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2012 年 12 月 のアーカイブ

【お知らせ】年初は1月9日スタートです。

本年もご愛読いただきありがとうございました。2012年の更新は本日で最後になります。
年初は1月9日にスタートします。
来年もCFO Newsをよろしくお願いいたします。

カテゴリー: お知らせ タグ:

J-REIT拡大の条件

日本から500億ドル(約4.2兆円)もの資金が米国の不動産投資信託(REIT)に流入している。これは日本のREIT全体(J-REIT)全体の時価総額を超える額だ。なぜ日本人投資家のお金が 日本の市場に向かわないのか。
(日本経済新聞2012年12月28日23面 経済教室 久恒新立教大学教授)

【CFOならこう読む】

久恒教授の提言の概要は以下の通りです。

「第一に、制度の国際化である。日本市場は他国に比べて、資金調達の面で自由度が少ない。市場の状況に応じて臨機応変に資金調達ができるよう多様なメニューをそろえておくことは、一段の安定性向上に寄与するだろう。
(中略)
第二に、透明性の確保である。
(中略)
鑑定評価内容を審査しその内容を投資家に公開する外部中立の審査機関を制度の中に採り入れることと、収支見積書の様式を統一することを提案したい。証券化用不動産の鑑定評価に用いられる収益還元法では、不動産が将来どれだけの収益を生み出すかに着目して評価額を算出する。収支見積書は、純収益が将来どう変化するかを予測した結果の一覧表であり、評価のまとめともいえる。
(中略)
第三に、REITの社会的意義の周知とそれを踏まえた国策としての支援である。日本のREITは不動産の流動化や不動産市場の近代化に加えて、不動産価格を下支えするなど、多くの役割を果たしてきた。さらに、都市の成長戦略に寄与するという役割も忘れてはならない。」(前掲紙)

税制面では、UPREIT制度の導入される必要があります。UPREITとは不動産所有者が所有する不動産を現物出資する際、不動産譲渡益課税を将来に繰り延べることを可能とする仕組みです。米国では、1990年代にUPREITのスキームが創設されたことにより、REIT市場の時価総額や流動性が飛躍的に向上したと言われています。

UPREITは、Umbrella Partnership REITの略です。米国ではREITに現物出資した場合に課税されますが、パートナーシップに現物出資すれば課税されないため、不動産所有者がパートナーシップに現物出資し、REITがそのパートナーシップの持ち分を保有することで間接的に不動産をREIT化するというスキームが、UPREITで、2つの税制が1つの傘に入るという意味で、Umbrella Partnership REITと呼ばれています。
(UPREITについては、2012年10月3日 ロイター「〔焦点〕UPREIT制度、米国で不動産活性化に実績 日本では利用促進の制度不可欠」が参考になります。)

日本では、組合に現物出資を行った場合の組合員間の相互譲渡に関して、課税の繰延べが認められておらず、UPREITのスキームを採用することができません。組合税制を見直す等何らかの措置を講ずる必要があると思います。

年内の更新はこれで終わりにします。
2013年が世界中の人々にとって良い年でありますように。

【リンク】

なし

カテゴリー: 不動産 タグ: ,

米住宅への投資再開

米住宅市場の底入れをにらみ、ヘッジファンドが住宅ローン担保証券(MBS)への投資再開に動き始めた。米住宅価格が上昇しているほか、FRBが量的緩和(QE3)でMBSを買い入れているからだ。米住宅市場の改善で、公的管理下にある住宅金融公社の経営悪化にも歯止めがかかりつつある。
(日本経済新聞2012年12月27日7面)

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「米調査会社ヘッジファンド・リサーチが今年1~10月の総収益率をまとめたところ、MBS中心の投資戦略を採るファンドが14.37%で最大となった。株式ファンドなどを含めた全体の総収益率(4.33%)を大幅に上回った。」(前掲紙)

金融緩和により生まれた不動産バブルがはじけ、市場が低迷し、ほとぼりが覚めたころにまた金融緩和によりバブルが生まれる。この循環から得られるものに比し、失うものはあまりに大きいと私は思うのですが・・・。

【リンク】

なし

カテゴリー: マクロ経済 タグ:

ヒトとマネー呼び込む国に

衆院選で勝利した自民党は「アジアNo.1の金融・資本市場の構築」を掲げ、金融業が生み出す経済価値の国内再生産への寄与度を英国並の10%にするとした。国際金融街シティを持つおかげで、5.8%の日本を大きく上回る。
(日本経済新聞2012年12月26日1面)

【CFOならこう読む】

「英国の特徴は経済の開放性にある。端的に示すのが企業のM&Aだ。トムソン・ロイターによれば、今年の英国の国外から国内への企業買収は12月初め時点で917億ドルと、国内から国外へのM&Aの1.3倍もある。買い手の国籍は問わないという姿勢の英国には、M&A業務に携わるために世界中に金融機関が集まる。日本は「国外→国内」のM&Aが少ない」
(前掲紙)

海外からのM&Aは2007年を300件をピークに大きく減り、2012年は20日時点で108件と昨年を3割下回っています(レコフ調べ)。

2007年と言えばブルドックソース事件があった年です。

昨日お話ししたように、日本企業(日本株)が復権するためには、株価が割安のまま放置され、その結果買収者が現れたら、それを自らの保身のためだけに排除することは許されないという世界の常識に従って行動していくことが求められます。

そして当然のことながら、この買収者が外国人であっても同様です。

買収者が外国人だからという理由でこれを排除することがあってはいけません。

「米国からシンガポールに移住した著名投資家ジム・ロジャーズも「外国人は日本では歓迎されないと思い込んでいる」」(前掲紙)

これは思い込みではなく事実です。
政治家や行政や経営者だけでなく、すべての日本人が変わらなければいけないのだと、私は思います。

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なし

カテゴリー: M&A タグ: ,

日本株、復権の予感?

海外投資家に見放され続けてきた日本株がにわかに息を吹き返している。日経平均株価は先週、約8ヵ月半ぶりに1万円の大台を回復。海外勢による日本株の買越額は、上げ相場の始まった11月第2週以来、5週間累計で1兆1300億円に達した。春先の株高局面を上回る勢いだ。
(日経ヴェリタス2012年12月25日1面)

【CFOならこう読む】

「にわかに活気を帯びてきた日本の株式市場。だが、復権への道は決して容易ではない。
(中略)
「リーマン・ショック前に米スティール・パートナーズなど株主主権を前面に出すファンドが相次いで排除され、「日本の経営者による株主重視の姿勢はむしろ後退した」(米系証券の投資銀行部門幹部)とされる。会計不祥事の頻発やROEの低迷も、「経営規律の緩さ」が影響している。」(前掲紙)

大前研一氏が『お金の流れが変わった』で指摘しているように、海外のマネーが日本に入って来なくなったのは、ブルドックソース事件以降です。

「「日本にはホームレス・マネーが来ない、と述べた。その契機となったのが、ブルドックソースのポイズンピルを認めたあの最高裁判決だといっていいだろう。事実あれ以来、外資は日本の市場に背を向け、世界のマネーはぱったり日本に入ってこなくなった。」(139頁)

日本の株式市場が復権するためには、「経営規律の緩さ」を排除することが必要です。
これは経営者だけの問題ではなく、これを支える日本のインフラ、行政や司法の問題でもあります。

「例えば敵対的買収。株価を過度に割安なまま放置すると買収の標的になってしまうため、「経営に一定の規律を与える」と欧米では評価される。だが、日本での成立は極めて困難。企業や金融機関の仲間意識が強く、「資本の論理」が通りにくい。」(前掲紙)

米国でも、標的となる企業の経営者は、自分の会社が敵対的買収されることを望ましいことだとは誰も思いません。
しかし、株価が割安のまま放置され、その結果買収者が現れたら、それを自らの保身のためだけに排除することは許されないと知っています。

これは会社は誰のものか、などということ以前の世界の常識です。
ブルドックソース事件後において、日本の株式市場が真に復権するためには、日本株式会社ムラ全体が世界の常識に従って行動することが必要であると思います。

