アーカイブ

2011 年 10 月 のアーカイブ

【資本政策詳解】イーブックイニシアティブ

イーブックイニシアティブの株式上場の概要は次の通りです。

イーブックイニシアティブは、2000年設立、スマートフォンやタブレット端末、パソコン向けに漫画を中心とした電子書籍を販売している企業です。

創業者で取締役会長の鈴木雄介は株式会社小学館において、1998年に通信衛星を利用して電子書籍の配信を行うため「電子書籍コンソーシアム」を結成し、出版社、書店、キャリア、メーカーなどの業界から約150社の参画を得て実証実験を行いました。その後、2000年3月に実験が終了したことを機に、そこで培ったノウハウや人脈を活用し、2000年5月イーブックイニシアティブを設立しました。

公募価格は760円、予想PER7.1倍という水準での株式公開となりました。

2008年1月期まで赤字でしたが、2011年1月期の当期純利益は前期比5倍の9400万円を計上しています。

2007年1月期及び2008年1月期の決算はGC注記をつけており、いずれの会計期間においても減損損失を計上しています。
また上場直前期の2011年1月期の貸借対照表に繰延税金資産は計上されていませんが、5億円弱の繰越欠損金があり、来期の法人税等の納税はなさそうです。

イーブックイニシアティブの主な資本政策は (表2)の通りです。

2010年1月期現在1,118百万円の累損があり、これを一掃するため2011年1月に資本金及び資本準備金の取崩しを行っています。定時株主総会を待たずに、決算期末直前でこの処理を行っているところが特徴的です。

典型的なVC型のIPOで、目論見書提出日現在で鈴木会長と小出社長の持分割合が15%となっており、今後VC等のイグジットに伴い株主構成がどのように変わるか気になるところです。

従業員のインセンティブはストックオプションによっており、目論見書提出日現在で潜在株式の割合は15.6%と若干高めの水準になっています。また鈴木会長、小出社長の両名にもストックオプションが付与されています。

資本政策と直接関係ない話ですが、小出社長の経歴を見ると、会計士補として太田昭和監査法人でパートタイム勤務していたことが書かれています。

会計士協会のサイトで検索をかけてみましたがヒットしませんでした。登録を取り止めたということでしょうか?

【リンク】

株式会社イーブックイニシアティブジャパン

 

 

カテゴリー: 資本政策詳解 タグ:

ベンチャー会社の評価 ー オリンパスのケース

オリンパスは27日、国内外の企業買収で取得額を決めた経緯などを発表した。国内3社の企業価値を前提となった事業計画を明らかにするなど「買収額などは適正」と説明してきた根拠の一部を明らかにしたが、市場には財務上の問題がすべて解決されたのか説明が不十分との声がある。一層の情報開示を求めている株主との溝も埋まっていない。
(日本経済新聞2011年10月28日12面)

【CFOならこう読む】

「2006~2008年に買収した環境リサイクルのアルティスなど国内3社の2008年度売上高は計54億円。これが2012年度に約900億円に成長する計画を前提に企業価値を算定したが、2011年度見込みは65億円強。計画と実際の相違が、2009年3月期に実施した557億円の減損処理につながったもようだ」(前掲紙)

先日、とある中小企業のM&A仲介を専門に行っている会社の社長の話を聞く機会がありました。

その社長は、未上場の中小企業の評価は時価純資産をベースに行うべきで、DCF法によるべきではないと話されていました。
DCF法は恣意的にどんな金額でもはじき出すことができてしまうから、というのがその理由でした。

私はそれは違うと思いながらその話を聞いていました。

中小企業であろうと未上場であろうと継続企業である限り、その価値評価は適切な事業計画に基づき行われるべきです。しかしその事業計画は買い手の側で厳しく吟味されることが前提です。

DDにおいても最も時間をかけて検討されるべきも、この事業計画の妥当性です。

その上で売り手と買い手との間で行われる買収価格を巡るギリギリの交渉を経て、漸く適切な価格に落ち着くのです。つまり、恣意的に金額が算定されるのは、DCFという手法自体が悪いわけではなく、その使用方法に問題があるからなのです。

オリンパスの場合にも、事業計画の検討と価格の交渉がどのように行われたかが問われることになります。将来の事業計画は一律的に決まるものではなく、いくつかのシナリオとその生起確率に基づき決定されるものです。2012年度の900億円の売上高もこういった観点から検討されなければいけません。

オリンパスは、昨日公表した「当社の過去の買収案件に関する追加情報について」の中でこの辺りの経緯について言及していますが、今後第三者委員会においてその妥当性について調査されることになるものと思われます。

【リスク】

2011年10月23日「当社の過去の買収案件に関する追加情報について」オリンパス株式会社 [PDF]

 

