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2009 年 1 月 のアーカイブ

JTブランド廃止

冷凍食品「JT」ブランド廃止 ギョーザ事件で販売不振続く

日本たばこ産業(JT)は今春、冷凍食品で「JT」ブランドを廃止する。1月30日でグループ企業が輸入した中国製冷凍ギョーザの中毒事件から1年たったが、深刻な販売不振が続きブランド維持は困難と判断。家庭用冷食は子会社の加ト吉のブランドに統一する。同事件以来、相次いだ食の安全問題の影響で、商品から有名ブランドがなくなるのは初めて。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090131AT2F3003030012009.html

【CFOならこう読む】

記事によると、

JTはイメージの回復は困難とみて、生産は続けるものの2月にもJTブランドの包装は一部業務用を除いて廃止。4月頃から同ブランドは店頭からなくなる見込み。家庭用は3月に31品のうち5品を廃止したうえで、ジェイティフーズの親会社に当たる加ト吉にブランドを統一する。

ということです。

JTは2007年12月にTOBにより加ト吉株式を93.88%取得し、加ト吉は2008年4月に100%子会社化されています。その後、両社の冷凍食品事業を含めた加工食品事業および当社の調味料事業について、加ト吉に集約した体制のもとで、運営されています。

したがって、今回のJTブランド廃止の決定も実態に即したものと言えるのですが、消費者から見ると、中身は何も変わらないのに、パッケージのみ変える誤魔化しであるととらえられる恐れがあると思います。その場合加ト吉ブランドも大きく毀損するリスクがあると私は思います。

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東証、TOKYO AIMの概要発表

東証、プロ向け市場の概要発表 上場基準大幅に緩和

東京証券取引所は29日、新たに創設するプロ投資家向け新市場「TOKYO AIM(エイム)」の概要を発表した。上場に際しては一定の利益などの数値基準を設けないほか、審査は証券会社に委ねるのが特徴。ルールを大幅に緩和して国内外の新興企業を呼び込む。十分に資金の行き届かない小規模企業の育成につなげる狙いだが、市場は冷え込んでおり逆風下の船出になりそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090130AT2C2901K29012009.html

【CFOならこう読む】

東証は、TOKYO AIM創立の目的をプレスリリースの中で次のように説明しています。

TOKYO AIM創設の目的は、アーリーステージにある日本およびアジアの成長企業のニーズを反映した新たな資金調達の選択肢と幅広い投資家層へのアクセスを提供すると同時に、国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供することにあります。TOKYOAIMは、昨年の金融商品取引法改正により導入されたプロ向け市場制度を活用して創設されます。TOKYO AIMは、金融庁からの免許取得を前提に、本年春に開設の予定です。

新興市場を舞台に行われた数々の事件、不祥事を思うと、参加者をプロに限定し、アーリーステージにある将来性ある企業を資金調達の面でサーポートすることを目的とする新市場の創設は歓迎すべきものと思います。

ただし、プロの投資家の後ろには多数の一般投資家がいるわけで、彼らがリスクの負担を強いられないよう十分配慮すべきであるとも思います。

間違っても、上場基準緩和の趣旨がどんな会社でも上場できる、ということにはならないよう、NOMADと呼ばれる「指定アドバイザー」となる証券会社の選定・監督・処罰は厳格に行う必要があります。

TOKYO AIMの概要は次の通りです。

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(2009年1月30日 日本経済新聞より)

