ソニー、ストリンガー会長の社長兼務を発表 「成長戦略は若手に」
ソニーは27日、ハワード・ストリンガー会長兼CEOが社長を兼務し、中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOが副会長に就く人事を発表した。4月1日付で就任する。中核となるエレクトロニクス事業を中心に業績が悪化しており、同日都内のソニー本社で会見したストリンガー会長は「新たなイノベーションの創造とコスト改革が必要。その実現のための新体制だ」と語った。
(NIKKEI NET2009年2月28日)
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[東京 27日 ロイター] ソニー(6758.T: 株価, ニュース, レポート)は27日、ハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)が社長を兼務し、中鉢良治社長が副会長に退く首脳人事を発表した。4月1日付。
同社は世界的な経済危機の影響で2009年3月期(今期)に1500億円の当期赤字となる見通しで、経営建て直しの最中になる。ストリンガー会長は同日夕方に記者会見し「次のレイヤー(階層)を設ける必要はない」などと社長を兼務する理由を語り、中鉢氏の処遇は更迭色が強いことをにじませた。
だいぶ前の話ですが、文藝春秋2007年2月号に、中鉢氏と評論家の立花隆の対談が「ソニー神話を壊したのは誰だ」というタイトルで掲載されていました。
その中の「EVAが総ての元凶」と言う項で、中鉢氏は、大賀社長時代に導入した社内カンパニー制と、出井CEOが導入したEVA経営の弊害がソニーの業績を圧迫しているとして、経営改革について語っています。EVAの導入が研究開発投資の削減を促したと言うのがその理由です。
これを読んで、私はこの人は社長としての適正を欠いているのではないかと感じたのを覚えています。
EVAは、税引後利益 − 株主資本 × 資本コスト率と定義されます。
研究開発投資を縮小すると、株主資本も小さくて済むので、EVAは上昇する。だから、中鉢氏は、EVA導入により、研究開発の削減を促すのは必然であったと言うわけです。
しかし言うまでもなく、経営において重視すべき各指標は独立して存在している訳でなく、それぞれが複雑に絡み合っています。研究開発投資を削減すれば、中長期的に税引後利益が低下するのです。そうすればEVAも低下します。だから、EVAを業績評価の指標としても、マネージャーは単純に研究開発投資を削減するとは限らないのです。経営は複雑に絡み合う変数の相関を勘案しながら行う必要があるわけですが、EVAはこれを正しく行うための道具になり得るのです。
ところが中鉢氏には、このような経営者が最低限持ち合わせていなければいけないはずの常識を欠いていると私には思えたのです。
「一月に発表した固定費の削減など(リストラ策)の見通しがついたため、新しい成長戦略は新しいチームで再構築すべきだと判断した」と中鉢社長は退任の理由を説明したそうですが、固定費の削減はEVAを業績評価の指標としていた方が進んだのでは、と皮肉のひとつでも言いたくなります。
【リンク】
2009年2月27日「ソニーグループの機構改革および新経営体制について 」ソニー株式会社[PDF]
大型合併の審査を重視 独禁法改正案27日閣議決定
政府は談合やカルテル行為への罰則強化などを盛り込んだ独占禁止法の改正案を27日に閣議決定し、今国会に提出する。昨年の通常国会では成立せず、廃案になった経緯があり、今回は新たに大型の合併審査を重視する半面、中小企業の合併前の届け出を免除する内容も盛り込んだ。ただ焦点になっていた「審判制度」の見直しは政府・与党内で調整が付かず、2009年度に先送りすることにした。
(NIKKEI NET2009年2月27日)
【CFOならこう読む】
独占禁止法は、会社の株式の取得・所有、役員兼任、会社以外の者の株式の保有又は会社の合併、共同新設分割若しくは吸収分割若しくは事業譲受け等(以下これらを「企業結合」という。)が、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による企業結合が行われる場合には、これを禁止しています。
この禁止を実効あらしめるために、合併など場合に、一定の条件の下、届出を義務付けています。
今回の改正案の概要は以下の通りです。
○ 株式取得・企業結合等の届出基準を,以下の表のように見直し
○ 外国会社についても国内会社と同様の届出基準を適用
○ いわゆる叔父甥会社間の合併等同一企業グループ内の企業再編について,届出を免除
○ 株式取得の事前届出制の導入に伴う共同株式移転に係る届出規定の整備等
