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2011 年 1 月 のアーカイブ

為替デリバティブで多額の損失、中小企業に特別融資

三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは、為替デリバティブで多額の損失を抱えた中小企業の資金繰り融資に乗り出す。金融庁の行政指導を受けた措置で、毎期計上する損失の穴埋め資金や、取引の途中解約の違約金に充てる資金を融資する。
(日本経済新聞2011年1月19日1面)

【CFOならこう読む】

この為替デリバティブの多くは「クーポンスワップ」であると思われます。「クーポンスワップ」については、12月18日のエントリーでもお話ししました(2010年12月18日「クーポンスワップの会計処理」)。

為替レートが円ドルレートが120円程度のときに、5年から7年程度の長期のクーポンスワップ契約を取り組むことにより、100円を下回るレートでその期間に予定される輸入取引の為替レートを固定化することができたので、ヘッジ目的で多くの企業が利用していました。

ヘッジは将来の変動性を排除するという趣旨から行われるわけですが、固定化した為替レートよりも円高が進めば円高メリットを享受できなくなるという意味で損失を被ることになります。

私の感覚では、多くの経営者がそういった商品特性を理解した上で、100円よりも円高が進むことはないだろうという相場観のもと取引に応じていたように思います。

一方、契約直後の為替レートが有利になることを強調し、かなり荒っぽい売り方をしていた金融機関もあったように思います。

私が顧問をしている会社でも、リスクをよく理解しないまま「クーポンスワップ」の契約をしていた会社があり、私から商品特性をよく説明したうえで解約を決めたケースもありました。

しかし、

「金融庁の行政指導を受けた措置で、毎期計上する損失の穴埋め資金や、取引の途中解約の違約金に充てる資金を融資する」(前掲紙)

というのはいかがなものかと思います。

金融庁がやるべきことは、「販売時にリスクや商品の仕組みの説明を十分に尽くしていなかった」かどうかについて徹底的に調査することで、そこをあやふやにしたまま安易に行政指導を行うのは問題があります。

上述したように、非常に甘い相場観のもと、得だと思って「クーポンスワップ」に手を出した会社も少なからずあったわけで、その結果会社が傾いたとしても自業自得だし、そのような会社に金融機関が資金を融資するべきでもありません。

誤解して頂きたくないのですが、私は金融機関に全く責任がないと言っているのではありません。問題の根幹にふたをして、責任の所在を明らかにしないまま、安易に行政指導に走るのは望ましくないと言っているのです。

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なし

寄付、特定信託を通じ簡単に

政府は2011年度に、公益法人や認定非営利組織(NPO)への信託銀行を通じた寄付をしやすくする「特定寄付信託」制度を創設する。2011年度税制改正に優遇措置が盛り込まれたのを受けた者で、関連法案成立を前提に信託銀行などが具体的な商品設計に入る。
(日本経済新聞2011年1月18日1面)

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「2011年度税制改正では、同信託の運用益を非課税とすることや、毎年の寄付額の半分を所得税額から控除できることが盛り込まれた。現在は運用益への非課税措置はなく、寄付金も課税所得を決める段階で差し引かれるだけなのが原則。税額から控除される方式の方が減税メリットは大きい。」(前掲紙)

プランド・ギビング信託とは、生涯の寄付を計画的に実施することを可能にするもので、米国で広く利用されています。チャリタブル・リメインダー・トラスト等の信託を利用することにより、税制上の恩恵や信託から年金収入を得ることができます。

例えば資産家が土地や有価証券を寄付する際にこの仕組みを利用すると、生きている間はこの信託から生活費を定期収入として受取り、死後残った土地や有価証券をNPO法人に寄付するということが可能になります。

