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2011 年 4 月 のアーカイブ

GW中は休載します。

5/8まで更新をお休みします。

カテゴリー: お知らせ タグ:

S&P、日本国債格付け見通し下げ

米格付け会社、S&Pは27日、日本国債の格付け見通しを現行の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表した。
(日本経済新聞夕刊2011年4月27日1面)

【CFOならこう読む】

「S&Pは今後の見通しについては「政府のリーダーシップと財政再建策に関する政治的コンセンサスに大きく左右される」と指摘。「今後2年間に財政が現在の見通し以上に悪化した場合は、格下げとなる可能性がある」とした」(前掲紙)

日本国債の格付けは、ダブルAマイナスに据え置かれました。主要国の格付けは以下の通りです。米国AAA/ネガティブ、英国AAA/安定的、ドイツAAA/安定的、フランスAAA/安定的、カナダAAA/安定的格付けだけで言うともはや日本はこのグループには入っていません。

イタリアAプラス/安定的、スペインAA/ネガティブ

むしろこちらのグループです。

【リンク】

「【特集】東日本巨大地震の信用力への影響」スタンダード&プアーズ

カテゴリー: マクロ経済 タグ:

JVC・ケンウッド、3事業会社と合併

経営再建中のJVC・ケンウッド・ホールディングスは、持株会社と傘下の日本ビクターなど3つの事業会社を10月1日付で合併する。合併に向け5月1日付でグループを再編し、
持株会社の社長に不破久温取締役が昇格する。新体制で事業を効率化し、再建を加速させる狙い。合併するのは持株会社と日本ビクター、ケンウッド、車載機器を手がけるJ&Kカーエレクトロニクスの4社。持株会社の河原春朗会長兼社長は5月以降も代表権のある会長にとどまる。

(日本経済新聞2011年4月27日9面)

【CFOならこう読む】

2009年10月30日のエントリーで、河原会長は合併の意向を表明していることを取り上げました(2009年10月30日「持株会社下の経営統合→合併-ケンウッド・ビクターのケース」)。

ビクターとケンウッドは、2008年10月1日付で、株式移転により共同持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社」を設立し、経営統合しました。これにともない、JVC・ケンウッド・ホールディングスは、同日付で東京証券取引所市場第一部に上場し、非上場の事業会社となった日本ビクターとケンウッドの株式を100%保有する完全親会社となりました。また、両社の共通事業であり、最も大きな統合効果が期待できるカーエレクトロニクス事業において、両社の技術開発、設計、調達、生産および商品企画やマーケティング機能も統合した「J&Kカーエレクトロニクス株式会社」を設立して実質的な独立事業会社とし、JVCケンウッドグループは共同持株会社と3つの事業会社からなるグループ構造となりました。

株式移転により共同持株会社を設立するという形の経営統合は、日本では一般的に用いられています。どちらが売手でどちらが買い手かを明確にせず、ゆるやかに統合して行けるという点で日本的経営になじむとされています。

2009年10月30日のエントリーでも書きましたが、このようなステップは無駄な軋轢を回避するという意味で必要ではあるのですが、JVC・ケンウッドの場合にはいかんせん時間がかかり過ぎているように思います。

トップがリーダーシップを発揮し、スピード感を重視し、多少乱暴であっても速やかに統合を完遂させることが今の時代には必要だと思います。

【リンク】

なし

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マザーズ、2009年以来の9日続伸

新興株相場の戻りに弾みがついている。東日本大震災による業績への影響が小さいとみられるネット関連銘柄などが買われ、25日は東証マザーズ指数が9日続伸し、2009年5~6月以来の連騰を記録した。先行き不透明感から主力株の売買が見送られるなか、値動きの軽さに着目した個人の短期資金が新興市場株の戻りをけん引した。
(日本経済新聞2011年4月26日17面)

【CFOならこう読む】

「新興市場の上げが目立つ背景には震災の影響度の差がある。東証1部の自動車や電機など主力株は被災した拠点なども多く、今後の業績に与える影響も見通しにくい。反面、新興のネット関連株などは震災の影響が比較的軽微とみられており、「個人などが主力株の売買を避け、新興市場銘柄に資金を振り向ける動きが目立ち始めた」(土信田雅之マーケットアナリスト)」(前掲紙)

日経平均が最安値をつけた3月15日から昨日までの1ヶ月間の株価上昇率は、

マザーズ指数 28%弱
日経ジャスダック平均 18%弱
日経平均 12%

と新興市場の回復が鮮明となっています。

【リンク】

なし

カテゴリー: マクロ経済 タグ:

業績見通し「非開示」と株価への影響

東日本大震災の影響で、今期の業績見通しを公表しない企業が相次ぎ、投資家が対応に苦慮している。買いか売りか判断が難しく、値動きが荒くなるケースが多い。2011年3月期決算発表の本格化を控え、相場の混乱要因となる可能性も指摘されている。
(日経ヴェリタス2011年4月24日24面)

【CFOならこう読む】

3月期決算で業績「非開示」と発表した安川電機とJFEの株価の反応は次の通りです。

安川電機 20日大引け後に決算発表

21日 前日比 2.3%下落
22日 前日比 7.3%上昇

JFE 21日14時に決算発表

21日 発表後買いで反応
22日 前日比 2.8%下落

「「非開示」の初期反応としては今のところ明確な反応は見られず、投資家は判断の軸を見失っているように映る」(前掲紙)

【リンク】

なし

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「企業財務会計士」導入見送り

政府が2013年に導入しようとしていた「企業財務会計士」制度は見送りで決着した。参院の財政金融委員会は21日、同資格の創設を柱とする公認会計士法改正案の規定を削除することを全会一致で決めた。公認会計士試験に合格しながら就職できない「就職浪人」対策は、振り出しに戻った。
(日本経済新聞2011年4月22日4面)

【CFOならこう読む】

「就職浪人の問題は変わらず横たわる。2010年は合格者約2000人のうち、監査法人などに就職できなかった人の割合が4割と過去最悪になった。国は2011年の合格者枠を1500人に減らし、就職難をコントロールする方針。ただ「会計の重要性が高まるのに、会計士の人材を減らし続けてよいか」(金融庁幹部)というジレンマもある。」(前掲誌)

これを機に、机上の空論である、「2018年会計士5万人構想」は捨てるべきでしょう。会計士は資本市場の番人であると言われます。

であるなら、やるべきことは会計士を増やすことではなく、日本の資本市場を魅力あるものにすることです。

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なし

カテゴリー: 公認会計士 タグ:

楽天保有のTBS株、1株1,294円を最高裁が支持

楽天が保有するTBS株の買取価格を巡り、双方が合意できずに司法判断を求めた問題で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は20日までに、1株1,294円とした東京高裁決定を支持し、同決定を不服とした楽天側の抗告を棄却する決定をした。楽天の取得価格の半値以下で、TBS側の主張に近い額で決着した。決定は19日付。
(日本経済新聞2011年4月21日11面)

【CFOならこう読む】

このブログでも何度かエントリーしていた楽天保有のTBS株買い取り価格について、最高裁の判断が出ました。

「再編で株の価値に変動がなかった今回の事例では「買い取り請求があった日の時点で、再編が行われなかった場合に推定される株価とするのが相当」との判断を示した。その上で楽天が買い取りを求めた2009年3月31日の終値である1株1,294円を買い取り価格とした昨年7月の東京高裁決定を「結論として是認できる」と述べた」(前掲紙)

【リンク】

2011年4月20日「当社株式買取請求に関する買取価格の確定について」東京放送ホールディングス [PDF]

2011年4月20日「買取請求を行った株式の買取価格の決定について」楽天株式会社 [PDF]

2009年4月1日エントリー「tbs・楽天%E3%80%80公正な価格とは」

カテゴリー: M&A タグ:

パルコ、社長退任受け入れ

専門店ビル大手のパルコは19日、筆頭株主の森トラストと第2位のイオンが求めていた経営陣の刷新要求を受け入れ、平野秀一社長が退任する人事案を固めた。後任には両株主が求めていた牧山浩三取締役兼専務執行役が昇格する。これを受け、森トラストはパルコに対する株主提案を取り下げる。
(日本経済新聞2011年4月20日1面)

【CFOならこう読む】

3月30日のエントリー「パルコ委任状争奪の可能性」の続報です。

「パルコが固めた取締役は候補者は計10人。パルコ本体からは2人だけで、森トラストは2人、イオンは1人をそれぞれ派遣する。5人いる社外取締役も大半が交代。パルコの人事案に対して森トラストとイオンも基本合意している」(前掲紙)

今後は出資比率の引き上げも含めた業務提携について協議が進められるものと思います。

【リンク】

なし

カテゴリー: M&A タグ:

復興税の財源

東日本大震災の復興に必要な財源を確保するため、国民に幅広く負担を求める「復興税」の導入を巡る議論が活発になり始めた。政府は2011年度第2次補正予算案に復興税の創設を盛り込む構え。所得税や消費税、法人税など臨時増税案が出ている。ただ確保できる財源の規模や被災者への配慮などの点で一長一短があるうえ、与野党の隔たりも大きい。
(日本経済新聞2011年4月19日5面)

