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2011 年 6 月 のアーカイブ

ソフトバンク、証券化調達資金借り換え

ソフトバンクが今秋までに国内外の金融機関約20社からの協調融資で5500億円を調達する見通しだ。2006年に携帯電話事業を買収した際、事業収益や資産を担保とした「証券化」の手法で調達した資金を借り換える。携帯電話事業で稼いだ資金を他の事業に回せない条件での調達だったが、借り換えで資金の使い道を自由に決められるようになる。
(日本経済新聞2011年6月30日15面)

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「協調融資は期間3年超の無担保で金利は1%台となりそう。みずほコーポレート銀行が主幹事となり、三井住友銀行やドイツ銀行などが参加する。証券化で調達した資金は金利5%台と高かった。借り換えで返済期限などの条件も代わり、支払利息は年100億円~200億円程度減る見込み」(前掲紙)

証券化というのは、証券化の対象となる原資産のキャッシュフローを、コーポレートのリスクから切り離し、トリプルAの格付け(日本の国債の格付けを超えられないとするとダブルA)を取得することで、低コストの資金調達を実現する手法です。

ボーダフォン買収時点での事業リスクは相当に高かったとは思いますが、証券化からコーポレートローンに切り替えることでここまで金利が下がるというのは、日本の金融のいびつさを表わしているような気がします。

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なし

カテゴリー: 資金調達 タグ:

本日休載

出張のため本日は休載します。

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東証AIM 1号案件主幹事社長インタビュー

2009年6月の開設以来、上場実績がなかった東京証券取引所傘下のプロ向け市場(東証AIM)に、創薬ベンチャーのメビオファーム(東京・港、藤沢忠司社長)が上場申請した(7月15日上場予定)。上場審査を担当する主幹事に名乗りを上げたのはシンガポール系のフィリップ証券。下山均社長(みずほ証券出身)に、1号案件を手掛けた狙いなどを聞いた。
(日経ヴェリタス2011年6月26日15面)

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−リスクが高いとされる主幹事を引き受けた。
「当社の規模だと、私自ら上場を希望する企業を訪ね、トップと話す余裕がある。例えば私はメビオの社員ほぼ全員を知っている。藤沢社長とも、どれだけ話したか分からないぐらいだ。書面での審査ではなく、直接先方と対話するのでリスクが読みやすい。大手のように数字や報告書だけで判断すると、大丈夫かという議論になりがちだ」
(前掲紙)

2年ほど前に、私はAIMの「指定アドバイザー」について、次のような指摘を行いました(2009年7月9日エントリー「tokyo-aim初年度上場は4、5社」)。

「日本の将来を考えると、重要なのは、中小のベンチャー企業に直接金融の道を開くことです。そういう意味でTOKYO AIMに期待する部分は大きいのですが、それには従来の証券会社とは異なる、ここを専門とする「指定アドバイザー」の存在が絶対に必要ですが、今のところ手を挙げるところはないようです。」

TOKYO AIMの指定アドバイザー一覧は現在のところ次のようになっています。
TOKYO AIM 指定アドバイザー(J-Nomad)一覧

大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社 http://www.jp.daiwacm.com/
日興コーディアル証券株式会社 http://www.nikko.co.jp/index.html
野村證券株式会社 http://www.nomura.co.jp/
フィリップ証券株式会社 http://www.phillip.co.jp/
みずほインベスターズ証券株式会社 https://www.mizuho-isec.co.jp/index.html
みずほ証券株式会社 http://www.mizuho-sc.com/
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 http://www.sc.mufg.jp/

不思議なことに、ついこの前まで記載がなかったフィリップ証券の名前がちゃんと載っています。まあそれはさておき、ここに聞いたことがないような証券会社の名前が並ぶようじゃなきゃTOKYO AIMは機能していかないと思います。

もちろん指定アドバイザーの承認審査を厳格に行う必要があるのは言うまでもありません。

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なし

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【資本政策紹介】DMP

DMPの株式上場の概要は次の通りです。

 