上場申請時にどのような書類が要求されるかが気になるところですが、有価証券上場規程(案)及び施行規則(案)によると次の通りです。

新規上場申請者は上場申請時に、次の各号に掲げる書類を提出するものとする。
(1)特定証券情報等
(2)新規上場申請者の事業計画の概要
・ 新規上場申請者の事業計画の概要には、今後の業界環境や申請会社が主に取り扱う製商品、提供するサービスのトレンドを踏まえた事業運営方針・事業展開や設備投資計画等、投資者が投資判断上必要とする内容が含まれていることが求められます(ただし、業績予想等の数値の記載を求めるものではありません)。
(3)施行規則で定める「新規上場申請に係る宣誓書」
(4)施行規則で定める「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」
(5)新規上場申請者の定款
(6)その他当取引所が必要と認める書類
2 前項第1号に掲げる特定証券情報等とは、特定証券情報を記載した書面、発行者情報を記載した書面に相当する報告書、有価証券届出書又は有価証券報告書をいい、新規上場申請者は、施行規則で定めるところに
よりそのいずれかを提出するものとする。
・例えば、新規上場申請時において有価証券報告書の提出義務のない上場申請者である場合で、かつ上場申請時にファイナンスを実施する場合に特定証券情報を記載した書面を提出することになります。
3 前項の特定証券情報を記載した書面及び発行者情報を記載した書面に相当する報告書は、施行規則で定めるところにより作成しなければならない。
4 第1項第1号に掲げる特定証券情報等に記載される財務諸表等には、施行規則で定める事項が記載された監査法人による監査報告書等を添付するものとする。
・ 監査報告書等には「無限定適正意見」またはこれに準ずる監査法人の意見が添付されていることが求められます。
5 第1項第1号に掲げる特定証券情報等のうち、特定証券情報を記載した書面又は発行者情報を記載した書面に相当する報告書に記載される財務諸表等は、日本会計基準、米国会計基準、国際会計基準その他施行規
則で定める会計基準のうちいずれかに基づいて作成しなければならない。
・ 施行規則で定めるその他の会計基準とは、日本会計基準、米国会計基準及び国際会計基準の3基準と同等であることを、担当J-Nomad と監査法人が、合意の上で適切に判断した基準(この場合は、上記3基準のいずれかとの差異を開示(いわゆる調整開示)するものとします。)。

これを見る限り、監査は何年必要か定められていないようです。創業間もない会社の上場も可能とするという趣旨なのかも知れません。

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TOKYO AIM

2009/1/29「東京証券取引所グループとロンドン証券取引所グループ、プロ向け新市場の名称と制度要綱を発表 -正式名称は「TOKYO AIM」-」東京証券取引所グループ

「有価証券上場規程(案)及び同規程施行規則で規定する主な内容」

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インサイダー規制及び適時開示規定に、軽微基準-子会社解散公表不要に

小規模子会社の解散 公表不要に 「コマツ処分」機に見直し

金融商品取引法改正に伴う内閣府令の改正で、子会社解散に関するインサイダー規制に軽微基準が新設された。業績などへの影響の小さい小規模子会社なら解散しても規制の対象外となる。東京証券取引所も業務規定を見直し、企業は適時開示せずに済む。インサイダー条項の緩和は珍しい。規制や開示の在り方に一石を投じている。
(日本経済新聞2009年1月29日14面)

【CFOならこう読む】

実務上重要な改正であると思いますので、条文の内容を具体的に書き記しておきます。上が金商法改正に伴う内閣府令の改正、下が東証の上場規定施行規則の改正の内容です。

■有価証券取引等の規制に関する内閣府令の改正-インサイダー取引規制の軽微基準の見直し
52条5-2新設
解散による当該上場会社等の属する企業集団の資産の減少額が当該企業集団の最近    事業年度の末日における純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれ、当該解散の予定日の属する当該企業集団の事業年度及び翌事業年度の各事業年度においていずれも当該解散による当該企業集団の売上高の減少額が当該企業集団の最近事業年度の売上高の100分の10に相当する額未満であること。
(2008年12月12日施行)

■有価証券上場規程施行規則-上場会社の適時開示について子会社の解散に係る軽微基準を新設
403条第5号の2新設
(子会社等の決定事実に係る軽微基準)
第403条 規程第403条に規定する投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして施行規則で定める基準のうち同条第1号に掲げる事項に係るものは、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定めることとする。ただし、規程第402条第1号qに規定する上場外国会社(当取引所が必要と認める者に限る。)については、当取引所が定めるところによる。

