2013年に入り償還までの期間が7~10年と、これまでより長い国内普通社債や投資法人債を発行する企業の動きが目立っている。日銀の「量的・質的金融緩和」などで低金利が長期化するとの見方が多いためだ。初めて長期の社債を起債する企業も出ている。運用難の投資家の需要も旺盛で、今後も年限長期化の流れは続くとの見方が多い。
(日経ヴェリタス2013年4月28日24ページ)
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「日銀は26日の金融政策決定会合で「経済・物価情勢の展望(展望リポート)をまとめ、消費増税などを除くケースで15年度に消費者物価の上昇率が1.9%になるとの見通しを示した。物価上昇による中長期的な金利上昇をにらみ、前倒しで資金を確保したいとの思惑も、社債の発行増につながっている。」(前掲紙)
長期の債券を発行した企業は次の通りです。

運用側は、金利上昇に伴う債券価格下落のリスクを十分に検討する必要があります。
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なし
西武ホールディングス(HD)の筆頭株主である米投資会社サーベラス幹部のダン・クエール元米副大統領=写真=は、「西武HDは企業統治や業績の改善に必要なことをした後に、速やかに上場を目指すべきだ」と語った。早期の株式上場を望むものの、今の経営成績では不十分とし、引き続き西武HD株を長期保有する姿勢を示した。
(日本経済新聞2013年4月26日9ページ)
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「自身を含め計8人を西武HDの取締役にするよう求めている点については、「西武は立派な会社だが、良い企業統治と内部統制が欠けている。改善に向け新しい知見を投入したい」と語った。」(前掲紙)
「西武は」を「日本企業は」に置き換えると、本質が見えてくるように思います。
今日の大機小機も西武問題を取り上げ、
「しかし、株主権は絶対でなく、株主価値の最大化が最優先されるべき企業目的とも言えない。」
と述べています。
こういう極端なことを言うと物事の本質が見えなくなります。
重要なのは、株主価値に優先されるものは何か、ということでしょう。
経営者支配が株主価値に優先されて良い理由はありません。
同じく今日の新聞に、西武後藤社長が官房長官と会談したとの小さな記事が載っていますが、
これは一体どういうことでしょう?
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なし
資生堂は24日、2013年3月期の連結最終損益が147億円の赤字(前の期は145億円の黒字)になったと発表した。従来予想は105億円の黒字だった。
(日本経済新聞2013年4月25日9ページ)
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「買収して以来、業績苦戦が続いている米子会社について、「のれん」の価値を引き下げる減損で286億円の特別損失を計上する。最終赤字は8年ぶり。年50円の配当は予定通り実施する。」(前掲紙)
特別損失の内容は次の通りです。
「(1) 特別損失の計上見込み額
Bare Escentuals, Inc.(以下、ベアエッセンシャル社) に係る無形固定資産(のれん)の減損損失として 28,600 百万円
(2) 特別損失の発生およびその内容 当社は、2010 年 3 月に買収を完了し、当社の子会社とした米国の化粧品会社ベアエッセンシャル社について、 買収後、グループシナジーの発揮に向け、米州における資生堂の生産・物流拠点およびバックオフィスとの機 能統合や強化、米国外における資生堂の販売インフラの活用、研究開発や商品開発分野での取り組み等を工 程どおり進めてきました。その結果、シナジー効果も徐々に表れ、売上も伸長していましたが、期待通りとはな っていない状況であったため、ベアエッセンシャル社の売上の大半を占める米国において、市場規模の大きい リテール事業を育成すべく、2011 年度より、テレビ宣伝等のメディア投資を実施しました。しかし、認知度や関心 は高まったものの、リテール事業の拡大に想定以上の時間を要していることなどから売上は計画を下回って推 移し、特に直近数カ月間においては乖離幅が大きくなっています。 このような状況を総合的に勘案し、4 月に入ってからではありますが、長期計画を見直して減損テストを再度実 施した結果、2012 年度に特別損失が発生することとなったものです。 なお、ベアエッセンシャル社は、今回の長期計画の見直しにより、2013 年度に、不採算直営店舗の閉鎖等、構 造改革を断行するとともに、一旦、マーケティング投資を拡大し、2014 年度以降の成長への基盤を整えます。成 長に向けては、「QVC」や「インフォマーシャル」といったダイレクト販売事業を強化することに加え、リテール事 業では、これまでのメディア投資から店頭マーケティングへ投資をシフトさせ、まずは既存店舗の強化に最優先 に取り組みます。これらの取り組みにより、ベアエッセンシャル社の本来の強みである「ダイレクト販売とリテー ル販売の相乗効果」を生み出す「独自の強いビジネスモデル」に磨きをかけ、グローバルメガブランドとして、持 続的な売上成長を果たしていきます。」
