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2009 年 12 月 のアーカイブ

企業の目的は顧客創造-ドラッカー

・「企業の目的は利益追求」と決めつけるな
・利益以外の目的掲げ、チェックを怠るな
・成長機会、見つけるのではなく自らつくれ

(日本経済新聞2009年12月30 日23面 経済教室)

【CFOならこう読む】

これだけ的外れなことを言えるのは実社会を知らないからなのでしょうか?

「バブル崩壊以降、投資家志向の会社統治制度の改革が行われ、上場企業の経営者は、熱心に利益を追求せざるをえなくなったが、その結果、かえって利益は得られなくなった」(前掲稿)

そうではないでしょう。

戦後焼け野原からスタートした日本にとって最も重要であったの は、日本人が皆食って行くこと、すなわち雇用の確保でした。この大命題のもと政官財一体となり見事な経済復興を遂げたのです。

そこでの企業の目的は、社員の胃袋を満たすことにあったのです。当時の日本企業の姿は例えばこんなものでした。

「日本企業は平均して総資産の80%にも及び額を銀行から借り入れている。しかもこのうちかなりの部分が低金利のいわゆる短期もので、3ヶ月なり6ヶ月ご とにレートを変えてゆく。
したがって、名目上は短期借入金なのだが、実際には、設備投資などに回したりして長期借入金的挙動をするものも少なくなく、さらにいえば、資金がだぶついたからといって、簡単に銀行に返済するなどというわけにもゆかぬしろものである」
(「企業参謀」(大前研一著 プレジデント社))

銀行は大蔵省の出先機関のようなものでしたから、企業は低コストの資金を容易に調達することが出来ました。

そんな時代に株主資本コストを云々する必要はありませんでした。

このような戦後の日本経済の仕組みは成長が止まるとともに徐々に綻び始め、バブル崩壊とともに立ち行かなくなったのです。

大きなパラダイムシフトが起きました。

ところがバブル崩壊から日本人はパラダイムシフトにうまく適応できていません。

日本を代表する経営学者にして、「投資家志向の会社統治制度の改革が行われ、上場企業の経営者は熱心に利益を追求せざるをえなくなった」そしてそれが「日本企業を大きく痛めつけてしまった」という程度の認識です。

派遣の問題にしても、銀行の貸し渋りの問題にしても、企業統治の問題にしても、パラダイムシフトから生じているのです。決して小泉・竹中に責任をなすりつけて済むような問題ではありません。

日本企業が「顧客の創造」を最重視しなければならないという点については異論はありません。

「顧客の創造」とは、「企業は、自分たちが何を売りたいかよりも、まずお客様が何を求めているかを考え、お客様にとって付加価値のある商品を提供すべきである、ということを意味している。洋服屋は質の高い洋服を売り、青果店は安くて新鮮な野菜や果物を売る。それぞれの事業を通じて、社会や人に貢献するからこそ、企業はその存在が許されているのだ」(「成功は1日で 捨て去れ」(柳井正著 新潮社))

つまり「顧客の創造」ができない「企業」や「企業人」はそこから退出せざるをえないのです。

ところが日本という国は「退出」して再度「参入」するということが容易にできません。
これも「雇用の維持」が大命題だった時代から転換できていないため生じている大きな問題です。

資金調達についても事情は大きく変わっています。銀行がリスクマネーを提供できない以上、資金は市場から調達するしかありません。資本のコストはただではありません。資本コストを賄うだけの利益を生まない企業は存続できないのです。

「市場」や「利益」が何より重要だと言っているのではありません。パラダイム変換が起きているにも関わらず、今までのようにこれらを軽視し続けることはできないと言いたいのです。

米国の投資家資本主義の時代の失敗を、今の日本で強調する意義はほとんどないと私は考えています。

むしろ「利益」や「株主価値」の重要性を訴え、ヒト、モノ、カネが自由に動く社会を構築することに繋げる方がよほど大切だと思っています。

いずれにしても、このブログで応援しているCFOは難しい局面に立っていることは間違いありません。どちらを向いて仕事をすれば良いか迷っている方も多くいらっしゃ ると思います。

多くのCFOと悩みを共有し、共に解決策を探りたい、そんな思いでカンファレンスの開催を思い立ちました。

今年は諸々の事情で開催を見送りましたが、来年2月25日に開催しようと現在準備を進めています。

テーマも大きく変更し、「日本企業におけるCFOの仕事とは?」とする予定です。
詳細については現在詰めているところですが、ご意見・ご要望・アイディア等があればお知らせください。

ブログの更新は今年はこれで終わりにします。
新年は1月4日からスタートします。

それでは皆様良いお年を!!

【リンク】

なし

2010年税制大綱 – グループ法人間の譲渡損益の繰延べ

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
NIKKEI NET 2009年12月22日

【CFOならこう読む】

今般の税制大綱ではグループに係る税制の導入が予定されています。これにより100%グループ法人間での資産移転の際の譲渡損益 を繰り延べることになります。

具体的には次の通りです。

「イ 100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等
(イ) 連結法人間取引の損益の調整制度を改組 し、100%グループ内の内国法人間で一定の資産の移転(非適格合併による移転を含みます。)を行ったことにより生ずる譲渡損益を、その資産のそのグループ外への移転等の時に、その移転を行った法人において計上する制度とします。これに伴い、適格事後設立制度を廃止します。
(注)100%グループ内の法人とは、完全支配関係(原則として、発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係)のある法人をいいます。
(ロ) 100%グループ内の法人間の非適格株式交換等を、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度の対象から除外します。
(注)合併等の対価として一定の外国親法人株式が交付されるものを除きます。」

これにより例えば利益を生んでいる資産を黒字会社から赤字会社に移転させることにより、連結納税を導入しなくても損益通算することが可能になります。

上場会社の場合、資産の移動は時価で行われると考えられますが、譲渡側では譲渡損益を繰延べ、譲受側では簿価を引き継いで減価償却を行うようになるものと思われます。

資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会 論点のとりまとめ(「資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会 論点とりまとめ」[PDF])では、譲渡損益調整資産の範囲を連結納税制度と同様(固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産(売買目的有価証券、帳簿価額1,000万 円に満たない資産を除く))とすることも考えられるとの記載がありましたが、今般の税制大綱からはこの記載が削除されています。

今後この点は検討されるものと思われます。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

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2010年税制大綱 – みなし配当の際の譲渡損益

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
NIKKEI NET 2009年12月22日

【CFOならこう読む】

問題が多いとされていたみなし配当の際の譲渡損益について次の改正が予定されています。

「(イ) 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しないこととします。(再掲)
(ロ) 自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含みます。)を適用しないこととします。
(ハ) 抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととします。」

上記はすべて課税の繰延べではない点に留意が必要です。

(ロ) については次のような事例を塞ぐことを目的としているものと思われます。

「オーナーが株式の一部を現金化したいという時に、自己株式として直接買い取ってもらった場合、個人は配当課税の対象となります。ところが、配当課税よりも譲渡所得課税のほうが、所得税は有利な仕組みとなっているんですね。そのために、法人をワンクッション噛ませて、個人が法人に譲渡し、譲渡した先の法人がさらにそれを自己株式として買い取ってもらえば、買い取った法人はさらに受取配当等の益金不算入制度などのメリットが取れるため、オーナーも会社も有利になるというのもあります」
(週刊税務通信 平成21年12月7日 24頁)

資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会  論点のとりまとめ(「資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会 論点とりまとめ」[PDF])では次のように記載されていました。

「抱合せ株式(合併法人が保有する被合併法人株式)については、非適格合併の場合も、譲渡損益を認識しないことが考えられる。 」

若干表現が変わっていますが、趣旨は勉強会と同様です。

TOBにより子会社化し、その後少し時間をおいて、現金対価の合併により少数株主をフリーズアウトすれば、これは当然非適格合併になります。このとき、みなし配当とそれとほぼ同額の株式譲渡損が計上され、みなし配当は益金不算入であるなら、株式譲渡損の分だけ節税メリットがとれることになります。

この改正が国会を通れば、今後このようなスキームは塞がれることになります。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

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2010年税制大綱 – 100%グループ内の内国法人間の現物配当も譲渡損益繰延

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
NIKKEI NET 2009年12月22日

【CFOならこう読む】

100%グループ内の法人間の資本関連取引について次の改正が予定されています。

「(イ) 100%グループ内の内国法人間の現物配当(みなし配当を含みます。)について、組織再編税制の一環として位置づけ、譲渡損益の計上を繰り延べる等の措置を講じます。この場合、源泉徴収等を行わないこととします。
(ロ) 100%グループ内の内国法人からの受取配当について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除を適用しないこととします。
(ハ) 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しないこととします。
(ニ) いわゆる無対価組織再編成について、その処理の方法等を明確化します。」

(イ)についてはこの改正 により、例えば子会社が孫会社株式を親会社に配当することにより、孫会社を子会社化することが可能になります。従来は時価評価して差損益を認識してから配当する必要がありましたが、この改正によりこれが繰り延べられます。

(ロ) は受取配当金の負債利子控除を適用しないということです。負債利子控除の規定は課税所得を借入により株式投資することにより非課税所得に変換するというスキームを塞ぐ趣旨で設けられたということを読んだことがありますが、今の時代借入するのも容易ではなく、規定を設ける意味があまりなくなったということなのかも知れません。

(ハ) については、この改正により減資をして欠損を補填するというようなことがやりやすくなることが考えられます。

(ニ) については、分割型分割で新株の交付を行わない場合の課税の取扱いが法令上規定されておらず、国税庁のウェブサイトで株式の交付はしなくても株主間で利益移転等が無い場合には、株式の交付を省略したものという位置づけで適格分割型分割に該当すると解して差し支えないと整理されています(「吸収分割に当たり、分割承継法人から分割法人に株式の割当てを行わない場合の適格判定(分割型分割)」国税庁)。

これを法令上も手当てしようという趣旨であろうと思われます。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

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2010年税制大綱 – 中小企業向け特例措置の大法人の100%子法人に対する適用

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
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NIKKEI NET 2009年12月22日

【CFOならこう読む】

大法人傘下の子法人については、その子法人の資本金等の額に関係なく特例措置の適用を認めないようにするということです。

「資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る次の制度については、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等の100%子法人には適用しないこととします。
(イ) 軽減税率
(ロ) 特定同族会社の特別税率の不適用
(ハ) 貸倒引当金の法定繰入率
(ニ) 交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
(ホ) 欠損金の繰戻しによる還付制度 」

もともとこの特例措置は中小企業のために設けられたものですから、大企業傘下の会社にこれを適用できるのはおかしい、という意見はあちこちから聞かれていました。

ただし100%子法人に限定すると、99%や95%の子会社が次々と誕生するように思います。
連結納税制度も含めて100%に限定するというのは無理があると、私は思います。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

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2010年税制大綱 – 連結納税編

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
NIKKEI NET  2009年12月22日

【CFOならこう読む】

法人課税に関しては、グループ内取引等に係る税制、資本に関係する取引等に係る税制が取り上げられています。グループ内取引等に係る税制の中には連結納税制度の見直しが含まれています。

「(イ) 連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人のその開始又は加入前に生じた欠損金額を、その個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に追加します。
(ロ) 連結納税の承認申請書の提出期限について、その適用しようとする事業年度開始の日の3月前の日(現行6月前の日)とします。
(ハ) 事業年度の中途で連結親法人との間に完全支配関係が生じた場合の連結納税の承認の効力発生日の特例制度について、加入法人のその完全支配関係が生じた日(加入日)以後最初の月次決算日の翌日を効力発生日とすることができる制度に改組します。
(ニ) 連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、その開始又は加入後2月以内に連結グループから離脱する法人の有する資産を時価評価の対象から除外します。」

(イ) は19日に説明したようにSRLYルール(連結子法人の繰越欠損金のうち、連結加入前の事業年度において生じた欠損金について、その子会社の所得金額を上限に持ち込むことができる制度)を導入するということです。子法人の繰越欠損金をグループ全体で利用できるのと比べるとメリットは小さいと言えます。

(イ)を除き、2010年10月1日から適用となる旨記載があることにご留意下さい。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]

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優先出資証券による資金調達

負債と資本の中間的な性質を持つ「優先出資証券」で資金を調達する企業がじわりと増えている。昨年秋以降、東武鉄道、東洋紡、昭和電工が発行。負債が増えず、格付け会社が一定比率を資本とみなす利点がある。1株利益の希薄化を抑えられる財務基盤強化策としても注目されている。
(日本経済新聞2009年12月22日1面)

【CFOならこう読む】

「「公募増資だけでは必要な資金確保は難しかった」。今年10月に公募増資と優先出資証券で合計約600億円を調達した昭和電工の野村一郎取締役は振り返る。
調達額のうち240億円は優先出資証券で対応。すべて公募増資で賄えば、発行済株式数が増え、株価への影響が懸念される。優先出資証券は渡りに船だった。」(前掲紙)