(5)の2 規程第403条第1号fに掲げる事項次のaからdまでに掲げるもののいずれにも該当すること。
a 当該解散による連結会社の資産の額の減少額が直前連結会計年度の末日における連結純資産額の100分の30に相当する額未満であると見込まれること。
b 当該解散による連結会社の売上高の減少額が直前連結会計年度の売上高の100分の10に相当する額未満であると見込まれ
ること。
c 当該解散による連結会社の連結経常利益の増加額又は減少額が直前連結会計年度の連結経常利益金額の100分の30に相当する額未満であると見込まれること。
d 当該解散による連結会社の連結当期純利益の増加額又は減少額が直前連結会計年度の連結当期純利益金額の100分の30に相当する額未満であると見込まれること。
(2008年12月12日施行)

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平成20年12月「平成20年金融商品取引法改正に係る政令案・内閣府令の概要」金融庁総務企画局

「平成20年金融商品取引法等の一部改正に伴う業務規程等の一部改正新旧対照表」

2008年度ベンチャー投資48%減

08年度ピークの3分の1 上場落ち込みVCが慎重に

経済産業省の調査機関によると、国内主要ベンチャーキャピタル(VC)による2008年度(2008年4月-2009年3月)の新規投資額は前年度の半分の水準に落ち込む見通しだ。株価低迷で投資回収が難しくなっているため。設立間もない開発型ベンチャーはVC依存が高い企業が多く、景気低迷が長引けば財務戦略の練り直しを迫られる企業が増えそうだ。
(日本経済新聞2009年1月28日15面)

【CFOならこう読む】

ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)が2008年度の「ベンチャーキャピタル等投資動向調査」をまとめた。国内主要90のVCの2008年度新規投資額(見通し)の合計は1000億円。2007年度比48%減で、ピークだった2006年度の3分の1にとどまる。主因は株式市場の低迷にある。2008年(1-12月)は新規株式公開(IPO)は49社と前年の半分以下。VCは投資先企業を上場させて株式を売却し、資金を回収するのが難しい
状況になっているためだ。

実際に各社が2007年度に実施した投資回収の手法について聞いたところ、「IPO株の売却」との回答は35.1%と前年度比9.8ポイント下落。逆に「外部売却や経営者への売り戻し」は、38.1%と8.3ポイント上昇している。
新規投資先企業の設立年数は「設立5年未満」が47.6%と最多だった。「5年以上10年未満」(24.9%)を含め、10年未満の比較的早い時期での投資が7割超を占める。
(前掲紙)

これだけIPO市場が低迷しているのは、逆に言うとシード期又はスタートアップ期ベンチャー企業への投資の絶好の好機であると言えます。銀行の貸出姿勢が厳しい中、資金不足にあえぐベンチャー企業が、VCに期待する部分は非常に大きいと思います。野口悠紀雄氏が言うように今必要なのは、「日本経済の構造大転換」であり、また「企業家にとって今の経済危機は続行のチャンス」です。そしてここに血液たる資金と経営ノウハウとガバナンスを供給するVCの存在は今こそ重要であると私は思います。

【リンク】

財団法人ベンチャーエンタープライズセンター

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国際財務報告基準(IFRS)、2009年度から選択適用可能に

国際会計基準、09年度から利用可能 会計審方針

金融庁の企業会計審議会(長官の諮問機関)は2009年度(10年3月期)から「国際会計基準」の適用を企業に認める方針を固めた。同基準は欧州を中心に100カ国以上で使われており、産業界から早期の利用を求める声が出ていることに対応する。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090127AT2C2600E26012009.html

