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2008 年 9 月 のアーカイブ

SPCを使ったオフバランス取引-ビックカメラのケース

SPCを使って、資産や負債をバランスシートから切り離すオフバランス取引に厳しい視線が注がれている。表面的には分離されていても、企業による実質保有が続いている可能性があるからだ。SPC取引の問題点を探る。
(日本経済新聞 2008年9月30日 16面 揺れるSPC取引 上)

【CFOならこう読む】


2002年8月、ビックカメラは、東京・池袋本店と本社ビルを2002年8月に特別目的会社である有限会社に290億円で売却し、この有限会社が不動産を担保に、小口の証券を発行、販売しました。いわゆる「不動産の証券化」です。

記事によると、同社元社員が経営に携わっていた「豊島企画」(同渋谷区)も約70億円出資していたということです。

特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)は、流動化の要件として、リスク負担の金額の割合が流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)の5%以内であることを求めています(第13項)。そしてこの計算には譲渡人の子会社又は関連会社が負担するリスクを含めなければならないことになっています(第16項)。

ビックカメラは14億5千万円の劣後出資を行っています。この金額は流動化した池袋本店と本社ビルの時価290億円のちょうど5%に当ります。豊島企画が子会社であるということになると流動化の要件を満たさなくなるのです。

【リンク】

 なし

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日本経済回復への道標

再び失望を招く日本経済


4~6月期再びマイナス成長に陥った日本経済。高すぎる輸出依存度を解消するため、内需の喚起が必要であることは自明の理である。しかし実現への議論さえいまだ始まっていない。
-スミザーズ・アンド・カンパニー会長 アンドリュー・スミザーズ氏

(日経ヴェリタス 2008年9月28日 26面

【CFOならこう読む】

スミザーズ氏は、次のように、日本経済が上向かない理由が構造的な不均衡にあると指摘しています。


「日本は過去数年にわたる限定的な経済成長を輸出と企業の設備投資に依存してきた。個人消費が弱すぎる一方、企業の設備投資が多すぎるというようにバランスが悪いため、内需は低迷したままだ。日本企業による国内投資のGDP比率は米国企業よりも50%上回っている。それが正当化されるのは日本が米国に比べて相当高い成長を遂げている場合だが、実際は逆に米国の成長をはるかに下回っている。日本企業の投資は成果を生まず、大半が無駄に使われている。その結果、投資収益率も低いままだ。
中国を含む世界経済が減速してきたことで、日本経済の輸出依存度の高さは慢性的というより差し迫った問題になってきた。日本は内需を喚起する必要がある。投資が過大で輸出依存度が高いことを考えれば、消費を通じて内需拡大を達成しなければならない。
消費拡大を実現するには、家計の所得を増やすか、あるいは貯蓄率を減らすしかない。しかし貯蓄率は既に過去10年間で11%から3%に低下している。今後さらに下がる可能性はあるものの、景気を押し上げるほどの大幅な低下余地があるとは思えない。このため消費拡大には所得増加が必要になるが、所得増加が必要になるが、所得も伸び悩んでおり、GDPに対する所得比率は他の主要国よりも低い水準だ。」

内需喚起のためには、企業の利益を減らしその分賃金引き上げるしかない、という安直な議論があります。先週末久々に”朝まで生テレビ”を見ましたが、民主党の議員がそのようなことを力説していました。しかし、そんなことをすれば、スミザーズ氏が言うように、「企業の利益が減れば、設備投資が急激に落ち込み、経済全体としては低迷する。」ということになります。

結局、日本経済の構造的問題を解決する方策は、野口悠紀雄氏が言う”資本開国”しかないように思います。


「外国企業による直接投資が投資受入国の経済成長を促進したことは、多くの研究で明らかにされている。OECDのデータによると、国内企業と進出外国企業の労働生産性を比較すると、総じて進出外国企業の水準が高いことが示されている。先進国中では労働生産性水準が下位に位置する日本はもちろんのこと、労働生産性水準が高いアメリカ、フランス、オランダといった国でも同様の結果が示されている。日本に外国企業が進出してくれば、労働力の移動や企業間競争の促進を通じて、日本経済の労働生産性向上に寄与するだろう。」(「資本開国論」野口悠紀雄 ダイヤモンド社)

我々一人ひとりが、外国企業を受け入れるために何をなすべきかを、真剣に考えるときが来ているように私は思います。と同時にそういう時代が来ることを前提にCFOは今から準備する必要があると思います。

【リンク】

資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
野口 悠紀雄

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資本政策詳解-メディサイエンスプラニング

【CFOならこう読む】

メディサイエンスプラニングの株式上場の概要は次の通りです。


メディサイエンスプラニングは、国内外の製薬会社から新薬の臨床試験(治験)を受託するCRO事業を主たる事業としている会社です。

公募価額1,100円、2008年8月期見込みEPSが119.43円なのでPER9.2倍の水準での株式公開となっています。
役員を中心に25万株の売り出しを行うことが目を惹きます。


メディサイエンスプラニングの主な資本政策は (表2)の通りです。


IPOのプレファイナンスとして、2007年6月に20%超の希薄化を伴う第三者割当増資を役員、VC、主幹事証券(高木証券)に行っています。

(表3)はメディサイエンスプラニングの株主構成です。


代表権のない取締役会長である酒井杏郎氏が筆頭株主ですが、それでも20%を下回る持分しか有していません。
従業員持株会はあるものの、ストックオプションの発行は行っていません。

2007年の第三者割当増資の10ヶ月前に、酒井会長から関係会社の役員等に株式移動が行われていますが、この時の価格は純資産価格をベースに決定された22,000円で、第三者割当増資の40,000円と相当に乖離があります。

2007年の増資の割当を受けた医師の1人が、診療報酬不正請求に係る詐欺罪の容疑で逮捕され同年9月に逮捕されています。会社はその事実をきちんと開示しており、それ自体は大きな問題ではないのかもしれませんが、そういう輩と付き合いがあったという点は紛れもない事実です。

上場直前期である2007年8月期まで浦江社長が会社から社宅の供与を受けていたことが、関連当事者との取引に開示されていますが、会社のガバナンスという点で多少問題があるのかもしれません。

【リンク】

株式会社メディアサイエンスプランニング

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東武のハイブリッド証券

東武鉄道、転換社債800億円発行 東京スカイツリー地域の開発

東武鉄道は25日、ユーロ円建て新株予約権付社債(転換社債=CB)を800億円発行すると発表した。発行に伴う費用を除いた784億円を、有利子負債の削減と設備投資に充当する。地上デジタル放送の電波タワー「東京スカイツリー」(東京・墨田)を中心とする業平橋・押上地区の再開発に備え財務体質を強化する。
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hotnews.aspx?site=MARKET&genre=c1&id=AS2D2500F%2025092008

【CFOならこう読む】

東武の資金調達のスキームは次の通りです。

平成20年9月25日プレスリリースより

東武は、2012年春の開業を目指す「東京スカイツリー」建設など資金需要が旺盛ですが、一方中期経営計画の中で負債の削減目標を掲げており、負債による資金調達は行えない状況にあるため、SPC(子会社)を通じて優先出資証券を割り当てることによる方法を選択しました。

会社はプレスリリースの中で、この資金調達方法を選択した理由を次のように説明しています。

「① 本優先出資証券は、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、主要格付機関(株式会社格付投資情報センター及び株式会社日本格付研究所)から、70%以上の資本性が認められる見通しであるなど、実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性も兼ね備えております。
自己資本を直截拡充できる時価発行増資では、発行済株式の増加及び一株当たり利益の減少等の株式の希薄化を招くことになり、他方、長期負債の積み増しでは実質的な財務改善につながりません。今般の資金調達については、これらの手段に比して、株式の希薄化の抑制と、実質的な資本増強による財務構成比率の改善の双方を実現できるものと判断しております。

② 当社が発行する社債に新株予約権を付与すること(本優先出資証券には、本新株予約権付社債に交換することができる交換権が付与されており、当該交換権を行使した場合は、本優先出資証券は本新株予約権付社債に交換され、当該新株予約権付社債は自動的にかつ直ちに当社の普通株式に転換されます。)により、本邦でも実績のある海外SPCを通じた株式への交換権を付与せず優先出資証券を発行する調達手段に比して、相対的に有利な金利(配当)条件で資金調達を行うことが可能となっております。
但し、既存株主の皆様に配慮した商品性を実現すべく、時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定するとともに現金決済による取得条項(※)を付与することにより、将来の株価上昇時においても株式の希薄化を極力抑制することを重視致しました。
※ 【現金決済による取得条項及び償還について】
本新株予約権付社債には、発行から5年経過以降において、当社がその裁量により、一定期間の事前通知を行うことにより下記の財産の交付と引き換えに本新株予約権付社債を取得する権利が付与されます。TR社は、当社が本新株予約権付社債の現金決済による取得条項の権利を行使した場合には、当社から交付される下記の財産を対価として本優先出資証券を償還します。
なお、当社及びTR社は、本優先出資証券の割当先との間で、割当先の当社の議決権保有比率が銀行法上の制約である5%を超過することとなる現金決済による本優先出資証券の償還を行わないことを約束する予定です。この限りにおいて、現金決済による本新株予約権の取得条項を行使できる当社の権利は制約されることとなり、期待する効果が限定される可能性があります。
(ⅰ)額面金額並びに1口当たり金額の100%に相当する金額、及び
(ⅱ)転換価値から額面金額並びに1口当たり金額を差し引いた額(正の数値である場合に限る。)を1株当たり平均VWAPで除して得られる数の当社普通株式
・ 転換価値: (額面金額÷転換価額)×1株当たり平均VWAP
・ 1株当たり平均VWAP: 当社が取得通知をした日の翌日から5取引日後の日から始まる20連続取引日に含まれる各取引日において株式会社東京証券取引所が発表する当社普通株式の売買高加重平均価格の平均値

③ 本邦においては事業法人による今般の資金調達のようなハイブリッド証券による資金調達のマーケットが必ずしも成熟しているとは言えない状況の中、当社子会社であるTR社が発行する本優先出資証券の特性に鑑み、且つ当社が企図する財務構成比率改善を実現するための今般の調達予定額を確実にするとの観点から、当社と長年の取引関係があり、当社の経営状況等についてご理解を頂いている主要取引銀行3行を割当先とする第三者割当方式による調達に決定した次第です。

東武本体で優先出資証券を発行しなかったのは、優先出資証券にCBへの交換権を付与することで金利を引き下げることが可能であるためです。ただしこの金利引き下げ効果については、このブログでも繰り返し指摘しているように、オプション部分を区分して会計処理しないことが認められていることから生じる一種のまやかしに過ぎず、実質的には格付けに応じた金利が支払われます。

【リンク】

平成20年9月25日「第三者割当による2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付優先出資証券の発行に関するお知らせ」東武鉄道株式会社 [PDF]

不適当な合併等-クロニクルのケース

ジャスダック、クロニクルを上場廃止の猶予期間に

ジャスダック証券取引所は22日、宝飾品販売のクロニクルがエステティックサロン経営のJ・B・A(東京・渋谷)を株式交換で子会社化した場合、クロニクルは9月30日から上場廃止の猶予期間に入ると発表した。クロニクルが実質的な存続会社ではないと認められるため。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20080925AT2D2201C22092008.html

【CFOならこう読む】

ジャスダックでは「不適当な合併等」に係る上場廃止基準について次のように規定しています。

「不適当な合併等に係る上場廃止基準(廃止基準第2条8号)は、いわゆる裏口上場の防止を目的として定められたものであり、上場会社が非上場会社の吸収合併等を行った結果、上場会社に実質的存続性が認められず、かつ一定期間内に新規上場審査に準じた審査に適合しない場合に上場廃止となることが規定されています。

