旧日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪に問われた元会長、窪田弘被告ら旧経営陣3人の差し戻し控訴審判決が30日、東京高裁であった。飯田喜信裁判長は銀行の経営判断の裁量を認め、3人の執行猶予付き有罪とした一審判決を破棄、逆転無罪を言い渡した。
(日本経済新聞2011年8月31日7面)
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護送船団の旗振りが突然旗を降ろし、今日からみなそれぞれに走りなさいということになり、その走り方はルール違反だと突然言われても、船の船頭としては
どうにもならなかったという面が間違いなくあったと思います。
日債銀経営陣側の小林芳郎弁護士の、「国の政策転換による破綻の責任を経営陣に負わせるべきではない」(前掲紙)との批判は至極真っ当なものであると私は思います。
【リンク】
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ソフトバンクは29日、「優先出資証券」を国内公募によって発行し2000億円を調達すると発表した。銀行などを対象にする第三者割当方式で優先出資証券を発行した企業例はあるが、公募は国内初という。
(日本経済新聞2011年8月30日15面)
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「優先出資証券は負債と資本の中間的な性質を持つのが特徴。英領ケイマン諸島に設立した100%出資のSPCが発行する。将来の配当負担を抑えるため負債と同様に投資家への償還を計画。期限は定めないが2015年5月の償還を予定する。貸借対照表では「少数株主持分」として計上され、「純資産の部」を押し上げる要因に働く」
(前掲紙)
以下プレスリリースから本件スキームの概要を抜粋します。

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(本優先出資証券発行時)
1. SFJは、投資家向けに本優先出資証券(1)を国内公募の方法により発行し、その発行金額をもって、ガリレイ・ジャパンがSFJに対して発行するユーロ円建永久劣後社債(「本社債」)(2)を取得します。
2. ガリレイ・ジャパンは、本社債の発行金額をもって、当社に対し永久劣後ローン(「本永久劣後ローン」)(3)を実行します。 3. 当社は、SFJとの間で締結する劣後保証契約(「本劣後保証契約」)に基づき、SFJが本優先出資証券の投資家に対して行う配当金および償還金等の支払いを保証します(4)。
(本優先出資証券発行後)
1. SFJが本優先出資証券に係る配当(または償還)を行う場合、当社からガリレイ・ジャパンに対して本永久劣後ローンに係る利息を支払い(または元本を返済し)、当該受領利息(ま たは当該受領元本)を原資として、ガリレイ・ジャパンがSFJに対して本社債に係る利息を 支払います(または償還を行います)。SFJは、当該受領利息(または当該受領償還額)を 原資として本優先出資証券の投資家に対する配当(または償還)を支払います。
2. SFJから投資家に対して支払われるべき本優先出資証券に係る配当金または償還金が支払われなかった場合、当社は、本劣後保証契約に基づき、投資家に対して、当該配当金または償 還金に相当する金額を支払います。
(プレスリリース 別紙 [PDF])
【リンク】
2011年8月29日「当社子会社優先出資証券の発行による資金調達について」ソフトバンク株式会社
同上 プレスリリース 別紙 [PDF]
グローバル化とIT化に伴い、一部の業界では国籍という概念が急速に薄れつつある。本特集では、日本人メリットが存在せず、世界から多国籍な人材がなだれ込む知識集約的な職業を、「無国籍ジャングル」と名付けた。代表格といえるのが、金融、財務、会計といったマネーがらみの世界だ。IT化、規制緩和、国際会計基準の導入などによって、世界の金融マーケットは急速に一体化。国籍のない膨大なマネーが世界を飛び交うようになった。
(週間東洋経済2011年8月27日号)
【CFOならこう読む】
記事は、グローバル化しても日本人に残る仕事の判断を、「日本で生まれ育った日本人でないと身につけづらい特殊性」(1億人の国内市場を対象にできる)と、「知識集約的か技能集約的」(技能は身につけやすいので国際競争にさらされる)か、の2つの軸により行い、4つのエリアに分けています。
1.グローカルエリア・・・日本人メリット大、知識集約的
日本人メリットを生かしつつ、高付加価値なスキルを身につけるエリア。
医師、弁護士、人事、システムエンジニア、グローバル営業、コンサルタント、マーケティング、記者・編集者
2.ジャパンプレミアム・・・日本人メリット大、技能集約的
日本人メリットを生かす、技能集約的なエリア。日本人ならではの高いサービス精神、組織構成員としてのチームプレー、濃密な人的ネットワークを要する職種が多い。
メガバンク地域営業、スーパー技能職、料理人、看護士、美容師、住宅営業、保険セールス、ホテルマン
3.無国籍ジャングル・・・日本人メリット小、知識集約的
世界70億人の人口と仁義なき戦いを迫られる、「超成果主義」「超資本主義」のエリア。競争を勝ち抜けば報酬は青天井だが、生半可でない才能と努力と運を求められる。
CFO、会計士、経営者、ディーラー・トレーダー、ファンドマネージャー、パイロット、財務・経理
4.重力の世界・・・日本人メリット小、技能集約的
ハングリーなインド人、中国人とのガチンコ勝負を迫られるエリア
プログラマー、介護サービス、コールセンター、レジ打ち、メーカー開発者(汎用品)、御用聞き営業、タクシードライバー、ウエーター
この記事、全体に突っ込みどころ満載で、ちょっと違うんじゃないと文句をつけたくなるところもたくさんあるのですが、CFOや会計士が無国籍ジャングルに属するのは異論のないところです。
それを否定的に捉えるのではなく、力をつければグローバルに活躍できるし、報酬もグローバルレベル、と肯定的に捉えましょう。
記事の中で、GEヘルスケア アジアパシフィックCFOの村上義人さんが、次のように述べています。
「ファイナンスは国籍や業種を越えてどこでも通用する汎用性の高いエキスパティーズ。プロとして生きる強い軸になる」(前掲誌 83頁)
とても励みになるお言葉です!!
