ソフトバンクは商いを伴って上昇。前日に自社株買いを発表したのが材料視された。
(日本経済新聞2011年9月30日18面)
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昨日ブログで取り上げた、ソフトバンクの自社株買い発表の続報です。
「取得上限は119億円と時価総額の1%に満たないが、週前半までの下落が急だっただけに「買い戻しのきっかけとしては抜群のタイミング(大手証券)だったようだ」(前掲紙)

自社株買いは需給をタイトにすることにより、株価上昇を促す財務戦略であるという誤解が一部にありますが、119億円の自社株買いでも株価を動かすのです。
自社株買いの一番の意義は、株価が割安であるということを経営者が市場に伝えるシグナリング効果にあります。
そういう意味では自社株買い発表と合わせる形で、冬春商戦向けスマートフォンの新製品11機種を発表し、脱iPhone依存を印象付けたのも効果的であったように思います。
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なし
ソフトバンクは28日、取得総額119億円を上限とする自社株取得枠を設定すると発表した。KDDIが米アップルのスマートフォン「iPhone」を発表すると22日に報じられたのを受け株価が急落しており、株主への利益配分を増やし株価のてこ入れを狙う。
(日本経済新聞2011年9月29日17面)
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ソフトバンクの株価が急落しています。

自社株取得枠設定の概要は次の通りです。
(1)取得対象株式の種類 当社普通株式
(2)取得する株式の総数 8,000,000株(上限)
(3)株式の取得価額の総額 119億円(上限)
(4)取得方法 信託方式による市場買付
(5)取得期間 2011年10月3日~2012年9月30日
「今月上旬に400万株の自社株買いを実施しており、今回は改めて自社株買いができる限度いっぱいの取得枠を設定した」(前掲紙)
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2011年9月28日「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(会社法第165条第2項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」ソフトバンク株式会社
年収100万ドル(約7600万円)以上の富裕層は、最低でも中間層並みの税率を課されるー。
オバマ大統領が米連邦債務の削減のため打ち出した「バフェット・ルール」を巡り、米国内で賛否が割れている。「公平性が増す」との声がある一方、「景気回復を阻害する」との指摘も根強い。米国で所得格差が広がっていることが背景にあり、2012年の大統領選の争点に浮上する可能性もある。
(日本経済新聞2011年9月28日7面)
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「米国の所得税は日本と同様、所得税が増えるほど税率が上がる累進制。では、なぜ富裕層の税率が中間層を下回る現象が起こるのか。カギは収入源にある。
所得税率は10~35%の6段階だ。だが、最富裕層の人たちの多くは勤め先の給与でなく、配当や株式の値上り益(キャピタル・ゲイン)で収入を得ることが多い。これらに適用される税率は15%にとどまるため、総所得に対する税率が低くなる例がでるわけだ」(前掲紙)
ベンチャーの経営者から、自らの報酬をどういう基準で決めたら良いかという相談を受けることがあります。例えば利益のうち自分の取り分は何%が妥当かと。
しかし、そのパーセンテージは利益の水準によって変わってくるので、パーセンテージで一律的に基準を設定することは困難です。従って最低限の報酬を固定で設定した上で、業績給部分は賞与、及びストックオプションや株式報酬といったエクイティで支払われることが多いのです(特に米国では)。
ということは、エクイティからの収入も役員報酬の一部なんだから、給与と同じ税率で税金を取るべきだという議論になりそうですが、その議論には重要な視点が抜けています。
それは法人税の存在です。
給与は法人の損金になるので法人税の対象になりませんが、キャピタルゲインや配当は法人の損金にならないので、株主レベルで税金をかけると、同じ所得源泉に対し二重で税金がかかることになるのです。
法人税が所得税の前取りであると考えるなら、キャピタルゲインに対しては一度法人税がかかっているのだから、再度株主レベルで税金をかけるべきではない、ということになります。
そう考えると、安易にキャピタルゲインの税率を上げるべきではないということになり、それは正論なのですが、その議論には「法人税を支払っている」という前提があることを忘れていはいけません。
米国の多国籍企業には、法人税をごくわずかしか負担していない企業がたくさんあります。日本だって70%以上の会社が赤字会社です。
法人税で税収を確保するのはとても大変なのです。
だったら、いっそのこと思い切り法人税率を引き下げ、その上でキャピタルゲインも給与も個人レベルで累進制によりしっかり課税すれば良いとも思われます。
しかし、そこにも投資性所得は容易に国境を越えてしまうという大きな壁があるのです。
所得税も法人税も駄目だとなると、税収を確保するには消費税しかないということになりますが、私が今言いたいのはそのことより、所得税も法人税も駄目なのにその税率を引き上げたり、累進制をきつくしても、何の意味もないというこです。
復興増税の議論もこのことを前提に進めなければ行けないと思うのです。
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なし
日清紡ホールディングスは26日、自動車ブレーキに伴う摩擦材で世界に2位のTMDを買収すると発表した。買収額は約4億4千万ユーロ(約450億円)。摩擦材で世界4位の日清紡は、買収により首位に立つ。アジア市場に強い日清紡は欧州や南米に強いTMDを傘下に収めてグローバル化を進める。円高を利用して海外に活路を求めるM&Aが加速してきた。
(日本経済新聞2011年9月27日9面)
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最近の日本企業による主な海外の企業のM&Aは以下の通りです。
武田薬品
スイスの製薬会社、ナイコメッド(チューリッヒ)を96億ユーロ(株式価値+純負債)で買収
アサヒグループホールディングス
マレーシアの清涼飲料2位ペルマニスを820百万マレーシア・リンギット(RM)(約216億円)で買収
ニュージーランドと豪州で酒類事業を展開するインディペンデント・リカー・グループを1,525百万ニュージーランドドル(約976億円 )で買収
ユニチャーム
ベトナムの乳幼児用、紙おむつと生理用品大手ダイアナを買収
日清紡の鵜沢社長は、
「6重苦(円高、高い法人税、労働規制、環境制約、FTAの遅れ、電力不足)のある日本で投資するリスクは大きい」(前掲紙)
と述べています。
空洞化に伴う失業率の上昇が心配です。
【リンク】
2011年9月26日「゙レーキ摩擦材メーカー TMD Friction Group S.A. の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」日清紡ホールディングス株式会社 [PDF]
2011年05月19日「Nycomed社の買収(子会社化)について-グローバルでのさらなる成長に向けて-」武田薬品工業株式会社
2011年07月21日「マレーシア飲料会社の買収に関する株式売買契約締結のお知らせ」アサヒグループホールディングス株式会社
2011年08月18日「ニュージーランド・豪州酒類会社に関する株式売買契約締結のお知らせ」アサヒグループホールディングス株式会社
2011年8月25日「ベトナム Diana JSC の 95.0%株式取得について」ユニ・チャーム株式会社 [PDF]
ブレインバッドの株式上場の概要は次の通りです。

ブレインバッドは、2004年設立、データ解析技術(データマイニング)による経営支援を行っている企業です。
公募価格は2,200円、予想PER11.1倍という水準での株式公開となりました。22日にIPOしましたが、買い注文が殺到して売買が成立せず、公募価格の2.3倍となる5,060円まで気配値を切り上げて上場初日を終えています。

顧客の約8割が大企業(マクドナルド、博報堂等)で、1社当たりの売上の増加に伴い業績が拡大しています。
ブレインバッドの主な資本政策は (表2)の通りです。


VC型のIPOで、目論見書提出日現在で草野社長の持分割合が37%となっています。
従業員のインセンティブはストックオプション、従業員持株会、現物株によっています。
