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2014 年 1 月 のアーカイブ

政府税調、法人減税議論へ専門委

政府税制調査会(中里実会長)は法人実効税率の引き下げに向けた議論を2月に再開する。専門委員会を新設し、税率下げに伴う法人税収減を補う観点から、租税特別措置の縮小など課税ベース(範囲)の拡大を議論する。首相官邸主導で進む法人減税の議論に、政府税調がどこまで影響力を示せるかが焦点になる。
(日本経済新聞2014年1月31日5ページ )

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「政府税調では税率を下げる場合、代替財源をどう確保するかを主に検証する。中里会長は「課税ベース拡大の選択肢を考える必要がある」と語る。候補となるのは、対象業種や期間を絞った政策減税の「租税特別措置」や、過去の赤字(欠損金)を繰り越して黒字から差し引ける「繰越欠損金」などの見直しだ。」(前掲紙)

繰越欠損金の利用に制限を課せば、海外の企業誘致が困難になり、法人税率を引き下げても雇用創出には全く繋がらない、ということになりかねません。

75%の企業が税金を払っていないという点を掘り起こすことにより、財源は捻出できると私は思います。
継続企業でありながら赤字企業であり続けることを可能としている、現在の法人税法を見直すことが必要だと私は考えます。

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米大統領、一般教書演説 法人税率下げ雇用創出

オバマ米大統領は28日の一般教書演説で、2期目の最優先課題と位置付ける環太平洋経済連携協定(TPP)の妥結に改めて意欲を示した。TPP交渉促進に必要な大統領貿易促進権限(TPA)法案への超党派の協力も要請。ただ、日米協議難航の影響などで日程はすでに綱渡りで、大統領の強力な指導力抜きに膠着を打開できるメドは立たない状況だ。
(日本経済新聞2014年1月30日7ページ )

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「教書では米企業の競争力向上に向け法人税改革も目玉にすえた。共和党も連邦法人税率の25%程度への引き下げを主張しており、部分的には足並みがそろう。だが、個人所得税率や国際課税の扱いなど、ほかの重要な改革では溝が深い。」(前掲紙)

具体的には、次のように述べています。

“Let’s work together to close those loopholes, end those incentives to ship jobs overseas, and lower tax rates for business that create jobs here at home”

Loophole とは、CFC税制(タックス・ヘイブン対策税制)とチェック・ザ・ボックス規則(一定の企業体について構成員課税を選択できる)のことを指していると思いますが、議会がこれに同調する可能性は低いものと思われます。

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円買いオプション、半年ぶり高水準

為替相場で円高リスクに備える動きが目立ってきた。為替オプションの動向をみると、今の安い水準で円を買ってドルを売る権利に人気が集まっており、その需要は約半年ぶりの高水準になった。足元で円高の動きは一服しているが、内外金融機関や輸出企業の間で円高に相場が急変するとの警戒感は依然残っている状況だ。
(日本経済新聞2014年1月29日1ページ )

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「一定の価格で通貨を買う権利と、売る権利について、双方の価格の差から需給バランスをみる「リスク・リバーサル」という指標がある。みずほ証券によると、この指標は27日にマイナス1・4%となり、昨年7月以来の低い水準になった。この指標はマイナス幅が大きいほど、円買いオプションの需要が高まり、買う権利の取引価格が上昇していることを意味する。」(前掲紙)

リスク・リバーサルは、必ずしも先行きの為替変動自体を予測するための指標ではありませんが、市場参加者のリスク認識を通じて為替変動の背景を探るうえでは、参考になる指標の一つと考えられています。
(日銀レビュー リスク・リバーサルからみた為替変動へのリスク認識参照。https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j14.htm/

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政府、のれん非償却検討へ

政府は企業がM&A(合併・買収)をしやすくするため、日本の会計基準を改める検討に入った。買収後の費用負担を軽くできるように欧米式の会計基準に合わせる。企業がM&Aで新事業を開拓し、利益を伸ばすのを後押しする。会計基準を策定する民間団体に要請し、新制度を6月に作る成長戦略に盛り込むことを目指す。
(日本経済新聞2014年1月27日1ページ )

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「経産省が約300社の国内企業を対象にM&Aが進まない理由をたずねると、45%が「のれんの評価が難しい」と回答した。経産省幹部は「のれん代の償却義務があるので買収に踏み切れない企業が多い」とみている。のれん代の償却がなくなると、利益が増えて法人税の納税額が増える可能性もある。今後は税制上の負担軽減策もあわせて検討する。」(前掲紙)