クロニクルとJ・B・Aとの株式交換は、ジャスダックの審査により、実質的に存続会社がJ・B・Aとなるものと判定され、「新規上場審査に準じた審査を受けるための猶予期間」に入ることが見込まれる銘柄に指定された、というのがこのニュースです。

(1) 実質的存続性の審査
上場会社が合併等の公表を行った場合、ジャスダックは合併等を実施した場合に、上場会社に実質的存続性が認められるかどうか審査を行います。

(2) 実質的存続性が失われると判断した場合 ⇒猶予期間入りが見込まれます
上場会社が実質的な存続会社であると認められないと判断した場合は、合併等の実行時点から「新規上場審査に準じた審査を受けるための猶予期間」に入る可能性がある旨の投資者への周知を図ります。

(3) 合併等の実行時 ⇒猶予期間入り
当該合併等の実行時点で「新規上場審査基準に準じた審査を受けるための猶予期間」に入ったことの投資者への周知を図ります。
・ 合併等の実行時点とは、合併の場合は合併期日、営業譲渡や業務提携については譲渡日や業務提携日を指します。
・ 猶予期間の期限は、当該合併等の属する事業年度末から3年目の日(ただし、猶予期間最終日が事業年度の末日とならない場合には、その直前に終了する事業年度の
末日。)です

(4) 猶予期間内に新規上場審査基準に準じた審査に適合した場合 ⇒猶予期間から解除
猶予期間から解除し、投資者への周知を図ることとします。
(5) 審査に適合しないまま、猶予期間が終了した場合 ⇒監理ポストへの割当て

猶予期間が終了した時点において新規上場審査基準に準じた審査が終了していない場合は、その翌日から監理ポストへの割当てを行い、投資者への周知を図ることとします。

(6) 猶予期間終了後、有価証券報告書提出から8日経過時点
猶予期間終了後、最初に有価証券報告書を提出した日から起算して8日目までに、新規上場審査基準に準じた審査に係る申請を上場会社が行わない場合は、上場廃止基準該当銘柄として整理ポストへの割当てを行い、投資者への周知を図ることとします。
なお、当該時点において新規上場審査基準に準じた審査を継続している場合は監理ポストへの割当てを継続します。当然ながら、当該審査が終了次第、一般ポストへの復帰(適合した場合)又は上場廃止を決定した上での整理ポストへの割当て(適合しなかった場合)のいずれかの対応をとることとなります。」
(ジャスダック ウェブサイトより抜粋)

その後、クロニクルは株式交換の中止を決定し、ジャスダックも猶予期間入りが見込まれる銘柄から解除することを発表しています。

【リンク】

平成20年9月9日「簡易株式交換による株式会社J・B・Aの完全子会社化および主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」株式会社クロニクル [PDF]

平成20年9月24日「簡易株式交換による株式会社J・B・Aの完全子会社化中止に関するお知らせ」株式会社クロニクル [PDF]

2004/12/13「不適当な合併等に係るJASDAQ上場廃止基準更新日」ジャスダック証券取引所 [PDF]

実質的な存続会社がどちらであるかは、合併後の株主構成、取締役会の構成、事業内容等を総合的に検討して判断されるものと思われますが、クロニクルのケースでは、筆頭株主がJ・B・Aの大株主であるJBA-WESTに変更される、ということを除いて具体的にどうしてクロニクルが存続会社と見なされないと判定されたかについて公表されていません。

もっとも直近期(平成20年2月期)のEPSが512.29円であるJ・B・Aの株価が44,786円と評価されていること自体異常であり、このような評価がまかり通ることをもってしても、存続会社はクロニクルではないことは明らかであると、私は思います。

