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2013 年 5 月 のアーカイブ

日本の成長戦略ー続き

「アベノミクス」への期待で進んだ株高・円安に変調が訪れている。米ハーバード大のリチャード・クーパー教授
に今後の課題を聞いた。
(日本経済新聞2013年5月31日5ページ )

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一昨日、当ブログでハーバード大学のリチャード・クーパー教授の提言する成長戦略を取り上げましたが、今日の新聞に教授への短いインタビューが掲載されていましたので抜粋します。

−焦点となる成長戦略をどう見るか。
「日本は歴史的に成功してきた製造業に重点を置きすぎている。世界に進出するには、デザインや建築などサービス業にも目を向けなければならない」」(前掲紙)

確かにその通りですが、デザインや建築で一体どれだけのヒトが食べて行けるのかと考えると、国策としてこの分野に
力を入れるということにはなかなかならないのだと思います。しかし、一昨日述べたように、今重要なのは、「常識に
とらわれない、柔らかな発想」であり、主軸を大企業や大工場ではなく、個人と個人が作るネットワークに置くべきであり、
教授の言う通りだと思われるのです。

そう考えると、新しい時代に合わせて経済活動の基盤となる法制度や税制・会計もいろいろと変えて行く必要があります。
たとえばパートナーシップ税制といった制度が日本にもどうしても必要になってくると考えられるのです。

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日本の成長戦略ー繰越欠損金の繰越期間延長すべき

○日本の高い法人税率が日本企業の魅力そぐ
○役員報酬の全額損金算入も成長戦略を加速
○適切な税制政策は短期間で目に見える効果
(日本経済新聞2013年5月30日26ページ 経済教室 カート・キャンベル前米国務次官補/マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所上級顧問・日本部長)

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「日本が抱える巨額の政府債務残高を考えれば、法人税の追加減税には反対意見も多いことだろう。だが、投資と経済成長に直ちにプラス効果をもたらしつつ政府債務をすぐには増やさない暫定的な措置が存在する。
 それは、企業の純損失(欠損金)の繰越期間と、その欠損金を前の決算期に遡って法人税を繰り戻し還付する期間を延長することだ。企業の競争力を高めるような税制措置である。」(前掲稿)

繰越欠損金とは、ある決算期で発生した赤字のことで、これは最長9年間繰り越され、翌期以降に生じた黒字と相殺することができます。
本来法人税の課税対象となるのは、純資産の増加分であるわけで、理論的には会社設立から清算時までの価値増加分を課税対象とすべきところ、会社はゴーイングコンサーンであることが前提になるため、人為的に決算期を区切り決算期ごとの価値増加分の計算をしているわけです。

したがって繰越欠損金に期限を設定するのは、税務執行上の理由を除き根拠がないということになります。

実際、本稿で指摘されているように期限を設定していない国も多くあります。

「他の経済協力開発機構(OECD)加盟国と比べると日本の繰越期間はきわめて短く、日本経済の競争力を高めるために必須のイノベーションや起業意欲をくじくものとなっている。英国、フランス、ドイツ、シンガポール、香港では繰越期間は無制限であり、米国は期限を設けているものの、20年である。」(前掲稿)

他に本稿では役員報酬を全額損金算入できるようにすることも提言されています。

「09年度の税制改正で役員報酬の損金算入基準は緩和されたものの、利益連動の役員賞与は一部しか損金算入の対象とならない。このため企業と個人でダブル課税されることになり、企業にとってただでさえ大きな負担がさらに増える結果となっている。
 また日本企業における役員の処遇をみると、同一企業で昇進を果たし、その会社の見方に染まった人が経営幹部になることが多い。このようなあり方は、グローバルな競争力とダイナミクスを誇る企業の大半が創造性とイノベーションを重視しているのとは対照的と言わざるを得ない。
 日本企業が幅広く最高の人材を維持・獲得してグローバルな競争の場で生き残るためにも、日本政府は役員報酬の全額損金算入を積極的に考慮すべきである。」(前掲稿)

極めて真っ当な提言です。
こういった提言に対し、役員報酬の損金算入を無制限に認めれば、課税所得が出ない程度に役員報酬や役員賞与を支払うことで、法人の課税所得を人為的にゼロ以下にすることが可能となり、法人税を支払う会社がなくなってしまうという反論が予想されます。

しかし、そんなタックスプランニングができるのは、非上場の個人会社に限られます。そんな会社から法人税を無理に徴収する必要はなく、役員報酬に対し所得税をきちんと徴収すれば良いのです。

この2つの提言は、すぐに実行すべきです。

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日本の成長戦略

筆者は、安倍晋三政権が掲げる経済政策の「3本の矢」、すなわち大胆な金融緩和策の下でのインフレ率の押し上げ、機動的な財政政策による景気刺激、そしてさまざまな経済構造改革を通じた成長戦略を支持している。ただし3本目の矢を本気で実行しない限り、最初の2本の矢は長期的な効果をほとんど上げられまい。
(日本経済新聞2013年5月29日33ページ 経済教室 リチャード・クーパー ハーバード大学教授)

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需要サイドから見ると、若年層の需要(例えば住宅需要)が減る一方、高齢層からの需要は次のように増えると述べています。

「人口の高齢化とともに、医療や高齢者向けホスピスの需要が高まることはあらためて言うまでもない。
健康な人も、退職後には旅行、娯楽、教養、伝統工芸など余暇時間に新たな活動を始めるものだ。こうした新たな需要への適応は、個人にとって意味がある以上に、経済全体にとって価値がある。たとえ全体としての成長率は下がるとしても、3本目の矢はこうした新たな需要の創出をめざすべきである。」(前掲稿)

高齢者の需要がこれから増えていくことは誰の目にも明らかです。
しかし、この需要を掘り起こして行くには、高齢層を老人として扱わないことが肝心であると思います。

山口百恵さんの自伝「蒼い時」のプロデューサーとして有名な残間里江子さんが、今手掛けているのは50~60代向けの会員制ネットワーク「クラブ・ウィルビー」です。これを始めたきっかけを残間さんは次のように話しています。

「ウィルビーを始めたきっかけは、アドバイザーとして招かれた企画で、プロジェクトリーダーに投げかけられた言葉だった。
07年ごろ、定年を迎えようとしていた団塊の世代に商品やサービスを提供しようというビジネスが続々と登場しました。私もほぼ団塊の世代ですので、さまざまな会社に呼ばれたのです。でも私たちの世代に「買いたい」「行きたい」と思わせる企画はどこにもありませんでした。
まだオシャレを楽しみたいのに、服は「ウエストがゴムだから楽です」なんて機能を大々的に宣伝します。色も地味なものばかり。住宅のリフォームにしても、「バリアフリー」を強調していました。いずれ必要になるのはわかっているけれど、それは75歳くらいになってから考えればいい。子供が独立した今は、自分の部屋がほしいと思っている。そういうところが全然わかっていないんです。
企画のプロジェクトリーダーは多くが40代後半でした。彼らの目には私たちの世代が老人と思えたのでしょう。
その一人に「確かに鏡に映った顔は老けたかもしれないけれど、私たちはその向こうにある昔と同じ自分を見て、ものを買うのよ」と言いました。まだ自分の可能性を信じているし、夢も見ています。異性に心をときめかせたいとも思っています。
そう説明したら「そんな大人、いませんよ」と言うんです。「いるわよ」と私が答えたら「連れてきて、見せてくださいよ」。
じゃあ、見せてあげるわよ。ウィルビーを始めるきっかけは、まさに彼のその言葉だったのです。」(日本経済新聞夕刊2013年4月22日7ページ)

成長戦略というのは、役所が右へ倣えさせることで生まれるのではなく、常識にとらわれない、柔らかな発想から生まれるのです。

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国際会計基準と日本基準の折衷案

2013 年 5 月 28 日 コメント 2 件

金融庁は上場企業に国際会計基準(IFRS)の採用を義務付ける時期について結論を当面見送る方針だ。企業会計審議会(金融庁長官の諮問機関)が7月にもまとめる報告書に、強制適用の時期を明記しない。国際会計基準を任意に適用できる企業の範囲を拡大する案は盛り込む。最短で2016年とされていた強制適用は先送りとなる可能性が高まってきた。
(日本経済新聞2013年5月28日1ページ)

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「国際会計基準(IFRS)の導入義務付けの結論が当面見送られる見通しになり、金融庁は日本基準とIFRSの折衷案となる新たな会計基準作りに乗り出す。」(日本経済新聞2013年5月28日4ページ)

日本基準とIFRSの差異を極力小さくしていくという方向性があるなかで、何のために折衷案なるものが必要なのでしょうか?

こういう玉虫色の解決は役所の得意とするところですが、混乱を招く弊害の方が大きいと考えられるので止めて頂きたい。

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西武TOB

米投資会社サーベラス・グループが、経営方針の変更を求めて西武ホールディングスに対し、今月末をメドにTOBを実施している。6月に開かれる西武の株主総会に向けては、筆頭株主として同社の推す8人の取締役の選任も要求している。TOBや株主提案の狙いを、来日したサーベラス・グローバル・インベストメンツのダン・クエール会長に聞いた。
(日経ヴェリタス2013年5月26日53ページ)

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「「我々サーベラスは一貫して西武経営陣に『話し合いの場を持ちたい』と言ってきた。条件を付けない対話は望むところだ。我々は西武の最大株主であり、2005年から2006年にかけて救済のために投資を依頼された経緯がある。総額1100億円と少なからぬ額の投資をしている。それだけに、昨年から西武側が話し合いを拒絶していることに困惑している。それは日本らしくないやり方だ。安倍晋三首相が掲げるアベノミクスの3本目の矢の成長戦略は、透明性、開放性、外国投資歓迎が柱になると理解しているが、西武の態度とはつじつまが合わない」」(前掲紙)

TOBは株主に経営権の異動を委ねるという意味で、フェアで透明な手法であるはずです。

しかし株主の多数が現経営者によって選ばれた者で構成されている場合には、TOBはうまく機能しません。西武の大株主に名を連ねる金融機関や事業会社のほとんどはTOBに応募しない見通しですが、その経済合理性はどこにあるのでしょうか? 大株主は、自らの株主に対し説明責任を負っていると私は思います。

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三菱自動車、累損9000億円処理、今期、資本金取り崩し

三菱自動車は2014年3月期中に、約9千億円の累積損失の処理のため、資本金を取り崩す。合わせて資本増強ができるように新株発行の余地も拡大する。経営再建の足かせになっている約4千億円の優先株処理に向け財務体質の立て直しが急務と判断した。今後、優先株の引受先である三菱重工業や三菱商事などグループと具体策を詰める考えで、経営再建はヤマ場を迎える。
(日本経済新聞2013年5月23日3ページ)

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「週内に開く取締役会で、累損一掃のための資本金と資本準備金(計約1兆円強)の一部取り崩しと、株を追加発行できる枠を拡大するための定款変更議案を決める。」(前掲紙)

(1)10株を1株に併合
(2)株式発行枠の変更

により、発行上限の株数が現在の66%増から約4倍に拡大するとのことです。

このニュースを受け、日経平均株価が1000円以上(7%)急落した23日、三菱自動車株はその倍の14%(前日比25円安)下げました。明確なエクイティシナリオが必要な場面です。

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米、税制改革が先決

米上院小委員会はアップルがアイルランドに持つ複数の子会社を利用して数十億ドルの納税を回避した。不誠実な多国籍企業と税金の安い国を攻撃したいと考えている人たちはこの機会を逃さないだろう。
(日本経済新聞2013年5月23日6ページ 英フィナンシャルタイムズ特約)

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「だが上院議員はもっと自国の問題に関心を払ったらよいのではないか。米国の税制はあまりにも複雑で、二重課税防止の原則が二重のゼロ課税原則へと退化しているからだ。」(前掲紙)

米国では、連邦税に関し、法人税を課す企業体を明示した上で、それ以外の事業体については、事業体課税かパススルー課税かを選択できる仕組みを有しています(チェック・ザ・ボックス規則と言います)。

外国孫会社までチェック・ザ・ボックス規則を適用することが認められているため、これを利用した租税回避が横行しています。

多くの米国の多国籍企業はこの規則を巧妙に利用し、「二重のゼロ課税原則」を達成していると言われています。

しかし、だからと言って単純にチェック・ザ・ボックス規則を廃止すべきということにはなりません。
法人税の対象となる法人概念を正確に定義することが困難であるため、多くの事業体について法人税を課さず、構成員課税を選択することが認められているのです。

米国の税制は、多くの判例が積み重なって構築されているので、個々の条文改正で抜け穴を塞ぐのも簡単なことではないのです。

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多国籍企業の節税監視

米アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなど、グローバル企業の「節税」に監視が強まっている。低税率の国に巨額の資産を移して税負担を軽減する仕組みで、企業にとっては最大の利益を確保するための合法的な措置。だが財政悪化に直面する各国政府は「課税逃れ」と指摘する。企業のグローバル化やIT(情報技術)化に、各国の税制が追いつかない面もある。
(日本経済新聞2013年5月21日15ページ)

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「多国籍企業は世界で稼いだ利益を低税率の国にどうやって移しているのか。手法の一つが、低税率国の子会社を通じて製品を世界に供給し、利益や特許料収入をその子会社に集める仕組みだ。
 例えば、アイルランドのような低税率国にグループの販売統括会社や特許管理会社を設立。各国子会社は販売を仲介するだけにし、低税率国の子会社が販売する仕組みにする。こうすれば、売り上げに伴う利益のほとんどが低税率国に集まる。」(前掲紙)

低課税国に高収益機能を置き、高課税国に低収益機能を置くことでグローバルなタックスプランニングを行っているわけです。

米国議会はかなり前から米系多国籍企業の所得移転を問題視しており、例えば米国両議員税制委員会が2010年に報告書としてとりまとめています(Joint Committee on Taxation, Present Law and Background Related to Possible Income Shifting and Transfer Pricing, July 20, 2010, JCX-37-10)。

この報告書は事例研究になっており、リアルなタックスプランニングが詳細に記述されており、大変読み応えのあるものになっています。

この報告書を、租税研究2010.12で東大の増井良啓教授が日本語で紹介しています。
http://www.masui.j.u-tokyo.ac.jp/doc/Soken201012.pdf

多国籍企業はグローバルに事業展開をし、全世界合計の税引後利益を最大化するために日夜努力しているわけで、米国企業だからという理由で米国に税金を納めなければいけないという前提にそもそも無理があるのも事実です。

一方、日本企業もグローバル化の深化に伴い今後税金をコストとして捉えることが当たり前の時代になっていくかもしれません。
そうなると、日本の法人税率の高さに耐えかねて日本を脱出する企業が続出するでしょう。

米国の多国籍企業の姿は決して他人事ではありません。

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ライツイシュー、広がる

「ライツイシュー(株主割当増資)」と呼ぶ新たな資金調達が広がってきた。新株予約権を活用する増資の手法で、2013年は6社が手続き期間の短縮など制度面が整備されてきたことが背景にある。
(日本経済新聞2013年5月21日15ページ)

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日本企業のライツイシューの実績は以下の通りです。

20130521

「市場関係者は「突然の増資発表で既存株主の権利が損なわれるリスクは低下する」とみる。ただ、当初の権利行使価格を低く設定すると、株価がそれにさや寄せする形で大きく下落する場面もある」
(前掲紙)

権利行使価格を低く設定され、株価が下落したとしても、株主価値に変動はなく、また、株主間の富の移転もありません。株式分割と同じですね。ライツイシューは経営者が株主を選べないという点でも優れています。

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米ワシントンDCの学生ローンの平均借入額4万ドル

米国の住宅価格の底入れで、家計の債務問題はようやく峠を越したかに見える。そんななか、新たな火種になりかねないのが学生ローンの急増だ。米ニューヨーク連銀は14日、1~3月期の家計の債務残高の内訳を公表したが、学生ローンの残高は9860億ドルと1兆ドルに迫り、過去最高を更新中だ。家計債務に占める比率は全体の1割近くを占め、自動車ローンやカードローンを上回る 規模に膨らんでいる。
(日経ヴェリタス2013年5月19日57ページ)

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「ニューヨーク連銀のブログでも学生ローンの増加には関心が高く、記事で詳細を紹介している。例えば、ワシントンDCではローンを借りている学生の平均借入額が4万ドルにのぼるという。90日以上の延滞率も上昇しており、ウェストバージニア州では18%近くに達している。緩慢な労働市場の回復は若年層にも響いており、雇用に有利になるようにと無理をして大学に通う例も増えているためだ。一方、学費の値上げもあって、学生ローンの残高は増加の一途だ。連銀のエコノミストも「学生ローンの残高は増加の一途だ。連銀のエコノミストも「学生ローンの依存度と延滞率は今後も注目する必要がある」と、金融当局も目を光らせる。」(前掲紙)

記事は、それでも大学進学のリターンは極めて高く、能力があるなら大学に進学すべきだとしています。

その真偽はともかく、日本の大学生もそろそろ親に頼らず、自分で学費を借りて大学に行くようにした方が良いかもしれません。自分でお金を出すようにすれば、一所懸命勉強するようになり、大学への要求度合いも上がるので、大学もそれに応えるため努力せざるを得なくなるでしょう。

日本の大学が世界的な水準から見ると、低いレベルに留まっているのは、ユーザー本人がオカネを出していないからなのかもしれません。

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