大光の株式上場の概要は次の通りです。

大光は、1950年設立、外食産業などに対して卸売業を行う「外商事業」および小規模外食業者などに対して小売業を行う「アミカ事業」における業務用食品などの販売を行っている会社です。
公募価格は420円、2010年5月期予想EPSが45.29円なのでPER9.3倍という水準での株式公開となりました。
初値は415円と若干公募価格を下回りました。

大光の主な資本政策は (表2)の通りです。

2009年2月18日に普通株式と普通株式への転換権が付された種類株式が同一の価格で発行されています。
また2007年10月31日に金森勤氏より金森武氏、金森久氏、金森智氏に合計20,000株の株式譲渡及び20,000株の贈与が行われています。譲渡価格は5,500円、移動価格は、類似会社比準価額方式を参考に決定しています。
この直後に発行された新株予約権の行使価格が5,775円との価格差はプレミアムであると目論見書では説明されています。

金森性だけで40%超、従業員持株会と取引先・金融機関等の安定株主と合わせて50%超の持株比率を上場後も確保する資本政策になっています。従業員のインセンティブは、ストックオプション及び従業員持株会によっております。
これもまたJASDAQらしいIPOと言えます。
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株式会社大光
「悪質なM&Aをやめるよう経営者に言うべき時がある。感謝されても報酬はゼロ。バンカーとはおかしな商売なのだ。」米投資銀行家、ケン・モリス氏(51)が「バンカー道」を説いたのは、UBSの米州部門を率いた8年前のことだ」
(日本経済新聞2010年3月30日17面 一目均衡)
【CFOならこう読む】
今日の記事は、昨日私がとりあげたジム・コリンズ氏のインタビューを引用して、NOと言えるバンカーが待たれることを主張しています。その場合報酬の問題がネックになり得ることも指摘しています。
「「NOといえるバンカー」。待たれる存在とはいえ、悩みは報酬だろう。実現しなかったM&Aにリーグテーブルはない」(前掲紙)
私はバンカーではありませんが、買収の局面でDDやバリュエーション等のアドバイザリー業務を行なう場合、私が進めるべきでないと思う案件については、はっきりとそのように伝えることを心がけています。
その場合でも報酬は頂戴するわけですが、クライアントは良い顔をしない場合が多いように思います。その理由の一つがアドバイザリーに対する支出額の会計処理の問題です。
「企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められるものは取得原価に含め、それ以外の支出額は発生時の事業年度の費用として処理する」(企業結合会計基準第26項)
つまり買収できないとなると、我々に対する報酬がPLにヒットすることになるわけです。
損益に影響があるから、買収を進めたいというのもおかしな話ですが、会計が経営行動に影響を与えることが現実にはたくさんあるのです。
そんなおかしなことがあるので、余計にNOと言うべきM&AにはNOと言うことが重要だと思うのです。
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なし
米経営学者ジム・コリンズ氏は、企業勝ち残りの条件を描いた1994年のベストセラー「ビジョナリー・カンパニー」の著者として知られる。昨年は一転、前途洋々だった企業が没落する過程を描く「企業はどう落ちぶれるのか」を出版し、話題をさらった。
優良企業に潜むワナと、窮地から再生するための条件を聞いた。
(日経ヴェリタス2010年3月28日21面)
【CFOならこう読む】
ジム・コリンズ氏は成功から没落までを5段階に分けて説明しています。
1.成功と思い上がり
幸運を実力と勘違いする
2.規律なき欲望
実力以上の拡張に走る
3.リスクと危機の否定(株価は最高に)
都合の悪い事実を無視
4.救済への渇望
やみくもな対策で事態は悪化
5.降伏、あるいは死
身売りや破綻
「既存事業と合わない大型の買収も、無規律に成長を追っている兆しです。信じられないほどの高成長を何年も続けている会社は、「巨大化した会社を回していけるのか」と疑うべきです」(前掲紙)
無意味なM&Aは第2段階だけでなく第4段階でも行なわれます。
日本企業のM&A、特に供給過剰な業界で行なわれる、規模の追求をお題目とするM&Aはこの段階で行なわれるケースが多いように思います。