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ワークスアプリケーション、買収防衛策取り下げ

ワークスアプリケーションズ、買収防衛策を取り下げ

業務用ソフト開発のワークスアプリケーションズは22日、24日開催の定時株主総会の議案から買収防衛策(大規模買い付けルール)にかかわる事項を取り下げると発表した。半数以上の議決権が株主総会前に書面で行使された結果、反対が多数で、否決の可能性が高いと判断した。現在の防衛策は10月31日で失効する。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20080924AT2D2201G22092008.html

【CFOならこう読む】

ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、議決権割合が20%以上となる大規模買付の場合次の手順に従うことを要請するものです。

①大規模買付行為に関する意向表明書の提出
②大規模買付行為に関する情報の提出
③特別委員会の設置、対応
④取締役会としての意見の通知

買収者が上記ルールに従わない場合、必要に応じて対抗措置を講ずるとしていますが、その具体的な対抗措置については新株予約権の無償割当に限定されません。

ワークスアプリケーションが導入を予定していた大規模買付ルールは、特別おかしなものではありません。これが会社が説明するように、企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、いわゆる2段階買収のように株主に対象会社株券等の売却等の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の株主や取締役会が大規模買収者の提案条件等について検討し、取締役会が代替案を提供するために必要な情報や時間を十分に提供しないもの、を排除するためだけに在るのなら問題はないと言えます。

しかしこのルールが経営者保身の道具となり得ることを、多くの株主は敏感に感じとり、反対票を投じたのでしょう。こういうニュースは、経営者をまたぞろ株式持合いに走らせるのでしょうね。

今必要なのは、岩井克人氏が「M&A 国富論」(プレジデント社)で強調しているように、買収防衛に関するルールを法制化することだと思います。

【リンク】

平成20年9月22日「定時株主総会における一部議案の上程取下げおよび『定款の一部変更に関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ [PDF]


平成20年7月30日「当社株件等の大規模買付行為に対する対応方針(買収防衛策)に関するお知らせ」株式会社ワークスアプリケーションズ [PDF]

M&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことか
岩井 克人

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ヒロセ電機、利益率30%の命題

ヒロセ電機、利益率30%の命題 研究・営業・製造、連動する高収益の歯車

携帯電話部品のコネクターを得意とするヒロセ電機は一般の知名度は高くないが、海外投資家の間では根強い人気がある。売上高経常利益率30%超を維持する経営姿勢が好感され、外国人持株比率は45%を超える。「研究開発を最優先」「社長が値決めする」「外注先には資本を入れない」といった独自のルールが研究、営業、製造の各部門に連携して浸透。従業員1人当たりの生産性を高める少数精鋭主義のもと、業界では比類のない高収益を達成している。
今春、ヒロセ電機の社内がざわめきたった。内規の水準を超えて顧客からの値引き要請に応じたことを理由に、営業本部の社員に出勤停止処分が下されたためだ。営業の担当者は5万点を超えるコネクターの採算をすべて把握し、売上高経常利益率が30%を下回らないように顧客と交渉する。価格下落が厳しい場合は中村達郎社長に決裁を求める。この値決めのルールを逸脱したのだ。

(日経ヴェリタス 2008年9月21日 12面)

【CFOならこう読む】

売上高経常利益率を重視する理由は?

という問に中村社長は次のように答えています。

「酒井秀樹元会長が社長に就任した1970年代の定期預金金利は10%程度だった。
『10%以上もうからないなら、あくせく働く必要はない』として、最低20%の利益率を目指したのが始まりだ。企業の成長に伴い、現在は30%になった。仮に5%に落として同額の利益を維持するには6倍の売上高が必要だ。社員を増やせばいいが、業績悪化時にはリストラも必要になる。少数精鋭主義を保てない」

ヒロセ電機の場合、売上拡大志向を厳に戒めています。これはガルブレイスの次の言葉にもあるように、経営者の本性とは相反するものです。

「ひとたび最低限の収益によってテクノストラクチュアの安全が保証されると、目標選択の幅がでてくる。生存の必要くらい強いものはない。しかしこの選択が、多くの場合、どのような形で実行されているかについては、ほとんど疑問の余地がないのであって、それは、売上高で測って、会社の最大可能な成長率を達成することである。」
(新しい産業国家 J.K.ガルブレイス 河出書房新社)