「時価総額<実質手元資金」の企業77社

株式時価総額が手元資金から有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」を下回る企業が増えている。26日時点で77社にのぼり、6月末に比べ23社増えた。世界景気の減速懸念による株価下落に加え、成長投資や株主配分など手元資金の有効な使い道を示せていないケースもある。
(日本経済新聞2011年10月27日17面)

【CFOならこう読む】

「企業の時価総額がネットキャッシュを下回る場合、全株式を買い取れば、買収額より多い現金を手中にできる。株式市場ではPBRが理論上の解散価値を示す1倍を割り込む企業が東証1部の約7割に及ぶが、時価総額がネットキャッシュを下回るのは市場での評価がさらに低い状態といえる。

時価総額とネットキャッシュの差額が大きい企業をみると、船井電機やホシデン、半導体製造装置の新川など電機やハイテク関連銘柄が上位に並んだ。景気減速で家電や情報機器の需要が減り、収益が悪化するとの懸念を背景に株価が下落。時価総額がネットキャッシュを割る企業が相次いだ」(前掲紙)

株式価値=企業価値−(有利子負債−余剰資金)
=企業価値+(余剰資金−有利子負債)
=企業価値+ネットキャッシュ

したがって、企業価値がゼロだとしても株式価値がネットキャッシュを下回ることは理論的にはないはずです。
にも関わらずそういう企業が77社も存在するのは何故でしょう。

個別企業を検討していけば、その理由は色々と見つかるかも知れませんが、ここでは一般的にどんなことが考えられるか書いてみます。

まず考えられる理由の一つは手元資金=余剰資金とは限らないということです。

給料等の支払いに充てるために、手元資金を確保しているのであれば、その部分は余剰資金ではないので、株式価値を構成しません。

次に考えられるのは企業価値がマイナスである場合です。この場合には、

株式価値<ネットキャッシュ

となります。

そしてもうひとつ考えられるのは、手元資金が有効利用されず無為に費消されると市場が評価している場合です(エージェンシーコストですね)。

「評価の低さは手元資金を有効利用できていない点とみて活用を急ぐ企業が多い」(前掲紙)

というのはこのタイプの企業の株価対策としては有効です。

しかし、このタイプの企業ではなく、実は最初の2つのタイプのどちらかの企業であるにも関わらず、自社株買いなんぞしてしまったら、近い将来一気に資金不足に陥ることになる可能性もあるので、その見極めは慎重に行なう必要があります。

最後にもう一つ。

日本の株式市場全体が下げている中、個別企業を見ると理論価格を下回る水準まで下げている銘柄が存在している、ということが考えられます。

77社の中には、これに該当する銘柄も少なくないように思います。

【リンク】

なし

IFRSの投資判断有用性

企業にとっての望ましい投資家と、市場にとっての望ましい投資家とは違うというのが、証券市場に内在する根本的な問題である。その結果、投資家保護あるいは投資家利益を考える場合にも、市場関係者と企業経営者の考え方は違ってくる。両者が想定する投資家が異なるからである。
(日本経済新聞2011年10月26日19面 大機小機)

【CFOならこう読む】

「その結果、市場関係者が決める規制やルールが企業経営者にはゆがんで見えてしまう。その典型がIFRSである。市場関係者は、世界共通の会計基準で比較をしながら大量の売買をする投資家を考えて、売買の判断が容易になるような会計基準をつくろうと考える。それに対して、企業経営者は、自社の独自性を評価してくれる株主にとって、このような標準的な会計基準はほとんど無意味であると考えてしまう」(前掲紙)

世界的に著名な多くの会計学者が、IFRSの投資判断有用性について疑問の声を投げかけています。

例えば世界の会計研究をリードするシャム・サンダー氏(米イエール大学教授、アメリカ会計学会元会長)は、「この論文が構築しようとする体系全体が(IFRSを指すー筆者注)•••砂上の楼閣である」とする厳しい批判を寄せています。

IFRSの反対者は、投資判断に有用な会計基準を否定しようとする者ではなく、その投資判断有用性について否定している者であることに留意する必要があります。

【リンク】

なし

カテゴリー: 会計 タグ:

ギャップフィリング

21世紀の企業経営のキーワードはグローバル化とダイバーシティ(多様性)、イノベーションと考えている。そのグローバル化の手段としてM&Aは避けて通れない。
(日本経済新聞2011年10月25日15面 日経フォーラム世界経営者会議ー武田薬品工業 長谷川社長)

【CFOならこう読む】

「M&Aの過去の事例を調べたところ、国境を越える「クロスオーバー」のM&Aでは、企業同士がギャップ(弱点)を補い合う「ギャップフィリング」の組み合わせでの成功事例が多い。この方式ならば「時間を金で買う」ことが可能になるからだ。キャップには進出済みの市場や生産能力、研究開発力などがある」(前掲紙)

ギャップフィリング型のM&Aは、両社がお互いの弱点を補い合うことが必要ですが、そういう理想的な組み合わせはなかなかありません。この会社を買えばこちらの弱点を補える、という案件は少なからずあるかも知れませんが、その相手の弱点をこちらが補えるという案件はそうはありません。

むこうには資金がないがこちらにはある、というのはギャップフィリングにはなりません。
それ以外の何かがないと、この型のM&Aはうまくいきません。

【リンク】

なし

カテゴリー: M&A タグ:

ラウンドワンのセールスアンドリースバック

東日本大震災後に「安近短」レジャーの代表格として注目されたラウンドワン。ボーリング場やカラオケ、ゲームセンターなど丸ごと備えた大型店舗が売り物だが、今その出典戦略が大きな転換点を迎えた。用地と店舗を売却して賃借に切り替えるなど「所有から利用へ」カジを切り、膨らんだ資産を圧縮して得た資金を債務返済に充て始めた。杉野公彦社長は「2016年3月までに実質無借金にする」と宣言。将来の米国進出などに備えて財務体質の改善を急ぐ。詳報を伝えている。
(日経ヴェリタス2011年10月23日16面)

【CFOならこう読む】

「大阪一の繁華街、梅田に3月開業した「ラウンドワン梅田店」。13階建てのビルの3~13階にボウリングやカラオケ、ゲームセンターなどが集まり店舗面積は1万5000平方メートルにのぼる旗艦店だ。

しかしこの店舗、実は開業の2週間前に売却されていた。売却と同時に賃借契約を結ぶセールスアンドリースバックという取引のため、店舗は予定通り開業して営業している。この取引では、数十億円規模の売却損が発生。ラウンドワンは前期決算で、他の店舗でも同様の売却損を計上し、126億円の最終赤字に転落した。
損失を出してまで売却を急ぐ理由は、前期末で1361億円と自己資本の1.7倍に達した有利子負債を圧縮するためだ。」(前掲紙)

セールスアンドリーズバックと言っても、その多くはファイナンス・リースであると思われます。

ファイナンス・リース取引とは、次のいずれも満たすリース取引をい言います。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」5項)

(1) リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引

(2) 借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもた らされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に 伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引

そしてこの要件に該当するかどうかについては、その経済的実質に基づいて判断すべきものですが、次の(1)又は (2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定されます。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」9項)

(1) 現在価値基準
解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(以下「見積現金購入価額」という。)の概ね 90 パーセント以上であること

(2) 経済的耐用年数基準
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね 75 パーセント 以上であること(ただし、リース物件の特性、経済的耐用年数の長さ、リース物件の 中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が 90 パーセントを大きく下回る ことが明らかな場合を除く。)

ラウンドワンの場合、リース資産が、2010年3月期 252億円から2011年3月期392億円に急増しているのは、セールスアンドリースバック実行に伴うものと思われます。

PLでは2011年3月期に特別損失として、出店計画変更損失が214億円計上されており、ここにセールスアンドリースバックに伴う売却損が含まれていると考えられます。

セールスアンドリースバックに伴う売却損益は、長期前払費用又は長期前受収益として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減 して損益に計上するものとされています。
(企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」49項)

しかし、ラウンドワンの場合、繰延処理ではなく一括費用処理によっています。

これは、企業会計基準適用指針第 16 号 「リース取引に関する会計基準の適用指針」49項の次の項目に従ったものと思われます。

「当該物件の売却損失が、当該物件の合理的な見積市場価額 が帳簿価額を下回ることにより生じたものであることが明らかな場合は、売却損を繰延処理せずに売却時の損失として計上する。」

【リンク】

2011年3月10日「『ラウンドワン梅田店』」の売却と賃貸契約締結に関するお知らせ」株式会社ランンドワン [PDF]

 

 

カテゴリー: 会計 タグ:

Olympus shows Japan’s negative side

オリンパスの菊川剛会長兼社長と社長職を解かれたマイケル・ウッドフォード氏との間で解任理由や過去の買収を巡り主張が対立している問題について複数の海外メディアが詳報を伝えている。
(日本経済新聞夕刊2011年10月20日3面)

【CFOならこう読む】

「英紙フィナンシャル・タイムズは「オリンパス問題は日本のネガティブな側面をあらわにした」と報じた。日本企業は(株主の方を向かずに)取締役の内輪の議論で意思決定がなされているとして「日本企業は変革を遂げる時期に来ている」と強調した。」(前掲紙)

フィナンシャル・タイムズは次のカルロス・ゴーンの言葉を引用しています。
FT has quoted Carlos Ghosn’s following words.

“If you’re French and you come to Japan, you have no chance, zero, of budging the system an inch”

But I would like to say to the all excellent managers of the World, “Nissan has changed”.

Olympus is a company unusual also in Japan.

Please come to Japan.
Japan changes.