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現行法 |
改正法案 |
株式取得会社(買収会社) |
会社並びにその直接の国内の親会社及び子会社の総資産の合計額100億円超等 |
企業グループの国内売上高の合計額200億円超 |
株式発行会社(被買収会社) |
単体総資産10億円超(国内会社の場合) |
会社及びその子会社の国内売上高の合計額50億円超 |
株式取得の事前届出制が導入されていることに留意が必要です。
【リンク】
2009年2月26日「『私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案』の国会提出について」公正取引委員会
ローソン、am/pm買収を発表 店舗飽和、再編促す
コンビニエンスストア2位のローソンは25日、同7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収すると正式発表した。買収額は145億円。ローソンはam/pm親会社のレックス・ホールディングスから全株式を買い取り、来春をメドにam/pmを合併する見通し。コンビニの店舗網が飽和に近づくなか、大手が苦戦する中堅以下のチェーンを取り込む形で業界再編が進みそうだ。
(NIKKEI NET 2009年2月26日)
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スキームの概要は以下の通りです。
am/pmは運転資本等確保・財務体質の改善・資本増強を目的として、レックスHDへの55億円の第三者割当増資を実施。
第三者割当増資と併せて、レックスHDがam/pmを100%子会社とすることを条件として、ローソンが 本取得を実施する。
取得金額は、レックスHDによるam/pmへ55億円の第三者割当増資を前提に、第三者割当増資後am/pmの全株式を備忘価格、貸付債権を200億円と予定。
その結果、実質的な本取得金額は145億円となる。
平成21年2月25日(水) |
基本合意書締結 |
平成21年3月上旬(予定) |
株式及び債権譲渡契約締結、業務提携契約締結 |
平成21年3月下旬以降(予定) |
株式及び債権の取得期日 |
(2009年2月25日プレスリリースより)
この買収によりローソンはのれん90億円が発生するとしています。
(2009年2月25日公表資料より)
債務超過の会社を100%子会社化する場合、備忘価格での買収であってものれんが発生します。
上記公表資料によると、am/pmの2008年12月期見込み純資産は△139億円、増資55億円を前提にすると90億円ののれんはほぼ説明できます。
ところで、日本の会計基準では、こののれんは連結財務諸表上、均等償却しなければなりません。この処理は、ゼロで買ったものをマイナスの純資産価額まで評価減することと同じです。
これは債務超過の会社であっても、オプション価値があるので株式価値はマイナスになり得ない、というファイナンス理論の考え方と矛盾します。IFRSとのコンバージェンスの過程で、のれんは均等償却しない方向で日本の会計基準の改正があるものと思われます。
しかし、構造改革を急がなければいけない今の日本において、そんな悠長なことは言っていられません。行われるべきM&Aはどんどん行われなければいけないのです。債務超過ではあるが改善の可能性のある会社が、のれんの償却負担が生じることを理由に、買収されないようなことがあってはならないのです。
のれんの償却については、一刻も早いコンバージェンスが望まれます。
【リンク】
2009年2月25日「株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの子会社化に関する基本合意書締結に関するお知らせ」NIKKE NETプレスリリース
2009年2月25日「株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンに関する 基本合意書締結について」株式会社ローソン[PDF]
24日の東京市場で日経平均株価が大幅に続落、一時バブル崩壊後の最安値を下回ったことを受け、上場企業の経営者・財務担当者に緊急アンケートした。個人消費や設備投資の一段の減退など実体経済への悪影響や、有価証券評価損の拡大を懸念する声が多かった。政府に対しては早期の景気対策実施の要望が多く、「政治の安定」を求める意見も聞かれた。
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以下政策への要望の抜粋です。
有馬雄造 東ソー常務
雇用対策を含む景気対策が待ったなし
磯部任 アマダ取締役
具体性のある経済対策
市川晃 住友林取締役
対策に統一感がなく政治の混迷解消が必要
河添誠吾 マルハニチロ常務
株価対策より根本的な景気対策が必要
小島達成 浜ゴム専務
資金供給より政治の安定が最大の株価対策
杉内清信 新日鉱HD取締役
大規模かつ有効な景気対策の早期の実行
西尾進路 新日石社長
社債買い取りなど資金調達の潤滑化が必要
原田康彦 資生堂取締役
雇用安定などセーフティーネットの整備
広瀬博 住友化副社長
予算編成を早期に進め、景気対策を
古元良治
金融不安の抜本的解消策を素早く
景気対策を求める声がほとんどで、このブログで何度も指摘しているように、日本の輸出立国モデルが崩壊し、古い産業構造の存続がもはや不可能になっていることを認識している経営者は皆無です。
株価下落の理由が、日本経済の本質的問題に根ざしているものである以上、目先を取り繕うだけの対策に意味はありません。
今必要なのは、内需拡大と次世代を担う産業の育成です。
いずれも日本人だけで大きな成果を出すことは不可能です。
ヒト、モノ、カネを広く世界に求めるべきです。
目指すは経済大国ではなく、経済開国です。
【リンク】
なし
電機8社、自己資本13%減
電機・自動車大手の財務体力が低下している。二〇〇九年三月期に巨額の連結最終赤字を計上する企業が相次ぎ、株主から預かったおカネである自己資本が減少する。赤字の影響だけで、大手電機八社は一三%、赤字予想の自動車四社でも四%の自己資本が期初比で減少する計算だ。財務が傷むと社債発行などの資金調達が難しくなり、構造改革に必要な体力も乏しくなる。収益力の早期回復に加え資本増強へ向けた手だてが必要になる。
(日本経済新聞2009年2月24日9面)
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株安と円高が財務悪化に追い打ちを掛ける。保有株の価値減少や円高による海外資産の目減りをバランスシートに反映するためだ。期初に1兆円強あった東芝の自己資本は、2800億円の最終赤字などで期末には5000億円強とほぼ半分になりそうだ。
(中略)
自己資本の減少は経営の足かせとなる。最も影響が大きいのは資金調達だ。日立や東芝は赤字発表後に格付けを引き下げられた。格付けが下がると発行する社債などの信用が低下する。利率を高くするなど魅力を高めないと投資家は社債を購入しないため、調達コストが重くなる。銀行から資金を借り入れる際にも金利が上昇しやすい。
資本の毀損には、資本の増強で応えるしかありません。
ですが、普通株式の新規発行はダイリューション(希薄化)につながるため、株価への影響を考慮すると難しい面があります。
こういう場面では普通株への転換権が付されていないハイブリッド証券の発行を検討してみてはどうでしょう。
最近では東洋紡のケースが参考になると思います。
2009年2月17日記事「東洋紡 ハイブリッド証券で220億円調達」
【リンク】
なし
日本通運が計画している郵便事業会社との宅配便事業の統合で、2010年3月期に42億円の特別利益が発生することが分かった。統合新会社への資産の現物出資額と簿価との差額が利益計上される。ただ両社の事業価値の算定方法には専門家から疑問の声も上がっている。「かんぽの宿」譲渡問題が話題の日本郵政がからむ「分かりにくい」M&Aは、ここにもあった。
(日経ヴェリタス2009年2月23日14面)
【CFOならこう読む】
日本通運と郵便事業会社の宅配便統合の経緯は以下の通りです。
2007年10月 |
2008年10月めどに宅配便事業「ゆうパック」「ペリカン便」統合で合意 |
2008年4月 |
統合を2009年4月に合意 |
6月 |
事業統合のための新会社JPエクスプレス(JPEX)を折半出資で設立 |
8月 |
出資比率を郵便事業会社66%、日通34%に決定 |
2009年1月 |
統合方式の変更と完全統合の10月延期を発表 |
4月1日予定 |
日通がJPエクスプレス(JPEX)「ペリカン便」事業を分割
郵便事業会社がJPEXの増資引き受け |
9月末まで |
郵便事業会社がJPEXに「ゆうパック」事業を譲渡 |
10月1日予定 |
統合完了 |
(前掲紙)
まず日通が統合準備会社のJPEXに対して分社型吸収分割により宅配便事業を分割し、167億円のJPEX株が割り当てられます。同じタイミングで郵便事業会社がJPEXの増資を引き受けます。その後9月末までに郵便事業会社が「ゆうパック」事業を段階的に譲渡します。この譲渡は現金を対価に行われるものと思われます。
日通の宅配便事業は、設備や建物についてのみ時価評価される「修正純資産価格法」により167億円と評価されましたが、前掲紙は、事業評価がDCF法や市場株価法により行われなかったことについて批判しています。
