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2012 年 9 月 のアーカイブ

あおぞら銀行、公的資金返済に道筋

あおぞら銀行は27日、政府から注入された公的資金を返済するための減資が同日の臨時株主総会で承認されたと発表した。長年の経営課題だった公的資金の返済に一定の道筋をつけた。筆頭株主の米投資ファンド、サーベラスはあおぞら銀行株式を売却する意向を表明。
(日本経済新聞2012年9月28日4面)

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「あおぞら銀行の前身の旧日債銀は1998年の破綻処理で公的資金が投入され、一時国有化された。その後、オリックスやソフトバンクなどの企業連合による買収を経て、2003年に外資のサーベラスが筆頭株主となっていた。」(前掲紙)

サーベラスが筆頭株主になって9年経つのですね。サーベラスは、米国でも有力なプライベートエクイティファンド(PEファンド)の一つですが、PEファンドというのはハゲタカファンドのイメージとは異なり、比較的長期間株式を保有し、じっくりと企業の再生に取り組むことが、これで日本でも認知されるようになるでしょう。

そう言えば、ハゲタカファンドという表現も最近は使われなくなりました。

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日本航空の外国人保有4割、外資規制超える

日本航空の発行済株式の約4割を外国人が保有していることが26日、分かった。航空法により、日本の航空会社は外国人の議決権割合は3分の1未満に抑える「外資規制」がある。規制を超えた分は株主名簿に記載されないため、議決権や配当を一部失う外国人株主が出る可能性がある。
(日本経済新聞2012年9月27日13面)

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「日航は今後、できるだけ不公平感のない名簿記載ができるよう検討する。具体的には、外国人の保有株数を集計し、持株比率に応じて案分することで全体で3分の1未満に収まるような方法などを考える。この過程で株主によっては保有分に見合った議決権を受けられないケースも出てくるとみられる。」(前掲紙)

何とも酷い話です。「外資規制」がある企業を上場させるのであれば、規制枠を超えて外国人が株式を取得できない仕組みをあらかじめ設けておくべきです。それができないの
であれば、「外資規制」がある企業を上場させるべきではありません。

そもそも「外資規制」で産業を守る時代ではなく、規制の撤廃を真剣に検討すべき時期に来ていると私は思います。

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ソフトバンク、連結子会社から配当金592億円

ソフトバンクは25日、連結子会社のソフトバンクテレコムから配当金592億円を受け取ると発表した。ソフトバンクの配当の原資にする。単独決算の営業外収益に計上するが、連結決算には影響しない。
(日本経済新聞2012年9月26日15面)

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「ソフトバンクは2012年3月期末に前の期末比8倍の40円を配当。12年4~9月期末に20円と、初めて中間配当を実施する予定だ」(前掲紙)

ソフトバンクテレコムの配当の概要は次の通りです。

(1)配当金総額 72,492百万円
(2)効力発生日 2012年9月26日

ソフトバンクはソフトバンクテレコムの株式を100%所有しています。

このうち、81.7%はソフトバンクが直接所有し、18.3%はSBBM株式会社(当社の100%子会社、以下「SBBM」)が所有しており、直接所有に係る受取配当金59,203百万円が、個別決算上営業外収益に計上されます。

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2012年9月25日「連結子会社の配当決定に関するお知らせ」ソフトバンク株式会社

 

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ルネサス、官民で買収

業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本を代表する製造業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資する方向で調整に入った。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗策をつくり、年内に過半数の株式取得を目指す。ルネサスは車や家電を制御するマイコンで世界首位。基幹部品の安定調達に向け、官民挙げて異例の支援体制を組む。
(日本経済新聞2012年9月22日1面)

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「出資企業としては日産自動車やホンダ、キヤノン、ファナックなどの名前が挙がっている。自動車部品メーカーではトヨタ系のデンソー、ホンダ系のケーヒンのほか、世界大手の独ボッシュなど海外勢にも出資を求めている。第三者割当増資などにより、産業革新機構と合わせて1000億円超を共同出資し、ルネサスを買収する方針だ」(前掲紙)

ルネサスについては、8月末に米系PEファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が出資する案を示しています。

「ただKKRが大胆な工場の集約などに踏み切った場合、マイコンの安定調達に支障をきたす可能性がある。」(前掲紙)

また、KKRは投資を回収するため、海外の企業にルネサスを売却する懸念もあるとのことです。

しかし、私にはこれが何故国庫を投入する理由になるのかわかりません。安定供給が必要なら、必要な企業が必要な範囲で第三者割当増資に応じるというのであれば理解できます。
しかし、民間企業を救済するのにどうして税金を投入する必要があるのでしょうか?

