米国がリーマン・ショックからの出口に近づき、日本でもアベノミクスの成長戦略が具体化してきた。
呼応するかのように、日本企業も外国企業とのM&Aを加速している。世界的なカリスマ投資家の目には、これらの変化がどう映るのか。1976年に米投資会社KKRを創業、先週27日にパナソニックのヘルスケア部門の買収を決めたヘンリー・クラビスCEOが、日経ヴェリタスのインタビューに応じた。
(日経ヴェリタス2013年9月29日10ページ)
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−米国と比べると、日本の企業社会には外国の投資家による買収を警戒する空気が根強い。KKR自身、昨年は経営不振の半導体大手ルネサスエレクトロニクスの買収寸前まで行ったが、最終的には官民ファンドの産業革新機構などが取って代わった。
「日本はその経済規模に比べ、海外からの直接投資が少ない国です。これを変えないと。市場を開いて外国からの投資を促せば、成長にもつながるはずです。日本からいったん去ったがもう一度投資したい、あるいは初めて日本に投資したいと検討している海外の資本の規模は巨大です。日本の成長の芽が育ってくれば、そんなマネーが次第に姿を現してくるでしょう。」(前掲紙)
クラビス氏は、先週、ニューヨークを訪問した安倍首相と食事を共にしたそうです。日本は外資による投資を国を挙げて拒否する国である、という印象を変えて行くことがまずは重要だと思います。
最終的には心から外資を歓迎する、ということにならないとなかなか海外からの直接投資が爆発的に増えるところまではいかないと思いますが、そこまで行くには単に政治リーダーシップの問題ではなく、我々日本人ひとりひとりが変わらなくてはならない、と私は思います。
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なし
政府は26日、10月1日にまとめる消費増税に向けた経済対策で、2015年度以降の法人実効税率の引き下げについて「早急に検討を開始する」と明記する方向で調整に入った。
(日本経済新聞2013年9月26日夕刊1ページ)
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「一方、政府は東日本大震災からの復興財源となる復興特別法人税を今年度末に1年前倒しで廃止する方針を固めている。復興特別法人税の廃止にも与党内の反対が強いため、経済対策では「廃止する」という強い表現を避け、「検討する」などと断定しない表現にする案が浮上している。」(前掲紙)
今年度末までに復興特別法人税が廃止になり、実効税率が切り下がるということは、3月決算会社の年度決算で繰延税金資産の取り崩しが生じることになりますね。
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なし
日本電産が三菱マテリアルの自動車用モーター子会社を買収することが25日分かった。国内外5カ所の工場を手に入れるとともに、デンソーなど自動車部品メーカーとの取引を引き継ぐ。買収額は100億円弱になる見通し。
(日本経済新聞2013年9月26日13ページ)
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「三菱マテリアルが保有する「三菱マテリアルシーエムアイ(静岡県裾野市)」の全株式を、日本電産子会社の日本電産サンキョーが12月末までに譲り受ける。三菱マテリアルシーエムアイの2013年3月期の売上高は約140億円で、営業利益は10億円前後のもよう。これにより日本電産の車載用モーターの売上高は従来より約2割多い1000億円超になる。」(前掲紙)
自動車関連メーカーとの取引を始めるには、諸々の認証を得るのに5年~10年の時間がかかります。
日本電産永守社長は、買収で「時間を買う」(前掲紙)と明言しています。
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なし
東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズが24日、2014年後半に経営統合すると発表した。両社の株式時価総額の合計は約3兆円。「三角合併」と呼ぶ手法を使い、日米の主力上場企業が経営統合するのは初めてとみられる。日本企業の国境を越えた再編が新たな段階に入った。
(日本経済新聞2013年9月25日9ページ)
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「日本では海外企業と直接合併することはできないとされる。今回はまず東エレクが統合後の持ち株会社をオランダに子会社として設立。その後持ち株会社の下に作った受け皿会社と東エレクが合併する。その際に東エレクの株主は合併会社ではなく、持ち株会社の株式を1株につき3・25株受け取る。
持ち株会社は米国にも別の受け皿会社を設立。その受け皿会社とアプライドが合併し、アプライド株主は持ち株会社の株を1株につき1株受け取る。持ち株会社は現在の東エレクの株主が32%、アプライドの株主が68%の株式を持つ株主となり、日米それぞれで合併した会社が持ち株会社の下に入る。」(前掲紙)
東会長兼社長およびディッカーソンCEOは、「新会社は対等な経営統合のもとに設立されます。」と述べています。
「相乗効果を早期に出し、うまく経営するためには対等な関係が大事」とのことです。
新会社の取締役会も次のように両社同数の取締役により構成されます。
「TELの東哲郎が新会社の取締役会長、AMATのゲイリー・ディッカーソンが新会社のCEOに就任します。新会社の取締役会は、統合する両社からの各々5名の取締役(うち3名が社外取締役)に、両社の合意に基づく1名の社外取締役を加えた11名により構成され、全11名のうち7名が社外取締役となる予定です。」(2013年9月24日「東京エレクトロン株式会社とApplied Materials, Inc.が経営統合し、「グローバル・イノベーター」が誕生 半導体およびディスプレイ産業に大きく貢献」東京エレクトロン株式会社)
対等な経営統合というものが本当に存在するのか、相乗効果を早期に出すことが本当にできるか、という点で疑問はありますが、まずは日本企業のグローバル化が新しいステージに入ったということを素直に評価したいと思います。
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2013年9月24日「東京エレクトロン株式会社とApplied Materials, Inc.が経営統合し、「グローバル・イノベーター」が誕生 半導体およびディスプレイ産業に大きく貢献」東京エレクトロン株式会社
社外取締役のいる企業の割合が東証1部で6割を超えた。企業統治の観点から上場企業に選任を義務づけるべきか、今まで通り各企業の判断に委ねるべきか。経団連でこの問題を担当する経済法規委員会・企画部会の佐久間総一郎部会長(新日鉄住金常務)と、カネボウや日本航空の再建に携わった冨山和彦・経営共創基盤・最高経営責任者(CEO)に聞いた。
(日本経済新聞2013年9月22日9ページ)
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冨山氏は日本企業に社外取締役が必要な理由を次のように述べています。
「日本では社長の権限はそれほど強くなく、暴走するほどパワーのある人も少ない。取締役会では社長以下のサラリーマン役員が互いの顔色を見て、空気を読みながら物事を決める。あつれきを避けようとするから、不採算事業からの撤退といった重要な意思決定を先送りする。こうした『不作為の暴走』を許す『ムラ型ガバナンス』が日本の大企業が抱える最大のリスクで、ムラの空気をかき乱すのが社外取締役の使命だ。」(前掲紙)
日本企業のガバナンスが、「ムラ型ガバナンス」であるという冨山氏の意見には全面的に賛成です。
一方、その「ムラ型ガバナンス」の頂点に存在する経団連の佐久間氏は、日本には監査役制度があるのだから社外取締役の選任を義務付けるのは不要と断じています。
そして、こんなことを言っています。
「―独立性の高い社外取締役がいる企業は、いない企業より自己資本利益率が高いという論文もあります。
「高級車を持っている人(社外取締役のいる企業)は、年収が高い(資本効率が高い)傾向がある、と指摘しているようなものではないか。年収を増やすには高級車を買うべき、とは言えないだろう。燃費のいいクルマを買ったり、公共交通機関を利用したりしても年収は上がるかもしれない。会社の業績を向上させる手段も色々ある」」(前掲紙)
社外取締役を高級自動車になぞらえるとは。
今年を代表する名言(迷言)となる予感。
無駄な高級車を買おうとしているときに、何故その車が必要なのかを問うのが社外取締役の役割です。
そしてそこで必要な視点は、株主からの視点です。しかもそれは一部の金持ちの視点ではなく、老後の資金を
運用する一般市民の視点です。
他者の信任を受けて市民の資金を運用する。それが企業の、そして経営者の仕事です。
カネを高級車に遣うという比喩を出すこと自体、そういった経営者の職責を理解していない証拠のように私には思えます。
「岩盤」規制の緩和を政府に迫るのが経団連の重要な役割の一つですが、その経団連が最も厄介な「岩盤」となっていることに彼らは気付いているのでしょうか?
