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2008 年 9 月 のアーカイブ

日本電産、東洋電機製造に買収提案

日本電産、東洋電機製造に買収提案 「鉄道機器」に進出

日本電産は16日、鉄道用機器メーカーで東証1部上場の東洋電機製造に買収を提案したと発表した。TOB(株式公開買い付け)により子会社化し、モーターなど鉄道機器分野に進出する狙い。日本電産は多くのM&A(合併・買収)を手掛けてきたが、相手企業と合意する前に買収提案を公表するのは初めて。東洋電機製造は「対応を検討中」としており、買収が成功するかは同社の対応に左右されそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080917AT1D160CK16092008.html

【CFOならこう読む】

本件で今後想定されるシナリオは次の通りです。

①東洋電機製造経営陣はTOBに賛同し、TOBが実行される。
②東洋電機製造経営陣はTOBに反対する。

 ②の場合、日本電産は、
②-1 買収を諦める
②-2 敵対的TOBを実行する

 ②-2の場合、東洋電機製造は、
②-2-1 第三者割当増資等により安定株主を作る
(王子・北越のケース)
②-2-2 濫用的買収者として買収防衛策を発動する
(スティール・ブルドックのケース)
②-2-2 何もしない

ところで、②-2-2のケースでTOBは成功するのでしょうか?

東洋電機製造は、個人株主の比率が約5割と高く、TOBの成否は個人株主がTOBに応募してくるかどうかによって大きく左右されます。

TOB価格は1株635円で12日終値(305円)に約108.2%のプレミアムを上乗せした水準です。過去の株価の推移から見ても十分な水準のプレミアムであると言えます。

ですからこのTOBに多くの個人株主が応募してくるように思えます。ところがゲーム理論的なアプローチではこれが必ずしもそうはならないことが指摘されます。

日本電産の買収に賛同する株主は、日本電産は東洋電機製造のファンダメンタルズ価値がTOB価格以上であると考えているはずだと考え、保有株式を売らない、という選択をします。日本電産の買収に反対する株主も、保有株式を売りません。

したがって、支配株主がいない本件のケースでは、ゲーム理論的には日本電産の買収は成立しない、ということになります。

岩井克人氏の近著「M&A 国富論」(プレジデント社)は、次のようにTOB価格だけで買収の可否を決する方法を次のように批判し、新しい買収ルールを提案しています。


「ある買収者が市場を一生懸命リサーチし、買収して価値を高められそうな会社を見つけてTOBをかけた場合、既存株主は何もしない、つまり「寝て待つ」ことが最良の戦略となるのです。その結果、買収は成立しなくなる。このようにTOB価格だけで買収するかどうかを決めるという仕組みは、本質的な矛盾を含んでいます。
これはファイナンス理論の中の最も重要な命題の一つなのですが、そのような理論を無視して、教科書を表面的に勉強しただけの人が、TOBの価格だけで買収の勝負をつければよい、それが株主のためだと主張しているのを見ると、情けなくなります。」

私は、TOBの価格で買収の勝負をつけるのが良いと考えています。株主が欲するのは、良い経営ではなくキャピタルゲインです。十分なプレミアムを付せば、多くの個人株主はTOBに応募してくるのです。そしてそれだけのプレミアムを付けてもなおペイする自信のある株主に支配権が移動する、この仕組みが国富の点からも望ましいと、私は考えるのです。

岩井氏の提案する買収提案の詳細については、また別の機会にこのブログでとりあげます。

【リンク】

平成20年9月16日「東洋電機製造株式会社に対する資本・業務提携に関する提案書提出のお知らせ」日本電産株式会社 [PDF]
平成20年9月16日「貴社との資本・業務提携のご提案について」日本電産株式会社 [PDF]

M&A国富論―「良い会社買収」とはどういうことか
岩井 克人

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資本政策詳解-データホライゾン

【CFOならこう読む】

データホライゾンの株式上場の概要は次の通りです。

データホライゾンは広島に本社があり、レセプト(診療報酬明細書)のデータ化と分析結果からの各種サービス、レセプトのチェックシステムの提供など医療関連情報事業を展開している会社です。