ガルブレイスは、個人の目標と、組織及び社会の目標は一致していなければならず、経営者が売上高拡大により、自己の影響力の拡張を図るのは当然のことだと言っているのです。

ヒロセ電機にはこの本性を抑えるだけの規律が働いているのです。

ヒロセ電機は、売上高を超える手元流動性(現預金+有価証券)を保有しています。この活用について市場から厳しい目が向けられているようですが、これを単純に増配やM&Aに費やすべきではないでしょう。

これを全部経営者・従業員で山分けしたとしても、それが中長期的な利益獲得のインセンティブになるなら全く問題ないと思うのです。株主価値重視の経営とは、闇雲に増配することではありません。

【リンク】

なし

TOBルール 改正から2年


実務面で課題多く 透明性向上 議論積み上げ必要

ライブドアによるニッポン放送株の大量取得などを契機にTOBルールが見直され、近く2年を迎える。株式の取得価格が市場に明示され、株主にとって透明性の高いM&A手法だが、実務面では細かな障害が多く、使い勝手が悪いとの声が根強くある。さらなる改正に向け問題点も浮上している。
(日本経済新聞 2008年9月20日 16面)

【CFOならこう読む】

記事の中に次の記述があります。

「敵対的買収をするならTOBは利用しない方がいい」と日興シティグループ証券の藤田勉マネジングディレクターはファンドなどに助言している。いったんTOBを始めると価格変更や撤回は買収企業の防衛策など例外を除き事実上困難で「買収側の負担が重すぎる」(藤田氏)。

TOB開始後、買付価格の引き上げは自由にできますが、引下げは原則として禁止されています(金商法27条の6 1項1号)。これは投資家保護及び相場操縦に悪用されないようにするための規定であると解されています。

この原則の例外として、買収防衛策の発動により、株価の希薄化が生じる場合、買付価格の引下げが容認されるという規定が、平成18年改正により新たに設けられています。引下げが容認されるのは、株式分割と新株又は新株予約権の無償割当の場合に限定されています。したがって、第三者割当増資により大きな希薄化が生じても、買付価格の引下げは認められません。

また、新株予約権の無償割当等により買付価格の引下げが認められるのは、TOB期間中にその決定があった場合ではなく、TOB期間中に実行された場合に限られます。相場操縦に悪用される懸念から、買付価格の引下げについて非常に厳しい要件が課されているわけですが、それにより行われるべきTOBがなかなか行えない、という弊害が生じているのも事実です。

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なし

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武井工業所、フェニックス銘柄へ

武井工業 株価低迷で基準割れ ジャスダック上場廃止へ

ジャスダックに上場するコンクリート製品製造の武井工業所は18日、時価総額で算定する上場基準の維持が困難になり、日本証券業協会の「フェニックス銘柄」に移行する方針を固めた。株価が低迷し、期限内に時価総額が上場廃止基準の5億円を回復することが難しいと判断した。ジャスダックが取引所に移行した2004年12月以降で、時価総額基準により上場廃止になるのは初めて。
(日本経済新聞 2008年9月19日 14面)

【CFOならこう読む】

武井工業所は、時価総額が昨年12月に初めて上場廃止基準の5億円を下回りました。上場維持には9月末までに月末と月間平均の両方で5億円を上回る必要がありますが、18日時点で2億2千万円しかなく、少なくとも月間平均での基準割れがほぼ確実な情勢であるため、今日19日の取締役会で「フェニックス銘柄」への移行を決定するとのことです。

ところで「フェニックス銘柄」とは何でしょう?