【リンク】

なし

日産・ルノー、資本のねじれ

ルノーとの二人三脚でEV時代の盟主をめざす戦略だが、ルノーと日産自動車の間には「資本のねじれ」が横たわっている。
(日本経済新聞2011年10月20日17面)

【CFOならこう読む】

「ユーロネクスト市場に上場するルノーの株式時価総額は約8500億円相当。日産自動車(3兆2000億円)の1/4強にすぎない。ルノーは日産自動車の発行済株式の43%を保有しており、その価値(約1兆4000億円)だけでルノーの時価総額を上回る。
仮にルノーを買収すれば、より価値のある日産自動車を手中にできる計算だ。「小」が「大」を支配する構図となっている」(前掲紙)

グローバル化が進めば、あちこちでこういう問題が起きてくるのでしょう。

買収防衛問題と絡む話なので事は重大です。

以前、親子逆転問題を解決するために、イトーヨーカ堂グループが実行したような組織再編を世界規模で実行する必要があるかも知れませんね。

【リンク】

なし

カテゴリー: M&A タグ: ,

米IT次のカリスマは?

米アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ氏が56歳で死去してから約2週間。「米国衰退の予兆だ」と喪失を嘆く声が続く一方、シリコンバレーでは”ポスト・ジョブズ”のIT業界の旗手は誰かに関心が集まる。人々の生活を変える魅力的な商品・サービスを提供し続けられるかが、最大の条件だ。
(日本経済新聞2011年10月19日6面)

【CFOならこう読む】

記事で取り上げられているのは、ソーシャル・ゲーム最大手の米ジンガのマーク・ピンカスCEO、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾズCEO、グーグルのラリー・ペイジCEOの3人です(そういう意味では目新しさも、驚きもない記事です)。

日本ではどうか?

日本でも次世代のカリスマ経営者が現れる可能性が十分にあると思います。
ここ1~2年の間で私が出会った若い経営者にはそういうポテンシャルを感じる人がたくさんいます。

彼らの共通点は軽々と国境を超える点です。

海外へなかなか進出出来ない旧世代のIT経営者と異なり、彼らにとって市場は世界です。そしてそれを前提に人材の採用を進めているので、オフィスには多くの外国人がいます。

横浜ベイスターズのDeNAへの売却を審議するプロ野球のオーナー会議の方々は、そういう時代の
変化を感じておられないのだろうなぁ。

【リンク】

なし

カテゴリー: 雑感 タグ:

オリンパス社長解任、続報

14日突然解任されたオリンパスのマイケル・ウッドフォード前社長兼最高経営責任者(CEO)は15日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、解任直前に、書簡で「重大な企業統治上の懸念」を理由に、菊川剛会長と森久志副社長に対し辞任を求めていたことを明らかにした。
(ウォールストリートジャーナル日本版2011年10月17日)

【CFOならこう読む】

インタビューの中で、ウッドフォード氏は、ジャイラス案件についてプライスウォーターハウスクーパースに調査を依頼し、先週30頁の報告書を受領、この報告書とともに、菊川氏と森氏の辞任を求める書簡を送ったと話しています。

「報告書の大半は、ジャイラス買収の際にアドバイザー会社であるケイマン諸島に登記のあるアグザム・インベストメント(Axam Investment)と、ニューヨークに登記のあるアグゼス・アメリカ(Axes America)に支払われた報酬に関するものだった。ウッドフォード氏は両社にコンタクトを取れなかったと言い、本紙も両社の連絡先を確認できなかった。

報告書は「買収の規模及び性質から鑑みて、通常買収総額の1%程度が報酬として適切だと考える」と述べた上で、オリンパスがアグザム及びアグゼスに対し、6億8700万ドルの報酬を払ったことを指摘した。これは買収価格の36.1%に相当する。」(前掲紙)

この件に関し、M&Aのアドバイザリー報酬に関する会計処理について指摘しておきます。

わが国では、アドバイザリー報酬等、企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる特定の報酬や手数料は取得原価に含めることとされています(企業結合会計基準26項)。

取得価額と対象企業の純資産との差額はのれんになるので、ジャイラス案件で支払われた多額のアドバイザリー報酬はのれんを構成することになります。

実際、オリンバスの場合、BS上ののれんの計上額が、2007年3月 787億円から2008年3月 2,998億円と激増しています。

仮に、この支出が実はアドバイザリー報酬の対価性を有していなかったとすると、一体このカネはどこに消えたのか?
いろいろな可能性が考えられますが、ここから先は想像の世界の話になるので、皆さんにお任せしたいと思います。

ちなみに、IFRSでは、取得に要した支出(アドバイザリー、法律、会計、評価その他専門家の手数料やコンサルタントフィー等)は、その費用の発生時またはサービスの提供を受けた時の費用とすることとされています。

【リンク】

なし

カテゴリー: 会計 タグ: ,