(2013年4月24日「特別損失の発生および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社資生堂 [PDF])
のれんの減損については、判断が難しいのですが、“売上は計画を下回って推 移し、特に直近数カ月間においては乖離幅が大きくなっています”というのは一つの重要な兆候になります。
【リンク】
2013年4月24日「特別損失の発生および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」株式会社資生堂 [PDF]
金融庁の企業会計審議会は23日、国際会計基準(IFRS)の導入について議論し、任意適用の要件を緩めることでおおむね一致した。
(日本経済新聞2013年4月24日5ページ)
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「上場していることや海外に資本金20億円以上の子会社を持つなどの要件を緩めて、IFRSを採用する企業を増やしていく方針だ。」(前掲紙)
IFRSを任意適用できる企業は連結財務諸表規則第1条の2に「特定会社」として定義されています。
その具体的な要件は以下の通りです。
(1)次の要件のすべてを満たすこと
①発行する株式が、金融商品取引所に上場されていること
②有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組み に係る記載を行っていること
③指定国際会計基準に関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、指定国際会計基 準に基づいて連結財務諸表を適正に作成するこ とができる体制を整備していること
(2)次の要件のいずれかを満たすこと
会社、その親会社、その他の関係会社又はその他 の関係会社の親会社が、
①外国の法令に基づき、法令の定める期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること ②外国金融商品市場の規則に基づき、規則の定める 期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること
③外国に資本金20億円以上の子会社を有していること
このうち(1)①や(2)③について要件が緩和されるとのことです。
これによりIPO時の財務諸表もIFRSに基づき作成することが可能になるかもしれません。
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なし
日本取締役協会は、このほど、上場企業の経営者報酬に関する法規制や税制の改正要望をまとめた。
(日本経済新聞2013年4月22日15ページ)
【CFOならこう読む】
「役員の自社株保有を増やして長期的な株価上昇につながるよう株式利用型報酬制度を
使いやすくする必要があると指摘。報酬の一形態として譲渡制限付きの株式を利用できるよう
にするため、法人税法や所得税法の改正を訴えている」(前掲紙)
日本取締役協会 経営者報酬ガイドライン(第三版)と法規制・税制改正の要望2013の「要望4 譲渡制限付株式などグローバルに利用されている報酬制度が、日本では法規制や税制などが障害となって利用できないということのないようにすべきである。」では現行税制に関し以下の問題点を提起しています。
「日本の現行税法では、株式利用型報酬については、法人における損金算入や個人への所得税 の課税タイミングについて、不明な点が多い。とりわけ、役員に対する報酬の場合には、日本においては、法人税法第 34 条により損金算入のた めには事前(役務提供前)の金額確定が前提とされるため、損金算入に困難を伴うことが多い。退職 金や一定のストックオプションの場合は、法人税法第 34 条の適用除外となり、事前確定等がなくとも 損金算入が可能とされているが、退職金であっても株式利用報酬である場合や、ストックオプションで あっても発行法人の子会社の役員に付与される場合となると、発行法人側、子会社側の双方におい て、その損金性は不明である。
個人に対する所得税課税は、株式利用型報酬の権利確定時に行われるのが原則だが、たとえば、 譲渡制限株式については、現行税法では課税のタイミングは明確にされていない。仮にその付与時 に所得税が課されるとすれば、譲渡制限が付されているため売却して納税資金を確保することはで きず、担税力の問題から報酬ツールとしては不適切ということになろう。欧米(たとえば、ドイツ、イギリ ス、アメリカ等)では、譲渡制限付株式については、税法上で詳細な要件(国により要件は異なる)が 設定され、その報酬プランの具体的な状況、たとえば、付与時の議決権や配当権の状況、譲渡制限 される期間、没収の可能性などに応じて、課税のタイミングが決定されるようだ。