米国の場合のチャリタブル・リメインダー・トラストを利用した場合の税制上の恩恵は次の通りです。

「チャリタブル・リメインダー・トラストによる税制上の恩恵は高い。まず所得税上、残余公益的利益(charitable remainder interest)に相当する信託財産の現在価値は控除可能である。また、信託資産のうち公益的利益相当分は寄付者の個人財産に含まれないため、遺産税の義務が回避でき、遺産課税分の負担も軽減される。ただし、個人が受け取る定期収入に関しては、全額免税とならないため注意が必要である。免税率は、推定余命によって変
動する(基本的に推定余命が長いと課税率が低い)。
価値の上がった資産を売却しキャピタル・ゲインを得ても、その資産がトラストに信託されて2 年以内であれば、譲渡した人の税率に応じ課税をまぬがれる事が出来る(IRC644)。
つまり、チャリタブル・リメインダー・トラストの仕組みによって、double tax leverage が可能となる。この仕組みが、価値が上がったものの時価変動の少ない財産を処分し、キャピタル・ゲインへの課税をまぬがれながら、老後の定期収入と財産運用をしたい人にとって理想的な所以である。

他方、非関連事業課税収益 (unrelated business taxable income=UBIT)に関しては、しかし注意が必要である。つまり内国歳入法、512 に定められた非関連事業課税収益が生じない限りは、あらゆる種類の税金が控除されるが、非関連事業課税収益が生じた場合は、課税年度ごとにそのトラストはあたかもcomplex trust であるかの様に課税されていくからである。」
(NPO と金融機関の協働に関する調査研究 報告書―米国における寄付関連金融商品の動向と日本における導入可能性に関する考察- 特定非営利活動法人 パブリックリソースセンター)

「慈善以外の受益者がいる場合、所得税、遺産税及び贈与税の適用において、信託の残余持分の贈与に係る慈善寄付金控除の適用は、Charitable Remainder Annuity Trust及びCharitable Remainder Unitrustの2種類に限って認められる(IRC664(d)および(e))。他のすべての信託では、残余持分の贈与については、慈善寄付金控除は否定される」
(本庄資著「アメリカ法人税制」日本租税研究協会)

日本の制度設計の詳細についてはこれから詰めていくものと思われますが、税制大綱におおまかな制度の概要が記載されているので、以下関連部分を抜粋します。

「特定寄附信託(いわゆる「日本版プランド・ギビング信託」)に係る利子所得の非課税の創設
イ 特定寄附信託契約に基づき設定された信託の信託財産につき生ずる利子所得(利子所得の基因となる公社債等が当該信託財産に引き続き属していた期間に対応する部分の額に限ります。)については、所得税を課さないこととします。
ロ 特定寄附信託契約とは、居住者等が金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により信託業務を営む金融機関又は信託業法の免許を受けた信託会社と締結した当該居住者等を受益者とする信託に関する契約であって、特定寄附金の対象となる公益社団法人、公益財団法人又は認定NPO法人等(以下「公益法人等」といいます。)への寄附を行うことを主たる目的とするもののうち、次に掲げる要件を備えたものをいいます。
(イ) 信託財産からの寄附は、公益法人等に対してのみ行うものであること。
(ロ) 信託契約期間中の各年に信託財産から寄附される金額は、当初信託元本額(下記(ハ)により委託者に交付される金額の合計額を除きます。)を信託契約期間の年数で除した金額と当該寄附をする日までの間に生じた利子の合計額(前年までに既に寄附された利子の金額を除きます。)とされていること。
(ハ) 信託契約期間中に信託財産から委託者に金銭の交付をする場合には、その交付される金銭の額は当初信託元本額の30%を限度とし、かつ、信託契約期間にわたって各年均等に交付されるものであること。
(ニ) 信託の受託者がその信託財産として受け入れる資産は、金銭に限られるものであること。
(ホ) 信託の信託財産の運用は、次に掲げる方法に限られるものであること。
(a) 預貯金
(b) 国債、地方債、特別の法律により法人の発行する債券又は貸付信託の受益権の取得
(c) 合同運用信託の信託
(ヘ) 信託財産を寄附する日の前日までに、信託の受託者がその寄附を受ける法人等との間で寄附に関する契約
(寄附金を支出する日等の定めがあるものに限ります。)を締結していること。
(ト) 信託は、合意による終了ができないものであること。
(チ) 信託の受益権は、譲渡又は担保提供ができないこと。
(リ) 委託者が死亡した場合には、信託は終了し、その信託財産のすべてを公益法人等に寄附することとされていること。
(ヌ) 信託の計算期間は1月1日から12 月31 日までとされていること。
ハ 特定寄附信託の委託者は、当該特定寄附信託に係る信託契約の締結の後最初に上記イの非課税の適用がある利子の支払を受ける日の前日までに、その者の氏名等を記載した非課税申告書に当該特定寄附信託に係る信託契約書を添付して、これを受託者を経由し、委託者の住所地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
ニ 特定寄附信託について、上記ロの要件を満たさないこととなる事実が生じた場合には、その事実が生じた日以前に信託財産から生じた利子についは、上記イの非課税の適用はなかったものとし、かつ、その事実が生じた日においてその利子が生じたものと、当該受託者がその利子を支払ったものとそれぞれみなして、利子の源泉徴収に関する規定を適用します。
ホ 特定寄附信託の受託者は、信託の計算書に、当初元本額、寄附金額、寄附先の法人等の名称等を記載して、その信託の計算期間の終了の日の属する年の翌年1月31 日までに税務署長に提出しなければなりません。
ヘ 特定寄附信託の委託者が、当該特定寄附信託契約に基づき公益法人等に対して寄附した金額のうち、上記イにより非課税となった利子所得に相当する金額に係る部分は、寄附金控除は、適用しません。
ト その他所要の措置を講じます。」