設立は昭和57年で、当初はガソリンスタンド向け販売管理システムや、養豚場向け生産管理システムの開発・販売を行っていたようです。順風万端に上場までこぎつけた、という会社ではなさそうです。

公募価額1,650円、2009年6月期予想EPSが104.55円なのでPER15.8倍の水準での株式公開となっています。

データホライゾンの主な資本政策は (表2)の通りです。

2004年3月期、2005年3月期は債務超過でキャッシュフロー的にも苦しかったものと推察されますが、第三者割当増資を重ねてこの時期を凌いだようです。

2007年3月期まで大きな繰越損失があり、これを資本準備金の取崩しにより填補しているところが特徴的です。

(表3)はデータホライゾンの株主構成です。

上場直前に大株主である内海社長の奥様が亡くなり、相続により株式が分散しています。奥様は24万株を保有しており、上場へ向けた資本政策の上で、夫婦合わせてオーナー持分を計算していたはずで、相続発生は全くの想定外であったものと思われます。

過半数を持たない中で上場ベンチャー企業(といってよいでしょう)の経営を行うのは、難しい面があると思いますが、頑張って欲しいと思います。

かつて上場準備をしていたが、ここ最近事業が停滞して上場を諦めかけているオーナー社長は日本中にたくさんいると思いますが、データホライゾンの事例は大きな励みになると思います。

今、債務超過だとしても、決して諦めてはいけません。

【リンク】

 なし

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アーバンコーポレイション バリバとの密約

消えたメリルのTOB

民事再生法の適用を申請し上場廃止が決まったアーバンコーポレイションが12日、東京証券取引所第一部の株式最終売買日を迎える。不動産市況の悪化と信用収縮が招いた今年最大の倒産劇の裏では、仏大手金融機関BNPパリバとの間で実施した資金調達の妥当性という問題が浮上。情報開示のあり方などの課題を投げかけた破綻の構図を検証する。
(日本経済新聞 2008年9月12日 16面 アーバンコーポレイション破綻の実相 上)

【CFOならこう読む】

記事には、

「アーバンコーポは7月11日、別の資金調達としてパリバを割当先に300億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行。その際に株価次第で実際の手取り額が減少する可能性のある「スワップ契約」を交わしていた。資産査定の過程でこの「密約」を発見したメリルは「契約を開示しないまま買収すれば、大きな法的リスクを抱えてしまう」と判断した。」

と書かれています。

スキームの全貌は次の通りです。

「7月11日 2010年満期 総額300億円のCBをバリバ向けに発行
転換価格 344円(開示日6月26日の終値)
資金使途 財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定

破綻まで存在が隠されていたスワップ契約の概要
7 月11日 BNP パリバに300 億円を支払う
パリバは手元にあるCBを株式に転換したうえで、市場の売買高の12~18%に相当する株数を市場で売却。
”売却した株数×その日の市場の売買高加重平均株価の90%”に相当する金額を日々アーバンコーポレイションに支払う。
出来高加重平均株価の算定の基礎となる株価に一定の下限を設定」

8月13日までの33日間のうち6日間しか下限価格を上回らず、結果としてアーバンコーポレイションが受け取った金額は92億円にとどまりました。
(日経ヴェリタス 2008年8月17日 14面)

CBとスワップ契約を一体のものとしてみると、MSCBとほぼ同じものになるにも関らず、この片側のみしか開示しなかったことが東証の適時開示規則に違反していないかという点と、スワップ契約という当事者しか入手できない未公表情報を知りながら、パリバがアーバンコーポレイションの株式を市場で売却したことがインサイダー取引にならないか、の2点について問題があるのではないかと、今日の記事は指摘しています。

【リンク】

株式会社アーバンコーポレイション ニュースリリース

カテゴリー: 資金調達 タグ:

NJK 減損銘柄別に判断

今期から基準緩和

NJKは2009年3月期から有価証券の減損基準を緩和する。前期まで時価が取得価格に比べ30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたが、30-50%の下落なら銘柄ごとに減損を判断する方式に変える。保有する仕組み債の価格変動が激しいため、有価証券の種類に応じた減損が必要と判断した。
日本経済新聞 2008年9月11日 14面)

【CFOならこう読む】

NJKは第1四半期から記事のように会計処理基準の変更を行っております。記事では、期の途中で変更するかのように書かれていますが、そうではありません。

第1四半期の四半期報告書に、次のように会計処理基準の変更の開示がなされています。

「従来「その他有価証券」の減損にあたって、時価のあるものについては、時価が取得価額に対して30%以上下落しているすべての有価証券について減損処理を実施しておりましたが、銘柄によっては流動性が低く、時価の変動幅が短期的に大きいものが認められるようになり、減損の計上についてより慎重に判断する必要があると考えられることから、時価が30%以上50%未満下落した場合は、銘柄別にその流動性及び時価の推移を慎重に検討し回復可能性を勘案して減損処理を行う方法に変更いたしました。
なお、この変更による当第1四半期連結会期間における影響額はありません。」

金融商品会計に関する実務指針91項では、

「売買目的有価証券以外の有価証券について、時価が著しく下落したとき(時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合)は、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減額処理しなければならない」

「上記以外の場合には、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断する」

「なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる」

としています。

従来NJKは、上記基準に比し保守的に、30%以上下落した銘柄はすべて減損処理していたのを、一時的な為替相場の変動により大きく時価が変動する仕組み債を保有している現状においては、30%-50%の下落の場合には回復可能性を判定した上で減損の要否を決める方法が妥当であると考え、会計処理基準の変更を行ったということです。

【リンク】

「有価証券報告書・四半期報告書」株式会社エヌジェーケー

カテゴリー: 会計 タグ:

取引先持株会広がる

保有比率10%超、3月末で9社

仕入先や販売先など取引関係のある中小企業などに自社の株式を購入してもらう取引先持株会が広がっている。日本経済新聞社が2008年3月末時点で調べたところ、428社で取引先持株会が10位以内の大株主に名を連ねた。買収防衛に向けた安定株主づくりの一環と位置付ける企業もある。(日本経済新聞 2008年9月10日 18面)

【CFOならこう読む】

次の表は、取引先持株会の保有比率が10%を超える企業のリストです。

新聞記事によると、新日鉄のケースを参考にして設立準備に動く企業が多くなっているとのことです。

「新日鉄は3月に資材の調達先や作業の外注先など104社で持株会を発足、現在は105社に増えた。1回の合計購入額は約3000万円。8月末で約31万株(発行済株式の0.0045%)と保有量は少ないが着実に増加している。
鉄鋼世界最大手のミタル・スチールが同2位のアルセロールを買収した2006年夏ごろから設立を検討。260社に加入案内を送付した。住友金属工業などとの株式持ち合いと合わせた安定株主づくりとみられる。」

日本では、例えばおもちゃ業界のように卸問屋や下請けといった取引先と緊密な関係を構築し、一つのグループとして経営している会社も少なからずあります。そういった会社が自社のみならず、取引先にも持株会を設立するのは悪いことではないし、否定すべきものでもありません。
一方現経営陣保身のための安定株主づくりは容認されるべきではなく、取引先持株会設立がその一環で、記事にあるように、

「取引先持株会は、取引関係を裏付けにしているため退会が少なく、1回の買付額も比較的大きい。上場企業が実質的に設立を主導することが多く、強い立場を利用して無理に株を買わせると、独占禁止法違反になる恐れもある。」

ということなら大問題であると言えます。

結局、保有比率の上限を設定する等、コーポレートガバナンス上弊害が生じないような設計にするしかないのかもしれません。この点は従業員持株会についても同様であると思います。

【リンク】

 なし

スティール、松風に企業価値向上策

ROE8%達成 スティール提言 松風に企業価値向上策

米投資ファンドのスティール・パートナーズは8日、筆頭株主になっている歯科材料大手の松風に対し企業価値向上に向けた提言を行ったと発表した。自己資本利益率(ROE)8%以上の達成を目標とした新しい経営計画の策定や、内部留保の使途説明などを要求資本効率の改善に努める社外取締役の導入なども求めた。
(日本経済新聞 2008年9月9日 14面)

【CFOならこう読む】

昨日、スティールが投資先との対話を重視する方向に転換しつつあるというような話題をとりあげましたが、今日の新聞に松風企業価値向上策について提言した旨の報道がありましたので、今日はその内容を紹介します。

提言の具体的内容は次の通りです。

合理的な範囲を超える留保分について、スティール・パートナーズは、自社株買いあるいは増配を通じて従業員持ち株会などを含む株主に還元すべきだと考えています。
スティール・パートナーズは松風に対して以下の提言を行いました。

. 株主資本利益率(以下「ROE」)を経営指標の一つとして導入し、より資本効率を重視した経営を行うためにROE8%以上の達成を目標に含んだ「新」中期経営計画を策定する。
. 内部留保の使途や合理性を説明するために「新」中期経営計画にて設備投資、減価償却費、研究開発費等の計画を開示する。
. 自社株買いもしくは特別配当を通じてROE及び一株当たりの当期純利益を改善する。
. 配当性向を恒常的に引き上げる。
. 株主と利害関係を共有するため、取締役にストックオプション制度を導入する。
. 資本効率の改善とステークホルダー間の利害の最適バランスを維持することに注力する社外取締役候補者を少なくとも3名選定する。
スティール・パートナーズは、これらの提案を実施することにより松風の一株当たりの当期利益が増加し、企業年金連合会が取締役再任のためのROE最低基準としている8%の達成を助けると考えています。松風は企業年金連合会の再任基準8%を下回る状態が続いていることを指摘しています。」

特に非事業用資産への投資が過大であると、スティールは次のような説明を行っています。

「■松風は2008年6月期末現在、本業への貢献が薄いと考えられる非事業用資産を87億円保有。これは総資産額の約39%、時価総額(2008年8月28日時点)比61%に相当
 >非事業用現預金は42億円、同時価総額比29%
 >有価証券は7億円、同時価総額比5%
 >投資有価証券は39億円、同時価総額比27%(ナカニシ、大日本スクリーン、ワタベウェディングの株式など)
■合理的な範囲以上の内部留保は、株主の資本を不必要に拘束し、評価減などの無用なリスクに晒す(2008年3月期に有価証券の価値が約10億円毀損)。同業他社や本業とのシナジーが薄いと考えられる他社株への投資などの資産運用は、会社の本業でもなく、「歯科医療の発展」という経営理念にも資さないとSPJSFは考える。
[#IMAGE|e0120653_8354651.jpg|200809/09/53/|mid|397|239#]

■松風は本業から上がるキャッシュフローにより、十分将来の設備投資を賄える
>松風の過去5年間の営業活動によるキャッシュフロー(下図青の棒グラフ)をみると概ね設備投資額(下図赤)を上回っている
>過去5年間の営業活動によるキャッシュフローの平均値は設備投資の同平均値の約2.4倍、年間総配当額控除後でも1.8倍以上の水準
■87億円という非事業用資産の額は平均設備投資額の約20年分もの規模87億円という現在の非事業用資産の額は、平均設備投資額や本業から上がるキャッシュフローを考慮すると明らかに過大」

 

なお、内部留保の使途・合理性について説明を求めるのは、他の機関投資家も同様であるとして、企業年金連合会の議決権行使基準等を紹介しています。

「■企業年金連合会
>「既に厚い自己資本を有していながら適切な事業計画もなく、内部留保を積み増している場合等には、(剰余金の分配等について)肯定的な判断はできない。(()内はSPJSFが挿入)」(株主議決権行使基準 III.具体的行使基準 3.資本政策等に関する議案 (2) 剰余金の分配等 c )
>「株主に対する利益配分は、中長期的観点から行われるべきであるが、株主等に対し納得のいく説明もなく、必要以上に利益を留保する企業に対しては、連合会は適切な株主還元を求める。」(連合会 コーポレート・ガバナンス原則 II.コーポレート・ガバナンス原則具体的行使基準 5.事業計画等 ④)
■インスティシューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下「ISS」、世界的に著名な議決権行使助言会社)
>「過去十分な利益を上げているにも関わらず、その内部留保について説得力のある理由を提示しない会社が、適切な説明なく不十分な配当を提案した場合には、ISSは反対票を投じるよう推奨する(SPJSF訳)」“ISS will recommend votes against the income allocation proposal where a consistently profitable company with no compelling reason to retain cash proposes an unusually low dividend without an adequate explanation”) (Japanese Proxy Season 2007-SUBSTANTIVE ISSUES FOR 2007-Allocation of Income and Dividends)」

 

提言内容は至極まっとうで、松風経営陣はこの提言に対し、きちんと対応することが求められると、私は思います。

【リンク】

2008年9月8日「スティール・パートナーズ・ジャパン、松風に企業価値向上のため提言 内部留保の使途についてより明確な説明を要望」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー [PDF]

2008年8月28日「企業価値向上のための提言」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー [PDF]

米スティール対日戦略転換

日本の経営者を啓蒙します。」米投資ファンド、スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が昨年6月の記者会見で発した一言が、物議を醸したのは記憶に新しい。企業に事前了承なしのTOBを仕掛けるスティールは「こわおもて投資家」の代表格。だが意外なことに、最近は対話路線への転換を急いでいるという。なぜなのか。昨夏以降、メディアへの登場を拒んできたリヒテンシュタイン氏が日経ヴェリタスに胸の内を明かした。
(日経ヴェリタス 2008年9月7日 54面)

【CFOならこう読む】

リヒテンシュタイン氏は、インタビューの中で、

「昨年のブルドック案件から、投資先とのコミュニケーションがいかに大切かを学んだ」
「投資先企業にはまず、スティールが長期の投資を目指すファンドであることを理解してもらいたい。そして我々が利益率やROEを高める具体的なアイデアを持っている」

と語っています。

そして、そのアイデアについて具体的に次のように語っています。

「例えばコーポレートガバナンスの向上、中核事業への経営資源の集中、資本政策の最適化などです。こうした取り組みで株価が上がる余地は大きいはずです。」

そして投資ファンドの目的について、

「この仕事の最大の目的は、投資先企業を育てていくことです。その結果として、我々は株主を含めた企業のステークホルダーに価値をもたらすことができます。企業が良くなっていけば経済全体が良くなるし、税収が増え、株価上昇を通じて年金生活者など国民の利益にもつながる。そう信じて働いています。」

と話しています。

私には、未だ彼らが濫用的買収者である理由がわかりません。

しかしリヒテンシュタイン氏は、それをただ徒に非難するのではなく、日本市場での”土着化”を進めています。7月に代表にモルガン出身のマーク・オフリルが就任したのも”土着化”を進めるためです。

「オフリル氏は通算17年間にわたって日本に住んでいる日本通。モルガンでの経験も長く、日本市場を熟知しています。オフリルが代表になったことで、投資先企業との対話も加速していくでしょう」
「彼に期待するのは、日本政府との関係構築です。モルガン時代には大阪証券取引所の社外取締役を務めた経験もありますし。」

ブルドックの時に、さんざんコケにされた経済産業省と関係を構築しようと云うのでしょうか?

いずれにしても日本で”土着化”するには、官庁との関係が重要であることは間違いありません。

【リンク】

 なし

端株強制買い取り-KDDIのケース

代金、みなし配当課税 KDDI 株主に注意喚起

KDDIは1株に満たない端株の強制買い取りに関する税金の取り扱いで、株主に注意を促し始めた。端株を買い取る際に同社が端株主に支払う代金が、みなし配当課税の適用を受けることが決まったためだ。
(日本経済新聞 2008年9月6日 16面)

【CFOならこう読む】

端株を強制的に買い取る場合、配当金と同じく10%の源泉徴収が課されるという通知をKDDIは国税から受け取ったというニュースです。

強制買い取りではなく、株主自ら24日までに端株の買い取りを会社に対し請求する場合には、みなし配当課税は回避できるとのことです(この場合でも譲渡益課税が生じる可能性はあります)。

この件からだけでも、複雑怪奇な日本の金融所得税制の一端が垣間見れます。

【リンク】

平成20年9月3日「端株の処分に関する税制についてのお知らせ」KDDI株式会社 [PDF]

カテゴリー: 税制 タグ:

テクモ・スクエニのケース

テクモとコーエー、経営統合波乱含み 具体策は11月上旬メド

ゲームソフト会社でともに東証1部上場のテクモとコーエーは4日、経営統合に向け協議を始めると発表した。経営統合委員会を設け、11月上旬をメドに統合の具体策を詰める。テクモは同業のスクウェア・エニックスからTOB(株式公開買い付け)提案を受けていたが、経営陣はこれを拒否し、コーエーとの統合を選んだ。これを受け、スク・エニはテクモに質問状を提出、対応を今後考えるとしており、先行きはなお波乱含みだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080905AT1D040AF04092008.html

【CFOならこう読む】

スク・エニからのTOB提案を拒否し、ホワイトナイト役をコーエーに求めた格好です。

スク・エニではなく、コーエーを選んだ理由をテクモ経営陣は明確に語っていません。
スク・エニは昨日、テクモに対し質問状を提出し、この点を照会しています。

今後の展開が注目されますが、仮にスク・エニが敵対的TOBに打って出た場合、テクモがコーエーとの経営統合を強行するのは、時間的な制約から、非常に困難であると言えます。その理由は次の通りです。

「簡易合併手続が利用できる場合を除き、会社が第三者と合併を行うには株主総会において特別決議を行う必要があるが、敵対的買収の手段として一般に用いられるTOBは、証取法上、買付期間が最短で20日、最高で60日とされており、これとの関係で、実際に防衛的な合併を行うには実務上困難な問題が生じる可能性がある。
まず、そもそも合併が敵対的TOB阻止のための手段として機能するためには、TOB手続中に対象会社の取締役会において他の会社との合併を決定し、TOB買付期間満了前の一定の日を基準日ないし株主名簿閉鎖日として、合併承認のための株主総会を招集しなければならない。
TOB完了後に基準日を定めて株主総会を招集しても、買付者側が多数の株式を取得して基準日までに名義書換をすれば合併承認決議はブロックされてしまうことになるからである。しかしながら、基準日等を定めるためには2週間前の公告が必要とされていることに鑑みると、最短20日間の買付期間内にここまですべて完了させるのは不可能ではないにせよ至難の業であろう。」
(「平時」の予防策と「有事」の対応策 太田洋・原田充浩著 商事法務)

いずれにしても、スク・エニとコーエーのいずれがテクモの株主価値を創造するのか(当然、従業員のモチベーションを高める施策も含まれます)、きちんと時間をかけて説明をした上で、テクモ株主がいずれかを選択する、という手続きが必要でしょう。そういう意味では、両社がTOB合戦を行うのが一番わかりやすい形であると私は思います。

【リンク】

2008年8月29日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けについて」株式会社スクウェア・エニックス [PDF]

2008年9月4日「テクモ株式会社に対する同社株式の友好的公開買付けの提案に関する同社からの回答への対応」株式会社スクウェア・エニックス [PDF]

平成20年9月4日「経営統合にかかる協議開始のお知らせ」テクモ株式会社 株式会社コーエー [PDF]

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