ところで、ファイナンス以前に、我々日本人がグローバルに活動するには、英語という大きな壁が立ちはだかっています。先日トップマネジメントのヘッドハンターの方と軽くお話しする機会があり、グローバルCFOに必要な英語力のレベルについて伺ったところ、
”最低TOEIC900点”
と事も無げに仰っておられました。色々と大変ですが、今週も頑張っていきましょう。
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1ドル=70円台の超円高が日本企業の収益を圧迫している。世界的な株式相場の動揺や、実体景気の悪化懸念も経営の重荷だ。競争力の確保に向けた財務戦略
を聞く。
(日本経済新聞2011年8月11日~25日)
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連載は8回行われました。記事から各社の為替予約等短期的な方策及び生産拠点等の立地戦略について、以下にまとめてみましたので参考にしてください。

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トレンドマイクロは過去に発行したストックオプションが株価低迷で権利行使できなかったことに対応し、発行費用36億円を2011年7月~9月期に特別利益
として計上する方針だ。
(日本経済新聞2011年8月26日15面)
【CFOならこう読む】
「同社は「純利益にストックオプション発行費用を加えた額の約6割」を配当原資に充てるという方針を打ち出している。これに沿って配当すると、純利益が増える今期は1株配当が前期実績の70円を上回るとみられる。
ただ「戻し入れ益を配当原資とみなすことには抵抗がある」(マヘンドラ・ネギ最高財務責任者)といい、12月をメドに配当政策を見直す」
(前掲紙)
日本基準では、行使期間が経過するなどにより権利確定日後失効した新株予約権は、戻し入れ処理をし、特別利益に計上することとされています(ストックオプション等に関する会計基準8項、47項)。
一方、米国会計基準及びIFRSでは、権利確定日後失効した場合にも戻入れ処理は行われません。マヘンドラ・ネギCFOはこちらの立場から、日本基準に違和感を感じているのだと思われます。
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格下げ方向で検討中のトヨタ自動車や信越化学工業など21社については、3週間以内に結論を出す。現時点の格付けはAa1からA1。
(日本経済新聞2011年8月25日5面)
【CFOならこう読む】
「格下げ方向で検討しているのは、関西電力や東京ガスなど電力8社・ガス2社、東日本旅客鉄道(JR東日本)やNTTなど鉄道3社・通信2社。このほか、味の素やアステラス製薬、フジフフィルムホールディングスなど6社」(前掲紙)
ムーディーズは以下の6社について、格付Aa3からの引き下げを検討していると発表しました。
味の素株式会社
アステラス製薬株式会社
富士フイルムホールディングス株式会社
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
信越化学工業株式会社
トヨタ自動車株式会社とその子会社
検討は以下の点に留意して行われるということです。
「今回の見直しにおいては、日本政府の格下げが上記 6 社の固有の信用力に与える影響、及びサポート システムの継続性について評価する。
現在の 6 社の格付には、国内主要銀行や日本政府の国内企業に対する強固なサポートが織り込まれて おり、各社固有の信用力から 1、2 ノッチ程度上乗せされている。
ムーディーズは、見直しにおいて、日本政府の格下げ要因でもある低下傾向にある経済成長環境に対 する各社の事業プロファイル及び財務プロファイルの抵抗力などを含む固有の信用力について検討す る。また、流動性及び銀行や日本政府にとっての相対的な重要性等を評価する。日本政府の格付は Aa3 へと格下げされたが、上記 6 社に対するサポートシステムは引き続き強固であると考えている。」
(「[MJKK]日本政府の格下げを受け Aa3 の事業会社 6 社の見直しを継続すると発表」ムーディーズ・ジャパン株式会社 [PDF])
日本政府の強固なサポートとは何でしょう。
むしろ6社が日本を支えているのではないでしょうか。
【リンク】
「[MJKK]日本政府の格下げを受け Aa3 の事業会社 6 社の見直しを継続すると発表」ムーディーズ・ジャパン株式会社 [PDF]
日本の会計基準作りを狙うASBJは、年金積み立て不足を負債に計上することを定めた新たな退職給付会計基準の強制適用時期を延期する。2012年3月期末としていたが1年先送りする見通しとなった。昨年の公開草案公表後に企業の異論が相次ぎ、現在も適用範囲や方法を巡る議論が継続している。こうした調整に時間がかかるほか、企業の実務負担が大きいことにも配慮し、適用時期を見直す。
(日本経済新聞2011年8月24日15面)
【CFOならこう読む】
「企業側の指摘を受けてASBJは今春から適用時期や内容について改めて議論している。ASBJ内では、積み立て不足を一括して負債計上するとしていた公開草案の一部を手直しし、
1.負債計上に一定の猶予期間を置く
2.配当原資を定める単独決算書では当面、負債計上しない
という2案を軸に調整している」(前掲紙)
ASBJとして基準そのものを見直しするのでないのであれば、単に先送りするというのでは理屈が通りません。連単分離という方向性なら特に先送りする必要はないでしょう。
市況を睨んで先送りすることにする、というならそう言えば良いのに。
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金融庁は、ライツ・イシューと呼ばれる資金調達手法の利用促進に向け、年内をメドに規制を緩める。ライツ・イシューは既存の全株主に新株予約権を無償で割り当てるのもので、株価下落手法圧力が小さい増資手法として注目を集めている。
ただ、米国法に基づく財務諸表の提出が必要なことが多く、普及の妨げとなってきた。この提出をしなくても済むようにして、企業の機動的な資金調達を後押しするのが規制緩和の内容だ。
(日本経済新聞2011年8月23日4面)
【CFOならこう読む】
「米国株主が10%以上いる場合は、日本企業であってもSEC規則が適用され、目論見書や決算書などをSECに登録し、増資後も継続的に開示する必要が出てくる。
(中略)
そこで金融庁は、資金調達目的のライツ・イシューに限り、米国に居住する株主に新株予約権を割り当てても、行使しないよう制限することを認める。こうすれば、米国法に基づく財務諸表の提出などをしなくて済むようになるからだ」(前掲紙)
要するに、ブルドックソースがスティール・パートナーズに対し行った買収防衛策を、国として正式に認めるということですか。
大前研一氏が『お金の流れが変わった』は、外資が日本に背を向ける契機になったのは、ブルドックソース事件であったと指摘しています。こんなものを国家として正式に認めることになれば、未来永劫外資は日本の市場に背を向けることにもなりかねません。そうなれば、必然的に日本のグローバル企業も日本を出ていかざるを得なくなるでしょう。
関係当局にはぜひとも再考をお願いしたいところです。
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独立系投資ファンドのDRCキャピタルは19日、ジャスダック上場の登山用品販売コージツへのTOBについて、買い付け予定株数の下限を引き下げると発表
した。
(日本経済新聞2011年8月20日13面)
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「従来は発行済み株式数の3分の2を下限としていたが、過半数にする。TOB成立の可能性を高める狙い」(前掲紙)
買付予定の株券等の数の下限をTOB開始後に増加させることは、応募株主にとって不利になるために禁止されていますが(例外あり)、減少させることは応募株主にとって不利にならないため可能とされています(アンダーソン・毛利・友常法律事務所編『ANALYSIS 公開買付け』商事法務 287頁)。
また、買付等の期間についても30営業日から40営業日に延長されています。
さらに、非公開後の経営体制について、「現時点では現在の経営陣が引き続き担当」としていた公開買付届出書の記載を、「本公開買付け成立後にも現在の経営陣が引き続き担当する予定でありますが、上記の経営方針を効率的に進めるために必要な経営体制の見直しを行う予定であり、経営陣を見直すことも考えられます」と改めている点が注目されます。
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三菱UFJ信託銀行、三井住友トラスト・ホールディングス、みずほ信託銀行、りそな銀行の大手信託銀行が9月にも、個人の寄付の仲介業務を始める。
(日本経済新聞2011年8月19日4面)
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本件については、今年の1月18日に制度の概要について取り上げました。
2011年1月18日「寄付、特定信託を通じ簡単に」
「政府は2011年度の税制改正で「特定寄付信託」という新しい制度をつくり、税制優遇策も盛り込まれた。信託銀の仲介開始で、日本でも寄付が増える可能性がある。利用者は信託銀の窓口で寄付したいお金を一括で預け入れる。信託銀は寄付を毎年、一定額ずつ寄付先に送る仕組み。最低預入額は信託銀によって異なる見通し。10万円から受け付けるところや、最低額を1000万円にすることを検討している信託銀もある」
(前掲紙)
2011年度税制改正で、信託の運用益を非課税とすることや、毎年の寄付額の半分を所得税額から控除できるといった税制優遇策が盛り込まれました。公共の福祉に係る財源は、税金という形で国が強制的に徴収する形よりも、国民が自らの意思に基づき自主的に差し出す形の方が望ましいと考えられます。
それだけに寄付金の税額控除の仕組みを導入したこと自体は評価できますが、その限度を寄付額の半分とするなどというケチ臭いことを言わず、全額を税額控除できるようにしたら良いのに、と思います。
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