【リンク】

「NPO と金融機関の協働に関する調査研究 報告書 - 米国における寄付関連金融商品の動向と日本における導入可能性に関する考察-」特定非営利活動法人 パブリックリソースセンター  [PDF]
「平成23年度税制改正大綱」[PDF]

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日本の財政、余命10年ー野口悠紀雄氏

日本国債は銀行が企業貸し出しを減らして購入しており安定消化されている。巨額の発行が許されてきたのは、経済の停滞で資金需要が減少していたためだ。消費税率を数%上げても、社会保障給付費の増加などを考えれば焼け石に水だ。このままでは日本財政の余命は10年少々となる。
(日経ヴェリタス2011年1月16日45面)

【CFOならこう読む】

今日は備忘記録です。

「これまで巨額の国債発行が問題を起こさなかったのは、日本経済が停滞を続けて資金需要が減少していたからである。つまり、きわめて逆説的な表現だが、不景気が続いたからこそ、日本経済は深刻な問題に直面しなかったのである。

(中略)

問題は「貸し出しを減少させて国際を購入する」という現在の方式は、永遠に続けることができず、どこかで行き詰まることだ。「幸いにして」景気が回復しないにしても、国債が国内では消化できない事態が、いつかは到来する。

問題は、それがいつ生じるかだ。民間金融機関の対企業貸出残高は、2009年末で544兆円である。仮に毎年50兆円の国債発行が続いてそのすべてを民間金融機関が購入しなければならないとすれば、Doomsdey(最後の審判の日)までに残された時間は、あと10年少々である」(前掲紙)

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【資本政策詳解】日本メディカルネットコミュニケーションズ

メディカルネットの株式上場の概要は次の通りです。

メディカルネットは、2001年設立、歯科医院、エステサロン等のポータルサイト運営およびSEM(検索エンジンマーケティング)、HP(ホームページ)制作サービス提供などを行っている企業です。

公募価格は840円、予想PER17.7倍という水準での株式公開となりました。

規模は小さいものの業容は順調に拡大しているという印象です。

メディカルネットの主な資本政策は (表2)の通りです。

2007年9月に医療事業者限定ポータルサイト「m3.com」を運営するエムスリーと業務資本提携を行い出資を受けています。
資本提携の主な目的は、事業シナジーが見込まれるエムスリーに安定株主になってもらうことにあると思われます。