来年は、「資本の論理」による敵対的買収がいくつか日本でも起きる年になるかもしれません。

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なし

エー・ディー・ワークス、ライツイシューにより5億円調達

エー・ディー・ワークス 20日、既存株主に無償で割り当てた新株予約権のうち、92・8%が行使され、約5億円を調達したと発表した。調達資金は中古マンションなど投資用不動産の仕入れに充てる。
(日本経済新聞2012年12月21日17面)

【CFOならこう読む】

ライツイシューによる資金調達は、日本では2010年のタカラレーベンに続き2件目です。

タカラレーベンのライツイシューについては以下のエントリーをご覧下さい。

2010年3月15日「日本版ライツイシュー第1号:タカラレーベン株急落」

2010年6月2日「日本版ライツイシュー1号:タカラレーベン46億円調達」

エー・ディー・ワークスのライツイシューの概要は以下の通りです。

(ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て) に関するお知らせ 2012年10月1日より抜粋)

(1)無償割当の方法
2012 年 10 月 16 日(火)を基準日とし、当該基準日の最終の株主名簿に記載又は記録 された株主に対して、その有する当社普通株式1株につき1個の割合で株式会社エ ー・ディー・ワークス第 15 回新株予約権を新株予約権無償割当て(会社法第 277 条) の方法により割当てます。
(2)新株予約権の内容等
①新株予約権の名称
株式会社エー・ディー・ワークス 第 15 回新株予約権
②新株予約権の目的となる株式の種類及 び数
本新株予約権1個あたり、当社普通株式1株
③新株予約権の総数
134,836 個
※割当基準日における当社の発行済株式総数 から、同日において当社が保有する当社普通 株式数を控除した数
④新株予約権の行使に際して出資される 財産の価額(行使価額)
1株(1個)につき 4,000 円
⑤新株予約権の行使によって株式を発行 する場合における資本組入額
1株(1個)につき 2,000 円
⑥新株予約権の権利行使期間
2012 年 11 月 19 日(月)から 2012 年 12 月 14 日(金)まで(予定)
⑦新株予約権の株主様の行使条件
各本新株予約権の一部行使はできないものと する。
⑧新株予約権の当社の取得事由
本新株予約権の取得事由は定めない。

本件ライツ・オファリングでは、新株予約権は証券取 引所において上場されたので、市場取引による売却の選択肢も株主に用意されるため、新株予約権の行使を 望まない株主は、新株予約権を市場取引により売却し、その対価を得ることで、新株予約権の無償割当てによる希 薄化の影響を軽減することができる仕組みになっています(12月7日まで)。

行使比率はタカラレーベンの95.7%であったのに対し、エー・ディー・ワークスは92.8%と引き続き高い水準になりました。

この結果を見て、後に続く会社が出てくるかもしれません。

【リンク】

2012年10月1日「ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て) に関するお知らせ」株式会社エー・ディー・ワークス [PDF]

2012年10月1日「ライツ・オファリング(ノンコミットメント型/上場型新株予約権の無償割当て) に関するご説明(Q&A)(株主様用)」株式会社エー・ディー・ワークス  [PDF]

カテゴリー: 資金調達 タグ:

自民税調、来月下旬に税制改正大綱

自民党税制調査会は19日、党本部で非公式の幹部会を開き、2013年度税制改正大綱の議論を始めた。民主党政権で税制改正を主導した政府税制調査会は大幅に組織を見直し、自民税調を中心に来月下旬までに大綱を決める。
(日本経済新聞2012年12月20日5面)

【CFOならこう読む】

「衆院選の影響で遅れた大綱の取りまとめは、来年1月下旬とする方向になった。越年となった2013年度予算編成を急ぐには、歳入の前提となる税制改正を早くまとめる必要があるためだ。最大の課題は2014年4月の消費税率引き上げに向けた環境整備。自公両党が政策合意に盛り込んだ軽減税率は、公明が「消費税率8%時の実現を目指す」とする導入時期や税率を抑える対象の線引きの議論が本格化する」(前掲紙)