海外の企業うんぬんというのも上場していれば常にあり得る話で、それが大きな問題であるのなら、はなから国営企業として運営すれば良いのです(もちろん国民の理解が得られればの話です)。

経営不振企業の再建といったリスクの高い投資は、もとより国が行うべきものではありませんし、民間企業を国が救済したりしなかったりするのは公平性の点から問題です。またJALの例を見ても明らかなように、民間企業同士の競争に国が介入するのは、資本主義の根幹を揺るがしかねないと、私は思います。

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【M&A箴言集】みらかHD 鈴木社長

健康診断で血液や尿などを採られた人は多いだろう。みらかホールディングスは血液や尿を検査する薬や機器を製造するだけでなく、検査を病院から受託している。受託検査事業は価格競争が厳しく、利益率は総じて低い。みらかHDは徹底した合理化で収益源に育て、7期連続の増収増益を見込む。昨年には米国の受託検査会社を買収、海外展開にも乗り出している。
(日経ヴェリタス2012年9月23日1面)

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− 鈴木社長にとってM&Aとは。

「企業をグローバル競争に参画するレベルにもっていくために必要な手段だ。私は研究者として入社したが、1998年の米検査薬メーカーの買収にかかわった。適任者がいなかったというのが理由だが、これがなかったら今の私のキャリアもないし、会社も今の形にはなっていなかったと思う。昔のM&Aはのるかそるかといった賭けのような面があったが、今はスタッフもそろっており、目的をもってきちんと判断すれば使いこなせる。」(前掲紙)

鈴木社長は、もともと研究者で、研究所で検査役の研究をしていた人です。1998年にM&Aに関わったことをきっかけに経営戦略部門を担当するようになり、2003年に社長に就任しています。

M&Aは会社を買えるだけでなく、人のキャリアも変えるのですね。

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日本電産、米2社を買収

日本電産は20日、米商業用モーター大手のキネテック(イリノイ州)と、産業用モーター制御機器のアブトロン・インダストリアル・オートメーション(オハイオ州)を買収すると発表した。円高の影響などもあり、日本電産は今年に入って6社のM&Aを決めている。エレベーターや工場で使う中大型モーター事業拡大で、IT市場への依存度が高い現在の事業構造を転換する。
(日本経済新聞2012年9月21日9面)

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今回日本電産が買収する2社の概要は次の通りです。

(1) Kinetek の概要
社名: Kinetek Group Inc.
本社所在地:  ディアフィールド、イリノイ州、米国
設立:  1996 年
主要拠点:  24 拠点(19 のデザインセンターを含む) (米国 14 拠点、メキシコ 2 拠点、イタリア 4 拠点、中国 4 拠点)
主な事業内容: 電子モータ、ギアモータ、ギアリング、電子制御、システ ムソリューション、エレベーターの制御製品の製造、カス タム設計
従業員:  2,987 人
2011 年 12 月期売上:  400 百万 USD
2011 年 12 月期資産内訳: 流動資産:224 百万 USD 固定資産:160百万USD

(2) Avtron の概要
社名: Avtron Industrial Automation, Inc.
本社所在地:  インディペンデンス、オハイオ州、米国
設立:  1953 年
主要拠点:  2 拠点(オハイオ州)
主な事業内容: 産業用エンコーダー及び、システムインテグレーション、 保守サービス
従業員:  154 人
2011 年 12 月期売上:  33 百万 USD
2011 年 12 月期資産内訳: 流動資産:13 百万 USD 固定資産:9百万USD

両社とも現金によって全株式を取得することにより買収することになります。

注目すべきは、Kinetek の売り手は、The Resolute Fund, L.P.、Avtronの売り手は、Morgenthalerともにプライベート・エクイティ・ファンドだという点です。米国プライベート・エクイティ・ファンドはいまだ健在です。

【リンク】

2012年9月20日「米国 Kinetek Group Inc. 及び Avtron Industrial Automation Inc. の 2 社買収に係る株式取得に関するお知らせ」日本電産株式会社 [PDF]

 

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JAL再上場

日本航空(JAL)ガ19日、経営破綻に伴う上場廃止から2年7ヶ月ぶりに東京証券取引所第1部に再上場した。初値は売り出し価格(3790円)を20円上回る3810円だった。時価総額は約6900億円と世界の航空大手の中でも屈指の規模。世界の株式市場では米フェイスブックに次ぐ今年2番目の大型上場となった。
(日本経済新聞2012年9月19日夕刊1面)

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「日航再建を主導してきた官民ファンド、企業再生支援機構は保有する日航株をすべて売却。出資した公的資金(3500億円)を回収し、3000億円近い売却益を得た。日航への公的支援は国民負担なく終結する。」(前掲紙)

多額の繰越欠損金があり当面税金の支払が減免されることがANAとの対比で見ると不公平ではないかとの指摘があちこちでなされています。

新規公開時の有価証券届出書に記載されている税効果会計関係の注記を見ると2012年3月31日現在、繰越欠損金による繰延税金資産3,922億円との記載があります(2011年3月31日現在では4,885億円)。会計基準の縛りがあって、会計上は、このほとんどは回収不能とされ資産性が認められていませんが、JALは営業利益を12年度で1500億円、13年度は1400億円見込んでいることを鑑みるとそのほとんどが回収可能であると思われます。

ということは、売却益3000億円と言ってもそれを上回る税金の減免が今後予定されており、国庫負担の観点で見るとむしろマイナスであると言えます。

再生がなった企業の税金が何故減免されるかという批判は正当なものであり、立法で手当すべき課題であると感じます。

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ユーロ安・円高一服

ユーロ安・円高が一服し、為替相場が円安方向になってきた。足元のレートは一時1ユーロ=103円台後半まで戻り、各社が想定していた100円程度より円安で推移している。103円の水準が続けば、欧州の売上規模が大きい主な20社では、2012年度下期の営業利益を計算上、従来の会社予想より400億円近く押し上げる可能性がある。
(日本経済新聞2012年9月19日13面)

【CFOならこう読む】

ユーロ変動の影響が特に大きい10社の、対ユーロ1円の変動が営業利益に与える影響は次の通りです。

 

欧州危機問題は抜本的な解決にはほど遠く、ユーロの動向は全く不透明です。このため、各企業は円高対策に力を入れています。

「精密ではセイコーエプソンがインクジェットプリンター用のカートリッジで値上げを検討。リコーや富士フイルムホールディングスは外貨建ての部材調達を加速する。他業界でもソニーやコマツなどが値上げを検討するなど、為替動向に左右されにくい収益対質の構築を急いでいる。」(前掲紙)

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証券優遇税制「ISA」前途多難

証券投資を側面支援してきた税制上の優遇策に暗雲がたれこめている。上場株式の配当や譲渡益に対する課税を20%から10%に軽減している現行の証券優遇税制は風前のともしびだ。金融庁と証券業界は「少額投資非課税制度(日本版ISA)」と呼ばれる措置を証券市場活性化の看板に据える構え。ただ、日本版ISAには証券会社がシステム投資に億円単位の費用負担を迫られるほか、利用申請の仕組みが煩雑など課題も多い。
(日経ヴェリタス2012年9月16日19面)

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「業界に漂うのはしらけムードだ。導入の際に各社が迫られるシステム開発負担は1社あたり1億~3億円とされる。現行の枠組みは3年間の時限措置のため、「制度がなくなれば投資コストが回収できない」と楽天証券の楠雄治社長は語る。」(前掲紙)

金融庁は、日本版ISAの恒久化を2013年度の税制改正で要望していますが、むしろ軽減税率延長を徹底して推すべきではないでしょうか。

野田首相は、「消費税増税のタイミングで投資家だけを優遇できない」と言っていますが、国民を投資家とその他に分けて対立するかのように議論するのは間違っています。
我々国民はみな労働者であり消費者であり(年金基金等を含む)投資家であるのです。

投資を喚起し、そのカネを「明日の会社」や「明日の事業」に回していくために、軽減税率延長は必要です。消費税増税するから軽減税率延長を止めるというのは、全く理屈が通らない話です。

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株主優待、導入比率が最高

株主配分の一環として自社製品や買い物券などを 提供する「株主優待制度」を実施する企業が 広がっている。導入社数は2年連続で増え、上場 企業全体(約3700社)に占める比率は過去最高 の27.8%になった。
(日本経済新聞2012年9月14日15面)

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「株式市場の低迷が長引くなか、増配や自社株買 いに加えて株主配分を強化し、個人投資家の 株式長期保有を促す狙いがある」(前掲紙)

株主優待制度導入には、検討すべき点がいくつも あります。

まず第1に、外国人株主や、年金基金や生命保険 を通じて株式を買っている個人投資家等、株主優 待 の恩恵を受けることができない株主が存在するこ とが株主平等原則の観点から問題がないか、とい う 点です。

この点について、例えば次のような批判があるこ とを知っておく必要があります。

「株主優待は、権利を行使できない株主にものす ごく不利な制度だ。だから欧米市場はもちろん、 外国人株主比率の高い新興国でも株主優待はあり 得ない。」
(「橘玲の不思議の国」探検 日経ヴェリタス 2010年2月14日70面)

第2に、現物配当との区別が明確に出来ない点で す。

この点、新会社法実務相談(西村ときわ法律事務 所編 商事法務)は次のように説明しています。

「現行の一般的な株主優待制度は、現物配当制度 とは別個のものとして認められるという理解が有 力であり、また株主優待制度は、多くの場合、個 人株主作りや自社商品・サービス等の宣伝を目的 として小額のものを分配するに過ぎず、株主に対 する配当の性格は認められないのではないかと思 われます。もっともかかる合理的な目的に相当な 範囲を超えて、株主優待制度の下に多額の会社財 産を払い戻す行為は実質的な現物配当として、会 社法453条以下の配当規制に服することなくこれ を行うことは許されないものと思われます。」

株主優待の中には、小額のものを分配するに過ぎ ない、とは言えない場合が散見され、十分な検討 が求められます。

第3に会計処理です。 一般に、株主優待を付与している時点で、株主優 待引当金を計上する必要がある場合があります。 自社の商品・サービスを購入できる無料券や割引 券を付与する場合には、付与時点で引当計上する 必要があると 思われます。

【リンク】

なし