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2011 年 12 月 のアーカイブ

【お知らせ】年初は1月5日スタートです。

本年もご愛読いただきありがとうございました。2011年の更新は本日で最後になります。

年初は1月5日にスタートします。

来年もCFO Newsをよろしくお願いいたします。

 

カテゴリー: お知らせ タグ:

東証、予想の開示推奨

上場企業による業績予想の開示多様化を検討している東京証券取引所は、社内に収益の計画や目標数値がある場合、従来通り売上高、利益の予想を公表するよう推奨する方針を決めた。
(日本経済新聞2011年12月28日13面)

【CFOならこう読む】

「新しい予想開示は2012年3月期の決算発表から実施する方針。自主的で多様な開示方法を認める。予想に幅を持たせて開示したり、米国企業のように1株当たり利益の予想を公表したりする企業も出てきそうだ。予想を出さない場合に求めていた事前相談や理由の公表なども不要にして、企業の自主性を重視する」(前掲紙)

新しい予想開示の方向性は、今年7月に公表された「「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」に従った形で行われます。

報告書の概要は以下の通りです。

「通期の決算発表時に売上高・利益等の所定の項目について特定の値による開示を行うと いう原則的な取扱いにこだわり過ぎると、合理的とは言えない業績予想の開示が行われた り、上場会社に必要以上の負担をかけたりするおそれが高い。そこで、経営者自身の合理 的な評価や見通し等に基づいて、経営成果に係る直接的な予想が示される規格化された開 示の有用性を確認しつつ、上場会社各社の実情に応じて、多様な方法による柔軟な開示を 積極的に行い得るようにすることが望まれる。

✔ 開示内容
・ 予想値に一定の幅が出るケースやすべての項目を予想することが難しいケースについては、
諸外国で、一定の幅を持った表現が使われていたり、開示項目が各社で異なっていたりする
ことが参考となる。
✔ 開示時期
・ 決算発表の時点で業績予想を有していない場合には、投資判断上重要な情報格差を生じさ せないという観点から、その後、合理的な業績予想を有した時点で開示をすることが重要。
✔ 予想対象期間
・ 1年の見通しが難しい場合には、各社の状況に応じた期間を対象として開示する例が参考
となる。
✔ 将来予測情報の提供、補足説明等の充実
・ 売上高・利益以外の経営指標など、様々な将来予測情報を開示することは有用。また、前 提条件や変動可能性等の説明が重要。今後補足説明の重要性は一層高まる。」

予想を出さないことも容認されますが、大幅な財務数値の増減が見込まれる場合、具体的には予算や計画が前期実績と比べ売上高で1割、利益で3割以上増減する場合は、適時開示の義務が生じる、というのが今日のニュースです。

多くの会社において、予算は達成目標と位置付けられています。達成目標ですから、売上高1割増なんていうのは普通に見られます。こんなものを適時開示する必要性は全くないでしょう。東証の方向性は良いと思いますが、詳細なガイドラインがないと実務サイドは相当に混乱すると思います。

年内の更新はこれで終わりにします。2012年が世界中の人々にとって良い年でありますように。

【リンク】

「決算情報の適時開示制度 業績予想開示」

 

カテゴリー: IR タグ:

今年の新規上場37銘柄、6割は公募価格下回る

今年に新規上場した37銘柄の直近の株価と公募価格を比べたところ、電子書籍やネット関連が上昇する一方、バイオ関連は下落した銘柄が目立った。欧州の債務問題や円相場の高止まりが長引くなか、主力の輸出関連銘柄を避けた資金の一部が、国内で成長余力の大きそうな銘柄に流入したようだ。
(日本経済新聞2011年12月27日17面)

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今年に新規上場した企業の株価(26日時点、単位%、▲はマイナス)

電子書籍やネット関連銘柄の上昇が目立つ中、ネクソンは公募価格1300円に対し昨日(26日)終値1175円と10%程度下回っています。「「設定価格が割高だったのではないか」(国内証券)との指摘もある」(前掲紙)

とのことですが、2011年12月期予想EPSに対するPERは17.9倍、成長余力を考慮するとそれほど高いとは思えません。

【リンク】

なし

カテゴリー: IPO タグ:

【資本政策詳解】ダブル・スコープ

ネクソンの株式上場の概要は次の通りです。

ダブル・スコープは、2005年設立、リチウムイオン二次電池用セパレーターの製造・販売を行っている企業です。公募価格は2,500円、予想PER27.1倍という水準での株式公開となりました。

直前期末(2010年12月31日)現在、△1,740,593という大きなマイナスの利益剰余金があります。

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アグレッシブに第三者割当増資による資金調達を行って来ています。

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典型的なVC型のIPOで、上場直前時点で筆頭株主は崔社長ではあるものの、持株比率は18%しかありません。

従業員のインセンティブは主にストックオプションによっています(潜在株式の割合5.68%)。

ネクソンに続く韓国企業の日本での上場です。崔社長は日本で上場した理由を、次のように述べています。

「個人的な考えを言えば、『義理』だ。2005年に日本で会社を設立した当時、日本のベンチャーキャピタルが当社の技術力を信じて投資してくれた。米ナスダックや韓国コスダックからも提案を受けたが、日本の資金で育った会社なので、日本で上場することにした。日本経済が悪いと言われているが、東京市場は世界トップクラスのマーケットだ」
2011/12/16 18:40「ダブル・スコープ、崔元根社長『35%超の利益率維持する』」日本経済新聞

【リンク】

ダブル・スコープ株式会社

 

カテゴリー: 資本政策詳解 タグ:

外資10社日本に拠点

経済産業省は21日、スウェーデン・ボルボや米化学スリーエムなど外資10社が日本に研究開発などの拠点を新設すると発表した。ハイブリッド仕様の大型トラックや日本市場向け医療関連製品など高付加価値商品を生み出す拠点となる。外資企業の誘致を目指す政府の「アジア拠点化戦略」が本格的に動き出す。
(日本経済新聞2011年12月22日1面)

【CFOならこう読む】

「23年度アジア拠点化立地推進事業費補助金」の対象事業は、以下の要件をすべて満たすものとされています。

1統括拠点※1又は研究開発拠点※2を整備する事業※3であること。
2補助事業によって整備された拠点において、申請した業務を3年以上継続すること。
3投資計画について、「平成23年度一般会計歳入歳出概算」の閣議決定(2010年12月24日)以前に対外発表していないこ と。
(※1)被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係る業務(事業の遂行上欠くことのできないもの(営業・販売・マーケティ ング、経営企画、財務・金融、人事・人材育成、研究開発、生産管理、物流、法務等)とする。)であって、2以上の被統括会社
(2以上の国であること。)に対して一括して行うための施設を整備する事業
(※2)技術革新の進展に即応した高度な産業技術の研究から応用開発、試作、製品試験等による産業化等の研究開発を行 うために必要な施設を整備する事業
(※3)国内に既にある拠点の移転・集約は対象外

「政府は補助金や税制優遇などを盛り込んだ外資企業誘致の政策パッケージを策定した。ただ税制優遇のために必要な「アジア拠点化推進法案」は国会審議が進まず、たなざらしの状態。今回進出する企業も税制優遇は受けられない見通しだ」(前掲紙)

税制優遇は不可欠です。20%の所得控除なんていうせこいことは言わず、日本人の雇用を要件に大幅な税制優遇を与えるべきです。

【リンク】

「平成23年8月 アジア拠点化促進施策について」経済産業省 [PDF]

「 平成23年アジア拠点化立地推進事業 採択事業一覧    」 [PDF]

 

カテゴリー: 税制 タグ:

【お詫び】サイトの不具合について

いつもCFO Newsをご覧頂きありがとうございます。

一昨日、Googleより当サイトが悪質なコードに感染しているとの警告があり、一時サイトアクセスができない状況になっておりました。昨日、当該ソフトウェアの削除とファイル脆弱性の対策を行い、本日Googleの検査により問題が排除されたと確認されましたので再開いたしました。

読者の皆様にはご不便とご心配をおかけいたしましたことをお詫びいたします。
引き続きCFO Newsをよろしくお願いします。

運営会社:株式会社デジカル

カテゴリー: お知らせ タグ:

【資本政策詳解】ネクソン

ネクソンの株式上場の概要は次の通りです。

 

ネクソンは、2002年設立、オンラインゲームの制作、開発、配信を行っている企業です。

公募価格は1,300円、予想PER17.9倍という水準での株式公開となりました。

ネクソンは、1994年に設立された旧ネクソン・コーポレーション(現エヌエックスシー・コ ーポレーション)からスタートしています。日本への進出は、2000年9月に旧ネクソン・コーポレーション(現エヌエックスシー・コーポレーション)がソリッ ドネットワークス株式会社(旧株式会社ネクソンジャパン)の発行済株式の50%を取得したことから始まっています。

2005年1月に旧ネクソン・コーポレーション(現エヌエックスシー・コーポレーション)とソリッドネットワーク ス株式会社(旧株式会社ネクソンジャパン)が資本提携を解消したことにより、当社がソリッドネッ トワークス株式会社(旧株式会社ネクソンジャパン)からオンラインゲーム事業を譲り受けし、日本 におけるオンラインゲーム事業を本格的にスタートしました。

旧ネクソン・コーポレーション(現エヌエックスシー・コーポレーション)は、2005年年10月11日に、オンライ ンゲーム事業を会社分割により韓国の新ネクソン・コーポレーション(現ネクソン・コリア・コーポレーショ ン)に移管するとともに、同年10月28日に、同社の全株式を当社に譲渡しました。以降、同社は当社の親会 社としてゲーム事業以外の投資事業を行い、オンラインゲーム事業については、当社が事業持株会社として、日 本国内のゲーム事業を行うとともに、海外の関係会社を管理しています。

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従来、韓国事業会社が親会社であったのを、組織再編により、日本の会社(ネクソン)の子会社としてます。コーポレートインバージョンにより、日本に親会社を作った希有な例と言えます。

 

売上高のうち80%以上を海外売上高が占めています(韓国と中国合わせて60%超)。それだけに何故日本で上場するのだろうという疑問が浮びますが、この点崔社長は、次のように答えています。

「韓国はもちろんのことナスダックや香港も上場先として検討はしましたよ。ただ先進的なゲーム市場と世界トップレベルの国際的な資本市場という2つを兼ね備えているのは日本しかないという結論になりました」(日経ヴェリタス2011年12月18日20面)

予断ですが、売上の多くを海外で稼いでいるため、実効税率は27.1%と低い水準を維持しています。

2011年7月に現物出資による第三者割当増資が行われています。

抜け殻方式で作られた持株会社であるエヌエックスシー・コーポレーションが上場後も50%超の持分を維持する資本政策となっています。

従業員のインセンティブは主にストックオプションによっています(潜在株式の割合5.91%)。

海外のベンチャー企業が日本でこれだけの規模のIPOが出来るのですから、日本のベンチャー企業も負けずに頑張ってもらいたいものです。

【リンク】

株式会社ネクソン

カテゴリー: 資本政策詳解 タグ:

本日休載

本日の更新はお休みします。

カテゴリー: お知らせ タグ:

法人税率引き下げにより損益一時的に押し下げ

法人税引き下げを受け、上場企業による2012年3月期の業績見通しの下方修正が相次いでいる。将来の税負担軽減を見込んで計上している「繰延税金資産」を税率の変更に伴い見直す必要があるためだ。増益を予想していたユニ・チャームが15日、減益見通しを発表するなど、一時的な最終損益の押し下げ要因になっている。
(日本経済新聞2011年12月15日15面)

【CFOならこう読む】

「現在40.69%の法人税の実効税率は来年4月以降、38.01%、15年度からは35.64%となる。従来の税率を前提に計上していた企業は、繰延税金資産の一部を今期決算から取り崩す必要がある」(前掲紙)

本件については、今年2月7日のエントリーで取り上げました。

2011年2月7日「メガ銀、法人減税が年度内成立なら600~900億円の減」

具体的な取扱いは以下の通りです。

「◯税効果会計に係る会計基準
第二.二.繰延税金資産及び繰延税金負債等の計上方法
2.繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払いが行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする。

◯税効果会計に係る会計基準注解
注6 税率の変更があった場合の取扱いについて
法人税等について税率の変更があった場合には、過年度に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債を新たな税率に基づき再計算するものとする。」

繰越欠損金の繰越控除制限(相殺できる課税所得を8割に制限)も繰延税金資産取り崩しの要因になり得るので注意が必要です。

【リンク】

なし

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消費税増税に伴い、簡易課税など見直し

政府税制調査会は14日、社会保障と税の一体改革で行う消費税率の引き上げに伴い、免税点制度や簡易課税など優遇策を見直す検討に入った。
(日本経済新聞2011年12月14日5面)

【CFOならこう読む】

「簡易課税は、企業が仕入にかかった消費税を納税額から控除する際、実態ではなく「みなし」の税額で申告できる制度。税額計算の事務負担を軽減する趣旨だが、現状はみなし税額が実額より大きく、「益税」が生じていると指摘されている。政府税調ではみなし税額を実額に近づけるなどの案が挙がっている」(前掲紙)

益税問題を放置したままでは、消費税増税について国民の理解は得られないということです。簡易課税制度は廃止の方向性ではなく、より精緻な運用を行うという方向性であるとのことで、今後の議論が注目されます。

【リンク】

なし

カテゴリー: 税制 タグ: