☆臨時ニュース☆ 「旬刊 経理情報」に寄稿しました。
旬刊経理情報(中央経済社) 2009年11月10日号(本日発売)に僕の論稿が掲載されています。
タイトルは、「GC注記制度の改正で開示企業が大幅増加! 財務制限条項の開示分析」です。
書店でも手に入りますので、ぜひ読んでみてください。
旬刊経理情報(中央経済社) 2009年11月10日号(本日発売)に僕の論稿が掲載されています。
タイトルは、「GC注記制度の改正で開示企業が大幅増加! 財務制限条項の開示分析」です。
書店でも手に入りますので、ぜひ読んでみてください。
日本製紙グループ本社と北越紀州製紙は30日、資本提携を解消すると発表した。日本製紙が保有していた北越の株式8.06%を同日付で北越に売却した。売却額は約87億円。両社は2006年、王子製紙が北越に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたのを機に提携した。業界を取り巻く情勢が変わり、資本提携を続ける意味が薄れたとしている。
(日本経済新聞2009年10月31日11面)
「日本製紙グループ本社と北越紀州製紙は30日、資本提携を解消すると発表した。日本製紙が保有していた北越の株式8.06%を同日付で北越に売却した。売却額は約87億円。両社は2006年、王子製紙が北越に敵対的TOBを仕掛けたのを機に提携した。業界を取り巻く情勢が変わり、資本提携を続ける意味が薄れたとしている。
日本製紙は2006年8月に北越株を約150億円で取得。その後、同年12月には印刷用紙のOEM供給や資材共同調達などの業務提携を結び、関係を強化した。両社は資本提携解消後も業務提携は続ける。」
(前掲紙)
日本製紙による北越製紙株式取得は、王子のTOB阻止のために行われたもので、そこにどれだけの経済合理性があるのか良くわからない取引でした。
その後、日本製紙は北越製紙株式を塩漬けにしていましたが、2009年3月期に減損処理(半額程度か?)するに至り、今般、北越株式売却を決めました。
新聞記事によると、日本製紙側で50億円程度のコスト削減効果があったとのことですが、それが本当だとしても売却損を上回るものではありません。この辺りの責任を問う声が聞こえてこないのが不思議です。
一方、北越製紙としても資金調達の必要があり三菱商事に対する第三者割当増資を行ったことと、今回の自己株式取得をどう整合的に説明するのかぜひ伺いたいところです。
ところで今回の件はもうひとつ指摘しなければいけない事があります。
「平成21年10月1日付の北越製紙と紀州製紙株式会社との株式交換を機に、当社子会社である日本製紙は、北越製紙との間で締結した平成18年12月1日付戦略的業務提携契約に基づく提携関係につき、検討を行って参りましたが、両社の提携関係は、相互の提携効果発現とともに成熟してきており、今後、株式の保有を継続しなくとも、提携の有効性と継続が十分に確保できるものと判断するに至りました。そのため、今般、この判断を提携両社で共有するとともに、保有株式数を上記のように変更することといたしました。
なお、日本製紙が保有していた北越紀州製紙株式の処分につきましては、市場売却等の方策も考えられますが、株式が短期間に市場に放出された場合の影響等を考慮し、前述の株式交換における会社法第797条に基づく株式買取請求の手続を通じて行うことといたします。 」
(「『当社子会社による北越製紙株式会社の株式取得』に関する開示事項の変更について」株式会社日本製紙グループ本社[PDF])
反対株主に株式買取請求権が認められているのは、「会社の基礎の変更等の行為に反対する株主が会社に対し自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することにより、投下資本の回収を図る」(「株式会社法」 江頭憲治郎 有斐閣)ことを可能とする点にあります。
株式買取請求は、税制の取扱い等の有利・不利に従い選択可能なひとつのスキームというわけでは決してありません。
2009年10月30日「日本製紙保有の株式買取と自己株式の消却並びに今後の業務提携継続に関するお知らせ」北越紀州製紙株式会社[PDF]
JVC・ケンウッド・ホールディングスの河原春郎会長兼社長は29日の決算会見で「ビクターの業績が回復すれば来年あたりには合併したい」と述べ、持株会社のJVCケンウッドに事業会社の日本ビクターやケンウッドが連なる現在の体制を見直し、1社に合併させる意向を表明した。2008年10月の経営統合後も業績低迷が続いており、合併で意思決定を迅速化し構造改革を加速する。
(日本経済新聞2009年10月30日13面)
日本の経営統合は共同持株会社を設立し、その下に事業会社をそのままぶら下げるという形をとるケースが多く、ケンウッドとビクターもこの形です。
こうすれば、統合前と後で人事制度等を慌てて同一にしなくてすみますし、ステークホルダーとの関係も変えなくてすみます。しかしこれをいつまでも続けることは非常に困難です。統合効果は完全にひとつになることで実現することができるからです。
M&Aには売り手と買い手がいます。
売り手の経営者は自分達が売り手であるということを明らかにすることを嫌います。経営統合というよくわからない表現もそんなニーズに合致しています。しかし、買い手は完全にひとつになることを望みます。だからこの形で統合しても、間もなくこれではこれではうまくいかないので、完全にひとつになりましょうということになるのです。
「11月1日付でビクターの吉田秀俊社長を持株会社の取締役社長補佐に異動させ、河原会長がビクターの社長業務担う人事も発表した。ビクター社長は空席になる。河原社長が自らビクターの指揮を執り、合併への準備を進めると見られる」
(前掲紙)
こういう人事をM&A後すぐに行うということであれば、なかなかM&Aは実現しません。どうしてもワンクッションおく必要があるのです。この時間は無駄と言えば無駄ですが、今のところどうしても必要な時間であると言うこともできるのです。
平成20年5月12日 「日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドとの 共同持株会社設立(株式移転)による経営統合について」日本ビクター株式会社[PDF]
−新政権に求めることは。「日本がもの作りだけでリードできる時代はもうすぐ終わる。米国の競争力の源泉は世界の頭脳を輸入している点にある。日本もいろんな人の知恵を集めて面白いサービスを作る枠組みを整えるべきだ。会計や商法などを国際基準に会わせる必要もある。」
(日本経済新聞2009年10月29日11面)
ちょっと違う気がします。輸入したくても、閉鎖的な日本という国にどれだけの才能を集めることができるか、はなはだ疑問です。
米国にしろ中国にしろインドにしろ他にはない秀でた部分があるから多くの企業が出ていくのです。
日本が世界の頭脳を呼び込むのは、日本人が彼らにとって魅力的でなくてはできません。日本人にはポテンシャルがあるのに、それをうまくアピールできていないように思います。
日本がもの作りだけでリードできない、というのもミスリードを誘う表現です。確かに組み立て作業で生きていくのは難しいかも知れませんが、例えば研究開発という分野で生きていくことは十分に可能です。
会計や商法といったインフラは重要ですが、それが世界標準だからといって世界の頭脳を集められるわけではありません。
むしろ会計や商法は言語と同様その国の特性の一つを形作るもので、重要なことは他国との間の差異がきちんと示されていることだと思うのです(そのためにはコンバージェンスできる部分はしっかりやることが必要です)。
亀井静香金融担当相が、10月9日の会見で、IFRS導入に向けた金融庁の中間報告(任意適用は2010年3月から、強制適用は2012年をメドに決める)について、そんなことはやらないと言い放ちました。
「国々にはそれぞれの営みがある。会社経営も、それに合った形でやればいい話だ。今でも米国とか欧州はそうだろう。違うのはある面で仕方がないことだ。日本だってそう。日本の経営は、やはり日本の実態に合った形で、会計基準も適用していくべきだ。」
(週刊エコノミスト 2009年11月3日特大号)
はじめて亀井先生と意見が合いました(笑)。
なし
市場での長期国債の増発が2009年度に最大8兆円にのぼる見通しになった。税収の落ち込みが6兆円にのぼることに加え、個人向けの国債販売が予定を約2兆円も下回るためだ。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは27日、約2ヶ月半ぶりに1.4%台に上昇。歯止めのかからない財政拡大とそれに伴う国債発行の急増が、長期金利に上昇圧力をかけている。
(日本経済新聞2009年10月28日3面)
この金利上昇は、鳩山政権の財政運営に対する不安感を映す”悪い金利上昇”なのか、それとも景気改善への期待感からくる”良い金利上昇”なのか、市場の見方は分かれているようです。
私はエコノミストではないので、はっきりしたことは言えませんが、”良い金利上昇”ではないように思います。日本の場合、経済回復や株価上昇の先行指標として長期金利が上昇するケースが多いのですが、右側サイドバーにあるマーケット情報のグラフをご覧になって頂ければわかるように、ここ最近日経平均と長期金利の間にはっきりとした相関が見られません。
「市場では、中期的な財政再建の目標がないことへの不安感もくすぶっている。民主党が年末に設定するとしていた政府債務残高のGDP比率など財政再建の中期目標の設定も先送りの公算が大きい。市場では「景気回復期待による『良い金利上昇』ではない」(国内証券)との見方が広がっており、長期金利の先高感が強まっている。」(前掲紙)
この見方が正しいように私には思えます。
なし
米国人初のノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソン教授は、先月の筆者との対談で、「94歳まで長生きをして2つ良いことを見た。ひとつはオバマ政権の誕生とケインズ主義の復活、もうひとつはオバマ政権の誕生とケインズ主義の復活、もうひとつは日本の政権交代だ」と語った。また「フリードマンが数年前に亡くなり、ケインズ主義の復活を見せられなかったのは残念だ」と続けた。
(日本経済新聞2009年10月27日29面 経済教室 佐藤隆三)
「温かい心を持つ資本主義とは、社会主義とは根本的に異なる。限られた資源を効率配分し、公正に分配するベースはあくまで市場での競争にある。ただそこで敗れた人をどのように救済するかが重視される」(前掲)
全くその通りだと思います。そして米国が冷酷な資本主義に行き過ぎていたのも事実だと思います。しかし日本は米国とは事情が全く異なります。日本経済の最大の問題点は、政官財癒着とそこから生じる利権の構造が、「限られた資源を効率配分し、公正に分配するベ市場での競争」が阻害されている点にあります。
経済学者やエコノミストは、時の権力者にいいように利用されないように、細心の注意を払うべきだと思います。政治に関わるのなら、竹中さんのように政権の中に入り、四方八方から滅多打ちにあう覚悟でやるべきです。
亀井静香氏が、不良債権問題の頃に、リチャード・クーさんのことを「クーちゃん」と呼ぶのをTVで見て、背筋が寒くなったのを覚えています。
なし
MBO(経営陣による買収)に伴う株式の買い取り価格の決定について、透明性や説明責任を問う動きが強まっている。経営者が買収者となるMBOは買い取り価格を巡り株主ともめやすい。歯磨き製品大手サンスターによるTOB(株式公開買い付け)に、価格を不満として応じなかった個人株主が価格決定を申し立てた事件で、大阪高裁は9月、買い取り価格を上げる決定を下した。MBOの対価の公正性が初めて法廷で争われたレックス・ホールディングスの事件よりも経営陣に透明性を厳しく求めている。
(日本経済新聞2009年10月26日16面)
本件については、僕のブログでも以前に取り上げました(2009年9月9日「サンスターMBO裁判」)。大阪高裁はサンスター側の許可抗告に対し9月28日に不許可を決定し、買取価格は地裁決定の650円から3割程度高い840円に定まりました。
レックス・ホールディングス事件における高裁及び最高裁決定では、MBO公表日前日までの直近1ヶ月の終値単純平均に13.9%をプレミアムを付したTOB価格を支持した地裁の決定を覆し、MBO公表日直前に業績の下方修正を行ったことが、株価を下方に誘導する意図のもと行われたことは否定できないとして、単純平均する期間を直近半年と長めにとった上、本件に近接した時期に行われたMBOの事例を参考に20%のプレミアムが妥当であるとしてこれを付加した価格を公正な価格としました。
サンスター事件では地裁はTOB価格(2007年2月のMBO公表日前日から過去6ヶ月間の平均株価に19%を付した価格)を支持したのに対し、高裁決定は、サンスターの株価がTOBの1年前から相場の流れとかけ離れて下落した点を重視したものになりました。
「会社がMBO公表の3ヶ月前に発表した業績下方修正について「株価の安値誘導」を画策する工作の一つではないかと疑問を呈した。その上でTOBの発表時よりも1年前の株価に近似する700円までさかのぼって基準とした」(前掲紙)
事例の性質ごとに基準とすべき株価は個別に判断すべきという司法の判断は理解できますが、実務上これに対応するのは困難です。
英国のように1年内の最高値を下回ってはいけない、と法律で規定するのが良いように僕は思います。
DWTIの株式上場の概要は次の通りです。
DWTIは、1999年設立、医薬品の研究開発を行い、一定段階(現在のところ非臨床試験に到達する前の段階を基準)に到達した開発品を製薬会社等にライセンスアウトを実施することによって収益を獲得する創薬事業を展開している会社です。
公募価格は290円、初値315円という水準での株式公開となりました。
DWTIの主な資本政策は (表2)の通りです。
典型的なVC型の会社で、マイルストーンがあらかじめ設定されていて、マイルストーンに従い増資が行われているように推察されます。ただし、2008年7月の増資に関しては、その直前の発行価格800円(希薄化考慮後)に対し250円と大きく価値を下げており、想定外であったと思われます。
代表取締役社長の日高氏は前社長若狭壮行氏逝去を受けて2008年12月26日に常務取締役総務管理部長から社長に就任したもので、それにしてはご自身と親族保有分を合わせて50%超の株式を保有しており、若干奇異な印象を受けます。
公開直前の株式の移動がないことから、事業承継が相当以前に完了していたのかもしれません。従業員のインセンティブはストックオプション及び現物株によっています。従業員持株会は設立されていません。
新興企業が市場からの資金調達で意識改革を迫られている。新興株相場の低迷長期化や取引所による規制強化で、株式上場時の公募増資で多額の資金を調達することが難しくなっているからだ。企業は成長ステージに応じて必要な額を、その都度調達することが求められそうだ。
意識改革を迫るきっかけになりそうなのが、東京証券取引所が来月にもマザーズに導入する新上場廃止基準だ。上場時の公募・売出価格である公開価格を基準に設定。上場後3年以内に、株価が基準の1割未満の状況が9ヶ月間続けば「公開価格が適正でなかった」(東証)として原則、上場を廃止にする。
(日本経済新聞2009年10月23日14面)
東証が8月25日に公表した、「マザーズの信頼性向上のための上場制度の整備について」の中に、この新しい上場廃止基準について記載があります。
「(内容)
・マザーズの上場会社の株価が、上場後3年を経過するまでの間に公開価格の1割未満となった場合において、9か月(事業改善計画等の提出がない場合は、3か月)以内に、公開価格の1割以上に回復しないときは、その上場を廃止することとしま す。ただし、上場後の市況の変化その他の事情を勘案して当取引所がこの基準によることが適当でないと認めたときは、この限りではありません。
(備考)
・「公開価格の1割未満となった場合」とは、終値によって算出した、1か月間の平均株価又は月末時点の株価が公開価格の1割に満たない場合とします。
・「公開価格の1割以上に回復しないとき」とは、終値によって算出した、1か月間における平均株価及び月末時点の株価が公開価格の1割以上とならないときとします。
・上場後に株式分割、株式併合等が行われた場合には、公開価格について、その影響を勘案した修正を行います。」
「新基準の背景には公開価格が企業の実力以上に高いことが、上場後の株価急落が多いことの一因という東証の見方がある。松崎裕之上場部長は「上場前の関係者の利害だけで公開価格が決まるのは問題だ」と話す。公開価格を適正水準に導き、投資家を保護する狙いだ。」(前掲紙)
それ以外にも、既存株主の価値を毀損するような大きなダイリューションを伴う資金調達が行えなくなるという効果も期待できます。
ただし上場時に創業者利得を獲得してしまえば、後は野となれ山となれというオーナー経営者に対してはあまり有効でないかも知れませんね。
なお新基準の適用対象は、施行日以降に新規上場する会社からになるようです。
日本航空の経営再建問題で、前原誠司国土交通相が週内にも藤井裕久財務相に公的資金注入などによる支援を要請する見通しとなった。公的資金と民間分を合わせた資本増強や債権放棄と債務の株式化で5500億円の金融支援を実施。今後は年金債務の削減などを実行できるかが焦点となる。
(日本経済新聞2009年10月22日1面)
日航の作業部会による再建修正案は次の通りです。
1.実質債務超過額(存続価値ベース) 最大2700億円
2.資本増強 公的資金注入を含め3000億円
3.金融機関による債権放棄 2200億円
4.債務の株式化 300億円
5.つなぎ融資 2000億円
6.2014年度の営業利益 500億円~700億円
7.14年度の売上高 1兆2000億円
8.人員削減 9000人弱
9.年金債務の削減 支給額半額で積み立て不足を3300億円から1000億円にOBへの一時金一括払い
(前掲紙)
清算価値ベースでの債務超過額6000億円に対し存続価値ベースでの債務超過額は2700億円なので、国民負担を考えると公的資金を注入しても存続させるべし、というのが再建修正案の骨子です。
しかしこれは瞞しです。通常再生案件で真っ先に検討される、”スポンサーに売却”するという案が抜け落ちているからです。外資も含めスポンサーを探すという選択肢が最初から除外されている理由が分かりません(全日空との合併案、デルタとの資本提携案は検討されたようですが、そういう次元の話ではありません)。
だいたい株主責任は問われず、金融機関だけが債権放棄に応じる道理はないでしょう。
なし
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