業績不振の企業を買収し経営を立て直した後で売却して利益を得る買収ファンド。危機後の低迷で長引く大手銀を尻目に復調傾向が鮮明になってきた。最大手フラックストーンの運用資産は昨年末時点で1660億ドル(約13兆円)。1年前と比べ3割増え、過去最高となった。
(日本経済新聞2012年6月29日7面)
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復調の原因は、金融緩和と年金マネーの流入です。
「世界景気の先行き不安もあり、年金基金は株式投資を拡大しにくい。長引くゼロ金利で債券投資の妙味も薄れている。運用不振に伴う積み立て不足に直面する多くの年金は、残る選択肢としてファンドへの資金配分を増やしている」(前掲紙)
日本の特殊性を嫌って一旦縮小したファンドマネーの日本への流入も今後回復してくるものと思われます。何せPBR1倍割れの会社がごろごろ転がっているのですから。
そのためには買収防衛ルールの見直し等、価値創造の重要な担い手であるファンドが、普通に日本で活動できるようインフラを整備することが必須であると思います。
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なし
学習塾大手の栄光ホールディングス(栄光HD)が27日開いた定時株主総会で、第2位株主の増進会出版社から取締役2人を迎える会社提案が可決された。
(日本経済新聞2012年6月28日3面)
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6月22日のエントリー「栄光 vs 進学会 株主総会控え深まる対立」
及び
6月25日のエントリー「栄光 vs 進学会 株主総会控え深まる対立 ー 続き」
の続報です。
「栄光HDと経営体制を巡って対立している筆頭株主の進学会が同社会長ら2人を取締役に選任するよう求めた株主提案は否決された」(前掲紙)
記者会見で栄光HDの近藤社長は、進学会との関係には、「埋めがたい溝がある」と述べたとのことです。そうなると30%近い進学会の持分はあまりに重い。特別決議が必要な例えば組織再編の総会決議は否決される可能性が出てきます。
また、今後栄光と増進会の提携によって新たに創造される株主価値の3割を進学会が持っていくというのも栄光HD側から見れば腑に落ちない話でしょう。
今後進学会の持株を巡りもう一波乱あるかもしれません。
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なし
消費増税関連法案が26日、衆院を通過し、消費税率の引き上げへ大きく前進した。財政の健全化への一歩だが、社会保障を安定させる抜本的な対策は置き去りとなった。
(日本経済新聞2012年6月27日3面)
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「社会保障と税の一体改革の関連法案では、消費増税で負担感が増す低所得層への対策や、子育て支援の財源など与野党にとって重要な課題の結論を軒並み先送りした」(前掲紙)
所得税増税についても結論は先送りになりました。政府案では2015年から所得税で課税所得5000万円超の部分に45%の税率を設けることが盛り込まれていました(現在40%)。
但し3000万円超で45%、5000万円超で50%の税率を設けるという案も議論されており、方向性としては富裕層増税に向かっています。
先日、米国における富裕層増税は誤り、とのフェルドシュタイン教授の主張を紹介しました(2012年5月25日「富裕層増税は間違いーフェルドシュタイン教授」)。日本でもフェルドシュタイン教授の議論はそのまま通用すると思われますが、このような立場を支持する共和党のような政党が日本にはありません。その結果今日本で行われている議論はバランスを欠いているように思えます。
富裕層は行き過ぎた増税に対しては、徹底的なタックス・プランニングか低課税国への逃避で対抗します。その結果、日本から価値創造の担い手はどんどんいなくなってしまいます。
今必要なのは、消費税の増税と併せて、所得税率(法人税率)の引き下げと税制の簡素化及び課税ベースの拡大をセットで進めることだと私は思います。
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なし
イオンは大手小売業では初めてREITを設立し、保有不動産を活用した大規模な資金調達を始める。年内にもREITを東京証券取引所に上場。ショッピングセンター(SC)などをREITに売却し、上場時に最大3000億円、最終的には1兆円規模の調達につなげる考えだ。
(日本経済新聞2012年6月23日2面)
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「イオンはまず、投資家から資金を集めてREITを設立。このREITがイオンからSCなどの不動産を買い取る。イオンは売却したSCなどを賃借し、運営を続ける。不動産の所有が外部の投資家に移ることで、イオンは保有資産を増やさずに成長投資のための資金調達ができる」(前掲紙)
イオンの前期末(2012年2月期)の有利子負債(連結ベース)は1,335,186百万円、自己資本比率は23.1%と大きな負債を抱えています。REITを利用し不動産を流動化することで、固定資産と有利子負債がバランスシートから外れ、総資産を小さくすることができると同時に、今後出店するSCもREITに組み入れることができるので、負債を増やさず業容を拡大することができます。
ただし東証に上場するREITの平均利回りは5.5%であり、この原資はイオンがREITに支払う賃料であることを勘案すると資金調達コストは必ずしも低いわけではないことに留意が必要です。
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なし
学習塾最大手の栄光ホールディングス(HD)と筆頭株主の進学会が栄光HDの経営体制を巡って対立している問題で、増進会出版社は22日、会社を支持する考えを明らかにした。
(日本経済新聞2012年6月23日11面)
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6月22日のエントリー「栄光 vs 進学会 株主総会控え深まる対立」の続報です。
「進学会は栄光HD株を議決権ベースで29.9%保有しているが、同28.0%の増進会が会社側に付いたことで、進学会の株主提案は否決される可能性が高まった」(前掲紙)
資本・業務提携と称して、20%から30%程度の資本を入れるケースが見られますが、中途半端に資本を入れてもあまり意味がないことを知っておく必要があります。
本当にシナジーのある業務提携であるなら、資本を入れなくてもwin-winの関係は構築できますし、資本の論理を働かせたいのであれば少なくとも過半の持分を取得すべきです。
なお栄光HDは第三者委員会を設置し、栄光と進学会との間に何があったのか、事実関係を調査するとのことです。
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なし
27日の株主総会を前に学習塾大手の栄光ホールディングスと進学会が株主提案を巡って対立を深めている。栄光の筆頭株主である進学会が取締役を2人送る株主提案を出したところ、栄光が強く反発。業務提携の構想も宙に浮き、緊迫した状況が続いている。
(日本経済新聞夕刊2012年6月21日3面)
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「進学会は栄光株の29.9%を握る筆頭株主で、教材の開発や塾の展開で連携を深めてきた。4月末に提携の一環として平井睦雄・進学会会長を含む2人を取締役として派遣する株主提案を出した。当初は受け入れを表明していた栄光は6月に入って一転、拒否。」(前掲紙)
栄光は、6月6日に進学会との資本・業務提携を解消することを発表しています(2012年6月6日「株式会社進学会との資本業務提携の解消に関するお知らせ」 栄光ホールディングス株式会社 [PDF])。
栄光の第2位株主である増進会(持株比率28.72%)と進学会は、「栄光株を共同保有する形をとっている」(前掲紙)が、招集通知を見ると、会社提案として増進会の役員2名の選任が記載されており、栄光は、進学会と増進会を分断させる作戦に出たものと思われます。
増進会は自社の立場を明確にしておらず、株主総会の行方が注目されます。
【リンク】
2012年6月12日「 第一回定時株主総会招集のご通知」栄光ホールディングス株式会社 [PDF]
2012年6月6日「株式会社進学会との資本業務提携の解消に関するお知らせ」栄光ホールディングス株式会社 [PDF]
製紙業界5位の北越紀州製紙が4位の大王製紙の株式約2割を同社の創業家から取得し、筆頭株主になる方針を固めた。王子製紙、日本製紙グループ本社に次ぐ3位の企業連合誕生は、新たな業界再編のきっかけになりそうだ。
(日本経済新聞2012年6月21日9面)
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「2006年、王子が当時の北越製紙に敵対的TOBをかけた際、大王が北越の株式を一部取得するなど阻止に協力した。北越紀州の岸本哲夫社長は「大王に恩義を感じる」と明かす。今回、創業家との関係悪化で分裂状態になっていた大王に手をさしのべたとの見方がある。」(前掲紙)
2006年の王子による北越は日本で初めての敵対的TOBでした。北越経営陣と王子は株主に向けて互いに価値創造プランを示し、最終的に株主が経営をどちらに委ねるかを決する、そんなTOBが本来予定している経営支配権移動のメカニズムを現実に機能させる絶好のチャンスでした。しかし結果としては、価値創造プランのコンテストは行われませんでした。
北越製紙経営陣が、三菱商事、日本製紙、大王製紙を見方につけ、遮二無二買収防衛阻止に向かったからです。もちろん北越経営陣からこのような説明はありません。しかし「恩義を感じる」という岸本社長の言葉が事実を雄弁に物語っています。
結果、北越経営陣は買収防衛に成功したものの、それは誰にとっての成功であったのか?
国際競争力の強化が何より重要な日本の製紙業界において、自分のムラを守ることに全身全霊を傾けることに一体どれだけの意味があるのか?
2006年の敵対的TOBから5年以上の時間が経過し、両陣営から多少なりとも反省の弁が聞こえても良いように思うのですが、どこからもそんな声が聞こえてこないのが何とも淋しい。
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なし
製紙業界5位の北越紀州製紙は4位の大王製紙の株式の約2割を同社の創業者から取得し、筆頭株主となる方針を固めた。王子製紙、日本製紙グループ本社に次ぐ第3位連合が誕生する。大王は元会長の巨額借り入れ事件を機に深まった創業家との対立に終止符を打ち、北越紀州との提携で生き残りを目指す。
(日本経済新聞2012年6月20日1面)
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「北越紀州と大王製紙の創業家が、株式譲渡に向けて金額などを最終調整している。近く合意し、月内に発表する見通し。北越紀州は公正取引委員会による独占禁止法の審査を受けたうえで株式を取得する。業界再編の動きは、2006年に王子製紙が当時の北越製紙に敵対的TOBを仕掛けて失敗した後、北越製紙が2009年に紀州製紙を100%子会社化して以来」(前掲紙)
北越紀州は約2割を約100億円で取得するとのこと。大王製紙の時価総額は自己株式を除くと約480億円。この2割は96億円なので、プレミアムゼロで北越紀州は大王製紙の株式を取得することになります。
日本製紙、王子製紙はこれを指をくわえて眺めているのでしょうか?
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なし
名証2部上場で業務用インテリア用品を製造・販売するオリバーは、自社株を対象とするTOBを実施する。大川博美社長らが運営する不動産賃貸会社が保有するオリバー株の一部を売る意向であるのに対応する。
(日経ヴェリタス2012年6月17日27面)

買付価格は、平成24年6月14日までの過去3ヶ月間の名古屋証券取引所市場第二部における当社普通株式の終値の単純平均値1,095円(小数点以下四捨五入)に対して10%のディスカウント率を適用し決定したとのことです。
その理由について、オリバーは、
「当社普通株式を引き続き保有する株主の皆様の利益を尊重する観点から、資産の社外流出を可能な限り抑えるべく、市場価格に一定のディスカウントを行った価格で買付けることが望ましいと判断いたしました。ディスカウント率につきましては、過去の自己株式の公開買付けの事例を参考とすることといたしました。」
と説明しています。
大株主(大川株式会社)以外の一般株主が応募してくると買い取りを按分比例で行なわなければならないので、大株主
が売却を予定している株式を残らずTOBにより買い付けるためには一般株主が応募してこない価格、すなわちディスカウントを行った価格で買い付ける必要があるのです。
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株式会社オリバー
モブキャストの株式上場の概要は次の通りです。

モブキャストは、2004年設立、モバイルエンターテインメントプラットホームの運営を行っている企業です。
公募価格は800円、予想PER8.2倍という水準での株式公開となります。

2010年12月期は売上4億円から2011年12月期は売上20億円と大きく売上を伸ばし手のIPOとなります。

第三者割当増資により事業資金の調達を行ってきています。
注3の株式報酬型新株予約権の行使(行使価格1円)が注目されます。
上場会社では長期インセンティブとして利用されるケースがありますが(2011年10月8日「取締役の業績連動報酬、算定方法の開示広がる」)、未上場会社の資本政策としても利用されるようになっています。

上場直前時点で筆頭株主は藪社長ではあるものの、持株比率は44%しかありません。他の取締役と合わせて50%超を確保する資本政策になっています。
従業員のインセンティブはストックオプションと現物株によっています。
(潜在株式の割合6.23%)
【リンク】
株式会社モブキャスト
http://mobcast.co.jp/
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