国土交通省、厚生労働省、金融庁の3省庁は老人ホームなどの介護施設や病院を投資対象とする不動産投資信託(REIT)の普及を後押しする。施設を取得したREITと事業者・利用者の間でトラブルが起こらないよう賃料設定などの指針をまとめる。
(日本経済新聞2012年8月31日5面)
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「介護施設や病院を取り扱うREITは米国やシンガポールで活発だ。米国では2011年時点で、150程度あるREIT銘柄のうち、12銘柄がヘルスケア関連のREIT」(前掲紙)
米国のREITでは、小売・商業施設、産業用施設・オフィス、ホテル・リゾート、住宅と並んでヘルスケアも重要なセクターの一つとなっています。ディフェンシブ銘柄としての存在意義もあることから、日本でも普及が望まれるところです。
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米共和党が28日の党大会で政策綱領を採択し、11 月の大統領選挙に向け民主党の オバマ大統領との論戦が本格化する。企業・個人 の大型減税や規制緩和を軸に米国の 経済成長に導くとの内容で、富裕層増税を唱える オバマ氏との対決色が鮮明。
(日本経済新聞2012年8月30日7面)
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「「税は自由を損なう」。綱領は「小さな政府」 への回帰を中心理念に据えた。企業・ 市場の力をテコに、年率1%台の低成長にとどま る米経済の活性化を図る」(前掲紙)
オバマ氏とロムニー氏の税制に関する政策はそれ ぞれ次の通りです。
オバマ氏
・高所得層への減税は廃止する
・中・低所得層への減税は延長
・法人税は現行の35%から28%に引き下げ
ロムニー氏
・ブッシュ減税維持(減税率は引き下げ)
・収入が一定以下の世帯への利子・配当課税の免除
・連邦相続税廃止 法人税は現行の35%から25%に引き下げ
ところで、ロムニー氏は10年の確定申告を公表 し、2100万ドル余りの収入に対し、実効税率 13.9%の 税金しか納めていないことを明らかにしていま す。 (「ロムニー氏:過去10年の所得税率は13%以上、税金逃れを否定」bloomberg.co.jp)
実効税率が低いのは収入の大部分がキャピタルゲ インであるからです。 米国の連邦所得税の税率は、給料等から得られる 通常所得の最高税率が35%であるのに対し、キャ ピタルゲインは 軽減税率15%で課税されます。
ところでオバマ氏はロムニー氏が税逃れをしてい ると非難しています。 そのポイントはいくつかあるのですが、そのうち の一つがキャリード・インタレストです。 キャリード・インタレストとは、プライベート・ エクイティ・ファンド等のファンド・マネー ジャーが 受け取る成功報酬のことです(典型的にはファン ドの純利益の20%を受け取る)。 ロムニー氏は、自身が共同創業者の一人であった ベイン・キャピタル(有力なプライベート・エク イティ・ファンドの一つ) を13年前に辞めていますが、退職時の条件交渉の 結果、未だにファンドからキャリード・インタレ ストの分配を 受けているというのです(「Buyout Profits Keep Flowing to Romney」NewYorkTimes)。
ロムニー氏の2010年の収入のうち740万ドルがこ のキャリード・インタレストであるということで す (「Barack Obama says Mitt Romney received carried interest, a tax ‘trick’」politifact.com)。
ファンドは一般にパートナーシップとして運営さ れます。連邦所得税制上、パートナーシップは構 成員課税(パススルー課税) であるため、ファンド・マネージャーの報酬の課 税上の性質は、パートナーシップの所得の性質に よって決定されます。 プライベート・エクイティ・ファンドの利益の源 泉の大部分は、キャピタルゲインであるため、 キャリード・インタレスト もキャピタルゲインとなり、軽減税率15%が適用 されるのです。
ロムニー氏の実効税率が低い理由の一つがここに あるのです。
ファンド・マネージャーの報酬は業務提供の対価 だから、その性質は給料と同じで通常所得として 課税されなければ おかしい、というのがオバマ氏の理屈です。 また、ノーベル経済学賞を受賞したPaul Krugman教授や有力な税法学者であるMichael Graetz教授も同様の批判を行って います。
しかしこれに対する反論も多く行われており、議 論の行方が注目されます。(例えば、著名なマクロ経済学者であり、ロム ニー氏のアドバイザーでもあるGregory Mankiw 氏の反論→「Capital Gains, Ordinary Income and Shades of Gray」NewYorkTimes)。
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米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロ バーツ(KKR)は、経営再建中の 半導体大手ルネサスエレクトロニクスの第三者割 当増資を1000億円で引き受け、 経営権を取得する方針を固めた。NECなど主要株 主3社と早ければ9月中にも 正式合意する。電機大手が母体となって発足した ルネサスの再建は、外資ファンド 主導で進む見通しとなった。