【CFOならこう読む】

海外で起債している一部の企業にとっては、IFRSを選択できるようになることで、コストが削減できるといった一定のメリットは生じると思いますが、一方、原則主義であるIFRSをそのまま日本に導入しても実務は動かないだろうなあと思う部分もあります。適用指針、実務対応報告、委員会報告等細かい規定に基づき日本の実務は回っているのです。また投資家サイドからは比較可能性という観点から日本基準との相違について、詳細な開示を要求されることが予想され、結局コスト面で見ても割高になってしまうことも考えられます。

私は2011年までコンバージェンスを進め、同時に日本企業向けのIFRS適用指針等の整備を進め、米国と同様2014年以降段階的にIFRSを義務付ける方向で行くのが良いと思っています。そうでないと内部統制のときと同様、またぞろ雨後の竹の子のようにハゲタカがうようよ現れ、億単位のカネを巻き上げられることになりかねません。コンサルタントに無駄なカネを使わなくても、全ての上場企業が無理なくIFRSに移行できるよう十分に時間をかけた工程表とすべきであると私は思います。

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なし

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上場直後の自社株買い-イデアインターナショナルのケース

新規株式公開(IPO)から間もない企業に自社株買いなどで株価をテコ入れする動きが目に付く。IPO銘柄は流通する株数が少なく、自社株買いは売買機会の減少につながる可能性もある。だが売買が盛り上がらないため、買い手として登場せざるを得ない事情もあるようだ。
2008年に国内の株式市場に上場した会社は49社。このうち3社が自社株買いを実施。6社が役員や従業員による持ち株会設立や株の保有を発表した。
雑貨販売のイデアインターナショナル(3140)は、08年11月に発行株数の9.3%を上限とする自社株買いを発表した。社長の保有比率が半数近くあるが、「株価があまりに低いと感じたが、通常のIR(投資家向け広報)ではインパクトがない」と判断したという。

(日経ヴェリタス2009年1月25日15面)

【CFOならこう読む】

昨年11月11日に自社株買いを発表した後、一時的に株価は上昇しましたが、その後は公募価格2530円の3~4割といった水準で推移しています。

ところで、イデアインターナショナルは、1月20日に業績の下方修正を発表しています。下方修正に至った理由を会社は次のように開示しています。

売上高につきましては、オーガニックコスメブランド「アグロナチュラ」製品の成分不表示による自主回収、及びそれに伴う生産管理体制の見直しを行ってまいりましたが、年末の需要期に製品の投入が間に合わず、前回発表の業績予想数値を下回る見込みであります。また収益面につきましても、販売管理費を削減したものの、売上高の落ち込みの影響が上回り、営業利益、経常利益とも前回発表の業績予想数値を下回る見込みであります。

年末の需要期に製品の投入が間に合わないという事態が、自社株買い公表時点で全く予想されていなかったのか、仮に相当の確からしさで予想されていたなら、公表した後に自社株買いを行うべきではなかったかとの疑念が生じるところです。

20090126

【リンク】

平成21年1月20日「平成21 年6月期 第2四半期累計期間(非連結)の業績予想の修正並びに第2四半期期末配当予想の修正に関するお知らせ」株式会社イデアインターナショナル[PDF]

カテゴリー: 自社株取得 タグ:

自社株買いのTOB−アスクルのケース

2009 年 1 月 24 日 コメント 1 件

アスクル 筆頭株主から自社株買い

アスクルは23日、同社株式の40%を保有する筆頭株主のプラスが株式の一部を売却するのに対応し、自社株のTOBを実施すると発表した。市場で売却された場合の株価への影響を考慮した。発行済株式の25%にあたる1100万株を約180億円で取得する。買付価格は1638円で23日終値を約4%下回る。買付期間は26日ー2月24日、1100万株すべてをプラスが売却した場合、保有比率は約15%に低下する。プラスグループの議決権ベースの保有比率も5割超から約37%に下がる取得した株式の約半分は早期に消却する。
(日本経済新聞2009年1月24日14面)