例年税制改正大綱は年内に取り纏められているので、1ヵ月程度工程が後ろ倒しになることになります。

今日の記事に書かれている、2013年度税制改正で焦点となる項目に法人税減税が掲げられていませんが、ぜひとも織り込んでもらいたいものです。

【リンク】

なし

カテゴリー: 税制 タグ:

サントリーHD、M&Aへ500億円調達

サントリーHDは18日、清涼飲料事業を手掛ける主力子会社、サントリー食品インターナショナルを2013年にも東京証券取引所に上場させると正式発表した。調達資金は最大5000億円前後と見られる。
(日本経済新聞2012年12月18日19面)

【CFOならこう読む】

「関係者によると、年明けにも東証に上場を申請し、夏ごろにも上場する見通し。上場時の株式時価総額は1兆円規模となりそうだ。」(前掲紙)

サントリー食品インターナショナルの中期計画の概要は次の通りです。

2013年―2015年中期計画

<数値目標(既存事業)> ※いずれも2012年比
売上高 平均年率1桁台後半の成長(5%以上)
EBITDA 平均年率1桁台後半以上の成長

<事業方針>
(1)国内事業における「重点ブランドの強化」「新規需要の創造」
(2)国際事業における「ナチュラル&ヘルシー」をキーワードにした戦略展開
(3)M&Aの積極的な推進による新規事業の展開

サントリー食品インターナショナルは、2020年の売上高2兆円を目指しています。

世界の食品大手の時価総額
米コカコーラ 14兆円
米ペプシコ   9兆円
スイスネスレ 18兆円
仏ダノン    3兆円

世界を市場に戦っていくには、どうしても規模の拡大が必要であるということです。

【リンク】

2012年12月18日「サントリー食品インターナショナル株式会社 2013年―2015年中期計画」

 

カテゴリー: M&A タグ: ,

東芝個人向け社債、3年ぶり数百億円規模に

東芝は2013年1月にも3年ぶりに個人向けの普通社債(SB)を発行する方針だ。調達規模は未定だが、数百億円規模になる見通し。コマーシャルペーパー(CP)の発行枠もこのほど4000億円から6000億円に拡大した。調達手段を多様化して資金需要に対応する。
(日本経済新聞2012年12月18日19面)

【CFOならこう読む】

「2010年1月に発行した500億円の個人向けSBが2013年1月28日に償還期限を迎えるため、社債発行で借り換えする。前回同様、一口100万円の個人向け社債として発行する方針だ」(前掲紙)

2010年1月に発行した個人向け社債の概要は次の通りでした。

第48回無担保社債
社債総額    金500億円
各社債の金額  金100万円
利率      年1.05%
年限       3年
格付け     A─(R&I) BBB(S&P) Baa2(ムーディーズ)

家電大手の業績悪化が相次ぐ中、個人向け社債の需要がどの程度あるのか注目されます。

【リンク】

なし

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【資本政策詳解】ユーグレナ

ユーグレナの株式上場の概要は次の通りです。

ユーグレナは、2005年設立、微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した機能性食品の製造・販売、バイオ燃料・環境技術の研究開発などを展開をしている企業です。
JXホールディングス傘下のJX日鉱日石エネルギーなどとミドリムシを使ったジェット燃料の研究をするほか、大学との共同研究プロジェクトを複数進めています。

公募価格は1,700円、予想PER17.0倍という水準での株式公開となります。

黒転したのは2010年9月ですが、それ以降順調に利益が積み上がっており、2012年6月末時点の現預金残高は894百万円あります(総資産は1,368百万円)。

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創業期から黒転するまでの間の必要資金は主にVC等から調達しています。発行価格は、事業の進展に伴い、徐々に引き上げられています。

上場後の出雲社長の持株比率は約21%(新株予約権考慮後)、VC型の資本政策となっており、ファンドの今後のexitが注目されます。従業員のインセンティブはストックオプションによっています。

【リンク】

株式会社ユーグレナ

 

 

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