当ブログでは、東武鉄道の優先出資証券については

2008年9月26日「東武のハイブリッド証券」

東洋紡の優先出資証券については

2009年2月17日「東洋紡 ハイブリッド証券で220億円調達」

で取り上げています。

昭和電工の優先出資証券のスキームは次の通りです。

「新株式発行及び株式売出し並びに第三者割当による 2014 年満期ユーロ円建 転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的 子会社によるユーロ円建交換権付永久優先出資証券の発行に関するお知らせ」15ページより

1.会社は、海外特別目的子会社であるSD 社を割当先として本新株予約権付社債総額240億円を発行し、SD社は、株式会社みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行株式会社、興銀リース株式会社、東京センチュリーリース株式会社、富国生命保険相互会社、芙蓉総合リース株式会社、株式会社損害保険ジャパン、及びみずほキャピタル株式会社を割当先(予定)として本優先出資証券総額240億円を発行する。

2.会社は、本優先出資証券に係る配当、残余財産の分配等の支払いを保証する旨の契約(劣後保証契約)をSD社と締結する。

会社はプレスリリースで、本優先出資証券の特徴を次のように説明しています。

「本優先出資証券は、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、株式会社日本格付研究所から、75 の資本性が認められる見通しであるなど、実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性も兼ね備えております。 本ハイブリッドファイナンスは、必要な資金を全て公募増資で調達した場合の希薄化を可能な限り抑制し、実質的な資本増強による財務構成比率の改善を実現する効果を有しております。

本優先出資証券は、資本と負債の中間的な性質を持つハイブリッド証券であり、負債性調達手段の特性を有すると同時に、株式会社日本格付研究所から、75 の資本性が認められる見通しであるなど、実質的な財務構成比率を改善し、財務の安定性を高める資本性調達手段としての特性も兼ね備えております。

本ハイブリッドファイナンスは、必要な資金を全て公募増資で調達した場合の希薄化を可能な限り抑制し、実質的な資本増強による財務構成比率の改善を実現する効果を有しております。

当社が発行する社債に新株予約権を付与すること(本優先出資証券には、本新株予約権付社債に交換することができる交換権が付与されており、当該交換権を行使した場合は、本優先出資証券は本新株予約権付社債に交換され、当該本新株予約権付社債は自動的にかつ直ちに当社の普通株式に転換されます。)により、本邦でも実績のある海外SPCを通じた株式への交換権を付与せずに優先出資証券を発行する調達手段に比べて、相対的に有利な金利(配当)条件で資金調達を行うことが可能となっております。

但し、既存株主の皆様に配慮した商品性を実現すべく、時価を大幅に上回る水準に転換価額を設定するとともに現金及び株式を対価とする取得条項(※)を付与することにより、将来の株価上昇時においても株式の希薄化を極力抑制することを重視致しました。 」

今日の新聞記事は以上の特徴を次のように説明しています。

「昭和電工が新株予約権付社債(CB)を子会社のSPCに対して発行し、これを購入した子会社が銀行など投資家に優先出資証券を発行する。連結会計上は親子間の債権債務は相殺消去されるため、CBは消えて子会社が発行した優先出資証券だけが残る。子会社の資本調達は連結貸借対照表では少数株主持分になり、純資産の部に計上されて負債は増えない。

当初約5年の年利率は約4.8%。投資家側は普通株への実質的な転換権を持つが、転換価格は291円と直近株価の約1.7倍で、当面は新株増加を回避できる。日本格付研究所(JCR)は格付上、75%を資本として考慮するという」(前掲紙)

記事では、優先出資証券は、国際会計基準では負債として取り扱われる可能性が高いことを指摘しています。

さらに言うなら、優先出資証券は区分処理により転換権部分が分離され、毎期実質利回りにより利息(配当)の計上を行う可能性があるものと思われます。

【リンク】

2009年9月29日「新株式発行及び株式売出し並びに第三者割当による 2014 年満期ユーロ円建 転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行及び当社海外特別目的 子会社によるユーロ円建交換権付永久優先出資証券の発行に関するお知らせ」昭和電工株式会社[PDF]

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【資本政策詳解】ヤーマン

ヤーマンの株式上場の概要は次の通りです。

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ヤーマンは、1978年設立、家庭用美容健康機器の研究・開発、製造および仕入れ販売、化粧品の仕入れ販売、生活雑貨などの仕入れ販売ならびに先端電子機器の輸入販売を行っている会社です。

公募価格は3,700円、2010年4月期見込みEPSが312.23円なのでPER11.8倍という水準での株式公開となりました。

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ヤーマンの主な資本政策は (表2)の通りです。

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2008年4月30日に山﨑行輝取締役会長から役員・従業員に対し合計14,300株の株式譲渡が行われています。譲渡価格は1,000円、移動価格は、純資産方式により算出した価格を総合的に勘案して決定しています。

翌期(8月29日)に行われた第三者割当増資の価格が4,500円と比較するとかなり安いといえますが、個人間の株式譲渡で役員・従業員のためのインセンティブ目的で行われたものと推察されることから特段問題はないと思われます。

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山崎性だけで50%超の持株比率を上場後も確保する資本政策になっています。僕の言う典型的な相続銘柄です。従業員のインセンティブは現物株によっており、ストックオプションは発行していません。
これもまたJASDAQらしいIPOと言えます。

【リンク】

ヤーマン株式会社

カテゴリー: 資本政策詳解 タグ:

グループ企業への法人税制、税制改正大綱に盛り込まれる

政府税制調査会は18日、2010年度税制改正に向けた最終案をまとめた。住宅を購入するために、親や祖父母などからもらったお金にかかる贈与税の特例の非課税枠を2010年中は1500万円、2011年中は1000万円に引き上げる。株式投資の配当と譲渡益を非課税にする制度も2012年から設け、年100万円を限度に3年間、総額300万円まで非課税にする。減税中心の税制改正で低迷する日本経済を下支えする。
最終案は同日午後の政府税調の会合で提示された。税調は今後、与党との調整などを経たうえで、22日の税制改正大綱の決定を目指す。

(日本経済新聞009年12月19日1面)

【CFOならこう読む】

連結納税制度の見直しも、大綱の中に盛り込まれるようです。連結納税開始時における子法人の繰越欠損金の持ち込みができるようになるのか
が気になるところです。

「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会」(平成21年7月)ではこの点次のように記載されていました。

「連結納税開始時や連結納税グループへの加入時における子法人の単体欠損金の持込制限を緩和することが考えられる」

緩和とはどういう意味なのかが実務家の間で色々と取りざたされていました。

「持込制限を緩和」とは「廃止」というわけではないですよね。例えば米国のサーリールールを想定してるということになるのでしょうか。

(中略)

「希望ですけれども、アメリカのサーリールールではなく、子会社の単体欠損金の持ち込みが単純に認めてもらえるのであれば非常に連結納税の使い勝手がよくなると
思います。

当然、悪意的な行為は規制するとして、今の環境下ですと子会社が繰越欠損金を持っている企業グループはたくさんあると思いますので、連結納税導入時における繰越欠損金の持ち込み制限の緩和は、非常に影響が大きいと思います。

やはりサーリールールのように欠損を出した当の会社単体の利益の範囲だけで欠損金が使える制度になるとすると、制度改正後も企業の行動はあまり変わらないと思います。
今後そこまで単体で黒字が出せるのかということもありますし、緩和されたとしても本当に連結納税を入れるメリットがあるのかというのは、将来のプランをきちっと描かないとわからないところであるので、ここは緩和じゃなくて抜本的に改正していただきたいというのが、本当に言いたいところですね。」

「SRLYルール:連結子法人の繰越欠損金のうち、連結加入前の事業年度において生じた欠損金について、その子会社の所得金額を上限に持ち込むことができる制度」
(週刊税務通信 平成21年12月7日号)

昨日発表された最終整理案では次のように記載されています。

「連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人のその開始又は加入前に生じた欠損金額を、その個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に追加する」

要するに、SRLYルールということのようですね。

【リンク】

「主要事項・要望項目等に関する最終整理案」[PDF]

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強欲資本主義と民主主義2005年から2009年までの上場廃止企業は609社

帝国データバンクは17日、2009年の上場廃止企業数が戦後最多の163社に上ったとの調査結果を発表した。理由の多くは親会社による完全子会社化や第三者によるM&Aなどで、経営環境の変化に伴って事業再編を進める企業が多かった。
(日本経済新聞2009年12月18日4面)

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2005年から2009年までの上場廃止企業は609社。うち2009年が163社で戦後最多とのことです。

「市場別 にみると、「東証1部」の208社が最高で、以下「ジャスダック」の177社、「東証2部」の89社が続く」(帝国データバンク 上場廃止企業実態調査 )

「上場廃止理由では、「完全子会社化」が369社と突出し最多となった。以下、「株式の全部取得」の100社と続く」(前掲レポート)

やはり時代は親子上場解消の方向に向かっているのですね。

【リンク】

「特別企画:2009 年上場廃止企業実態調査」帝国データバンク[PDF]