礎として協議し、アドバイザーの分析結果、助言等を慎重に検討し、富士通とFDIとの資本関係、過去の類似の株式交換事例、両社の財務状況等を勘案し、これらを踏まえた交渉を経て上記株式交換比率が妥当であるとの結論に至った。
市場株価平均法によるCFAが算定した株式交換比率は、1:2.088~2.260(直近1ヶ月平均、直近3ヵ月平均、直近6ヶ月平均)、野村が算定した比率は、1:2.226(平成19年5月7日から平成19年5月18日までの10営業日)でした。
有価証券報告書に基づき私が簡便的に市場株価に基づく株式交換比率を計算した結果は次の通りでした。

いずれにしても1:2.70にはなりません。これをどう解釈したら良いでしょうか?
少数株主の保護のために20%~30%のプレミアムをつけたということは考えられなくはありません。考えられなくはありませんが、1年前の実務としては若干の違和感があります。プレスリリースのどこを見ても少数株主の保護とかプレミアムという言葉が見つからないのも気になります。最悪のシナリオはインサイダーが自己の利得を得るために株式交換比率を市場価格と乖離するように誘導したというものです。そこまでのことはなかったと信じたいのですが、何となくしっくりこない感じが否めませ
ん。
【リンク】
平成19年5月24日「株式交換による富士通デバイス株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/group/fei/downloads/release/070524.pdf
日銀は30日にまとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2008年度の実質成長率の予測を1%台半ばにする見通しだ。昨年10月の前回リポートの2.1%から大幅に下方修正する。09年度の予測は1%台後半にするもよう。内外経済の不透明さを映し、金融政策の運営では、利上げの方向性を示していた表現を後退させる。
(日本経済新聞 2008年4月22日 3面)
【CFOならこう読む】
日銀は家計というものをどう考えているのでしょうか?
低金利政策で一番打撃を被ってきたのは、貯蓄超過部門である家計です。この点野口悠紀雄さんの説明がわかりやすいので、少し長いですが以下に引用します。
「金利の変化を金融機関から見ると、調達コストの低下と貸出し金利の低下がほぼ見合っているので、利ざやにはあまり大きな影響がなかったと考えられる。企業の面から見るとどうか。金融機関の貸付約定平均金利(新規・長期)は、1991年に7.51%であったが、94年に3.91%。04年に1.58%と低下している。この低下度合いは、住宅ローンの場合より顕著だ。しかも、企業の多くはネットの債務者なので、利子のネットの支払い額は大幅に減少したことである。
その規模について、おおよその見積もりをしてみよう。国民経済計算によれば、非金融法人企業の借入金は、2004年末において約415兆円である。したがって、仮に金利負担が5%ポイント低下したとすれば、毎年20兆円程度の利払い額が軽減されることになる。
ここで重要なのは、この負担減が、いかなる経済効果をもたらしたかである。非金融法人企業の借入れ残高を見ると、90年代の末からほぼ年間20兆円ずつ減少している。
これは、いま計算した利払いの軽減額とほぼ同じだ。したがって、企業は金利負担減を借入金の返済に充ててきたと考えられる。
「銀行が不良債権処理のために貸し渋りをし、それが企業の投資を抑えたため、90年代以降の不況がもたらされた」としばしば言われた。しかし、企業は、金利が低下したにもかかわらず、投資を増加させるのではなく、負債を減少させたのである。これは、経済停滞の原因が金融面にあったのではなく、そもそも投資機会が存在しなかったことにあることを明確に示している。
つまり、低金利政策は、一般に期待されていたように企業の投資を増やして経済を活性化するという前向きの効果をもたらしたのではなく、単に企業の負担を減らすという後ろ向きの効果しかもたらさなかったのだ。その累計額は、10年間とすれば約200兆円という膨大なものだ。これは1年分の賃金・俸給総額に匹敵する。これだけの巨額な所得移転が、低金利政策によって、家計から企業に対してなされたわけである。」
(野口悠紀雄著 資本開国論 ダイヤモンド社)
企業収益の改善が賃金の上昇に結びつかない現代において、高度経済成長時代と同じような舵取りをする日銀とは一体誰のために存在するものなのでしょうか? その独立性は何のために保証される必要があるのでしょうか?
ミルトン・フリードマンは、著書「資本主義と自由」の中で、中央銀行独立性について次のように書いています。
「アメリカで発生した大恐慌は、市場経済が本質的に不安定であることを示すものではない。大恐慌は、一握りの人間が一国の通貨制度に強大な権限を振るうとき、そこで判断ミスがあったらどういうことになるかを示したのである。
当時の金融知識を考慮するなら、これらの失敗は致し方なかったと言えるかもしれないー私はそうはおもわないが。だが、許せる失敗かどうかは問題ではない。ごく少数の人間にあまりに多くの権限と裁量を与え、その失敗が、たとえ無理もない失敗だとしてもあれほど重大な結果を引き起こす可能性があるとしたら、それは悪い制度である。まず、自由を重んじる立場からみて悪い制度である。一握りの人間に権力を集中させ、合議などによるチェックが働かないからだ。これが、中央銀行の「独立性」に私が反対する政治上の理由である。加えて、自由より確実性を重んじる立場からみても悪い制度である。したがって、その人たちの知識や能力に高度な政策判断が委ねられるような制度では、容認できる失敗にせよそうでないにせよ、とにかく失敗は避けられないからだ。これが、中央銀行の「独立性」に私が反対する現実的な理由である。クレマンソーはかって「戦争は将軍に任せておくには重大すぎる」と言った。この言葉を借りるなら、通貨は中央銀行に任せておくには重大すぎる。
(中略)
独立の金融当局に大幅な裁量権を与えるのもよくないとすれば、安定した通貨制度を確立するにはどうしたらいいだろうか。望ましいのは、政府の無責任な干渉を受けない安定した制度、市場経済に必要な通貨の枠組みは用意するが、経済的・政治的自由を脅かすような権力を生まない制度である。
これまでに示したことから考えられる唯一有望な方法は、金融政策のルールを法制化し、人間の裁量ではなく法律の規定に従った政策運用を行うことである。そうすれば国民は議会を通じて金融政策ににらみを利かせることができ、しかも金融政策が気まぐれに翻弄されることはない。」
日銀の総裁、副総裁を誰にするかではなく、フリードマンが言っているような方向性がこれからの日本には必要であるように思います。「生活者主権」「消費者主権」というのはそういうことじゃないでしょうかね、民主党さん。
【リンク】
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄

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伊藤園が普通株と別に東京証券取引所に上場している「無議決権優先株」の株価が上場半年を過ぎても軟調に推移している。国内初の試みとして注目を集めたが、株価は普通株より3~4割安い水準のまま。議決権が無いことで割安に放置されているのか、投資家が優先株に及び腰なのか。背景を探ってみた。
(日経ヴェリタス 2008年4月20日 16面)
【CFOならこう読む】
記事では普通株と優先株の流動性の価値が同じであると仮定して、同じPER(18日終値ベース)で試算した議決権の価値を799円(普通株の株価の43%)と計算しています。

この計算は、当ブログで9月4日に説明したのと同様のものであると思われます。
http://cfonews.exblog.jp/6398916/
ただしこの計算だけをもって議決権の価値を推定することはできません。伊藤園の優先株の流動性は低水準であり、流動性ディスカウントを考慮する必要があるからです。
非流動性ディスカウントに関して、米国では制限付き株式(公開企業が発行するSECには登録されない株式)を検証することにより次のような研究結果が得られています。
1.マーハーは1969年から1973年の間に4つのミューチュアルファンドが購入した制限付き株式を調査した結果、同じ企業の公開株に対する平均割引率は35.43%であると結論づけている。
2.1970年以降のデータを使ったもろにーの調査によれば、10社の投資会社が購入した146銘柄の制限付き株式の平均割引率は35%である。
3.ジルバーは1984年から1989年にかけて発行された制限付き株式を調査し、割引率のメジアンが33.75%であることを見出した。
(資産価値測定総論3 アスワス・ダモダラン著 山下恵美子訳 Pan Rolling)
ということは上で計算された価値の大半は流動性の価値なのかもしれません。いずれにしてももう少し事例を重ねる必要がありそうです。
【リンク】
資産価値測定総論3―非公開企業から不動産、金融派生商品まで (ウィザードブックシリーズ 133)
アスワス・ダモダラン 山下恵美子


渡辺喜美金融担当相は18日の閣議後の記者会見で、政府が英投資ファンドにJパワー(電源開発)株の買い増し中止を勧告したことに関連して「対内投資のルールが(公共性の維持と市場活性化の)整合性をとりながら進んでいくことが大事だ」と改めて強調した。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C18008%2018042008&g=E3&d=20080418
【CFOならこう読む】
18日付のフィナンシャル・タイムズが、Jパワー株買い増し中止勧告について、日本政府の対応を批判した記事を掲載しています。
「外国企業による投資はある時はグローバル経済に必要な要素として、ある時は安全保障上の脅威として扱われる(筆者注 対応にはバランスが必要)。」
「株の買い増し中止勧告をしたことで、バランスを失った最新の事例になった。さらに悪いことに、Jパワー経営陣を業績改善に必要な合理的な圧力から守ってしまった。」
「日本政府は国の安全ではなく、Jパワー経営陣を守っているのではないかという疑念がわいてくる。Jパワーは2004年の上場以来、業績が悪化傾向にある。借金を返すことで経常利益は増えているが、資本効率は逆に悪くなっている。」
「外国投資家に電力会社の株式20%を持たすことと日本企業の経営陣が貴重な資本を利益が少ない案件に投資するのを許すことと、どちらが国の繁栄と安全保障にとって長期的にみて脅威か、よく考えるべきだ。」
これらの批判に対し、渡辺喜美金融担と当相甘利明経済産業相とが意見の調整をした上で、日本政府として真摯に説明をしていく必要があると私は思います。
【リンク】
なし
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