日本経済新聞社と、日本取引所グループ、東京証券取引所は30日、現在共同で開発を進めている新株価指数を発表した。
(日本経済新聞2013年7月31日5ページ)
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「銘柄選定に活用する指標として、資本効率の高さを示すROEを採用。このほかコーポレートガバナンスなどの経営の定性的な要素や市場での取引量も考慮する。」(前掲紙)
年内に算出が開始されるとのことです。
日本企業の資本効率に対する意識が変わるかもしれません。
【リンク】
なし
政府は新規参入企業に投資するベンチャーキャピタル(VC)向けの支援策を拡充する。成長戦略に盛り込んだ国立大学によるVCへの出資拡大に加え、幅広い民間VCに政府系金融機関が資金供給する支援策を設ける案が浮上している。
(日本経済新聞2013年7月30日4ページ)
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「新たな支援策では、政府がVCの過去の投資実績などについて支援基準をつくる。基準を満たしたVCには資金支援のほか、投資額の一定割合を税額控除する優遇策を検討。政府が委託したベンチャー投資の専門家が投資ノウハウを指南するなど、人材面でも支援する考えだ。」(前掲紙)
この優遇措置も日系のVCに限定するようなら問題です。
内外無差別でないと、外資の日本への投資はいつまでたっても増えません。
資本に色はないので、日本における雇用が増えるのであれば、内資か外資か問う必要はないのです。
投資ノウハウだって、政府が派遣する誰某より米国VCの方が上かもしれませんし。
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なし
与党の大勝で終わった参院選。デフレ脱却を目指す安倍政権にとって、今後の焦点になるのが成長戦略の着実な実施だ。特に市場が注目するのが岩盤のように動かない規制の緩和。日本のやるべき改革は何か。小泉政権のもとでの規制改革会議の議長を務めたオリックスの宮内義彦会長に聞いた。
(日経ヴェリタス2013年7月28日14ページ)
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インタビューは、規制緩和以外にもオリックスの成長戦略にも及んでおり、読み応えのあるものになっています。
その中で、ROEについて言及している部分があります。
「−一番重視している経営指標は何ですか?
「一つではない。総合的に見ている。自己資本利益率(ROE)のみを見るというのであれば、経営は楽。(分母の自己資本を少なくするために)自社株を買えばいいのだから。ただリスクは高くなってしまう。ROEが低いというのもダメ。10%が目標で今のところそれに近づいている。リーマンショックの前、ROEが19%までいったが、あれはリスキーだった。」(前掲紙)
ROE=当期利益÷自己資本
= (当期利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本) と分解できます。
さらに、利益率であれば、製品や事業部門ごとに、資産回転率であれば棚卸資産や固定資産ごとにブレークダウンすることができます。いずれも高ければ高いほど良いというわけではなく、目標値を上回っても下回っても問題であるという意識が必要です。
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なし
政府は残業や解雇などの雇用条件を柔軟に設定できる規制緩和を、地域限定で検討する。安倍晋三首相の主導で決める国家戦略特区を活用し、成長産業への労働移動など人材の流動化を進め、日本経済の活力を高める。参院選前は世論の反発を招きかねない労働改革に踏み込まなかったが、特区に絞って抜本的に規制を改革する。
(日本経済新聞2013年7月26日1ページ)
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「国家戦略特区は地域を限って大胆な規制緩和や税制優遇に踏み切る仕組み。政府は8月末にも東京、大阪、愛知の三大都市圏などを特区に指定する。
中略
政府はこの特区で規制緩和する項目をさらに10~20項目上積みする。内閣官房が雇用、医療、農業、エネルギー、クールジャパンといった分野で約130の検討項目をまとめ、各省と協議に入った。第2弾の項目の関連法案は来年の通常国会に提出し、来年中の早い時期の実現を目指す。」(前掲紙)
ん、クールジャパン?
まさか日本企業だけ優遇するのではなかろうね。
内外無差別ですよ。
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なし
日本の起業家が米国で設立したベンチャー企業に、米国のベンチャーキャピタル(VC)が出資する事例が増えてきた。ビッグデータ分析やチケットのインターネット販売などを手掛ける企業が相次いで数億円規模の資金を獲得した。
(日本経済新聞2013年7月25日10ページ)
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主な実績は次の通りです。
会社 |
事業内容 |
出資VC |
出資額 |
トレジャーデータ(カリフォルニア州) |
ビッグデータ分析 |
シエラベンチャーズ |
500万ドル |
ピーティックス(ニューヨーク州) |
チケットのネット販売 |
フィデリティ |
? |
ウィル(カリフォルニア州) |
電動車いすメーカー |
500スタートアップス |
? |
「各社は米国に本社を置く一方、日本にも子会社を設置。実績豊富な米VCから事業運営の助言も得ることで、日本国内の事業も加速させる」(前掲紙)
今後、各国による企業の立地競争が加速していくと思われます。
米国ではなく、日本にヒト、モノ、カネが集まるようにしていくのが、政治と行政の重要な役割になっていきます。
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なし
企業が新たに株式を発行して資金を調達する増資が相次いでいる。特に7月に入ってからは有力企業による1000億円規模の大型発行が目立つ。株式市場の環境好転に加え、今後の成長投資への資金需要が高まってきたためだ。これまでは「増資発表=売り」という反応が一般的だったが、成長戦略への評価を得た企業は株価が底堅く推移しているのも特徴だ。
(日本経済新聞2013年7月24日19ページ)
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最近の主な増資銘柄は次の通りです。
銘柄 |
発表日 |
調達額(億円) |
発表翌日の株価騰落率 |
イオンモール |
6月3日 |
507 |
▲0.4% |
インターネットイニシアティブ |
7月2日 |
172 |
▲8.9% |
電通 |
7月3日 |
1218 |
▲9.2% |
大和ハウス工業 |
7月5日 |
1375 |
▲9.4% |
オリンパス |
7月8日 |
1126 |
▲5.4% |
「背景のひとつが中長期でみた株式相場の先高観の強さだ。参院選後を見越して政府が積極的な経済政策に踏み切るとの期待や、国内企業の収益がさらに上向くとの見方を投資家は持っている。多少の大型増資でも需給が崩れない要因になっている。」(前掲紙)
エクイティシナリオが評価されているという面もあるのでしょう。
しかし、エクイティファイナンスが適正株価で行われる限り、株主価値には無差別なはずです。株価が下がること自体、調達した資金が成長につながるような投資に向けられないという疑念が、投資家の間に少なからず存在する証といえます。
【リンク】
なし
東芝は個人向け社債を毎年7~9月に発行することを決めた。半導体メモリーの増産投資を再開するなど資金需要が高まっており、資金調達の手段を多様にする。
(日本経済新聞2013年7月23日13ページ)
【CFOならこう読む】
「毎年の発行額は300億円を軸に調整する見通しだ。定期的に発行して個人の間で社債の認知度を高め、資金をより円滑に調達できるようにする。」(前掲紙)
今月26日に発行する300億円の個人向け社債が第1弾になるということです。
社債の発行条件は次の通りです。
社債総額 |
金300億円 |
各社債の金額 |
金50万円 |
利率 |
年0.62% |
払込金額 |
各社債の金額100円につき金100円 |
償還金額 |
各社債の金額100円につき金100円 |
年限 |
4年 |
償還期日 |
2017年7月26日 |
払込期日 |
2013年7月26日 |
【リンク】
2013年7月12日「第57回 無担保普通社債の条件について」株式会社東芝 [PDF]
日興フィナンシャル・インテリジェンスは日本の上場企業の現金保有状況とコーポレート・ガバナンスとの関係を整理した。
(日経ヴェリタス2013年7月22日46ページ)
【CFOならこう読む】
旧東証第1部上場の一般事業会社について、2000年度から2012年度までの現金保有比率を振り返ると、現金・預金の総資産(現預金の保有額を引いた金額)に対する割合の中央値は2000年度の9.8%から2012年度には14.7%に高まった。有価証券も現金等価物と見なすと、この比率は13.2%から17.5%に高まった。」(前掲紙)
本稿の著者である中島幹氏は、「幾つかの先行研究が 指摘するように、コーポレートガバナンスの脆弱な企業は、過度な現金を保有する傾向 がみられる」と主張しています。
次のグラフをみると、日本企業の現金保有状況は極めて高い水準にあることがわかります。

クリックすると拡大表示できます。
(出典:NFIリサーチ・レビュー 中島幹著「コーポレートガバナンスと企業の現金保有」 8頁)
【リンク】
NFIリサーチ・レビュー 中島幹著「コーポレートガバナンスと企業の現金保有」 [PDF]
フライトのキャンセルや遅延が当たり前のインドの航空業界で「定時発着」を打ち出し初就航から6年で国内線シェア首位になった航空会社がある。37歳のアディティア・ゴーシュ社長が率いる格安航空会社インディゴだ。2013年に1億ドル(約100億円)の黒字を確保する見込みで、価格競争と燃料高の逆風に苦しむ世界の航空会社の羨望の的という。
(日本経済新聞2013年7月19日9ページ)
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アディティア・ゴーシュ社長が取り組んだのは、定時発着と客室清潔さです。
「ビジネスに必要なのは一般常識。経験は必要条件ではない」(前掲紙)
法律家であったゴーシュ氏に航空ビジネスの経験はなかったということです。
しかし経験がないことが、業界の因習に染まらないという意味で大きな強みになり得るということです。
【リンク】
なし
コーポレートガバナンスに対する株主の視線が厳しくなる中、社外取締役の導入が拡大している。
(日本経済新聞2013年7月18日9ページ)
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「日本経済新聞社の集計によると、導入企業の割合は60.8%と昨年から約6ポイント上昇した。1社あたりの平均人数も増加。取締役会の意思決定や発言における社外取締役の重みが一段と増している。」(前掲紙)
社外取締役の導入が進む中、次はその質が問われることになります。
「学識経験者を選任した三菱ケミカルホールディングスは「業界に精通しており取締役会の議論を活性化させる効果が期待できる」としている。」(前掲紙)
学識経験者とは、橘川武郎一橋大学大学院教授です。
会社は招集通知の中で取締役候補者とした理由を次のように説明しています。
「候補者橘川武郎氏は、大学教授(経営学)としての経験やそこで培った会社経営に関する高い見識等 をもとに、社外取締役として当社の経営を監督していただけるものと判断し、選任をお願いするもの であります。橘川武郎氏は、会社経営に関与したことがありませんが、上記の理由により、当社の 社外取締役としての職務を適切に遂行していただけるものと判断しております。」
(「第8回定期株主総会 招集ご通知」三菱ケミカルホールディングス [PDF])
学者を社外取締役とするというのも当然あり得るとは思いますが、問題は誰とどういう関係があるか、という点です。
そういう意味では、どういう経緯で取締役候補となったかについてもある程度説明が必要だと思います。
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なし
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