さらに国によっては、納税者個人の選択により、譲渡制限の解除時ではなく、あえて付与時に課税 とすることを可能とする国もある。(担税力のある個人の場合、株価の上昇基調では早期の給与課税 が有利。但し、付与時課税の選択により、制限解除時に株価が付与時価額を下回っても給与所得の 調整は不可)日本において、譲渡制限付株式を報酬ツールとして機能させるためには、税法上で所 得確定の具体的要件を整備することが望まれる。」(前掲紙)
米国連邦税法(IRC§83)は、譲渡制限付株式について、譲渡制限の解除時に課税することを原則としながら、付与時課税を選択することも可能としています(83(b) electionと言います)。
株式報酬というと、上場会社の役員に対し付与するものをイメージしがちですが、米国ではスタートアップ企業の創業者に株式報酬を付与し、創業者は83(b) electionを利用し、付与時課税を選択するのが一般的になっています。
これにより、例えばその会社がIPOをしたとしても、株価上昇分はキャピタルゲイン課税(通常所得課税と比べ優遇されています)を受けることが出来るのです。
スタートアップ時のベンチャー企業にVC等が投資するケースが徐々に日本でも増えつつあります。そうすると、創業者が一定の持分を維持するために、株式報酬を付与することも選択肢の一つとなっていくと考えられます。
米国では創業者の役務提供の対価が通常所得ではなく、キャピタルゲインとして課税されることに批判がある(例えばhttp://subchaptertax.wordpress.com/2012/02/10/tax-consequences-of-facebooks-ipo/)もののこういった税優遇措置が起業を後押ししているということもまた事実です。
そういった意味でも、今般の日本取締役協会の要望は的を得ていると思います。
【リンク】
2013年4月12日「2013年度経営者報酬ガイドライン(第三版)と法規制・税制改正の要望」日本取締役協会 [PDF]
西武ホールディングス(HD)に対しTOB(株式公開買い付け)を実施中の米投資会社サーベラスは18日、西武HDがTOBに反対する意見を表明したことに対する見解を公表した。
(日本経済新聞2013年4月18日9ページ)
【CFOならこう読む】
「株式買い増しは「子会社化を目的としない」と従来の主張を繰り返した。そのうえで、西武HDが一定の時間をかけて今の内部統制を改革しない限り、「株式上場は達成し得ない」との認識を示した。」(前掲紙)
内部統制の問題というより、企業統治(コーポレートガバナンス)の問題です。現西武は、堤家という大株主の支配から脱却する形で誕生しています。したがってもともとコーポレートガバナンスの核を欠いているのです。サーベラスは、この統治構造の歪みを抱えたまま上場するのを良しとしないと主張しているのです。この点については、先週の週間文春に掲載された、堤清二氏の手記、「サーベラスより悪いのはあの男だ!」でも同様の主張がなされています(但し、堤氏は西武ライオンズの売却や不採算路線の廃線には絶対反対の立場)。
「あの男」とは後藤社長のことを言っています。
【リンク】
なし
スミダコーポレーションは、海外子会社が現地で外貨を引き出すことができるコミットメントライン(融資枠)契約を、このほど金融機関と結んだ。これまでは日本で円建てで借り入れて送金する仕組みだったが、現地で直接借り入れられるようにして機動的な資金調達につなげる。
(日本経済新聞2013年4月18日15ページ)
【CFOならこう読む】
「本体のほか、オランダ、ドイツ、香港のグループ会社が枠内であれば現地の支店からいつでも円、ドル、ユーロの3通貨で借り入れできる」(前掲紙)
メガバンクその他5行と36億円のコミットメントライン契約を設定したとのことです。
【リンク】
なし
16日、株主関連業務を手掛けるアイ・アール ジャパンの第1回新株予約権のジャスダック市場への上場が、大阪証券取引所から承認されたと発表した。
(日本経済新聞2013年4月17日15ページ)
【CFOならこう読む】
アイ・アール ジャパンは、コミットメント型ライツ・オファリングを行うことを発表しています。
コミットメント型ライツ・オファリングとは、新株予約権を発行会社以外の全ての株主 に対し、保有する発行会社株式の数に応じて無償で割り当て、かつその新株予約権が上場され市 場で売買できるなど既存株主に対して配慮された資本調達手法であり、発行会社が証券会社との 間で引受契約(コミットメント契約)を締結することで、発行会社の資金調達額をコミットする資金調達手法です。
会社は資金調達の目的を次のように説明しています。