「ノックアウトされない限り、企業は生還できます。経営危機に直面した(90年代前半の)IBMも、(2000年前後の)ゼロックスも4段階の後半に追い込まれていました。再建できたカギはいくつもあります。まず有能なリーダーを得ること。再建を託されたIBMのルイス・ガースナー氏、ゼロックスのアン・マルケイヒ氏に共通するのは、名声を目的とせず、会社再建に集中したことです」(前掲紙)
有能なリーダーが日本にいないのだとすれば、日本企業は国外にその人材を求めざるを得ません。
そんな時代に1億円以上の年棒の経営者だけを懲悪的に開示させるのは、全くもって間違っていると僕は思います。
今重要なのはパイの取り合いではなく、パイそのものを大きくする施策です。
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なし
主なポイント
・経営者が意思決定に用いる区分の開示に
・事業ごとに資産やのれん、減価償却費用の開示も
・営業利益や経常利益以外の利益開示も可
実施時期:2010年4月から強制適用
(日本経済新聞2010年3月26日16面)
【CFOならこう読む】
新基準によるセグメント情報は、取締役会が配分すべき資源に関する意思決定や、業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討する区分での開示が必要となります。
これはマネジメント・アプローチと呼ばれ、US-GAAP、IFRSではこの方法によりセグメント情報を開示されています。
マネジメント・アプローチには、投資家が経営者の視点で企業を見ることにより、経営者の行動を予測し、その予測を企業の将来キャッシュフローの評価に反映することが可能になる、という長所があります。
一方、マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報は、企業の組織構造に基づく情報であるため、企業間の比較が困難になるという短所が指摘されています。
しかし、財務会計の概念フレームワークでは、財務諸表利用者の意思決定との関連性は、比較可能性の確保に優先すると考えられており、マネジメント・アプローチによるセグメント情報を開示することとなっています。
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なし
西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載事件で株価が下落し損失を被ったとして、日本私立学校振興・共済事業団が西武鉄道などに計約1億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(鈴木健太裁判長)は24日、請求全額を認めた一審・東京地裁判決を変更し、約1億1千万円に減額した。
鈴木裁判長は賠償額の算定で「虚偽記載公表後から最終取引日までの株価の終値の平均が、公表の影響を反映した株価といえる」との判断枠組みを示した。
(日本経済新聞2010年3月25日42面)
【CFOならこう読む】
「公表翌日の2004年10月14日から、最終取引日の同12月16日までの終値の西武鉄道株の平均値は457円。同裁判長は公表直前の株価(1081円)から457円を引いた624円が、虚偽記載の公表に伴う西武鉄道株の下落額(下落率57.7%)と判断した。
そのうえで、同事業団の株の平均買い入れ価格の1553円で、その57.7%に当たる896円が1株あたりの損害と指摘。保有していた11万3千株分にあたる約1億円が損害額と算定し、弁護士費用を加えた賠償総額を約1億1千万円と結論づけた」(前掲紙)
2009年1月の一審東京地裁判決は、購入額と株価下落後の売却額との差額すべてを損害と認定していました。
「西武鉄道株を巡っては、先行している別の訴訟で、東京高裁が「株価の下落は虚偽記載だけから生じたわけではなく、様々な事由が複合的に絡み合った結果」とし、損害額を公表直前の株価1081円15%(約160円)にとどまるとするなど、地高裁で判断基準が異なっている」(2010年3月25日「西武鉄道株虚偽記載、賠償を減額 東京高裁判決」Web刊 日本経済新聞)
おそらく正解はないのでしょう。
それだけに最高裁の判断が待たれます。
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なし
香川大学発ベンチャーの自然免疫応用技術は食品関連の中小などと共同研究を進める「技術研究組合」を立ち上げた。昨年できた制度を活用し、企業間の連携を強化する。共同研究の総事業費は10年で16億円の見通し。地域の食品会社や関連の研究機関にも幅広く参加を呼びかけ、応用技研が進めている微生物の研究を生かした新事業立ち上げを加速する。
(日本経済新聞2010年3月24日17面)
【CFOならこう読む】
「技術研究組合とは、2009年6月の法改正で始まった制度。前身の「鉱工業技術研究組合」の設立条件などを大幅に緩和した。すべての産業技術を対象に、2以上の法人などが定款と研究の実施計画書を作り、主務大臣の認可を受ければ設立できる。法人格を持ち、契約締結や特許登録を組合の名義でできるのが特徴。そのまま事業会社にも移行でき、事業化の準備組織に利用しやすい」(前掲紙)
技術研究組合の特徴は次の通りです。
「
1.法人格があります
• 法人格があるので、技術研究組合の名義で、不動産の登記、特許権の登録、銀行取引、行政許認可の取得などを行うことができます。
• 事業化に向けて、特許権を一元的に管理できます。
• 責任の所在を明確にすることができます。
2.財務の健全性を確保できます
• 技術研究組合の運営費は、メンバーの賦課金によりまかなわれます。技術研究組合に欠損金が累積せず、財務の健全性を確保できます。
• メンバーは、賦課金を自社の研究開発費用として処理でき、税負担を軽減できます。
3.営利会社化できます
• 研究開発終了後は会社化し、研究成果を散逸させずに、そのまま事業化できます(会社の資本は再評価後の純資産額となります。)。
• 大学発ベンチャーや、事業化の準備組織として利用できます。
4.産学官連携に利用できます
• 大学や公的研究機関がメンバーになれるので、産学官連携が強化されます。
• 賦課金の設定は自治に委ねられます。出資金なくメンバーになれます。
• 農業や医療に関する技術を研究することもできます。
5.2者だけで、創立総会なく設立できます
• 企業と企業、企業と大学など、2者間で行う共同研究にも利用できます。
• 創立総会を経ずに、非公開で、簡易迅速に設立できます。
• メンバーの2/3以上が中小企業なら、助成金や特許料の減免を受けられます。
」
(経済産業省 研究開発パートナーシップのウェブサイトより)
要するにLLPと株式会社のいいとこ取りをしたビークルと言えます。
税制上のメリットは次の通りです。
「運営費用をメンバーから集める“賦課金(注1)”によりまかない,メンバー企業は支払った賦課金を自社の研究開発費用と同様に費用処理できるため,税負担を軽減できる。また,支払った賦課金は研究開発税制の対象となるので,メンバー企業はその8~10%を法人税額から控除できる。さらに,技術研究組合においては,賦課金で取得した試験研究用資産(特許権など)については簿価1円まで“圧縮記帳(注2)”できるから,当該資産を取得する年度において,取得価額のほぼ全額を損金算入して税額を発生させないことができる」(http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/20090723_1.html)
また財務上の利点として、研究開発終了後に会社化した場合に欠損金が累積されず、その後の資金調達やIPOに支障がない点があげられます。
技術研究組合は、その組合員になろうとする二人以上の者が、その全員の同意によって定款、試験研究の実施計画等を記載した書面を作成し、主務大臣の認可を受けて設立します。
書面の提出先/問い合わせ先
経済産業省 産業技術環境局 技術振興課 技術研究組合担当
【リンク】
研究開発パートナーシップ
米投資助言会社フィナンシャル・エンジンズ(FE)が16日、ナスダック市場で新規株式公開(IPO)した。投資家の需要が大きく、今年のIPOで公募価格が当初予想を上回る初めての案件となった。
(日経ヴェリタス2010年3月21日52面)
【CFOならこう読む】
「FEはノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープ氏が1990年に創業。確定拠出年金の401k投資助言ビジネスを手掛ける。独自に開発したコンピューターモデルを使ったアドバイスが売り物だ」
あのCAPMのシャープです。
日本の経済学者で実務家としても成功しているのは野口悠紀雄さん位でしょうか?
もっとも野口氏の場合、ご自身の専門分野とは無関係の手帳が売れているわけで、専門分野をビジネスに応用して成功しているる人は見当たりません。
「IPOが好調だった背景には、シャープ氏の名声もさることながら、同社のビジネスが401k加入企業向けに助言をするという高齢化社会の成長分野であることが市場の高い評価を得たようだ」
(前掲紙)
日本でも確定給付型の年金から確定拠出型の年金に移行していくと考えられることから、この手のビジネスに対する需要は今後増大していくと思います。
【リンク】
なし
うどんチェーンのグルメ杵屋は2011年3月期、「資産除去債務」と呼ぶ新しい会計基準520店の直営店に適用する方針だ。将来、営業不振などで閉店・退去する可能性があることから、退去費用を見積もって財務諸表に反映させる。費用は11年3月期に特別損失として計上する予定だ。
(日本経済新聞2010年3月20日16面)
【CFOならこう読む】
「資産除去債務は工場などの固定資産を解体・撤去する際の費用をあらかじめ見積り、負債に計上するもの。グルメ杵屋は大半の飲食店を直営方式で商業施設を中心にテナント出店しており、退去の際は原状回復費用が平均で460万円かかる見通し。525店全店だと約24億円に上る」(前掲紙)
資産除去債務に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第21号)は、建物等賃貸契約に関連して敷金を支出している場合の会計処理として、敷金等から減額できる旨記載しています。
「9.建物等の賃借契約において、当該賃借建物等に係る有形固定資産(内部造作等)の除去などの原状回復が契約で要求されていることから、当該有形固定資産に関連する資産除去債務を計上しなければならない場合がある。この場合において、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上額及びこれに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができる」
なおこの処理を行なう場合には、適用初年度の期首において、敷金の回収不能見込額のうち前期以前の負担に属する金額を、特別損失に計上します(適用指針15項)。
従って、グルメ杵屋が11年3月期に特別損失として計上するのは10年3月期以前負担分であると思われます。
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なし
コンピューター製造販売大手「日本アイ・ビー・エム」(日本IBM、東京都中央区)の企業グループが、東京国税局の税務調査を受け、平成20年12月期までの5年間で、4千億円超の申告漏れを指摘されていたことが18日、分かった。法人税の追徴税額は300億円以上とされ、申告漏れ額は過去最大規模とみられる。日本IBM側は争う意向を示している。
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100318-00000504-san-soci)
【CFOならこう読む】
「財政悪化が進む中業界関係者によると、日本IBMの親会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(APH、同区)は平成14年ごろ、米IBMから日本IBMの全株(約2兆円相当)を購入。その後、株式の一部を購入時より安く日本IBMに売却した結果、20年12月期までの5年間で4千億円超の赤字を計上したとされる。
APHは20年から子会社を含むグループの所得の損益を合算して申告・納税する連結納税制度を導入しており、同年は日本IBMの黒字がAPHの赤字と相殺されたことでグループの法人税納税額がゼロになったという」(前掲紙)
購入価格より安く売却したことにより赤字が計上された点ではなく、自社株取得であるところが本件のポイントです。
法人が、市場等から時価で購入した株式を同じ価格で発行会社に買い取らせたとしても(発行会社にとっては自社株買い)、赤字を作ることができるのです。
楽天・TBSの案件その他の場面で、このことについては当ブログでは何度かお話ししています。
つまりこういうことでした。
税務上、自己株取得の場合、取得対価のうち、取得会社の「1株当たり資本等の金額」を上回る金額が「みなし配当」とされ、「1株当たり資本等の金額」と株主の譲渡原価との差額が株式譲渡損益となります。
例えば100円で市場から購入した株価を発行会社に100円で自社株買いさせるとします。発行会社の「1株当たり資本等の金額」が10円だとすると取得対価100円と「1株当たり資本等の金額」10円の差90円が「みなし配当」となり、「1株当たり資本等の金額」10円と株式の簿価100円との差90円が株式譲渡損となります。
法人の場合、受取配当の一部又は全部が益金不算入となるので譲渡損失だけを税務上赤字として計上することができるのです。
IBMの場合は、連結納税制度を採用していることにより、APHで生じた損失を日本IBMの利益と損益通算することにより納税額が圧縮されます。税務当局はこれを租税回避行為と認定したというのが今日の記事です。
・日本に持株会社を作るためにAPHが日本IBM株式を米IBM社から購入する。
・この株式を日本IBMがAPHから自社株買いする。
・連結納税により親子の赤字と黒字を損益通算する。
という一連の行為はそれぞれを見た場合異常な取引とは言えず、異議申立その他今後の進展が注目されます。
なお平成22年税制大綱では、この手のスキームを塞ぐべく以下の手当がなされています。
「 資本に関係する取引等に係る税制
イ みなし配当の際の譲渡損益
(イ) 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しないこととします。(再
掲)
(ロ) 自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金
不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含みます。)を適用しないこととします。
(ハ) 抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととします。 」
【リンク】
2009年12月22日「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]
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