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なし
アジアグロースキャピタルは19日、中古品ブランド販売の「大黒屋」の持株会社で、非上場のディーワンダーランドの株式をTOBで取得すると発表した。
(日本経済新聞2013年9月20日15ページ)
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対象者であるディーワンダーランドは、旧ジャスダック証券取引所に上場しておりましたが、対象者が大黒屋の株式を取得し、子 会社化した際に、旧ジャスダック証券取引所株券上場廃止基準第2条第1項第8号 a(不適当な合併 等)に該当したため、平成 22 年2月9日付けで上場廃止となっています。
アジアグロースキャピタルは、旧社名森電機、平成24年12月31日に社名変更しています。
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なし
安倍晋三首相は18日午後、麻生太郎副総理・財務相と首相官邸で会談し、来年4月の消費増税の前提となる経済対策に法人実効税率の引き下げを明記するよう指示した。(1)2014年度に復興特別法人税を1年前倒しで廃止(2)15年度以降に主要国並みに税率下げの2段階での対応を要請した。企業競争力を高め、デフレ脱却への道筋を明確にする狙いだ。
(日本経済新聞2013年9月19日1ページ)
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「これに対し、財務相は復興法人税の廃止が被災地の反発を招きかねないことや、15年度に基礎的財政収支の赤字幅を半減する財政再建目標の達成が危うくなる点などを指摘し、難色を示したとみられる。」(前掲紙)
法人税率引き下げについて、昨日の朝日新聞社説にこんなことが書かれていました。
「法人税を納める前提となる黒字の企業は全体の3割程度。なにより、政府の統計によると、法人全体で現金と預金だけで約150兆円をため込んでいると推計されている、なぜ企業はおカネを使わないのか。ここにメスを入れないまま法人税率を下げても、企業がますます資金を抱え込むだけになりかねない。」(朝日新聞2013年9月19日14ページ 社説)
企業がおカネを使わないのは、投資機会を国内に見出せないから。だからこそ成長戦略が必要なのです。
一方、「ここにメスを入れないまま法人税率を下げても、企業がますます資金を抱え込むだけになりかねない」という指摘は当たっているように思えます。
これを是正するためには、現金をため込んでいる上場会社は株主還元をせざるを得なくなるようなコーポレートガバナンス再構築のためのインフラ整備(法改正等)が必要であると私は思います。
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政府が消費増税とあわせて検討している法人実効税率の引き下げに、猛反対していた財務省が軟化してきた。麻生太郎副総理・財務相は17日の記者会見で「(引き下げは)来年度以降にどれくらい税収が上振れするのか見極めてからだ」と発言。中長期的な課題として議論を排除しない考えをにじませた。
(日本経済新聞2013年9月18日5ページ)
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「ただ、時期や幅を巡る政府内の思惑の違いは残る。甘利明経済財政担当相らは来年度からの税率下げも視野に入れるが、財務相は「消費税を3%上げて法人税を下げるというのは世間で通るのか」と来年度実施には引き続き慎重だ。」(前掲紙)
法人税を下げるのは大企業優遇(70%以上の中小企業は赤字)、一方、消費税は庶民があまねく負担するもの。
だから消費税を上げて法人税を下げるのは世間で通らない、と麻生財務相は言っているのですが、
「法人税を下げて日本企業の競争力を高め、海外の投資を呼び込み、雇用拡大や賃上げにつなげる」(前掲紙)
ことは大企業優遇のために行われるものでは決してありません。
そしてそんなことは財務相は百も承知のはず。
いたずらに世論を怖がるのではなく、まずはきちんとした議論を行うことが大切です。
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「上場後にこういう買収機会があり、合意できたことはうれしい」。9日の記者会見。サントリー食品インターナショナルの鳥井信宏社長は安堵の表情を浮かべていた。買収を決めたのは英製薬大手のグラクソ・スミスクライ(GSK)が持つ2つの飲料ブランド。いずれも英国では広く親しまれた商品だ。
(日経ヴェリタス2013年9月15日14ページ)
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「気になるのは果たして2100億円も投じる価値があるのかという点。2ブランドの2012年の売上高は797億円、
EBITDAは1億ポンド。買収価格の13.5億ポンドは、EBITDAの13.5倍にあたる。これは11~12倍とされる世界の飲料メーカーのEBITDA倍率を上回る水準だ。」(前掲紙)
記事は、アフリカの販路が手に入ること、オランジーナとの相乗効果が期待できることから必ずしも割高とは言えないと分析しています。
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米IT(情報技術)大手のデルは12日、臨時の株主総会を開き、創業者のマイケル・デル最高経営責任者(CEO)が提案したMBO(経営陣が参加する買収)案を承認した。
(日本経済新聞2013年9月13日7ページ)
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2月7日「デル、MBOで非上場」、3月13日「デル、MBOで非上場 その2」のエントリーの続報です。
「米テキサス州ラウンドロックのデル本社で開かれた臨時の株主総会で、デル氏と米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズが示したMBO案は開会早々に承認された。デル氏側は、1株あたり現金13・75ドルでデルの全株式を買収するほか、1株あたり0・13ドルの特別配当などを支払う。」(前掲紙)
2月のエントリーでは、総額244億ドルのMBOと書きましたが、カール・アイカーン氏等の抵抗に合い、249億ドルまで引き上げて株主の承認を得たということです。
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