そのことも問題ですが、昨年8月の株主間契約の本件統合比率がどのように決定されたか全く説明がなかったことがより問題であると私は思います。日通の宅配便事業の評価は、統合比率を規定事実とし、JPEXの資本金等500億円×1/3=167億円と逆算的に行われたと推察できるからです。
【リンク】
平成21年1月23日「郵便事業株式会社と日本通運株式会社の宅配便事業の統合等に関するお知らせ」日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、日本通運株式会社
平成20年8月28日「郵便事業株式会社と日本通運株式会社との宅配便事業統合に係る株主間契約の締結に関するお知らせ」日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、日本通運株式会社
トヨタが社債2000億円 26日、発行額2倍に
トヨタ自動車は総額2000億円の国内普通社債(SB)を26日に発行する。同社のSB発行は6年半ぶりであるうえ、高利回りにも投資家の需要が集まり、発行額は当初下限と見込んだ1000億円から倍増した。日銀による企業の資金繰り支援強化策なども追い風となり、社債発行環境が改善に向かう可能性もある。
(NIKKEI NET 2009年2月20日)
【CFOならこう読む】
「20日に発行条件が決まったのは5年物の1200億円と10年物の800億円の2本。格付投資情報センター(R&I)からは最上級「トリプルA」の格付けを取得した。10年物の利率は2.01%。国債利回りに対する上乗せ幅(スプレッド)が0.75%と高水準になったことから、大型起債の環境は依然厳しいことがうかがえる。」
(前掲紙)
「社債の流通利回りを見ると投資家のリスク回避姿勢はなお根強いことが鮮明だ。ダブルA格の企業でも国債との利回り格差が0.7%台と、2008年10月の0.3%程度に比べ倍以上に拡大。昨年10月からシングルA格の起債は神戸製綱所、KDDIの2件だけで、トリプルB格の起債は9月以降途絶えている。」
(日本経済新聞2008年2月21日12面)

日経新聞2009年2月21日 12面より
エクィティファイナンスが難しい中、社債だけが頼みの綱ということしょう。
【リンク】
なし
家電量販店 ポイント引当金 異なる会計処理
家電量販各社が販促用に発行するポイントの戦略が割れている。ヤマダ電機が顧客の囲い込みのため大量発行しポイント引当金が急増する一方、エディオンなどは引当金がほぼ横ばいで推移している。ポイント引当金の計上方法は企業ごとにばらつきがあり、業績への影響が見極めにくい。透明性を高めるべきだとの指摘もある。
(日本経済新聞2009年2月20日12面)
【CFOならこう読む】
「ポイント引当金ポイントは販促の一環として商品の購入額などの一定割合を利用者に還元する仕組み。引当金はポイントが使われるのを想定し積み立てる。貸借対照表の負債の項目に計上する。日本では会計処理の基準がなく、企業は企業会計原則に基づき処理する。企業間でポイントを融通できるサービスが拡大。項目を設けて計上する企業が増えている。」
(前掲紙)
各社の引当金の計上基準を以下に列挙します。
ヤマダ電機
当社及び当社と同様の事業を営む連結子会社は、将来の「ヤマダポイントカード」の使用による費用発生に備えるため、使用実績率に基づき翌連結会計年度以降に利用されると見込まれるポイントに対し見積額を計上しております。
エディオン
ポイントカード制度において、顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、連結会計年度末における将来見込み利用額を計上することとしております。
コジマ
顧客に付与したポイントの将来の利用に備えるため、当連結会計年度末における利用実績率に基づき将来利用されると見込まれる額を計上しております。
ベスト電器
顧客に付与されたポイントの使用による費用発生に備えるため、当連結会計年度末において将来使用されると見込まれる額を計上しております。
引当金の計上は、ポイントの使用見込み額を計上する方法と見込み額に原価率を掛けた額を引き当てる方法の2つがありますが、上記の各社の開示を見てもいずれを採用しているのか不明です。
金融庁の「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」(平成20年6月18日)の例示は後者を示しているのに対し、税務上は一定の要件のもと前者の処理を容認しており(法人税基本通達9-7-3)、どちらがスタンダードな方法であるか一概に言えません。
IFRSは、引当金を計上せず、ポイント相当分については、将来使用が見込まれる部分について、売上から控除するとともに繰延収益として負債に計上し、実際に利用した際に売上として認識する方法を採用しています(IFRIC13 「カスタマー・ロイヤリティ・プログラム」)。
「日本基準を国際基準と共通化すれば、一時的に売上高が急減し投資家が混乱する可能性もある」(前掲紙)
後者の方法を採用している会社は売上高だけでなく利益に与える影響も少なからずあると思われます。
【リンク】
「第31期 有価証券報告書」株式会社 ヤマダ電機[PDF]
「第7期 有価証券報告書」株式会社エディオン[PDF]
「有価証券報告書」株式会社コジマ
「IR情報」株式会社ベスト電器
平成20年6月18日「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」金融庁
サッポロHD株が大幅安 スティールの買収提案撤回で
サッポロホールディングスの株価が18日、一時前日比8.9%安と急落した。米投資ファンドのスティール・パートナーズが株式の買い増し提案を断念すると発表したのを受け、株式の追加取得期待がはげ落ちたためとみられる。3月の定時株主総会に向け株価は引き続き波乱含みだ。
(日本経済新聞2009年2月19日13面)
【CFOならこう読む】
「終値は31円(8.1%)安の350円だった。市場では買収提案を撤回され、「経営者に対する投資家からのチェックが弱まる」(大手投資顧問)という見方が出ていた。
(前掲紙)
スティールによる経営へのプレッシャーがサッポロの価値創造に資すると考える人が、価値破壊に繋がると考える人より多かったということでしょう。
特別委及び取締役会の言うように、スティールの「買収案は企業価値棄損の恐れ大」であると多くの株主が思っているのなら、スティールの買い増し断念を受け株価は上昇すると考えられます。
定時株主総会では多数の株主が現経営陣の再任に反対票を投ずることを期待します。
【リンク】
なし
米スティール:対サッポロHD株、買い増し提案撤回
米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパンは17日、同社が筆頭株主のサッポロホールディングス(HD)に対する株式の買い増し提案を撤回すると発表した。交渉が難航していることに加え、株価下落で買い取り提案価格との価格差が広がっていることなどが理由。保有するサッポロ株は売却しない方針で、3月27日開催のサッポロの定時株主総会で取締役の再任に反対票を投じる意向も明らかにした。
毎日.jp 2009年2月17日
【CFOならこう読む】
これまでのサッポロとスティールの買収提案を巡る攻防の経緯は次の通りです。
2007年2月 |
スティールがサッポロに買収を提案 |
2007年3月 |
サッポロが定時株主総会で新・買収防衛策を可決 |
2007年11月 |
スティールが企業価値向上への「提言」を提出 |
2008年1月 |
サッポロがこの問題対応の特別委員会に買収提案評価を諮問 |
2008年2月 |
特別委が意見書、「買収案は企業価値棄損の恐れ大」
サッポロ取締役会が反対表明 |
2008年3月 |
スティールが修正した提案を送付
サッポロがスティールと協議入り |
2009年2月 |
スティールが買い増しを断念 |
(日本経済新聞2009年2月18日13面)
スティールは、買い増し断念の理由を次のように説明しています。
提案撤回の主な理由は、同社の業績が悪化の一途を辿っていることと、同社が買付提案の内容を株主に受け入れられるようなものにするための交渉を依然として拒否していることです。
サッポロ株式の昨日終値は381円とTOB価格825円を50%以上下回っており、もはやこの条件で買収提案を継続できないとの判断もあったのではないかと推察されます。
いずれにしても行われるべき買収が行われないのは、経営者に対する規律という意味からも価値創造という意味からも望ましくありません。
このブログでも何度も取り上げているように、日本経済は大きな構造転換を必要とする時期に直面しています。そこで必要とされるヒト、モノ、カネは世界に広く求めるべきです。
しかし経営者が株主を選択できる今の仕組みのもとでは、既得権益の確保が最優先とされ、行われるべき経営権の移動が行われません。特に外資に対しては交渉の場すら与えられないケースが少なくありません。
私はいま日本は真に開国すべきときに来ていると思います。
そしてそれしか長期的に雇用を確保する手立てはないと思っています。
【リンク】
2009年2月17日「スティール・パートナーズ・ジャパン、サッポロの長引く業績悪化と交渉拒否のため、株式33.3%買付け提案を撤回」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー
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