なお、エムスリーとの関係について事業等のリスクとして次の開示を行っています。「将来において何らかの要因によりエムスリーグループの事業戦略やグループ戦略(当社株式等の保有方針を含む)に変化が生じた場合には、当社の事業展開やその他に影響を及ぼす可能性があります」

上場後も大株主上位には同族関係者が並び、エムスリー併せて2/3超を確保する資本政策となっています。従業員のインセンティブは従業員持株会(保有割合0.42%)とストックオプションによっています。

早川亮社長が未行使のストックオプションを500,000株保有していることもあり、潜在株式の割合は16.61%とかなり大きなものになっています。

【リンク】

日本メディカルネットコミュニケーションズ

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日本のネット企業、利益率は突出もPERは低水準

2011 年 1 月 14 日 コメント 1 件

原材料が不要で労働力も少なくて済むインターネットサービス企業。そもそも利益率は高いが、日本勢は海外勢に比べても高い。SNSのグリーや日本のヤフーは売上高営業利益率が50%を超える。日本勢の収益力の源泉はどこにあるのか。
(日本経済新聞2011年1月14日15面)

【CFOならこう読む】

「もっとも、世界的に高い収益力を持ちながらPERは海外勢と比べ低水準だ。日本のヤフーやディー・エヌ・エーは10倍台で、米グーグルの25倍を下回る。人口減少の日本で「国内限定のビジネスを展開しても中長期的には需要の拡大を期待できない」(いちよし経済研究所の納博司主席研究員)ためだ」(前掲紙)

これがどういうことか以下数式により説明してみます。

一定成長配当割引モデルを用いると、株式の価値は次のように表されます。

P= D1/r-g = D0(1+g)/r-g

ただし、

=株式の理論価格
t=t期の配当の期待値
r=株主の期待収益率(株主資本コスト)
g=配当の期待成長率

ここで、前期の配当(D0)はすでに決まっているので、株価を決定するのは、その他の2変数(r, g)と考えることができます。このうち、株式の期待収益率rは企業の事業リスクや財務リスクに基づいて資本市場で決定されると考えられます。

一方、配当の期待成長率gは次の内部成長率(増資なしに達成できる1株当たり利益の成長率)の式によって決まると考えられます。

g=ROE・(1-d)

ただし、

ROE=株主資本税引後当期利益率
d=配当性向

内部成長率を決定する変数のうち、配当性向は長期的には大きく変わらないとすれば、高い水準のROEを維持することが利益・配当の成長のために重要になります。一定成長モデルと内部成長率の考え方を前提とすれば、ROEが高ければ株価が高くなるという関係が成立します。

ROE=税引後利益/株主資本=税引後利益/売上高 × 売上高/株主資本

売上高営業利益率が高ければROEも高くなります。
実際グリーのROEは80%と高水準です。

ところでPER(=株価/1株当たり利益)は、一定成長モデルの変形であると言えます。
つまり、

P=D1/rーg

両辺をEPS1(第1期の1株当たり利益)で割ると、

P/EPS1=(D1/EPS1)/rーg

となります。

すなわち、

PER=d/rーg=d/(rーROE・(1-d))
=配当性向/(資本コストーROE・(1ー配当性向)

この式から配当性向の影響を考えなければ、ROEが高いほどPERが高くなることがわかります。

それでは何故日本のネット企業のPERは低いのでしょうか?
それを解くカギはgにあります。

g=ROE・(1-d)でした。

しかし、この成長率の算式は毎期獲得される利益がROEの利益率で事業に再投資されることを前提しているのです。
再投資の機会がないということなら、現在のROEがどんなに高くても成長率は高くはなりません。

今日の記事の「「国内限定のビジネスを展開しても中長期的には需要の拡大を期待できない」というのは、

「国内限定のビジネスモデルでは獲得した利益を再投資する投資機会を見出すことが早晩できなくなる」

と読むべきなのです。

投資機会を見出せなくなれば、キャッシュがじゃぶじゃぶ余って行きます。
そうなれば、企業は増配することでPERが上昇する可能性があるのですが、その辺のところはまた別の機会にお話しします。