【CFOならこう読む】

自社株取得の目的をアスクルは次のように説明しています。

当社は、当社株式の流動性及び市場株価への影響を鑑み、プラス株式会社が売却を希望する株式につき自己株式として買い受けることは資本効率の向上及び総合的な利益還元に繋がるものと判断いたしました。本公開買付けによってプラス株式会社の当社株式の所有割合が低下した場合、プラス株式会社の当社株式の所有割合の低下は、当社の経営の自主性及び独立性、並びに購買代理としての中立性をより一層強化し、「ソロエルサービス」を始めとした当社の次世代ビジネスモデルの展開を促進させ、当社事業の成長を加速させるものと期待しております。また、本公開買付けの応募状況に応じて、当社が法人税法上の特定同族会社の対象から外れることにより、将来の事業年度における当社の留保金課税にかかる負担が軽減される可能性があります。

アスクルはプラスの事業部門を引き継ぐ形で発足しましたが、保有比率の低下で、プラスからの独立性が高まることになります。

自社株取得の手法としてTOBを選択した理由及び価格の根拠については次のように説明されています。

自己株式の取得の手法については、株主間の平等性、取引の透明性、市場における取引状況等を総合的に判断し、公開買付けの手法によることが適切であり、本公開買付けの買付価格の決定に際して、基準の明確性及び客観性を重視し、基礎となる当社普通株式の適正な価格として市場株価を重視するべきであると考えました。また、本公開買付けに応募せずに当社株式を保有し続ける株主の利益を尊重する観点に立って、資産の社外流出をできる限り抑えるべく、市場価格より一定のディスカウントで買い付けることが望ましいものと判断いたしました。

自社株取得の手法としては、ToSTNeTによることもできますが、1日の取引数量に制限がある上、例えばToSTNeT-2によった場合は、終値取引でかつ時間優先の仕組みのもとで、他の株主の取引機会を確保されているため、プラスの売却予定株数をすべて買い取ることが保証されません。

TOBの場合も、応募株数が買付上限を超えた場合、按分比例により買付が行われるため、プラスの売却株数が予定を下回る可能性があります。しかし、本件は、ディスカウント価格によりTOBを行うことで、他の株主の応募を回避するという手法がとられています。アスクル側はこれで良いのでしょうが、大株主であるプラス側はディスカウントTOBに応ずることによって株主から訴えられるといったリスクはないのでしょうか? 恐らくない、というのが私の結論です。その理由は次の通りです。

TOBには税務上のメリットがあるからです。ToSTNeTも含め市場取引を行うと、プラスには株式譲渡益が計上されますが、TOBによった場合には、相対での自社株取得になるので、買付価格が1株当たりの資本金等の額を超過する部分はみなし配当となり、この部分は100%益金不算入となります。

したがってTOBによると、プラスの譲渡益課税は大幅に圧縮できるのです。多少のディスカウントを受け入れても、税引後のキャッシュフローは、市場で売却するより多く獲得できるのです。ですからプラスにとってもディスカウントTOBに応じることには経済合理性があるのです。

余談ですが、ディスカウント率の決定の根拠として次のような説明がなされていることに若干目を惹かれました。

当社は、本公開買付けにおける普通株式の買付価格を決定するにあたり、フィナンシャル・アドバイザーであるGCA サヴィアン株式会社より、当社の適正な株式の時価を算定するためには、本公開買付けを決議する取締役会決議直前の株価のみならず一定期間の株価の推移についても勘案すべきとの助言を受けるとともに、平成18 年以降の発行者による株券等の公開買付けにおいて買付価格に付されたディスカウント率は概ね10%以内であるとの助言を受け、これらを総合的に勘案し、買付価格を決定しております。

【リンク】

平成21 年1 月23 日「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」アスクル株式会社[PDF]

平成20 年1 月10 日「東証市場を利用した自己株式取得に関するQA集」東京証券取引所[PDF]

カテゴリー: 自社株取得 タグ:

ライブドア(現LDH)、フジに310億円支払いで和解

旧ライブドア、フジに310億円支払い 株急落巡り損害賠償和解

ライブドア(現LDH)の第三者割当増資を引き受けたフジテレビジョン(現フジ・メディア・ホールディングス)が、ライブドア事件で同社株価が急落し損害を受けたとして、LDHに約345億円の損害賠償を求めた訴訟は22日、LDHがフジ側に約310億円を支払うことで東京地裁で和解が成立、両社の訴訟は終結した。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090123AT1G2203522012009.html

【CFOならこう読む】

フジは、2005年年5月23日にLDHの第三者割当増資に応じて払い込んだ金額(約440億円)とフジが取得した全株式を、2006年3月16日に売却した金額(約95億円)との差額である345億円及びそれに対する遅延損害金について、旧証券取引法第18条(虚偽記載のある有価証券届出書の届出者の賠償責任)に基づき、東京地方裁判所においてLDHに対して損害賠償を求める民事訴訟を提起していました。

今般、東京地方裁判所から職権による和解勧告及び和解案の提示があり、昨日、LDHとの裁判上の和解が成立しました。その内容は次の通りです。

■ライブドアは、当社に対し、損害賠償金として、2009年2月10日までに金310億5442万8000円を支払う。

LDHは、和解案を受諾した理由をプレスリリースで次のように説明しています。

当社が東京地方裁判所からの和解勧告を受諾することとした主な理由は、1)提示された和解案は原告請求額を減縮した金額の支払を内容とするものであり、当社主張の一部が実質的に認められたものと評価できること、2)現在当社が係争中である他の損害賠償請求訴訟と異なり、本件は、旧証券取引法第18 条・19 条に規定されている新株の募集に応じて取得した者への賠償責任であること、3)本件の早期解決により、当社の訴訟費用および労力を節減し、他の損害賠償請求訴訟に注力して取り組むことができること、の3点です。

LDHは、この和解金額を堀江元社長ら旧経営陣に賠償請求する方針です。

【リンク】

平成21年1月22日「和解による訴訟の解決のお知らせ」株式会社フジ・メディア・ホールディングス[PDF]

平成21年1月22日「和解による訴訟の解決に関するお知らせ」株式会社LDH[PDF]

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株式分割は株主還元策か?

テクノ菱和、今期末 1株を1.1株に分割 16年ぶり最高益更新株主への配分手厚く

テクノ菱和は2009年3月期末の株主を対象に、1株を1.1株に分割する見通しだ。今期の連結純利益が土地売却益の計上などで16年ぶりに最高を更新するのがほぼ確実なため株主への利益配分を手厚くする。分割は1997年9月以来。1株配当は前期比0.5円増の年16円(期末に9.5円配)の計画で、分割を考慮すると1.45円の増配となる。
(日本経済新聞2009年1月22日12面)

【CFOならこう読む】

株式分割は株数が1.1倍になる一方、1株当たりの価値(株価)は1/1.1に引き下げられるので、株主価値に与える影響はありません。株主還元が目的なら、株式分割をせずに1.45円だけ1株配当を増やせばそれで足りるはずですが、同時に株式分割をするのはどういう意味があるのでしょうか?

新聞記事は、この点、「会社は発行済み株式総数を増やして流動性の向上につなげたい考え」と説明しています。

それはそれで嘘ではないとは思いますが、別の理由もあると思います。
安定配当を基本方針とする日本の多くの上場企業は、儲かったら増配するのが困難です。一旦増配するとそれを継続することが求められるからです。

テクノ菱和も安定配当を行うことを次のように宣言しています。

株主に対する配当政策は、経営の最重要課題の一つと認識し、長期的な視点に立って、財務体質の充実、競争力保持のため、内部留保の確保に意を用いつつ、配当性向を勘案して利益還元を図るとともに、安定した利益配当を維持することを基本方針といたしております。当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

当事業年度末の配当金につきましては、上記の方針に基づき1株につき9円50銭(年間では1株につき15円50銭)を実施いたしました。
(第59期 2008年3月31日期末日 有報)

また配当政策は、配当の顧客効果、すなわち自社の配当政策を好む特定の投資家層を株主(顧客)として選択している効果を勘案すると、簡単に配当政策を変更するのは困難です。

なぜなら、企業が急に配当政策を変更すれば、従来の配当政策を支持してきた株主は、自分の好む配当政策をおこなう他の企業の株式に乗り換える必要が生じるが、それにはコストがかかる上、予期せぬ株価の変動を引き起こす原因になりうるからである。
(「経営財務入門」井手正介・高橋文朗著 日本経済新聞社)

したがって増配をする場合にも1株配当の増加の幅は極力小さくし、株式分割を併せて行うことにより実質的な増配をアピールするという方法が好まれるのです。
この方法によれば、将来仮に利益水準が低下したとしても、減配をせず、株式併合により配当減資を減らすことができるというのも経営陣に好まれる理由の一つでしょう。

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なし

カテゴリー: 配当政策 タグ:

親子上場件数減少(2008年12月末時点)

「親子上場」が減少 経営効率化狙い完全子会社に

親会社と連結子会社とがともに上場する「親子上場」の件数が減っている。2008年12月末時点で399件と2008年3月末から13件減少した。親会社がグループ経営の効率化を狙って完全子会社にするケースが目立つ。
(日本経済新聞2009年1月21日16面)

【CFOならこう読む】

EVAの伝道師として有名なベネット・スチュワートが、自著『EVA創造の経営』の中で、子会社の部分公開は親会社の株主にとってデメリットが大きいと結論づけています。

その理由として次のものを挙げています。

①公開を維持するためのコストが重複
②親子会社間の取引の公平性の確保が難しい
③子会社独自の取締役会が必要になり少数株主の権利の尊重が必要
④親会社が直接ファイナンスする場合よりもコスト高になる場合が多い
⑤連結納税対象から外れる

米国では子会社の部分公開は少数の利用に止まり、優良大企業の間では子会社は100%所有するというのが大原則です。

今日の記事にあるように、日本では子会社の知名度向上や株式売却益などを目的に親子上場は1986年から2007年3月末はほぼ一貫して増えて来ました。

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「減少の背景には、利益相反を招く可能性があるとして、東証などが2007年秋に親会社と事業内容などが類似した主要子会社の上場を慎重に判断する方針を示したことがある。」(前掲紙)

東証は、2007年10月30日に、「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」で次のような方針を示しています。

「昨今、親会社と実質的に一体の子会社、若しくは中核的な子会社(親会社グループの企業価値の相当部分を占めるような子会社)の上場意向が散見されております。
このような中核的な子会社の子会社上場は、証券市場において実質的には新しい投資物件であるとは言えず、また、上場している親会社が企業グループの中核事業を担う子会社を上場させて新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えます。

このような状況から、例えば、事業ドメイン(事業目的・内容・地域等)が極めて類似している子会社や、親会社グループのビジネスモデルにおいて、非常に重要な役割を果たしている子会社、親会社グループの収益、経営資源の概ね半分を超える子会社などのいわゆる中核的な子会社の上場については各企業グループ、子会社の事業の特性、事業規模、過去の業績の状況、将来の収益見通し等を総合的に勘案しながら、慎重に判断していくことといたします。」

子会社公開は、親会社の資金調達を目的としている場合が多いと思われますが、子会社上場の際、高PERがつく場合、それは子会社の高成長性が評価されたもので、一般投資家は自己の資金がこの高成長事業に投入されることを期待して投資するのです。したがって親会社にキャッシュを横流しにするだけの子会社公開は、一般投資家との間で重大な利益相反が生じます。したがって事業ドメインが類似しているか否かに関わらず親子上場には問題があると私は思います。

【リンク】

2007年10月30日「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」株式会社東京証券取引所