フェニックス銘柄とは、日本証券業協会が、金融商品取引所の上場廃止銘柄を売買するために、平成20年3月31日からスタートさせた制度です。

「金融商品取引所を上場廃止となった銘柄の発行会社は、金融商品取引法等により開示が義務付けられている上場企業に比べて、企業内容の開示が十分に行われていないところが多いため、日本証券業協会では、非上場企業が発行する有価証券について、証券会社が投資家に対して投資勧誘を行うことを原則として禁止しています。
したがって、上場廃止になった銘柄は、上場廃止時点で換金機会がいちじるしく低下します。
さらに、本協会の規則により、非上場銘柄は原則として証券会社による投資勧誘が禁止されているため、投資家は証券会社を経由して売却先を探すことができず、特に、自力で売却先を探すことのできない個人投資家は、当該企業が再生を果たし再上場するまでの間は、当該株券を保有し続けるといった消極的な対応を求められるのが現状でした。そのため、既存株主の換金の場として、フェニックス銘柄制度が創設されました。

なお、フェニックス銘柄の位置づけとしては、日本証券業協会の自主規制規則(「店頭有価証券に関する規則」)で定める店頭取扱有価証券のうち、金融商品取引所を上場廃止となった銘柄で、かつ、証券会社が日本証券業協会に対して届出を行った上で、その証券会社が継続的に売り気配・買い気配を提示している銘柄のことをいいます。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)

武井工業所は平成19年6月30日現在、773名の個人株主がいます。この数が、上場廃止を目前に控えた現時点でどの程度まで減少しているかわかりませんが、売却機会を逸した株主が少なからず存在することは十分に考えられ、フェニックス銘柄へ移行することで、そういう人に対して、上場廃止後も売却機会を提供できることになります。

余談ですが、フェニックス銘柄の場合も監査は必要です。

「フェニックス銘柄の場合には、直前事業年度の財務諸表及び連結財務諸表について公認会計士又は監査法人により金商法に準ずる監査が行われ、又は計算書類等について会社法に基づく会計監査人による監査若しくはこれに準じる監査が行われ、かつ、その総合意見が適正又は適法である旨の監査報告書が、記載されている財務諸表若しくは連結財務諸表又は計算書類等に添付されていること。」
(日本証券業協会 ウェブサイトより)

【リンク】

平成20年3月24日「当社株式の時価総額及び今後の展開等について」株式会社武井工業所

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国際会計基準 導入本格検討を金融庁が表明

金融庁、国際会計基準の導入検討表明

金融庁は17日、企業会計の国際化に対応するため、「国際会計基準」を日本で導入する方向で本格的な検討に入ると正式表明した。10月にも長官の諮問機関である企業会計審議会で議論を始め、2011年度以降の導入を念頭に置いたロードマップ(行程表)を作成する。国際基準は世界100カ国以上で採用され、米国も採用する方針に転換した。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080917AT2C1700D17092008.html

【CFOならこう読む】

記事によると、

「日本企業が決算の開示方法を国際会計基準か日本基準か選べる「選択適用」を認めることで大筋一致した。」

とのことです。

一方、米国が目指しているような自国の基準をとりやめ、国際基準に一本化する、いわゆる”アダプション”については意見がまとまらなかった、ということで、報道されているように、”アダプション”で決まり、ということでは必ずしもないのかもしれません。

いずれにしても国際基準と日本基準の違いを埋める「共通化作業」は従来通り進められることが改めて確認されており、以前田中さんから頂いたコメント通りの方向に向かっています。

「一方で、IFRSは原則論しか規定されない会計基準ですので、その運用、あるいは具体的な会計処理の理論的根拠として、結局は監査法人は、かつての米国会計基準や日本基準における関連する指針を参照するようになるのだろうと思います。

そうなったときのために、日本基準のコンバージェンスをとっとと進めてもらって(今の時点で大きな部分はだいぶ収斂しているように思いますが)、米国基準を参考に運用するのか日本基準を参考に運用するのかなどという変な話にならないようにしてもらいたいものです。」(http://cfonews.exblog.jp/8322854/

【リンク】

平成20年9月16日「第1回『我が国企業会計のあり方に関する意見交換会』について」金融庁

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