独立系投資ファンド・ロングリーチ傘下のファンド、LSホールディングスは三洋電機の物流子会社、三洋電機ロジスティクスにTOBを実施すると発表した。三洋ロジの全株式を取得し、完全子会社化を目指す。取得総額は約179億円。
(日経ヴェリタス2010年5月31日27面)
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100%子会社化は以下の通り全部取得条項付株式種類株式を用いて行なわれます。
「公開買付者が本公開買付けにおいて当社の全株式(自己株式を除きます。)を取得できなかった場合には、公開買付者によれば、本公開買付け終了後に、以下に述べる方法により当社の完全子会社化を実施することを予定しているとのことです。
具体的には、本公開買付けが成立した後に、公開買付者は、①当社において普通株式とは別の種類の株式を発行できる旨の定款変更を行うことにより、当社を会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。以下同じです。)
の規定する種類株式発行会社とすること、②当社の発行する全ての普通株式に全部取得条項(会社法第108条第1項第7号に規定する事項についての定めをいいます。以下同じです。)を付す旨の定款変更を行うこと、及び③当社の当該普通株式の全部取得と引き換えに別個の種類の当社株式を交付すること(なお、別個の種類の株式について上場申請は行わない予定です。)のそれぞれを付議議案に含む株主総会の開催を当社に要請するとのことで、当社はそれに応諾する予定です。 」
(2010年5月25日三洋電機ロジスティクスプレスリリースより)
なお、三洋電機はTOB終了後、以下の通りLSホールディングスに5%程度を出資する予定です。
「三洋電機ロジスティクス公表の平成22年5月25日付「株式会社LSホールディングスによる当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」によれば、三洋電機ロジスティクスは三洋電機との間で2010年5月25日付で事業提携に関する覚書を締結しており、本公開買付け後の一定期間において、三洋電機が一定の条件の下で三洋電機ロジスティクスに対してこれまでと同様の取引関係を継続し、また、三洋電機ロジスティクスはこれまでと基本的に同一の条件で三洋電機のブランド・許諾商標、不動産、ITシステム等を継続して使用することを予定しているとのことです。加えて、三洋電機は、本公開買付け後に公開買付者に対して5%程度の普通株式の出資を行う予定です。 」
(2010年5月25日ロングリーチグループプレスリリースより)
【リンク】
2010年5月25日「株式会社LSホールディングスによる当社株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明のお知らせ」三洋電機ロジスティクス株式会社[PDF]
2010年5月25日「ロングリーチグループ 三洋電機ロジスティクス株式会社の完全子会社化を目指して公開買付けを開始」[PDF]
国際的に見た日本企業の税負担の重さが改めて浮き彫りになっている。2009年度の日本の主要企業の税引前利益に占める税負担額の割合は49%と、米国や英国、ドイツ企業の20~30%台を上回った。法人税などの法定実効税率が高いことが主因だ。世界では台湾が法人税率を25%から17%にするなど引き下げ競争が加速している。高負担は日本企業の成長の足かせとなりそうだ。
(日本経済新聞2010年5月28日15面)
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各国企業の会計上の税負担率(2009年度、%、指数構成企業の平均)は次の通りです。
日経300 |
49.1 |
英FTSE100 種 |
36.0 |
ドイツ株式指数 |
34.4 |
米S&P500種 |
29.9 |
(トムソン・ロイター調べ)
確かに日本の法定実効税率は高いのですが、会計上の税負担率が高いのはそのせいばかとは言えません。同じ日本企業でもHOYAのように税負担率が非常に低い会社もあるのです(2009年6月3日エントリー「HOYA1,200億円還流」)。
重要なのはきちんとしたタックスマネジメントを行なうことです。
日本企業で税務部門が機能している会社はとても少ないでしょう。むしろ税金を多く払うことに誇りすら感じている上場企業も存在します
そしてそれ以上に重要なのは、税引後利益を経営指標として何より重視することです。
それは株主価値を重視するということに他ならず、結局コーポレートガバナンスの問題だと言うことになるのかも知れません。
【リンク】
なし
三井物産は有利子負債の長期比率を4年ぶりに引き下げる。財務の安定性をにらみ2010年3月期末に93%まで高めた同比率を90%まで引き下げる。金融危機による市場の混乱は後退したとみているが、欧州財政問題を見据えて引き続き高い水準を維持する。
(日本経済新聞2010年5月28日15面)
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上場会社の有利子負債に関する方針は、それぞれ個性があって面白いですね。昨日は実質無借金経営を標榜するパナソニックを取り上げましたが、今日は三井物産です。
「同社の社債や長期借入金などを合わせた長期負債(一年以内の償還を控えた分も含む)の比率は通常80%前後で推移していた。金融危機の混乱を受けて、財務の安定性を優先して引き上げ、9割を超す水準にまで高まっている」(前掲紙)
長期負債比率を8割-9割とする、というのが三井物産の財務方針なのかも知れません。
三井物産は、ネットDER(「ネット有利子負債」を株主資本で除した比率)により、負債の水準をコントロールし、さらに長期負債比率により長期負債の水準を決定していると思われます。
「平成22年3月末のネット有利子負債は2兆557億円となり、平成21年3月末の2兆5,151億円から4,594億円減少しました。ネットDER(*3)は0.92倍となり、平成21年3月末の1.34倍から0.42ポイント改善しました。
(*3) ネットDERについて
当社は「ネット有利子負債」を株主資本で除した比率を「ネットDER」 と呼んでいます。当社は「ネット有利子負債」を以下の通り定義して、算出しております。すなわち、 短期債務及び長期債務の合計により有利子負債を算出。
有利子負債から現金及び現金同等物、定期預金を控除した金額を「ネット有利子負債」とする。
当社の有利子負債の主要な項目は長期債務(1年以内期限到来分を除く)から構成されます。当社の資本支出の資金需要に柔軟に対応し、将来における金融市場の不測の機能低下の下においても債務返済に応えられるよう当社は、厚めの現金及び現金同等物を維持しています。こうした方針のもと、当社は、ネットDERは当社の債務返済能力と株主資本利益率 (ROE)向上のための財務レバレッジの関係を検討するための有効な指標と考えています。 」
(三井物産 平成22年3月期決算短信 22頁)
【リンク】
「平成22年3月期 決算短信〔米国会計基準〕」[PDF]
(カテゴリー)
資金調達
財務レバレッジ
(リンク)
環境銘柄の代表格、パナソニック電工株が5月上旬から大幅に値下がりしている。変調の背景には親会社パナソニックの「戦略転換」がある。「2012年度までの中期計画では、パナ電工や三洋電機との資本関係はこのまま」。
下落のきっかけになったのが、7日夜のアナリスト説明会でパナソニックの大坪文雄社長が述べたこの発言だ。
(日本経済新聞2010年5月26日15面)
【CFOならこう読む】
「直後の10日、パナソニックの完全子会社化をにらんで買われていたパナソニック電工株は7%安と急落。26日までの下落率は18%に達し、この間の日経平均株価の下落率(約8%)を大きく上回る」(前掲紙)
プレミアム期待が剥げ落ちたということです。
「背景にあるのが財務の悪化だ。三洋電の買収などで3月末の有利子負債は手元資金を約1200億円上回った。借入超過は14年ぶり。パナ電工の完全子会社化にはプレミアムを含め5000億円規模の資金が必要で、約16%分の金庫株(約4300億円相当)を活用しても余裕は乏しい。「強固な財務を取り戻す」(大坪社長)方が優先順位は高くなる」(前掲紙)
「強固な財務」とは、Net debtゼロを指します。しかし「パナ電工はパナソニックの連結経営に欠かせない存在」であるなら、市場環境を考えても今が完全子会社化の絶好のタイミングだと思います。無借金経営が何より優先するというのは理解できません。
【リンク】
なし
格付けが相対的に低い上場企業の普通社債の発行が相次ぐ見通しだ。双日や鹿島など2008年秋の「リーマンショック以降で初めて起債を計画している。カネ余りや低金利で運用難に悩む機関投資家が格付けが低い企業の社債購入に動いており、基準金利に対するスプレッドが縮小。これまでに比べ割安な金利負担で資金調達できるようになっているため。
(日本経済新聞2010年5月26日15面)
【CFOならこう読む】
「流通市場では、トリプルB(R&I)のスワップ金利に対する上乗せ幅は平均0.7%程度まで低下している。
カネ余りの追い風を印象づけるのは、ソフトバンクの調達金利の低下だ。近く3年ものと5年物で250億円ずつ発行する見通し。5年物の利率は1.7%程度と3月発行の5年債の3.5%からほぼ半分に低下する見通し」(前掲紙)
「すでにスプレッドは歴史的な低水準に縮小」しており、バブルの様相を呈しています。確かにCFOにとっては追い風ですが、実態は
「運用サイドのカネ余りとのいびつなバランスは崩れそうもない」(みずほ証券の伴豊氏)
という見方が正しいように思います。
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なし
ギリシャ危機を受けて動揺が広がる欧州市場で、銀行間の「相互不信」が強まってきた。金融機関のドル資金の調達コストを示すロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3ヶ月物金利は21日、昨年7月下旬以来の高水準となる0.5%近くまで上昇。欧州債券市場では、安全性が高いとされるドイツ国債への資金流入が目立ち始めた。リスク警戒がさらに強まれば、市場の信用収縮が広がる恐れも否めない。
(日本経済新聞2010年5月22日1面)
【CFOならこう読む】
「ソブリンリスク(政府債務の信認危機)は歴史的に、政治の弱さから起こってきた」。19日、米ボストンに世界の投資家を集めて開いた会合で、金融史が専門のハーバード大教授、ニーアル・ファガーソン氏が力説すると、会場の喝采を浴びた。
目先の支持率を意識したばらまき財政や不十分な税収。財政の悪化は景気の低迷はもちろん、リーダーシップ無き政治が根底にあると説いた」(前掲紙)
5月17日にエントリーで、EUでは財政や直接税に関する政策は各国に委ねられてはいるが、経済統合のために「4つの自由」(財・人・サービス・資本の自由な移動)を保障する法的枠組をつくっており、これを阻害する加盟国の国内法は内外無差別の原則に反するとして禁止されていることを紹介しました(2010年5月17日エントリー「ユーロはギリシャに勝てるか」)。
最近、Yale大学のGraetz教授とHarvard大学のWarren教授(2人とも米国を代表する租税専門家です)が書いた”Income Tax Discrimination Political and Economic Integration of Europe”という論文を読みました。
2人は、EU加盟国が自国の経済を刺激するために税制を利用することをクロと判定する欧州裁判所(ECJ)の対応は、EU加盟国全体に深刻な税収不足を招くと指摘しています。
これを回避するには、直接税に関し全ての加盟国が調和化するという解決策があるのですが、その実現可能性は極めて低いとも書いています。
「リーダーシップ」を発揮しようにも、それが出来ないのが今のEUの姿なのではないでしょうか。
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なし
政府の行政刷新会議は20日、財団法人や社団法人を対象にした事業仕分けで、塩事業センターや全日本交通安全協会など15法人の16事業を取り上げ、「省エネ大賞」の表彰など8事業を「廃止」と判定した。競争原理の導入などで一般の人が負担する講習などの手数料の引き下げを促す議論が目立った。
(日本経済新聞2010年5月21日3面)
【CFOならこう読む】
「資格試験や講習を実施する法人には「値下げ」を促す指摘が多かった。全日本交通安全協会は運転免許更新時の講習で配る教本を独占的に請け負う。年1400万部を納入し、収入は約32億円にのぼる。仕分け人からは「教本のコストを削減し、700~1700円の講習手数料を下げるべきだ」との意見が相次いだ。
免許に関する無駄は他にもたくさんあると思います。私はボートやバイクで携帯電話圏外まで出掛けて行くので、いざというときのために無線が必要なのですが、この無線免許が23資格に細分化されていて、財団法人日本無線協会が総務大臣から指定試験機関に指定され、無線従事者のすべての資格(についての国家試験を実施しています。
昨年規制緩和があって、プレジャーボートに無線を載せることが可能になったので、この4月に第三級海上特殊無線技士、先週末に第二級海上特殊無線技士の講習&試験を受けました。両者で取り扱う内容にほとんど差異はないにも関わらず、それぞれ2万円~3万円のコストがかかります。テキストはもちろん日本無線協会のものを使わされます。
これでバイクにも無線を載せようと思ったら、全く別にアマチュア無線の免許が必要です。いったい誰を食わせるためにここまで資格を細分化する必要があるのか、と文句の一つもいいたくなります。
事業仕分けも良いですが、ひとつひとつ潰していくのではなく、免許関連とはひとまとめにして、バサッと切ってもらいたいものです。
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なし
「産業構造ビジョン」で提言されている輸送・物流関連の制度改善・インフラ強化の具体的な内容は次の通りです。
「①徹底的なオープンスカイの推進等
○立地拠点としての我が国の魅力を高めるには、日本各地と、アジアやEUをはじめ世界の生産拠点・大消費地が、廉価な航空サービスで高頻度に結ばれていることが重要。
○新規参入・増便の可能性の高い諸国・地域を最優先に、戦略的なオープンスカイを推進すべき。併せて、フォワーダー・チャーター等の運航に関する各種規制の緩和を図るべき。
②戦略港湾の国際競争力強化、国際物流円滑化へのIT投資、貿易手続改革
○世界の船舶を呼び込むため、コンテナ船・バルク船の巨大化への対応投資の集中実施、埠頭設備・作業員等の各ターミナル間での共有促進、港湾コスト引下げ等を推進。
○また、製造業等のグローバル生産・物流管理の抜本的改善、国際物流の低炭素化やセキュリティ強化に必要なコンテナ等貨物動静の共有等に向け、ITの標準化・投資・国際協力を推進。
○併せて、輸出に係るコストやリードタイムの低減を図るため、輸出申告の際に保税地域への貨物の事前搬入を求める「保税搬入原則」の撤廃等の見直しにより、貿易手続を諸外国並に合理化。
③内航海運、貨物鉄道の利便性の向上
○我が国の国際戦略港湾の集荷力向上
○国内におけるモーダルシフト推進のため、内航 海運・貨物鉄道の利便性向上・コスト低減に向けた抜本的な施策が必要。 」
日本は島国で、四方を海で囲まれている訳ですから、海という稀少な資源を有効利用することをもっと真剣に考えるべきです。
私は小さなボート(クルーザーなんてもんじゃありませんよ)を持っていて、相模湾内で遊ぶことがありますが、貨物船を見ることは皆無です。また、レジャーボートやヨットも少なく、海で遊ぶ人が非常に少ないと感じます。
海に出ると、海が漁業に独占されていると感じます。
活気のない漁港が目立つにも関わらず、プレジャーボートやヨットが漁港に入ることは容易には出来ません。
しかし当然のことながら、海は漁業従事者だけのものではありません。
生産性の低い漁港は、内航の拠点やレジャー用のマリーナに転用すべきです。
多くのモノやヒトが海を行き交うようになれば、新たな雇用も創出されます。
漁港を維持するよりも多くの雇用が生まれるのであれば、転用を検討するのは当然です。
しかし不思議なことにそういう声はあまり聞かれません。
みなさん今年の夏はボートの免許でもとって海で遊びませんか?
レンタルボートを借りることもできますし、程度の良い中古ボートを安くで購入することもできます(僕のボートなんて国産大型バイクと同程度の値段です)。
そうしてたくさんの人が海から陸地を眺めるようになれば、海を大切にしなければいけないと思う人が今よりももっともっと増えると思うのです。
【リンク】
2010年4月23日「日本のアジア拠点化総合戦略 ~「企業が国を選ぶ時代」の立地競争力強化~」経済産業省[PDF]
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