【CFOならこう読む】

「政府は2次補正で実効税率下げを見送る方向で、競争力維持や空洞化防止に懸念が残る。一方で政策減税の廃止・縮小は断行し、増収分を復興税に充てる案も浮上している」(前掲紙)

それはいけません。課税ベースを広げ、実効税率を引き下げるという税制改革の基本的な方向性を放棄し、課税ベースの拡大だけ残すというのは全く理屈が通らない滅茶苦茶な話です。とここまで書いて新しいニュースが入ってきました。

「政府は18日、東日本大震災の復興財源を確保するため、消費税を早ければ2012年度から3年間限定で3%引き上げ、8%とする方向で検討に入った。国民に幅広く負担を求め、復興を推進するのが狙いだ。被災地の住民については負担増を避けるため、税率引き上げ分の納税額を後から還付する仕組みを整える方向だ。東日本大震災の被害額は、内閣府の試算で最大25兆円に上る。消費税収は1%あたり年間約2・5兆円で、税率の3%引き上げで約7・5兆円を確保でき、3年間で復興に必要な支出の大半を賄えることになる。」
「消費税3%上げ検討、復興財源に3年限定で」2011年4月19日03時02分  読売新聞

この方向性は良いと思います。

【リンク】

なし

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カバードボンド、欧州で起債急増

金融機関が保有する住宅ローンや地方自治体向けなどの優良な融資債権を担保にした社債(カバードボンド)の起債が、欧州市場で急増している。1月の発行額は約510億ユーロと、単月で最高だった2006年1月(340億ユーロ)を上回った。バークレイズ・キャピタルでカバードボンドを担当するテッド・ロード・マネージングディレクターに同市場の現状と展望を聞いた。
(日経ヴェリタス2011年4月18日9面)

【CFOならこう読む】

-カバードボンドの発行が急増している理由は。
「投資家は安全な資産を好んでいる。先行き不透明感から発行に拍車がかかった。カバードボンドは債券の返済に充当できる別の資産が用意される(住宅ローン債権などを担保にした証券化商品とも異なり)返済の可能性が極めて高い。過去に国債の債務不履行はあるがカバードボンドのデフォルトはいまだに1件もなく、歴史的にみても安心できる金融商品だ」(前掲紙)

日本総研のレポートからカバードボンドの特徴を抜粋します。

◯今回の国際金融危機においては、CDO(collateralized debt obligation)やMBS(モーゲージ担保証券)といった、オフ・バランス型の市場型間接金融手法としての証券化商品の、次のような弱点が露呈。
①証券化して原融資債権のリスクを細分化し、移転する過程で、個々の融資債権のリスクを情報開示する仕組みや、質(信用力)の維持を図る仕組みが存在せず。
②証券化商品の発行金融機関は、当該証券化商品をいったんオフ・バランス化して発行してしまうと、その後の担保債権の信用力の維持に対し、責任をもつ仕組みとも、また、規制上の枠組みともなっておらず。
◯カバード・ボンドの制度設計
これに対して、カバード・ボンドは、オン・バランス型の市場型間接金融の手段(図表)。市場型間接金融は、制度設計を誤れば、上記①②のような問題を招来しかねない可能性を考慮し、200年余り昔から、極めてシンプルな発想で、以下のように制度設計。
①担保資産の高い質を、満期到来までの間、一貫して維持するため、
(イ)発行銀行に対し、担保資産の継続的な情報開示を義務付け。
(ロ)金融当局ないし第三者が担保資産を監視。
(ハ)必要な場合には、担保資産の入れ替えを随時行わせる。
②発行金融機関にとっては、担保資産が発行後も引き続き自行のバランス・シート上に残るため、カバード・ボンド発行後も、リスク管理を一貫して行うことが必要。
◯両者の信用力(金利)の比較
こうした制度設計上の相違を背景に、カバード・ボンドの方が、資産担保証券よりも信用力が高い、というのが市場の一般的な評価。
例えば、今回の危機到来前の「平時」における両者の金利水準を、同種のモーゲージ(不動産向け融資債権)担保のものについて比較すると、カバード・ボンドの金利は、資産担保証券よりも、おおむね15~20bp低く、民間銀行の調達金利の基準であるスワップ・レートをも下回るレベルで推移。

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【リンク】

2009年2月13日「カバー・ボンド グローバル金融市場における 金融仲介機能回復に向けて」株式会社 日本総合研究所 調査部ビジネス戦略研究センター [PDF]

カテゴリー: 資金調達 タグ: