アーカイブ

2012 年 7 月 のアーカイブ

みずほ信託、従業員持株制度を海外子会社従業員に拡充するサービス開始

みずほ信託銀行は従業員持株制度(日本版ESOP)の新サービスを始める。従来の制度の対象者は導入企業の日本国内の社員に限られていたが、新たに海外子会社の現地の従業員にも対象を広げる。
(日本経済新聞2012年7月31日5面)

【CFOならこう読む】

今日は備忘記録です。

「みずほ信託が提供する従業員持株制度は、信託銀行が設定した信託が企業の株式を取得し、従業員は信託に指図して議決権を行使する仕組み。退職時には金銭や株式を受け取ることができる」(前掲紙)

【リンク】

なし

カテゴリー: 備忘録 タグ:

シャープ債、利回りが急上昇

先週の社債市場でシャープ債の流通利回りが急上昇した。日本証券業協会の集計では、直近発行の26回債(残存期間7年強)の国債に対するスプレッドは7月27日に2.94%となり、1週間で約1%拡大した。
(日経ヴェリタス2012年7月30日24面)

【CFOならこう読む】

「利回りが急上昇したきっかけは「2012年4〜6月期の連結最終損益が1000億円程度の赤字になったようだ」との7月24日の報道。2013年3月期通期の業績予想(300億円の最終赤字)と比べ足元の事業環境の厳しさが浮き彫りとなった」(前掲紙)

シャープのCDSも急上昇しており(622.27bp:東京金融取引所7月27日参考値)、留意が必要です。

【リンク】

なし

カテゴリー: 資金調達 タグ: ,

テルモ、オリンパスに経営統合を提案 – 続き

テルモは26日、オリンパスに対して共同持株会社方式による経営統合を提案したと発表した。医療機器メーカー同士が手を組むことで、日本の国際競争力を強化できるとアピール。あえて「劇場型」でオリンパス争奪戦に名乗りを上げ、先行するソニーに待ったをかける。
(日本経済新聞2012年7月27日11面)

【CFOならこう読む】

テルモは、統合の意義を次のように表現しています。

「日本の医療機器市場は輸入超過が続いており、貿易赤字は拡大の一途をたどっ ております。その原因は特に治療機器の大半が輸入品で占められていることにあります。 このような状況の中、両社の技術融合により日本発のイノベーションを起こすことで、 日本の産業活性化にも貢献できるものと考えております。」

国富創造の観点から統合のメリットを強調している点は評価できます。

テルモの提案は、統合提案というより買収提案であるため、オリンパス経営陣にとっては受け容れ難いと思われますが、経営陣の自己保身の観点ではなく、株主価値創造の観点から提携先を決定してもらいたいものです。

それにしても、これを「劇場型」と表現するのは、いかにも筋が悪い。「劇場型」とくれば、後に続く言葉で最初に思い浮かぶのは「犯罪」。
これじゃあ何だか悪いことをしているよう。

【リンク】

2012年7月26日「オリンパス株式会社への統合提案について」テルモ株式会社 [PDF]

 

カテゴリー: M&A タグ:

テルモ、オリンパスに経営統合を提案

医療機器大手のテルモはオリンパスに対し、共同持株会社方式による経営統合を提案した。26日に発表する。財務基盤の強化を急ぐオリンパスは、ソニーから約500億円の出資を受け入れる方向で最終調整しており、内視鏡やデジタルカメラでの協業内容を詰めている。
(日本経済新聞2012年7月26日1面)

【CFOならこう読む】

「テルモはオリンパス本体に500億円出資したうえで、両社で統合を協議する委員会の設置を提案した。共同持株会社の下に事業会社のテルモとオリンパスを置く形を想定している。テルモは現在、オリンパスに2.1%を出資している。追加出資が実現すれば15%弱の筆頭株主となる。」(前掲紙)

オリンパス経営陣としては、経営の独立性を確保した上で再建を図りたいところでしょうが、もはやそういうステージではありません。
テルモ案は、共同持株会社の下に、オリンパスが従来通りの形でぶら下がるという点でおだやかな経営統合のように見えるかもしれませんが、その実はテルモによるオリンパスの買収です。

テルモの提案を受け、ソニーも資本業務提携にとどまるのか、経営統合まで踏み込むのか、より具体的な提案を行うことが求められると思います。

いずれにしても、オリンパス経営陣としては、自己保身に走らず、株主価値創造という観点から提案を検討する必要があります。

【リンク】

なし

カテゴリー: M&A タグ:

JIN公募増資、最大50億円調達

メガネ専門店「JINS」を展開するジェイアイエヌは24日、公募増資などで最大約50億円を調達すると発表した。調達した資金は新規店舗の出店や既存店舗の改修に充てる。
(日本経済新聞2012年7月25日14面)

【CFOならこう読む】

公募による新株発行300万株、田中仁社長の売出が50万株行われます(別にオーバーアロットメントによる売出最大50万株)。

調達資金は全額が設備投資資金(新規出店及び既存店舗改修)に充当される予定です。

JINはアイウエアの企画から販売までを一貫して行うSPA企業として、おしゃれなメガネを低価格で販売している点が評価され、ここ数年で大きく成長しています。

株価も以下のように大きく上昇しており、更なる成長を目指し、このタイミングで公募・売出を行うのは間違っていないと思います。

プレスリリースには書かれていませんが、会社の急成長に伴い、自己資本比率が38.7%まで低下しており、これを改善することも公募増資を行う目的の一つであると思われます。

なお、田中社長の売出については、「当社株式の流動性向上及び株主分布状況の改善 のため、当社株主を売出人
とする株式売出しを実施するものであります。」と会社は説明しています。

【リンク】

2012年7月24日「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」株式会社ジェイアイエヌ [PDF]

カテゴリー: 資金調達 タグ:

ANA株、公募価格割れ

23日の東京株式市場でANAが一時前週末比6円(3%)安の179円まで下げた。公募増資で発行する新株の価格(184円)を割り込み、データの残る1980年以降では連日で最安値を更新した。大型増資による株式需給の悪化が改めて懸念されているようだ。
(日本経済新聞2012年7月24日17面)

【CFOならこう読む】

7月10日のエントリー「全日空(ANA)増資、財務強化に照準」の続報です。

「市場では「増資の必要性に疑問を抱く投資家も多い(バークレイズ証券の姫野良太アナリスト)との声もある。「787」などの設備投資は年2000億円規模。ANAの2013年3月期連結営業利益は過去最高を更新する見通しで、営業キャッシュフローで資金を賄えるとみられるからだ。」(前掲紙)

結果的に増資で調達した資金を単に寝かせておくことになるなら、ダイリューションが起き株価は下がります。

しかし、たとえダイリューションが起きても、近い将来の競争激化に備え今のうちに資金を手当したいという
事情も理解できます。

いずれにしても、このタイミングで明確な中長期のビジョンを、顧客や市場に対し示すことが不可欠だと思います。

【リンク】

なし

カテゴリー: 資金調達 タグ:

東証1部の上に新市場創設を

会社法の改正を議論していた法制審議会(法相の諮問機関)の会社法制部会が、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の目玉だった社外取締役の導入義務付けを断念した。「企業の自由な判断に委ねるべきだ」との産業界の声を受け入れた。ただ、上場企業の実態をみると、多くの大企業にはすでに独立取締役がいる一方、多数の中堅上場企業は安定株主比率が高く、独立取締役はいても一人。こうした「名ばかり」上場企業への対処は課題だ。
(日経ヴェリタス2012年7月22日57面 日本経済研究センター主任研究員前田昌孝)

【CFOならこう読む】

すべての上場企業に一律のコーポレートガバナンス改革を適用するのは無理があるとは思います。

それではということで、東証1部の上に新市場を創る案があります。

「国際会計基準を採用し、2人以上の独立取締役を置くなど条件を満たす企業だけ取引する東証プレミアム市場を新設すればいい」(大和総研 吉井一洋・金融調査部制度調査担当部長)

これは検討に値しますね。
この市場に限定すれば、コーポレートガバナンスの議論もかなり違ったものになるはずです。

ただし国際会計基準を採用するかどうかは次元の違う話です。

【リンク】

なし

米トウモロコシ最高値

米で熱波による穀物被害が深刻になってきた。ビルサック米農務長官は18日緊急会見し、米国土の6割が干ばつに見舞われているとして事実上の非常事態を宣言した。トウモロコシの国際価格が1年1ヶ月ぶりに過去最高値を更新。穀物需給の逼迫が食肉など幅広い品目に波及し世界的な食糧インフレを引き起こす懸念も強い。
(日本経済新聞2012年7月20日7面)

【CFOならこう読む】

「日本政府関係者によると日本のトウモロコシ輸入に占める米のシェアは90%、大豆は66%と圧倒的。米の干ばつが長期化した場合は日本の家計も加工品を含め米国産品の値上がりに
見舞われる可能性がある」(前掲紙)

飼料コストの上昇により牛、豚など食肉や牛乳などの価格にも波及していく可能性があります。

【リンク】

なし

カテゴリー: マクロ経済 タグ:

会社法改正の要綱原案

法制審議会の会社法制部会は18日の会合で、会社法改正の要綱原案を示した。上場企業などに外部からのチェック機能を強めるための社外取締役設置の義務づけは見送る一方で、置かない場合は理由を開示するよう求めた。
(日本経済新聞2012年7月19日3面)

【CFOならこう読む】

会社法の改正に関する要綱原案の主なポイントは以下の通りです。

・大企業への社外取締役設置の義務化見送り
・「監査・監督委員会」制度の導入
監査役会に代わり、社外取締役が過半数を占める「監査・監督委員会」を選択できる制度
・親会社の株主による子会社の監視強化
親会社の株主が子会社の取締役の責任を追及できるようにする
・第三者割当増資の規制
議決権の半数を超える第三者割当増資について、持株比率10%以上の株主が反対する場合は、株主総会の承認を得る。

最後の第三者割当増資の規制ですが、昨年12月に公表された「会社法制の見直しに関する中間試案」では次のような提案が行われていました。

「公開会社が,ある引受人(当該公開会社の親会社等を除く。)に募集株 式を割り当てることにより,当該引受人が総株主の議決権の過半数を有 することとなるような第三者割当てによる募集株式の発行等を行う場合 に,株主総会の決議を要するものとするかどうかについては,次のいず れかの案によるものとする。
【A案】 原則として株主総会の普通決議を要するものとする。ただし, 取締役会が当該募集株式の発行等による資金調達の必要性,緊 急性等を勘案して特に必要と認めるときは,株主総会の決議を 省略することができる旨を定款で定めることができるものとし, そのように定めた場合には,総株主の議決権の100分の3以 上の議決権を有する株主が一定期間内に異議を述べない限り, 当該定款の定めに基づく株主総会の決議の省略が認められるも のとする。
【B案】 総株主の議決権の4分の1を超える数の議決権を有する株主 が一定期間内に当該募集株式の発行等に反対する旨を通知した 場合には,株主総会の普通決議を要するものとする。
【C案】 現行法の規律を見直さないものとする。
(注1) A案又はB案によることとする場合に,当該引受人が総株主の議決権の3分の1を超える数の議決権を有することとなるような第三者割当てによ る募集株式の発行等にまで規律の対象を広げるかどうかについては,なお 検討する。
(注2) 第三者割当てによる募集新株予約権の発行等の取扱いについては,なお 検討する。」

要綱原案は、閾値を4分の1から10%に下げた上で【B案】を採用したということです。
この規制があれば、コジマのビックカメラ傘下入りは実現しなかったかもしれません(12%の持分比率を有する小島会長はビックカメラ傘下入りに反対していた)。

しかしこの規制が実現したとしても、少数株主の保護という観点からの問題は依然残ります。

欧州では、支配権が移転するような一定の議決権割合(英独は30%以上、仏は3分の1超)に達する株式を取得した場合その取得自体は、TOB規制の対象とはなりませんが、その代わり、取得後に他のすべての株式を対象にしたTOBを行わなければなりません。取得には市場内外・新株発行すべてが含まれます。そしてその全部勧誘・全部買付のTOB価格は、過去一定期間(英仏は1年間、独は6ヵ月間)における最高取引価格以上でなければならない、との規制があります(三井秀範金融庁総務課長「欧州型の公開買付制度」商事法務No.1910(2010))。

日本でも欧州型のTOB規制の採用を検討すべきであると思います。

【リンク】

なし

カテゴリー: M&A タグ: , ,

米国、IFRS適用の判断先送り

SECは米国企業へのIFRSの適用についての判断を先送りした。IFRSを使う欧州と米国の間では世界の会計基準づくりを巡る主導権争いがあり、米国内の慎重論に配慮したとみられる。
(日本経済新聞2012年7月18日9面)

【CFOならこう読む】

「SECが前週末、IFRSを巡る最終報告書を公表した。欧米の間で進めてきたIFRSと現行の米基準の共通化作業は評価しながらも、米国がIFRSを適用するかどうかの勧告は見送った。報告書は「米投資家は早期適用を認めるべきではないとの見解で一致している」と米国内の慎重論にふれ、仮に導入する場合でも国際基準のルール作りには米国が直接関与すべきだと指摘した」(前掲紙)

最終判断は2013年以降にずれ込む見通しです。

日本は、米国の判断を待って方向性を決めることになっているので、当面大きな動きはないものと思われます。

【リンク】

「Work Plan for the Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S. Issuers Final Staff Report」UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION [PDF]



カテゴリー: 会計 タグ: ,