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2013 年 6 月 のアーカイブ

主要企業300社のCFOの見方

主要企業の財務責任者の約4割が2013年度中に増配を考え、株主への利益配分に積極的なことが分かった。新興国経済の変調など事業環境には不透明さも残るが、収益成長に自信を持つ経営者が多いことを示していそうだ。自社の株価水準については、相場が乱高下する中でも、約6割が「割安」と考えている。
(日本経済新聞2013年6月28日3ページ )

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「株主への今年度の利益配分方針について複数回答で尋ねたところ、「配当を増やす」との答えは38%にのぼった。「業績の進捗をみながら検討する」という企業も31%あり、成長が確認できれば株主配分を厚くする余地もあることを示唆した。」(前掲紙)

「M&A(合併・買収)を検討している」というCFOは27%、そのうち35%がM&Aの額を前年度より増やすと答えているということです。

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HOYA、移転価格税制に関し200億円申告漏れ

HOYAが海外子会社との取引を巡って東京国税局の税務調査を受け、移転価格税制に基づき5年間で約200億円の申告漏れを指摘されていたことが26日、分かった。税務上の赤字があり、地方税や過少申告加算税を含めた追徴税額は約33億円。
(日本経済新聞2013年6月27日43ページ )

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HOYAはIFRSを任意適用していますが、日本基準であれば、法人税等の更正、決定等による追徴税額は、過年度遡及修正の対象になる可能性があります。

「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)では、次のように記述されています。

「法人税等の更正、決定等による追徴税額及び還付税額は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基づき処理することになる(過年度遡及会計基準第55項参照)。なお、これらが過去の誤謬に起因するものでない場合には、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す名称を付した科目をもって記載する。ただし、これらの金額の重要性が乏しい場合には、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することができる。」

更正処分が、過去の誤謬によるものであれば、過年度遡及修正の対象になります。
しかしHOYAは、プレスリリースで「今回、当社の主張と東京国税局の見解は、明らかに相違が あるため、速やかに、法令に則り、更正処分の取り消しを求めてまいります。」と宣言しており、見解の相違ということになれば、過去の誤謬ではないので、過年度遡及修正の適用はないものと思われます。

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2013年6月26日「移転価格税制に基づく更正通知書の受領について」HOYA株式会社 [PDF]

 

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サーベラスの提案否決

西武ホールディングス(HD)と米サーベラスの対立は、企業がリスクマネーの提供者である株主といかに向き合うべきかという問題を提起している。株式の安定保有が崩れつつある今、企業が株主の声を冷静に聞き、合理的に検討する必要性が増している。
(日本経済新聞2013年6月26日3ページ )

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「総会終了後、記者団の取材に応じた西武HDの後藤高志社長は「(サーベラスと)共通の目的である株式上場に向けて話し合いたい」と強調。サーベラス幹部のルイス・フォスター氏は「株主提案に極めて敵対的。株主の質問に満足に答えない」と不満を示した。」(前掲紙)

ルイス・フォスター氏の指摘は、多くの会社に当てはまるものと思います。

日本型経営の特徴として挙げられていた、終身雇用・年功序列が崩壊しようとしているのと同様に、日本型のコーポレートガバナンスを維持し続けることはもはや不可能ということなのかも知れません。

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サントリー食品公募価格3100円、時価総額1兆円規模

サントリーホールディングスの中核子会社で清涼飲料事業を手掛けるサントリー食品インターナショナル(証券略称はサントリBF)が7月3日東証1部に上場する。24日に決まった公募・売り出し価格は3100円で、上場時の時価総額は約1兆円と今年最大。2020年までに売上高2兆円を目指し、上場で調達した資金のうち2000億円強を東南アジア市場を中心とした海外でのM&A(合併・買収)などに充てる。
(日本経済新聞2013年6月25日11ページ )

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「サントリー食品インターナショナル(サントリBF)の上場に伴う公募・売り出し価格は1株3100円と、当初想定価格の3800円を18%下回った。5月下旬以降の株式相場の下落が逆風となったほか「国内のビール会社や海外飲料会社に比べて割高だという投資家の声が多かった」(大手証券)のが理由だ。」(前掲紙)

3800円を前提としたPERは約34倍、6/5付予想PERでサッポロHD24.8倍、アサヒ17.5倍、キリンHD17.0倍を大きく上回り、割高との声が多く聞かれたようです。

「欧米企業と前提条件をそろえるため、のれん償却前純利益に基づくPERが20倍である点を強調。コカ・コーラの約19倍、ペプシコの約18倍と同レベルだとして価格の妥当性を主張していた。」(前掲紙)

IFRSではのれんが非償却であることを調整したということですが、結局、仮条件(3,000円~3,800円)の下限近くの3,100円に決まりました。

上場時発行済株式数309百万株、3,100円を前提にした時価総額は9,579億円となります。2013年12月期の予想連結純利益は350億円なので、予想PERは約27倍です。

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会社の現金は誰のもの?

「M&Aに魅入られた男」2人が2006年に激突した。1人は通産官僚出身、後にインサイダー事件で逮捕された村上世彰氏。もう1人は佐山展生氏ーメーカー、銀行を経て日本の独立系バイアウトファンドの世界を切り拓いてきた、今回の主人公だ。
(日経ヴェリタス2013年6月23日56ページ )

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「彼には日本のM&Aの時計の針を大きく進めた功績があるのは確かです。言うことは、正しいことも多かった。彼のような存在は社会的に必要なのかもしれない、とも思う。ただ株主に偏重し、長年ためた資金を配当で抜くという点は納得できなかった。「企業価値を高める」のは大仕事。株の論理だけで価値は生まれません。」(前掲紙)

そうでしょうか?

上場会社であるにも関わらず、長年ためこんだ現金価値が株価に反映していないとしたら、ため込んでいること自体が問題なのではないだろうか?
だとすれば、「配当で抜く」ことにより現金価値を顕在化することがどうして否定されるのか?

ここは上場会社と非上場会社とでは決定的に違うところだと私は思います。

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税収、リーマン後最大

財務省がまとめた2012年度の一般会計の税収は43兆円台後半となり、リーマン・ショック後の09年度以降では最大となったもようだ。補正予算での見積額を1兆円ほど上回ったとみられる。
(日本経済新聞2013年6月21日5ページ )

【CFOならこう読む】

「この期に決算を迎えた企業から法人税率(国税)が引き下げられたため、企業業績が回復しても税収が増えるかは不透明だった。結果的に業績改善効果が税率引き下げの影響を上回り、法人税収が伸びた。」(前掲紙)

法人税率を引き下げても、税収は上がるのです。
安倍政権は自信をもって大幅な法人税率引き下げに取り組んでもらいたいものです。

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日本証券業協会、大規模増資なら株主総会決議

日本証券業協会は19日、公募増資制度の改革に向けた提言を公表した。情報開示の徹底を促すとともに、既存株主の利益を損なう可能性のある大型増資には「発行企業に対して株主総会での決議を義務付けることも考えられる」などと明記。経団連や金融庁、日本取引所グループにも実現を働きかける。大幅な株価下落や不公正取引が発生しにくい市場を目指す。
(日本経済新聞2013年6月20日15ページ )

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「報告書は日本の公募増資制度について「株主の理解を得るための方策や投資家への情報開示の促進を検討すべきだ」と強調。1株利益の希薄化率が2割を超すような大規模増資を念頭に、株主総会などで株主の賛同を得ることが必要だとした。」(前掲紙)

報告書のこの部分の提言は次の通りです。


■前述の、大規模な希釈化を伴う公募増資が既存株主の権利を著しく損なってきたと の見方に対しては、論点として、例えば、一定の割合を超える希釈化を伴う公募増 資を実施する場合には、発行企業に対して株主総会決議を義務付けることも考えら れる。
■米国においては、株主総会決議要件は現金を対価とした公募増資には課されてい ないことから、この施策を実施した場合、我が国だけ規制上の制約が課されることと なる。しかしながら、後述((1)5)の事実関係とおり、日米間には市場を取り巻く環 境に相違がある可能性があることから、我が国における株主の理解を得るための 方策については柔軟に考えていくことが適当である。
■なお、英国においては、株主割当増資(ライツ・オファリング)以外の方法によりエク イティ調達を行おうとする場合、発行株式数等の条件に応じて株主総会決議が必要 となるが、英国では企業の主なエクイティ調達の手段としてライツ・オファリングが確 立しているのに対し、我が国でライツ・オファリングは未だ主要な資金調達手段とは なっていない状況である。こうした状況の差異を踏まえると、英国のみを参考として 我が国の公募増資に株主総会決議要件を設けていくことについては、慎重に考え ていく必要がある。」http://www.jsda.or.jp/katsudou/kaigi/senryaku/files/130619houkokusyo.pdf

少数株主保護の観点から、TOB規制と絡めて議論を整理することも必要であると思います。

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社債発行4年ぶり3兆円超え

日本企業の社債発行が活発になっている。トヨタ自動車やソニー、丸紅といった主要企業が相次ぎ起債。4~6月の合計発行額は3兆円を超え、四半期として4年ぶりの高水準となる。各社は社債の金利決定の基準になる長期金利がいずれ上昇するとみて、成長投資や負債の借り換えに必要な資金の早期確保に動く。
(日本経済新聞2013年6月19日9ページ )

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「日銀が4月4日に打ち出した「異次元緩和」を受け、長期金利は一時1%台に急上昇。社債の発行を延期する企業が相次いだが、その後、長期金利は次第に落ち着いてきた。最近は0・8%台で推移しており、現在の水準で資金を確保するのが得策と判断する企業が増えている。」(前掲紙)

6月発行の主な社債は次の通りです。

発行会社 期間(年) 発行額(億円) 発行日
トヨタ自動車 3,7 660 6/6
花王 5,7 500 6/14
IHI 7 100 6/14
NTTデータ 10 250 6/14
ソニー* 5 1,500 6/19
ソフトバンク* 5 4,000 6/20
野村ホールディングス 5,7 370 6/20
丸紅 5,7 200 6/20
大成建設 5 100 6/20

(注)*は個人向け社債

ソニー株式会社第 29 回無担保社債の発行概要は次の通りで

1. 社 債 総 額 金1,500億円
2. 振替社債 金1,500億円 本社債は、社債、株式等の振替に関する法律の規定の適用を受けるものとする。
3. 各社債の金額 金100万円
4. 利率 年0.86%
5. 払込金額 各社債の金額100円につき金100円
6. 償還金額 各社債の金額100円につき金100円
7. 償還期限 2018年6月19日
8. 取得格付 A- R&I A JCR

 

【リンク】

2013年6月7日「第29 回無担保社債条件決定のお知らせ」ソニー株式会社 [PDF]

 

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TOBによる買収の不可能性

米投資会社サーベラスは17日都内で、西武ホールディングス(HD)に対するTOBの終了後
初めて記者会見した。
(日本経済新聞2013年6月18日11ページ )

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「同社の西武HD株の持株比率はTOBを経て35.48%になったが、買い取り上限である44%に届かなかった。「西武HD株主からの問い合わせの中には『(サーベラス主導の改革で)企業価値が向上するなら株式を持ち続ける』と当社に期待する声もあった」(サーベラス鈴木社長)という。」(前掲紙)

サンフォード・グロスマンとオリバー・ハートが1980年に発表した、「TOBによる敵対的買収の不可能性」という有名な論文があります。

この論文は、敵対的買収者の見通しが正しければ、その会社の株価は将来必ずそれ以上に上がることになるので、買収を仕掛けられた会社の株主はTOBに応じないのが合理的、と論じています。

この理論に従えば、サーベラスのTOBに応じなかった株主が必ずしも現経営陣支持というわけではないので、今後の動向はまだまだ不透明ということになります。

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川崎重工、三井造船との交渉白紙にー続き

川崎重工業が「35分の解任劇」で三井造船との経営統合を白紙撤回した。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープへの出資、日本ペイントに対するシンガポール塗料大手ウットラムグループへのTOB(株式公開買い付け)など、トップ同士がいったん合意したM&Aや資本提携の「破談」が続いている。背景にはガバナンス(企業統治)を巡る構造問題がある。
(日本経済新聞2013年6月16日7ページ )

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14日のエントリー「川崎重工、三井造船との交渉白紙に」の続きです。

「この日の会見で株主価値に関する言及はほとんどなかった。株主利益を守るのが取締役の第一の責務であることを考えれば、三井造船との経営統合が川重の株主利益をどう損なうのか、論理的な説明があってしかるべきだ。
 株主は経営統合を推し進めた長谷川氏の言い分も聞きたかったはず。株主利益をそっちのけにして「許せなかった」で済ませたのでは「内輪もめ」の印象をぬぐえない。」(前掲紙)

私が感じたのと同じことを言っています。
こういう声が大きくなることで、日本企業のガバナンスは強くなっていくのだと思います。

「川重、シャープ、日本ペイントのケースに共通するのは「トップの決断」の軽さだ。欧米でも「株主の利益を著しく損ねる」と判断したとき、社外取締役などが中心になって最高経営責任者(CEO)を解任することはある。だが全権を任されたCEOの決断が、論理的な説明もなく覆ることはない。」(前掲紙)

M&Aは、多くの場合、買収会社側、被買収会社側いずれの経営陣にとっても、自己のポストが失われることを意味します。従って、国富や株主価値の観点から望ましいM&Aも、経営陣にとっては必ずしも望ましいものではなく、自己保身の観点からこれを止めさせたいというインセンティブが常に働きます。

取締役会が経営者・従業員の利益を最重視するなら、トップが株主価値の観点から良いと考えたM&Aも進めることはできません。

これは全ての日本企業が抱える構造的な問題です。

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