DMPは、2002年設立、グラフィックスプロセッサーの開発・販売、独自開発した3D(立体)グラフィックス技術のライセンス供与などを行っている企業です。

公募価格は2,400円、予想PER12.2倍という水準での株式公開となりました。

 

2008年3月期まで赤字が続いていましたが、3Dブームに乗る格好で、2009年3月期より、黒転しています。

DMPの主な資本政策は (表2)の通りです。

A種、B種、C種、D種と4種類の種類株式を発行していたのが特徴的です。
2008年6月に過去の累損を一掃するため、資本準備金の取り崩しを行っています。

 

典型的なVC型のIPOで、目論見書提出日現在でVCの所有割合が69.5%となっています。今後VCがExitをどのように行っていくか注目されます。
従業員のインセンティブはストックオプションによっています。目論見書提出日現在においてストックオプションによる潜在株式の発行済株式数に対する割合は23.8%とかなり大きいものとなっています。

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株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル

カテゴリー: 資本政策詳解 タグ:

楽天、経団連退会へ

楽天は23日、経団連へ退会届けを同日付で提出したことを明らかにした。「方向性の違い」(三木谷浩史社長)が理由としている。電力会社の発送電分離に慎重な姿勢を示している経団連に、決別した形だ。
(日本経済新聞2011年6月24日5面)

【CFOならこう読む】

「三木谷社長はミニブログのツイッター上で5月27日、脱会の意向を示唆。「電力業界を保護しようとする姿勢が許さない」などとも書き込んでいた」
(前掲紙)

経団連は、重厚長大産業を中心とした古い日本企業の声を代弁する団体です。経団連が、民間の代表として、政策立案の仕組みの中に取り込まれている今の日本の仕組みが、望ましい姿であるとは思えません。

楽天には次の世代を担う新しい日本企業の声を、民主的に伝えるという点でリーダーシップを発揮してもらいたいと思います。

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なし

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米SEC委員長、IFRS先送り案追認

米国でIFRSの導入機運が後退している。シャビロSEC委員長は21日にワシントン市内で講演し、「IFRS適用を求める米企業や投資家の声はそれほど多くはない」と語り、適用の是非を慎重に判断していく方針を示した。5月下旬にSECの実務者レベルが示した事実上の先送り案を追認した形だ。
(日本経済新聞夕刊2011年6月22日3面)

【CFOならこう読む】

「米国は、米基準と国際基準との違いを埋める「共通化作業」を経て、国際基準の適用を最終的に決めるスケジュールを描いてきた。だが、最近は「共通化」作業も遅れている」(前掲紙)

日本でもよく知られている、IASBのトウィーディー議長が6月に任期を終えます。先行きは不透明ですが、コンバージェンスの努力は今まで通りしっかりと続けてもらいたいと思います。

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カテゴリー: 会計 タグ: ,

総配分性向

精密大手が株主への利益配分方針を明確に打ち出そうとしている。リコーやセイコーエプソンは総配分性向(純利益のうち配当・自社株買いに充てる比率)などの数値目標を導入する考え。リストラ効果で安定して収益を確保できる体制が整ったと判断し、株主重視を鮮明にする。
(日本経済新聞2011年6月22日15面)

【CFOならこう読む】

「富士フィルムホールディングスは2005年3月期以降、総配分性向を30%以上としてきた。今期も増収増益の公算が大きく、この水準を維持する見通しだ」(前掲紙)

富士フィルムの場合、記事では30%と書かれていますが、ウェブでは配当額と自己株式取得額を合算した金額の連結純利益に対する比率である株主還元性向(注)の目標を25%としています。
「株主還元」富士フイルムホールディングス

ただ有価証券報告書の配当政策には株主還元性向についての記載はなく、IRとしては分かりづらいように思います。

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カテゴリー: IR タグ:

IFRSの延期検討

金融庁はIFRSの日本企業への導入を延期する方向で検討する。2015年~16年にも上場企業の決算にIFRSを強制適用する方向で調整してきたが、東日本大震災で打撃を受けた製造業を中心に延期論が強まっていることに対応する。
(日本経済新聞夕刊2011年6月20日1面)