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なし

ジム・ロジャーズ氏、穀物価格急騰予測

著名投資家のジム・ロジャーズ氏は11日、米シカゴ市内で日本経済新聞記者と会い、穀物価格の急騰と世界的な食料危機の到来を予測した。穀物と共に金や原油も最高値を更新すると予想。
(日本経済新聞夕刊2011年1月12日3面)

【CFOならこう読む】

商品投資の推奨で知られるジム・ロジャーズ氏の言うことなので額面通り受け取ることはできませんが、金融緩和がカネ余りを生みそのカネが金や原油に向かうという流れは十分に予想されるところで、CFOとしては頭が痛いところです。

ちなみに昨日のドバイ原油のマーケット価格は、94.05ドル~94.15ドルでした。

なお、日本株については、割安感から、

「購入を検討していると言明した」(前掲紙)

とのことです。

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なし

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ライツ・イシューの活用を促すため規制緩和

金融庁は、企業が既存の株主に新株を購入する権利を渡す新型の増資手法の規制を大幅に緩和する方針を決めた。すべての株主への情報開示書類の送付を企業に義務付けたルールを改め、インターネット上での開示で済むようにする。新株を購入する権利を証券会社が買い取る際の規制も緩め、株主が換金しやすくする。日本市場では企業の増資による株式価値の低下が、外国人投資家の市場離れを招いている。株主利益に配慮した手法の活用を促し、市場の国際競争力を高める。
(日本経済新聞2011年1月10日1面)

【CFOならこう読む】

ライツ・イシューとは、

「株主割当増資の一種で、既存の全株主に対して時価よりも低い価格で新株を買える権利(新株予約権)を無償で割り当てる資本調達の仕組み」(日本経済新聞2011年1月11日3面)

です。

「日本では時価を基準に市場から資金が調達できる公募増資が主流だが、株式数の増加で1株当たり利益は減るが、株式の購入に応じれば、株主は出資持分の低下を避けられる。株主が保有株を増やしたくない場合や、購入資金が手当てできないケースは予約権を売却して損失を穴埋めすることが可能だ。株主が手放した予約権を証券会社が買い取り、他の投資家に販売することで、企業は計画通りの規模で資金を調達できる」(前掲紙)

現状ライツ・イシューの実施例は昨年5月のタカラレーベンによる1件しかありません。(2010年3月15日「日本版ライツイシュー第1号:タカラレーベン株急」

利用が進まない理由として、発行会社側の事務手続きの負担が重いこと、ライツを証券会社が買い取る際の規制があること、が挙げられており、今日のニュースはこういった規制を緩和し、ライツ・イシューの活用を促す、というものです。

「目論見書を(全株主に)送付する代わりに、同(金融)庁の電子開示システムに届出書を登録し、閲覧できるインターネットのアドレスを新聞で告知する仕組みに改める。
(中略)
証券会社が発行済み株式の5%超を取得する契約を結ぶ際に義務付けられている大量保有報告書の提出や、3分の1超を取得する場合に必要となるTOB手続きを省けるようにする」
(前掲紙)

望ましい方向の規制緩和であると思いますが、TOBの潜脱として利用できない仕組みを組み込む必要があると思います。

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なし

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マーリーズ・レビュー

みずほ総合研究所は英国のノーベル賞経済学者、ジェームズ・マーリーズ氏が中心になって昨年11月にまとめた税制改革指針「マーリーズ・レビュー」をリポートで紹介した。1978年に公表されたミード報告の後継報告書といわれ、
「今後数十年間、世界の税制改革論議に影響を及ぼし続けると予想される」(鈴木将覚氏)という。

(日経ヴェリタス2011年1月9日14面)

【CFOならこう読む】

マーリーズ・レポートの提案の骨子は次の通りです。

1.所得税と国民保険料、各種給付の制度的統合
2.5歳以上の子供を持つ親と、55~70歳の労働者の勤労意欲を高める税制
3.付加価値税の優遇税制や非課税措置を廃止し、課税ベース拡大
4.銀行利子など貯蓄の正常収益に対する課税を廃止
5.株式の調達コストにも支払利子控除と同様の「株式控除」を認める
6.法人税率と配当や譲渡益への税率の合計を、勤労所得の税率と同一に

レポートは企業に対する課税についてACE(Allowance for corporate Equity)の導入が検討されるべきであるとしています。

ACEの課税ベースは次のように計算されます。

「収入-賃金-法定減価償却-利払いーみなし収益率*株主基金=通常の法人所得-みなし収益率*株主基金=超過利潤に相当」
(「マーリース研究会成果報告」佐藤主光 一橋大学大学院経済学研究科・政策大学院教授)

ACEの長所について岡村忠生教授は次のように説明しています。

「法人税が課されるのは超過利益だけであるから、法人による限界投資が非法人より不利に扱われることはない。このことから、ACEは、資金調達だけでなく、投資するかどうか、どのような投資をするかについても、中立的であるとされる。

さらに、ACEの対象となる留保利益は法人税の課税が済んでいることから、所得がいつ課税の対象になるかによる税負担の差は、現在価値としては生じない。すなわち、たとえば、現在、含み益を実現して課税を受けた場合、(利益を配当しない限り)その金額だけACEの対象となる留保利益が増加し、ACEの控除により爾後の税負担が軽減される。これを、将来に含み益を実現した場合と比較すると、実現された含み益に対する税負担の現在価値の差は、
ACEによる税負担の差により、理論上は完全に打ち消される(前提条件はある)。このような課税時期に対する税の中立性は、ACEの大きな利点である」
(「これからの法人課税と税法学の課題」)

株式の調達コストに控除を認めることは、大きな税収ロスにつながると考えられますが、レポートは、これを税率の引き上げで対応すべきではないと言明しています。

「レントに対する適切な税率は、移動しないレントに対する課税から得られる利益と移動するレントに課税することから生じる不利益を比較して決められるべきである。このため、税率水準は他国の税率や経済統合の度合いにも依存するが、一般的には税率引き上げは多国籍企業が利益を英国外に移すインセンティブを高める。税率を引き上げることなくACEを導入し、税制全体で税収がバランスするようい調整することが望ましい」
(「マーリーズ・レビューの税制改革案」みずほ総合研究所 [PDF]

【リンク】

マーリーズ・レビューの税制改革案」みずほ総合研究所 [PDF]

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本日休載

出張のため本日は休載いたします。

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未公開の米フェイスブック株式割り当てについてSECが予備調査へ

2011 年 1 月 7 日 コメント 1 件

SNS最大手の米フェイスブックの資金調達が波紋を呼んでいる。SECは同社の未公開株を米金融大手ゴールドマン・サックスが投資家に販売する取引に関し予備調査を始めた。
(日本経済新聞2010年1月7日7面)

【CFOならこう読む】

「米メディアによると、ゴールドマン本体はフェイスブックに4億5000万ドルを出資した。自己資金による投資で将来的な値上り益を見込む。2012年ともされるフェイスブックのIPOで主幹事を獲得する思惑もあるとみられる。SECが関心を寄せているのは、ゴールドマンが手がけるもう一つの取引。SPVを設立し、富裕層やヘッジファンドなどゴールドマンの優良顧客に最大で15億ドルのフェイスブック株を割り当てるというもの。
(中略)
SECのルールでは株主が500人以上に達すると、非上場企業でも財務諸表などの情報を開示しなければいけない。ただ、SPVを「一人の株主」とすれば、フェイスブックは情報開示を回避できる」
(前掲紙)

投資家保護の趣旨を鑑みると、SPVを「一人の株主」として情報開示を回避することはできないように思います。

1月7日付けの米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、フェイスブックは2012年4月までに情報開示(またはIPO)を行うことを報じており、上記スキームは情報開示を回避するためのものではないのでは、というニュアンスの記事を載せています。

【リンク】

なし

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