(日本経済新聞2012年8月29日1面)
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「KKRは28日、主3社と主力取引銀行にルネサス への出資案を提示した。ルネサスの株式時価総額 は約950億円、などの了解を取りつけ、発行済株式の過半を年内 にも取得して経営再建を主導する 方針だ」
KKRは、有力なプライベート・エクイティ・ファ ンド(PEファンド)の一つです。 私は、2月8日のエントリー「半導体3社、事業統合交渉」で、 ルネサスは、PEファンドの関与が望ましいという 趣旨のことを書きましたが、 その通りの展開になりそうです。
プライベート・エクイティ・ファンドには、資本 調達が難しい時期に企業に資金を提供したり、 ほかに買い手がいない状況で売り手に流動性を提 供するという役割があります。 日本では、この役割を国や役所が担いたがる傾向 がありますが、もとよりこのようなハイリスク・ ハイリターンの投資を税金で行うべきではありま せん。
「日の丸半導体」ルネサスの経営権が、外資ファ ンドの軍門に下ることを良しとしない向きも あるかも知れませんが、重要なのは誰が株主かで はなく、再建できるかどうかです。
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高校卒業後、炭坑に勤めた。石油普及をみて水産業への転身を目指し、大学へ進学する。だが水産商社2年目に新規事業のスーパーに出向。49歳で社長に就くと独自の低コスト・低価格販売で基盤を固め、この10年で7社を統合して頭角を現した。
(日本経済新聞2012年8月28日2面)
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「成長につながるM&Aは競合相手が秘訣を聞きに来るほどだが、答えはシンプル。「M&Aは『マインド&アグリーメント』。互いの悩みを心から理解すること」」
(前掲紙)
事前に徹底的に話をし、統合後の姿を共有することでディールをスムーズに進める。統合後も互いの悩みを理解し合うことで、企業文化の擦り合わせを短期間に実行する。
M&Aはとかく買い主の立場で進めがちですが、買われる立場から物事を進めることも重要であるということですね。
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東京証券取引所グループによる大阪証券取引所のTOBが成立した。この結果、2001年11月の東証の株式会社化以来、念願だった東証株の上場が、ややかたちを変えてではあるが、来年1月にようやく実現する。ただ、2004年4月から上場している大証の株価をもとに計算すると、世界の取引所に比べてやや割高感もある。投資家や証券会社の利益にも配慮しつつ、取引所ビジネスとして収益力をどう高めるかが課題だ。
(日経ヴェリタス2012年8月26日67面)
【CFOならこう読む】
「24日終値に日本取引所の発行済株式数を掛け合わせると、2018億円。これが同取引所の時価総額の目安だ。表のように、商品取引所を含む世界の取引所のなかでは11番目。」
(前掲紙)
世界の取引所の時価総額は次のとおりです。

香港やシンガポールに遠く及ばないのが現状です。
日本取引所のCEOに就任予定の大証の米田社長は23日、「大証と東証の全社員が一丸となり『アジア・ナンバーワン』の取引所を目指していかなければ、経営統合の意味はない」とコメントしましたが、もとより全社一丸となれば『アジア・ナンバーワン』になれるわけはありません。香港やシンガポールのようにカネが集まるようなインフラ整備と徹底した規制緩和を国を挙げて行う必要があります。
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中国で「B株」と呼ばれる外国人向けの株式市場から上場企業が退出し始めた。
中国コンテナ大手が売買の少ないB株の上場を取りやめて取引の活発な香港上場の株式に転換する方針を決めた。中国では1992年、外国人向けにB株市場を創設したが近年は売買が激減しており、B株の退出が相次げば市場自体がなくなる可能性もある。
(日本経済新聞2012年8月24日6面)
【CFOならこう読む】
「B株の売買が低迷している理由は、香港市場が強力なライバルとして台頭してきたことが大きい。外国人が自由に売買できる香港市場には、1993年の青島ビール以降、中国本土の優良企業が相次いで上場した。特に2000年代半ばからは、銀行や石油、通信といった大型国有企業が次々と登場したため、相対的にB株の存在意義は薄れていた」(前掲紙)
アジアにおける香港市場の重要性が増しています。折しも東証による大証のTOBが成立した昨日、大証の米田社長が、
「大証と東証の全社員が一丸となり『アジア・ナンバーワン』の取引所を目指していかなければ、経営統合の意味はない」
(日本経済新聞2012年8月24日4面)
とコメントしましたが、すみやかに東証・大証が融合した上で、真にグローバルな市場を目指し動き出してもらいたいものです。
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・ゾンビ企業の存在が経済構造転換遅らせた。
・財政改革の明示や積極的な金融緩和も必要
・旧態依然の産業政策や外需依存姿勢改めよ
(日本経済新聞2012年8月23日24面 経済教室 星岳雄・アニルカシャップ)
【CFOならこう読む】
星氏等の「日本再生のための処方箋」のポイントは上記の通りです。
指摘のほとんどはその通りだと納得できます。
しかし、肝心な原因分析が表面的なところにとどまっているという感も否めません。
例えば、何故ゾンビ企業の保護が続けられるか、です。
これは日本の雇用形態が今もって終身雇用を前提にされており、いったん雇用したら企業は定年まで雇用を継続する責務があるとされていることにその原因があります。
人的資源が流動化することを前提とした仕組みになっていないので、ゾンビ企業をつぶしてしまうと、働く人たち(経営者も含む)の行き場がなくなってしまうのです。
新たな価値を創造するM&Aがなかなか生まれないのも、派遣切りも、IPOの準備でやたらと細かい労務管理が要求されるのも根っこをたどるとここに行き着きます。
環境変化に合わせ、人材も流動化するのが当たり前なのに、これを当たり前としない国に未来はありません。
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会社更生手続きを進めているエルピーダメモリの坂本幸雄社長が退任する意向を固めたことが21日、明らかになった。同社は2013年春に米半導体大手マイクロン・テクノロジーの完全子会社化となる予定。東京地裁に同日提出した更正計画案が承認されたマイクロンの出資が完了した後に退任し、経営責任を明確にする。
(日本経済新聞2012年8月22日1面)
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更正計画の概要は以下の通りです。
マイクロンとのスポンサー契約にしたい総額2000億円の支援金を前提に、一定の手続費用等を 控除して、更生担保権者・更生債権者への支払いが行われることになります。具体的に は、スポンサー契約の実行時に、マイクロンは600億円の現金をもって、エルピーダへの100%出資を行います。その後、エルピーダは、マイク ロンの子会社として、マイクロンに対して行うファンダリ(製造受託)事業等を通じて、 2019年までにキャッシュフロー1400億円をマイクロンの支払いにより得ます。これらの 支払いを原資とする更生計画に基づく債権者への弁済により、残りのエルピーダに対す る更生債権の支払い義務は、更生手続に基づき免除されます。
エルピーダは2009年に改正産業活力再生法(産活法)の認定を受け、業績不振に陥った事業会社を公的資金を使って支援する枠組みの適用第1号となりました。このとき私は、このブログで、政府が個別の民間企業を公的に支援するのは止めるべきだと言いました(2012年6月30日「エルピーダ、公的支援本日決定」)。公的支援は単なる一時しのぎである、というに止まらず、へたに公的支援をしたばかりに抜本的な再建策が講じられず余計に事態が悪化する、ということもあるのです。
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バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは今月、世界の投資家に「企業に現金を何に使ってほしいか」と聞いている。「設備投資」との回答は全体の33%と、50%近くだった昨年初めから大きく減った。一方「株主への配分」は43%と、昨年初めの30%強から増加し、設備投資を上回った。景気の低迷で、企業はどこに投資しても成長は見込めまい。だったら、配当や自社株買いで返してほしい。
(日本経済新聞2012年8月21日13面)
【CFOならこう読む】
「日本企業も同じ圧力を市場から受けている。欧米企業と同様、手元資金は過去最高の水準にある。だからこそ、経営者に尋ねてみたい。「成長は本当に後回しでいいのか」と。世界の企業が投資家の弱気に促されて成長策に二の足を踏みつつあるからこそ、攻めの経営がうまくいけば競争で優位に立てる」(前掲紙)
企業が手元資金を積みましているのは、サブプライム時に流動性が枯渇した記憶が消えないからでしょう。こういう時代にはリスクテイクを後押しするサポーターが必要です。
金融機関、政府、投資家、国民、みんなのアントレプレナーシップを称賛する声が、企業や企業家を動かすのです。
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株式市場で、企業による自社株買いに対する関心 が高まっている。東京証券取引所1部の 売買代金が13日、年末年始を除き約9年ぶりの水 準に落ち込むなかで、自社株買いは需給面 から相場を下支えする要因となっている。8月~9 月は自社株買いは増えやすいという季節性 もある。手元資金が豊富な企業には、株主還元策 として自社株買いを求める声も高まっている。
(日経ヴェリタス2012年8月19日6面)
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「4~6月に自社株買い取得枠の設定を発表した時 価総額500億円以上の東証1部企業を対象に、 ゴールドマン・サックス証券が発表後4週間の株 価騰落率を調べたところ、TOPIXを平均7% 上回った。キヤノンは7月30日の引け後に500億 円を上限とする自社株買いを発表。翌31日に 株価は5.8%上昇した。」(前掲紙)
自社株買いは、自社株買いに応じなかった株主の 持分比率を増加させる効果があります。 自社株買いの価格とファンダメンタルバリューが 一致していれば、株価に無差別ですが、 市場株価が低くファンダメンタルバリューを下 回っているときに自社株買いを行えば、 既存株主の株式価値を押し上げます。
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