【リンク】
株式会社ブレインパッド
2012年10月の合併を目指す新日本製鉄と住友金属工業の統合新会社の概要が固まった。新社名は「新日鉄住金」。新日鉄と住金の合併比率は1:0.7程度とみられる。両社は2月に合併計画を発表した後、公正取引委員会に合併の承認を得る手続きと並行して、合併比率など重要事項について交渉を続けてきた。生産規模で世界2位の製鉄会社誕生に向け大きく前進する。
(日本経済新聞2011年9月22日1面)
【CFOならこう読む】
「22日午後、新日鉄の宗岡正二社長、住金の友野宏社長が都内で記者会見を開き、社名や合併比率を発表する。新日鉄は自動車向けなど鋼板に強い。住金は資源・エネルギー分野を中心としたパイプで数多くの世界シェア製品を持つ。両社の強みを生かしたグローバル戦略など、統合で得られる効果についても説明する見通しだ。
(中略)
合併比率は21日時点の両社の株価の比率とほぼ同じとなる。新日鉄が存続会社となる公算が大きく、この場合、住金の株式1株につき新日鉄の株式0.7株程度を割り当てる」(前掲紙)
21日終値は、新日鉄234円、住友金属169円でしたから、この価格に基づき合併比率を算定すると、1:0.72となります。
それにしてもこういう重要な情報が何故公表前に新聞に載るのでしょう?
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なし
経団連の米倉弘昌会長は20日、日本経済新聞のインタビューに応じた。野田佳彦政権に東日本大震災からの復興政策の加速を求めて要望。復興増税の期間は「10年は少し長すぎる」と述べ、財源として消費税も考慮に入れるよう求めた。政府が被災地で検討する「復興特区」で法人実効税率(現在約40%)を引き下げるよう要望。円高対策としては、企業の競争力強化を促す施策が必要との見方を示した。
(日本経済新聞2011年9月21日7面)
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米倉会長は、復興財源について、3つの「基幹税」の組み合わせにすべきだとの認識を示しています。
法人税増税について「法人税引き下げは3年くらい結構だ」と語り、2011年度の税制改正で合意された法人税の実効税率5%引き下げを3年間先送りすることを容認する姿勢を示しています。
政府税調は、5%減税したうえで3年間だけその一部を増税する案を示していますが、これと実効税率引き下げを3年間先送りすることは同じではありません。
2011年の税制改正は、減税と繰越欠損金の使用制限等課税ベースを広げることがセットでしたから、減税後増税というのは、課税ベースが広がる分だけ増税になる可能性があることに留意すべきです。
復興財源の議論の中で、日本企業は諸外国に比べ法人課税の負担率が低い、という声を聞くことがあります。例えば、法人課税の負担に関するGDP 対比による国際比較では、アメリカ、イタリア、フランスより低いという調査結果もあります(リファレンス平成22年10月号 「企業の法人税等負担の計測手法と国際比較 」財政金融課 加藤 慶一 [PDF]117頁)。
しかし繰り返しお話ししているように、最も重要なのは国内における雇用です。そのためには企業が日本から出ていかないように、そして多くの外国の企業に日本に来てもらうようにする必要があります。
言うまでもなく、企業の立地戦略上、法人税等の負担がどれくらいかは重要な検討項目の一つになります。
そこで検討されるのは、言うまでもなくGDP対比の国際比較なんぞではなく、税引前利益に対する法人税等の負担率です。
この点で見ると、日本企業の法人税等の負担は諸外国に比べ圧倒的に高いのです。

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最低限、この事実を前提に議論して頂きたいものです。
【リンク】
リファレンス平成22年10月号 「企業の法人税等負担の計測手法と国際比較 」財政金融課 加藤 慶一 [PDF]
独立系投資ファンドのDRCキャピタルは16日、ジャスダック上場の登山用品販売、コージツに対するTOBが成立したと発表した。対象となる企業が反対意見を表明したまま、敵対的TOBが成立するのは、2007年にソリッドグループホールディングスが買収されて以来、2例目となる。
(日本経済新聞2011年9月17日15面)
【CFOならこう読む】
本公開買付報告書によれば、本公開買付けに対し、当社の普通株式 17,478,721 株(議決権数:17,478 個、総株主等の議決権に対する割合:60.87%(小数点以下第三位四捨五入))の応募があり、応募株券等の総数 が買付予定数の下限(9,371,565 株)以上に達したため、本公開買付者らは応募株券等の全部の買付けを行 うとのことです。本公開買付けに係る買付け等を行った後における公開買付者らの株券等所有割合は 77.12%(小数点以下第三位四捨五入)となります。
株価低迷もあり、今後も日本企業を対象にした敵対的TOBは起きそうです。
【リンク】
2011年9月16日「投資事業有限責任組合 DRCKJ 及び投資事業有限責任組合 DRCIIによる 当社株券等に対する公開買付けの結果のお知らせ」株式会社コージツ [PDF]
日立製作所の中西宏明社長は15日、日本経済新聞社の取材に応じ、三菱重工と社会インフラを中心に幅広く事業統合を検討していることを認めた。
(日本経済新聞2011年9月15日9面)
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「日立は将来の経営統合に前向きだったが、中西社長は15日の取材で、「(今も)経営統合の話をしているかといえばノー」と否定した。「OBへの合意取り付けなど)ステップを踏むことが大事なので、今は時期尚早と言うしかない(三菱グループ関係者)という事情に配慮したためとみられる」(前掲紙)
日本企業の場合、企業統治機構の重要な位置にOBが組み込まれている会社がたくさんあります。そういう企業の意思決定はとても遅くなります。そしてどうにもならなくなって初めて動くことになるのです。カネボウのように。
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ギリシャ国債の損失拡大懸念も高まる。仏銀など欧州銀が2011年1~6月期決算で計上したギリシャ国債の減損損失の会計処理を、IFRSを作るIASBが問題視しているためだ。現在、欧州銀が採用する金融商品の会計処理では、国債はトレード目的の「売買目的」と「満期保有目的」に分類される。IASBが問題視するのは売買目的の会計処理だ。
(日本経済新聞2011年9月15日9面)
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「1~6月期決算では独コメルツや英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは売買目的のギリシャ国債を市場価格を参考に、それぞれ51%、50%減損した。一方、パリバやソシエテ、アグリコルなどは21%の減損にとどめた。市場での取引量が極端に落ち込んでいるため、市場価格は正当な価値ではないと判断。ギリシャの第2次金融支援に伴う民間負担で、国際金融協会(IIF)が試算に用いた数字を使った。
IASBは市場機能が低下しても、市場取引がある限り無視してはならないと主張。関係者によるとIASBは「会計基準の解釈の問題ではなく明らかな逸脱」と捉えており、欧州規制当局はIASBの通知を受けて対応を検討している」(前掲紙)
IAS39(IFRS13「公正価値測定」が公表されており、2013年1月1日に発効されます)は、公正価値の測定基準として、「活発な市場」が存在する場合は「公表された相場価格」が最も強力な証拠となる、存在しない場合は、取引事例、類似する金融商品価格、割引キャッシュフロー分析、オプション価格算定モデル等の「評価技法」を用いて算定する、としています。
「活発な市場」がある場合とは、相場価格が容易に入手可能で、それが独立第三者間条件にもとづき実際に、かつ、定期的に行われている取引」 が存在する場合と定義されています。
仏銀は、「活発な市場」が存在しないから「評価技法」すわなち国際金融協会の試算を公正価値としたのですが、IASBは、取引量が落ち込んでいるとしても、「活発な市場」は存在するから、これを無視することは許されないと言っているのです。
いずれにしても、民間企業の会計処理の是非についてIASBが直接モノを言うのは異常であると感じます。
そんな権限がIASBにあるのでしょうか?
あるのだとしたら監査人との関係はどのように整理されるのでしょうか?
何だかとんでもなく空恐ろしいものを私たちは導入しようとしているのかも知れません。
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