【CFOならこう読む】

「米証券取引委員会は5月下旬、米国企業にIFRSをどのように取り込むかを示す作業計画を公表。これまで最短で2015年前後と目されていた導入時期を明示せず、判断を先送りする姿勢が鮮明になった。一方で5~7年をかけて米国会計基準とIFRSとの差を解消していくとの考え方を示した」
(日本経済新聞2011年6月20日3面)

地震の影響で延期するって???
米国に右へならえする、と言えば良いのに。

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カテゴリー: 会計 タグ: ,

香港上場企業ー味千ラーメン

世界の有力企業が初めて株式を公開する場所として香港を選ぶまでになったのは、英語ですべてが完結する利便性に加え、世界の有力な機関投資家が香港に拠点を加え、世界の有力な機関投資家が香港に拠点を構え、企業価値を適切に評価する体制が整っているためと思われる。東京市場は17日も日経平均株価が下落し、第1部の株価純資産倍率(PBR)は1倍ちょうどまで下げたが、そこまで株式に対する信頼が薄い市場にあえて上場したいと考える外国企業はまずないだろう。
(日経ヴェリタス2011年6月19日65面)

【CFOならこう読む】

「ちなみに味千ラーメンを展開する重光産業(熊本市)は日本市場を素通りして、中国事業を統括する味千中国ホールディングスを2007年3月に香港取引所に上場した。17日現在の時価総額は1550億円、PERは33.5倍、PBRは5.4倍だ。東京に上場していたら、ここまでの評価は得られただろうか」
(前掲紙)

これだけ読むと、日本では無名の日本企業でも、香港で上場することで高い株価がつくという浮ついた話に聞こえますが、そうではありません。味千は中国にビジネスベースを持つ、中国最大のラーメンチェーンです。

「味千中国ホールディングス」の本社は香港ですが、実質的なチェーン本部の機能を上海に置く現地企業です。同社は重光産業とフランチャイズ契約を結び、中国大陸で味千ラーメンを独占的に出店する権利を与えられている、れっきとした中国企業です。

味千中国の株式の51%は、会長兼CEO(経営最高責任者)の潘慰(デーシー・プーン)氏が持つ。重光産業も株主だが、出資比率は会社名義と重光社長の個人名義の合計で5%に満たない。

重光産業は、フランチャイズ契約に基づいてライセンス料、技術指導料などを受け取っている。その総額は約3億円。味千中国の収益力を考えれば、過小とさえ思える金額だ。このため、一部には「重光産業は商売が下手」「中国での成功は他力本願」などと揶揄する声もある。

しかし、重光社長はこうきっぱりと反論する。

「現地の事情を知らない日本人があれこれ口を出し、利益を吸い上げれば、パートナーにやる気が出るはずがない。反対に、自分よりパートナーの利益を優先して考え、惜しまずにサポートすれば、彼らは必死になって頑張る。努力すればするほどパートナーの手元に利益が残る仕組みにしたからこそ、今日の味千中国があるんです」
日経ビジネスオンライン2009年1月27日中国に324軒、吉野家よりメジャーな「熊本ラーメン」 重光産業(熊本県熊本市)【前編】

つまり、中国で成功し大きな成長期待のある中国企業が、香港で上場して高い評価を得ている、ということです。日本で上場できない会社でも香港では簡単に上場できて、しかも高い株価がつく、というようなお話しでは全くありません。

日経ビジネスオンライン2009年1月28日号「中国でのラーメン成功で、日本が再活性化 重光産業(熊本県熊本市)【後編】」では、ラーメン経験どころか飲食店経験もない香港人のパートナーといかに結束を強めていったかが紹介されています。

重光産業が積極的に中国展開を行うことを志向していたわけではなく、味千ラーメンの味に惚れた若い香港企業家の熱意にほだされ、香港進出を許可したのが、味千中国ホールディングスの始まりだったことが書かれています。

日々の仕事を真面目に地道にこなしていくことが、世界進出にまでつながるのですね。現在海外店舗は603店だそうです(味千拉麺)。

そういえばこの会社、「桂花」ラーメンが昨年民事再生法の適用を申請した際、スポンサーとして支援を名乗り出たことを今思い出しました。

【リンク】

日経ビジネスオンライン2009年1月27日中国に324軒、吉野家よりメジャーな「熊本ラーメン」 重光産業(熊本県熊本市)【前編】

日経ビジネスオンライン2009年1月28日号「中国でのラーメン成功で、日本が再活性化 重光産業(熊本県熊本市)【後編】」

味千拉麺

カテゴリー: IPO タグ:

ストックオプション「有償型」広がる

対価を払ってストックオプションを受け取る「有償型」の導入がベンチャー企業を中心に広がっている。16日までに37社と、1年前の20社からほぼ倍増した。主流の無償ストックオプションと異なり会計上の利益を押し下げずに済むうえ、利益額など経営目標を達成した場合にのみ行使できる、といった条件を盛り込めるのも特徴だ。
(日本経済新聞2011年6月17日15面)

【CFOならこう読む】

無償のストックオプションは、役務提供の対価として付与されるものなので、その公正価値を付与した企業のPL上費用しなければなりません。これが有償であるなら、新株予約権の発行となるので、PLにはヒットしません。

また、有償ストックオプションは、税制適格要件を満たさないオーナー経営者の税制上も有利になる場合があります。

税制適格とならない無償ストックオプションは、権利行使時点で、「権利行使時の株価-権利行使価額」に対して給与所得として課税がなされ、株式売却時に、「売却価額ー権利行使時の株価」についてキャピタルゲインとして課税されます。

権利行使時に、キャッシュインがないにも関わらず、多額の納税を余儀なくされる場合があるので、税制適格要件を満たさないようなストックオプションを付与することは好まれません。

これが有償であると、権利行使時の課税はなく、売却時にキャピタルゲイン課税(原則として譲渡所得の20%(所得税15%・住民税5%)の課税)があるだけなので、無償の場合と比べ大きな税務メリットが取れる場合が少なからずあります。

「有償オプションは業績や財務目標に応じて行使条件を設定できる。ソフトバンクの場合、フリーキャッシュフロー、純有利子負債、営業利益について、一定の条件をすべて満たして初めて権利行使できる仕組みだ」(前掲紙)

ソフトバンクの行使条件は次の通りです。

「ア 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成22年3月期及び平成23年3月期並びに平成24年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書におけるフリー・キャッシュ・フローの合計額が、1兆円を超えること。なお、フリー・キャッシュ・フローは、次の算式により計算されるものとする。

フリー・キャッシュ・フロー = 営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー

イ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成24年3月期の連結貸借対照表における純有利子負債の金額が0.97兆円未満であること。なお、純有利子負債は、次の算式により計算されるものとする。

純有利子負債 = 有利子負債 - 手元流動性。

有利子負債 = 短期借入金 + コマーシャルペーパー + 1年内償還予定の社債 + 社債 + 長期借入金。

ただし、以下の(ア)及び(イ)は有利子負債に含まないものとする。

(ア)リース債務
(イ)ボーダフォン日本法人の買収に伴う事業証券化(Whole Business Securitization)スキームにおいて発行された社債(銘柄:WBS Class B2 Funding Notes、発行体:J-WBSファンディング(株))のうち、当社が平成22年3月期に取得した額面27,000百万円
手元流動性 = 現金及び預金 + 流動資産に含まれる有価証券。

ウ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成23年3月期及び平成24年3月期の連結損益計算書における営業利益の合計額が、1.1兆円を超えること。」
2010年7月29日新株予約権(有償ストックオプション)の発行に関するお知らせ」ソフトバンク株式会社

今日のニュースは、ベンチャー企業と言っても上場企業を対象にしたお話しであることに留意が必要です。
未上場企業の場合、市場株価がないので、ストックオプションの公正価値の算定は困難でしょう。

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2010年7月29日「新株予約権(有償ストックオプション)の発行に関するお知らせ」ソフトバンク株式会社

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