「当社は平成 24 年4月に証券代行事業への約 40 年ぶりとなる新規参入を果たしました。株 券電子化のメリットを活用した新しいサービスの提供や価格設定が奏功し、参入後1年間 で上場企業7社から証券代行業務の委託をご決定いただいた他、複数の企業からも当社へ の証券代行業務の委託を前向きに検討するとのお声をいただいており、当社の参入の意義とともに当社の競争力について、自信を深めております。今後更に証券代行事業を伸張さ せ、中長期的な受託シェアを拡大していくためには、株主数 4,000 万名まで取扱可能なシ ステム整備が必要と考えております。現行の総合株主データベースシステムは十分に稼働 しておりますが、このような状況に鑑み、今後の受託社数の増加に備えて取扱可能株主数 の拡張のためのシステム開発に踏み切ることとしました。
開発原資として手元資金及び銀行借入その他の資金調達手段を検討しましたが、当社は第 一種金融商品取引業者であることから金融商品取引法上の自己資本規制比率の規制を受け ており、かかる観点からは、設備投資に伴う総資産の増加に応じた、自己資本の増強も必 要となります。
そこで、自己資本の増強に向けてコミットメント型ライツ・オファリング(上場型新株予 約権の無償割当て)による資金調達を実施することとなりました。」
当スキームにより会社は942百万円を調達します。
【リンク】
2013年4月12日「コミットメント型ライツ・オファリング( 上場型新株予約権の無償割当て) に関するお知らせ」株式会社アイ・アールジャパン [PDF]
2013年4月16日「コミットメント型ライツ・オファリングにより発行される当社第1 回新株予約権の上場日等に関するお知らせ」株式会社アイ・アールジャパン [PDF]
米衛星放送会社のディッシュ・ネットワークは15日、ソフトバンクが買収を決めた米携帯電話3位のスプリント・ネクステルに対抗買収を提案したと発表した。現金と株式を組み合わせた買収総額は255億ドル(約2兆5000億円)。ディッシュは、スプリントの株主が買収時点で受け取る現金はソフトバンクの案を18%上回ると説明している。
(日本経済新聞2013年4月16日3ページ)
【CFOならこう読む】
「ディッシュはスプリント株式の100%を取得して合併する方針。ソフトバンクは昨年10月、スプリント株の70%を201億ドルで買収することで合意していた。
(中略)
ディッシュの提案では、スプリント株主は1株あたり4・76ドルの現金と約2・24ドル相当のディッシュ株を受け取る。ディッシュによると、スプリントの株主は合併後も32%の支配権を実質的に維持できるという。」
ソフトバンクの買収価格は1株7.3ドル、ディッシュの提案を上回っていると主張しています。
この点、ディッシュは、次のように自らの提案の優位性を説明しています。
“We are offering Sprint shareholders a total consideration of $25.5 billion, consisting of $17.3 billion in cash and $8.2 billion in stock. Sprint shareholders would receive $7.00 per share, based upon DISH’s closing price on Friday, April 12, 2013. This consists of $4.76 per share in cash and 0.05953 DISH shares per Sprintshare. The cash portion of our proposal represents an 18% premium over the $4.03 per share implied by the SoftBank proposal, and the equity portion represents approximately 32% ownership in the combined DISH/Sprint versus SoftBank’s proposal of a 30% interest in Sprint alone. Together this represents a 13% premium to the value of the existing SoftBank proposal.”
(http://dish.client.shareholder.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=756389)
つまり現金対価部分だけ見ると、ソフトバンクの提案よりも18%上回ると言っているのです。
個人的には、ディッシュのスプリント合併が米国連邦税法上の適格要件を満たすかどうかに興味があります。
米国では、タイプA再編(合併)の場合、対価の一部が現金であっても即座に非適格とされることはありませんが、7ドルのうち4.76ドルが現金というのはかなり微妙な線だと思われます。
【リンク】
DISH Network Proposes Merger with Sprint Nextel Corporation for $25.5 Billion
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