国際会計基準に合わせ、のれんを定額償却しないということになると、買収先の業績が悪貨した際などに一括で減損処理をしなければならなくなるため、見直しに慎重な声も多く聞かれるところです。
しかし、昨年公表され、2015年4月1日以降開始する連結会計年度から適用になる新企業結合会計基準は、

• 子会社株式の追加取得時の追加取得持分と追加投資額との差額をのれん(負ののれん)とする処理を改め、資本剰余金とする(基準22号28項)。
• 支配関係が継続している場合の、子会社株式の一部売却時の売却持分と売却価額の差額を売却損益の修正とする処理を改め、資本剰余金とする(基準22号29項)。

等の点ですでに国際会計基準に整合しており(その結果プランニング如何により損益が変わります)、すでにトリガーは引かれたと言えます。
遅かれ早かれM&A会計については、日本基準と国際基準との差異はなくなることになるのでしょう。

ただしそうなったとしても是非とも税務上は引き続き定額償却を認めてもらいたいものです。

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日本のものづくりとは

アベノミクスによる円安・株高を機に、日本企業による業績回復の波が広がりつつある。今年はTPPへの参加、国家戦略特区を舞台にした規制緩和など、実現すれば一段の追い風となる施策も相次ぐ。日本の製造業が今年、本格的に復活するための条件は何なのか。新春インタビューの最終回は、国内電機大手の中で、日立製作所をいち早く成長軌道に乗せた中西宏明社長に聞いた。
(日経ヴェリタス2014年1月25日10ページ )

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−日本のものづくり産業は生き残れるでしょうか。
「まず今の日本のものづくりとは何かということを考えなければいけない。(生産の海外移転を進めてきた結果)、日立の国内工場の製造現場の社員は約4万人。『匠(たくみ)の世界』の熟練しか残っていない。国内生産を続けていけるのは、技術開発、製品開発などで高度なノウハウを持つ分野だけだ」(前掲紙)

中西社長は、大量生産型の工場は日本にものづくりではない、と断じています。
しかし日本では依然大量生産型のものづくりで生きていくという前提のもと、政策や制度が動いています。
例えば海外からの企業誘致に成功しても誰も彼も仕事にありつける、ということにはならないのです。
労働者の方でも高度なノウハウを身につけるべく精進しなければならない、ということになります。
そういう社会で生きていくのは大変ではありますが、個が自らのオンリーワンを目指し、それを主張し合うというのは決して悪いことばかりではないと思います。

それにしても、相変わらず優秀な工員を育てることに邁進している日本の学校教育は、今すぐに方向転換する必要があります。

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本日休載

出張のため、本日の更新はお休みします。

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法人税改革、国際公約に

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で基調講演する。抵抗が強い「岩盤規制」について「向こう2年間、いかなる既得権益といえども私の『ドリル』から無傷でいられない」と、国家戦略特区などを突破口に集中改革すると表明。「本年、さらなる法人税改革に着手する」と述べ、成長戦略の推進を国際公約する。
(日本経済新聞2014年1月23日2ページ )

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「日本の首相の基調講演は初めて。法人税の体系は「国際相場に照らして競争的なものにしなければならない」と明言。脱デフレに向け企業減税が賃上げや設備投資に波及するよう「異次元の税制措置を断行する」と訴える。首相はすでに、短期的には減税に見合う規模の財源確保にこだわらない考えを示唆している。」(前掲紙)

具体的に引き下げ後の法人税率についても言及しないと意味がないでしょう。
そもそも自国の法人税率引き下げを決定事項ではなく、公約として宣言するのは、それだけ抵抗が強く実現が困難であることを印象づけ、首相のリーダーシップに疑問符がついてしまうように思います(今に始まった話ではないかもしれませんが)。

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ルネサス、不採算品の合理化進まず

半導体大手のルネサスエレクトロニクスは2015年度末までに国内で5400人の人員削減に踏み切る方針を固めた。約2万人にのぼる国内従業員の25%に相当する。同社は国内の工場や開発拠点の集約など構造改革を進めている。閉鎖工場のほか、管理部門などを含めて人員削減を加速し、経営再建を急ぐ。
(日本経済新聞2014年1月22日10ページ )

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「ルネサスは2013年9月末、政府系ファンドの産業革新機構、トヨタ自動車やパナソニックなど大口顧客8社を引受先とする1500億円の第三者割当増資を実施。69・16%を出資する革新機構が主導して再建を目指すことになった。
 その結果、大口顧客向けに供給する採算の取りづらい製品の開発・生産中止が容易でなくなっている。海外の同業他社幹部は「ルネサスはなぜ付加価値の高い製品を安く売るのか」と指摘。価格の引き上げも思うにまかせない状態も続いているようだ。」(前掲紙)

ルネサスは、2012年にKKRが買収しようとしていたところ、最終的には産業革新機構が主導して再建を目指すことになりました。しかし今日のようなニュースを見るとその選択が本当に正しかったのか疑問に思います。

日本プライベート・エクイティ協会が2013年3月8日付で出した、「我が国経済の本格的再生に向けた 民間投資資金の積極的活用に関する提言」は次のように述べています。

「市場メカニズムが正常に機能している場面において、政府及び関係諸 機関が、成長分野を自ら探し出し成長資金を直接投じ、あるいは問題を抱えた企業に対 する出資を直接行って支援するのは、民間との正常な役割分担を超える危険性があるも のと考えます。政府及び関係諸機関による経済復興政策は、本来的には制度設計や規制 整備による市場機能の正常化・活性化にあるべきであり、それを超えて、政策金融によ る投融資が行われ、あるいは官製ファンドによる出資が行われるのは、あくまで市場に おけるリスクマネーの供給が機能不全に陥っており、市場機能に委ねているだけでは市 場メカニズムが正常に働かず、公的な支援がない場合に比して社会的コストが膨大にな ると判断される場合に限定されるべきものと考えます。」

政策的な支援を行ったことで市場メカニズムに従った価格付けも出来ないようであれば、正に本末転倒、その結果5400人もの従業員の追加削減を行うとは、いったいどういうことでしょう?

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官邸、法人税率25%示唆

国際水準と比べ割高な法人実効税率の引き下げに向けた政府内の議論が20日の経済財政諮問会議で始まった。安倍晋三首相は減税の当面の財源確保にはこだわらない考えを示唆。民間議員も拠点誘致を競うアジア主要国をにらみ、税率を2014年度より10%低い25%程度にすべきだと踏み込んだ。法人税率見直しは6月にまとめる新成長戦略の要となる。
(日本経済新聞2014年1月21日3ページ )

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「税制改革は従来レベニューニュートラル(増減税同額)という考え方がとられてきたが、経済のグローバル化が進む中でこの考え方で対応していくことがよいのかどうか」。安倍首相は20日の諮問会議でこう表明し、短期的な財源確保にこだわらない姿勢を示した。」(前掲紙)

財源確保に拘らない姿勢は必要であると思いますが、その前提として中長期的に拠点誘致が成功し税収が増えるという説得力ある国家戦略が必要です。法人税率をどうするかは国家戦略の結果決まってくるのであって、法人税率を引き下げることそのものが成長戦略となることはあり得ません。アジアを意識する必要はありますが、日本がアジアの中でどういうポジショニングを目指すのか、そのためになすべきことは何であるのか、アジアにおける立地競争の中で日本は何を売りにするのかといったビジョンが明確に示されて始めてどの国が拠点誘致の上でライバルとなるかが見えてくるのです。

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サントリーのビーム社買収価額は妥当か?

サントリーHDが米蒸留酒最大手ビーム社を総額160億ドル(約1兆6500億円)で買収することを発表した。サントリーは蒸留酒メーカーとして世界10位から3位に浮上する。世界的にもビッグなM&A案件で、海外ブログでも買収の成否を巡って記事が相次ぐ。
(日経ヴェリタス2014年1月19日57ページ )

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「「バーボンバブルか?」と題し、買収価格の妥当性を疑問視したのはCNNの金融サイト。日本企業による米国企業の買収では、ソフトバンクによる米携帯大手スプリントの買収(373億ドル、2012年)に次ぐ2番目の規模。「おそらく、蒸留酒事業の成長性が実態以上に高く評価されている」」(前掲紙)

ロイターのブログは、EBITDA倍率20倍の買収価額は、英ディアジオや仏ペルノ・リカールがかつて実施した買収と比べ割高と指摘。他方金融ニュースサイト「24/7 Wall St.」は、酒類は長期的に安定した事業分野であり、買収価格は妥当であるとしています。

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