2007年5月に、CFOに昼食のときの話のネタを提供する、といった軽いノリで始めた当ブログ、気がつけば6年10ヶ月更新を続けてきましたが、私自身の環境の変化もあり、早朝の時間をブログ執筆に割くことが困難になってきました。
そういうわけで、突然ではありますが、本日限りで当ブログの更新は当面お休みさせて頂くことにしました。
過去のログを読み返してみると、議論が稚拙なもの、分析が甘いもの、間違っていると思われるもの等も多々ありますが、もともと朝一で新聞記事を読み条件反射的に考え調べたことを書いてきたので、稚拙ではあっても、時代の大きな流れは捉えてこれたようには思います。
これを機会にサイトを閉鎖することも考えましたが、近い将来再開することになるかもしれませんし、過去のログに何らかの利用価値があるかもしれないので、サイト自体はアクセス可能な状態で当分残すことにしようと思っています。但し利用は自己責任でお願いします。
読者の皆様には、長い間お付き合い頂き深く感謝いたします。
ありがとうございました。
現在、書籍や学術論文の執筆を行っていますので、世にでた際には是非お手にとって頂ければ嬉しいです。
上場企業が自ら保有する自社株式の活用に動いている。M&A(合併・買収)の対価として現金の代わりに自社株を用いたり、社会貢献のために拠出したりして使い方の幅が広がっている。上場企業が抱える自社株は総額16兆円規模に膨らんでいる。余剰であれば消却してしまうことも含めて、企業の自社株活用にさらに磨きがかかれば、資本市場全体が活性化するとの期待につながる。
(日本経済新聞2014年3月28日3ページ)
【CFOならこう読む】
「上場企業が内部に抱える自社株は膨らんでいる。有価証券報告書などをもとに集計すると、筆頭株主が自社という企業は、昨年末時点でファナックなど300社を超える。年末で比較して過去最高だ。株価の上昇もあり、金額ベースでは約15兆7000億円に達し、1年前から5割増えた。」(前掲紙)
自社株買いの活用方法としては、今後役員報酬や社員報酬として自社株を付与することが増えてくると考えられます。
今後日本企業もコーポレートガバナンスが強化されていくに従い、株主価値を重視することはより当然という風に変わっていくと思います。そうなると、役員や従業員のインセンティブを株主価値にリンクさせる必要性が増してくるはずです。
しかし何度かお話ししているように、日本では、税法その他のインフラが整備されていないためこれが簡単にはできません。
信託だ何だとコストをかけなくてもこんなことは簡単にできるようでなければいけません。
是非とも立法上の手当てをお願いしたいところです。
【リンク】
なし
介護ロボットスーツを手掛けるサイバーダインが26日、東証マザーズ市場に上場した。成長期待を背景に、公募・売り出し価格(公開価格、3700円)の2・3倍の8510円で初値をつけた。
(日本経済新聞2014年3月27日11ページ)
【CFOならこう読む】
2月20日のエントリー「サイバーダイン、議決権10倍の種類株を活用」の続報です。
「技術が軍事転用されることを防ぐ」(山海嘉之社長)ため、議決権が普通株の10倍という種類株を別途発行。上場後の議決権比率は山海社長と同氏が代表を務める一般財団法人が合計で88%を占める。」(前掲紙)
特定の株主に議決権を集中させる種類株を上場会社が発行する初めてのケースですが、とりあえず株価への影響は限定的でした。
しかしまだ上場したばかり。ガバナンスが有効に機能するかどうかも含め注視する必要があります。
【リンク】
なし
ジャパンディスプレイは25日、オーバーアロットメントによる売り出しに伴い3月末に予定していた第三者割当増資について、割当先の野村証券から申し込みがなく全株を失権したと発表した。野村が全1800万株を引き受ける権利を放棄した。この結果、約160億円の追加的な調達ができなくなった。
(日本経済新聞2014年3月26日17ページ)
【CFOならこう読む】
「Jディスプレ株の終値は東証1部に上場した19日以降、公募・売り出し価格の900円を下回る700円台で推移。25日終値も727円と野村への割当価格(879・75円)を下回っていた。」(前掲紙)
オーバーアロットメントとは、企業が公募・売出しを実施する際において、公募・売出しの数量を超える需要があった場合、主幹事証券会社が対象企業の株主等から一時的に株券を借りて、公募・売出しと同一条件で追加的に投資家に販売することを言います。市場株価が野村証券への第三者割当増資の割当価格を下回っているため、市場買い付けを選択するということです。
【リンク】
なし
外国為替市場で円の対ドル相場の変動幅が小さくなっている。東京市場では3月に入ってからの一日の値幅は平均で36銭と、2012年10月以来1年6カ月ぶりの小動きとなっている。ウクライナ情勢など先行き不透明感が強いことに加え、投機筋が円とドルの売買の持ち高を大幅に縮小しているためだ。
(日本経済新聞2014年3月25日21ページ)
【CFOならこう読む】
「一定期間後に通貨を売る権利や買う権利を取引するオプション市場でも、円相場は膠着が目立っている。1カ月後にドルを買う権利の予想変動率は、24日時点で一時7・350%。安倍政権の誕生につながった衆院解散の前である12年11月14日以来の水準まで下落した。」(前掲紙)
ヘッジのコストが下がっているということです。
ヘッジを検討するには良い時機かもしれません。
【リンク】
なし
バイオベンチャーや新興ゲーム会社で、新株予約権を証券会社に割り当てる形の資金調達が急増している。13年度は32件と12年度と比べ3.2倍に拡大し、過去最高を更新。株高を追い風に、野村証券やメリルリンチ日本証券などの大手が営業に力を入れている。
(日経ヴェリタス2014年3月23日15ページ)
【CFOならこう読む】
証券会社割当型の新株予約権を発行した主な企業は次の通りです。
(発行額は決議日の株価で算出)
|
業態 |
発行額(億円) |
発行決議日 |
クルーズ |
ゲーム |
62 |
2014年2月 |
日本風力開発 |
再生エネ |
26 |
2014年2月 |
リプロセル |
バイオ |
100 |
2014年1月 |
KLab |
ゲーム |
23 |
2013年11月 |
アンジェスMG |
バイオ |
40 |
2013年10月 |
UNMファーマ |
バイオ |
42 |
2013年9月 |
テラ |
バイオ |
31 |
2013年5月 |
新日本科学 |
バイオ |
100 |
2013年5月 |
(出所:前掲紙)
リプロセルはプレスリリースの中でスキームの特徴とデメリットを次のように説明しています。
【本スキームの特徴】
- 当社の資金需要や株価動向を総合的に判断したうえで、柔軟な資金調達が可能であること。
- 本新株予約権の目的である当社普通株式数は 6,000,000 株で一定であるため、株価動向によらず、最大増加株式数は限定されていること(平成 25 年 11 月 30 日現在の総議決権数に対する最大希薄化率は、13.09%)。
- 当社普通株式の終値が下限行使価額の 120%に相当する金額を下回る場合、割当予定先に対して本新株予約権の行使を指定することはできず、また、当社普通株式の終値が下限行使価額 を下回る場合、割当予定先が本新株予約権の取得を請求する権利を有することになるという デメリットはあるが、本新株予約権の行使価額には上限が設定されていないため、株価上昇 時には調達金額が増大するというメリットを当社が享受できること。
- 本新株予約権の払込金額と同額の金銭を支払うことにより、本新株予約権の全部又は一部を 取得することができること。
【本スキームのデメリット】
- 市場環境に応じて、行使完了までには一定の期間が必要となること。
- 株価が下落した場合、実際の調達額が当初の予定額を下回る可能性があること。
- 株価が下限行使価額を下回って推移した場合、調達ができない可能性があること。
権利行使価額は効力発生日の前日の株価の90%に修正されます。
株式の終値が下限行使価額の120%を下回る場合、新株予約権の行使を指定することができないため、下限行使価額をどのレベルに設定するかによってスキームの設計が全く異なることになります。リプロセルの下限行使価額は、1,162円です。
【リンク】
2014年1月8日「行使価額修正条項付き第9回新株予約権(第三者割当て)の発行及びコミットメント条項付き第三者割当て契約に関するお知らせ」株式会社リプロセル [PDF]
衣料品店を展開する企業で契約社員やパートタイム・アルバイトを正社員として登用する動きが広がり始めた。ファーストリテイリング傘下のユニクロは1万6千人のパートらを正社員にする方針。
(日本経済新聞2014年3月20日11ページ)
【CFOならこう読む】
「ファーストリテイリングで販売を担当するパート・アルバイトは国内850の店舗で3万人いる。この半数以上を勤務地や店舗を限定した正社員として登用する。」(前掲紙)
パート・アルバイトの需給逼迫により、良い人材を確保することが難しくなりつつあることが背景にあります。
3月11日に柳井会長兼社長は、半年に1回開かれるコンベンションで4,100人の幹部社員や店長を前に、店長が主役の会社から店舗のスタッフ一人ひとりが主役の会社に変わることを宣言しています。
そこで述べられたことは多くの会社にとって参考になります。
全文が日経ビジネス・オンライン(2014年3月20日)に掲載されていますが、そこから特徴的な言葉をいくつか抜粋してみます。
- 一番大きな失敗が、「店長」を主役とした会社にしようとしたこと
- (スタッフの)生活を守ることが、我々の一番の仕事
- 部下は部品ではない
- 今後は、販売員に(会社の経営)情報をシェアしていきます
- 店長は、自分の時間の9割を、販売員と話すこと、聞くことに割いてもらいたい
- (販売員の)安定した生活を守りますが、その代わりに個店の水準をもっと上げてもらう
- 「店は客のためにあり店員とともに栄え店主とともに滅びる」
- (今の店舗運営は)パートやアルバイトが主ですが、今後は彼らを正社員にしていきます。一生託せる会社、成長していける環境を作ります
- 「全員経営」ですから、全員がトップの経営者のつもりで働いてもらいたい
- そのうえで、販売員と繋がってもらいたい。それができないような経営者はいらない。経営者が行ったら、販売員がおびえるような人はいらない。販売員が寄ってくる会社にしてもらいたい
今更何言ってるんだ、という声があちこちから聞こえてきそうですが、稀少な資源である人的資源をいかに確保するかが最も重要な経営課題である今、柳井氏の方向転換は多くの企業にとって一つの方向性を示しているように思います。
【リンク】
なし
米投資家はインターネット企業の新たな注目株を待望している。だが、有名企業のうち何社かは現金を豊富に保有しており、証券市場への株式上場を急いでいない。
(3月18日付英フィナンシャル・タイムズ 日本経済新聞2014年3月19日6ページ)
【CFOならこう読む】
「貸室仲介のエアビーアンドビーの創業者、ブライアン・チェスキー氏は年内の上場を否定した。私募市場における年初の評価額が50億ドルに達したモバイル決済サービスのスクエアも性急な上場計画を取り下げた。」(前掲紙)
投資信託やヘッジファンドが有望なベンチャー企業に競って投資しており、私募市場で十分な資金を調達できるので、米IT企業のIPOを予想されたほど増えていないというニュースです。
本題ではありませんが、以下の記述が印象に残りました。
「Dropbox has also yet to appoint a chief financial officer – something that could well put its IPO on hold until next year, according to some experts.
ドロップボックスは、まだCFOを任命していないため、IPOを来年まで先送りする可能性が高いと専門家は見ている。」(前掲紙)
IPOの一年前にはCFOを任命する必要がある、という共通認識が米国にはある、ということですね。
【リンク】
なし
政府は銀行の預金口座に預金者の税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の登録を義務付ける方向で、銀行界との調整を始めた。まず、2018年度から新たに開く口座を対象にし、その後、既存の口座にも拡大する。脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぎ、サラリーマンなど納税者に根強い不公平感の是正を図る。16年の通常国会に関連法の改正案を提出したい考えだ。
(日本経済新聞2014年3月18日1ページ)
【CFOならこう読む】
「預金口座へのマイナンバー登録は、税制や法律を改正する15~16年ごろの政治情勢が実現の可能性を左右する。税制に詳しく財務省OBも多い自民党税制調査会幹部には「税逃れ防止の観点から導入すべきだ」との前向きな意見がある。一方、所得が捕捉されることに抵抗感を抱く農家や自営業者らの声を背景に、反発する議員も多いとみられる。」(前掲紙)
農家や自営業者の所得が捕捉されたら何が問題なんでしょう?
給与所得者との公平性という意味でも、ここに手をつけないまま給与所得控除を縮小するというのでは、
大きな問題です。
【リンク】
なし
法人実効税率引き下げの代替財源の候補として、株式の配当や売却益への課税強化が突如として浮上してきた。一体どういう風の吹き回しなの。
(日経ヴェリタス2014年3月17日71ページ 放電塔 金融記者座談会)
【CFOならこう読む】
「実は財務省そのものから出た議論ではなくて、政府税調の一部の委員が以前から唱えている意見なんだ。その代表格が一橋大学の田近栄治特任教授で、法人税率引き下げと株式配当など金融所得への課税強化について「検討の余地は十分にある」と主張してきた。法人税率を引き下げれば企業業績の改善を通じて株主配分の増加につながるので、その一部を株主から回収する、という論理立てのようだ」(前掲紙)
田近栄治特任教授の主張は、以前当ブログでも取り上げました。
2013 年7月9日エントリー「法人実効税率引き下げの財源」
法人税率引き下げの財源を個人の金融所得課税増税に求めることも検討すべきだとして次のような議論をしています。
「企業のあげる所得を法人段階だけではなく、配当や、株式などのキャピタルゲイン(売却益)まで含めて考えることである。この観点に立てば、法人税率の引き下げと同時に、金融所得に負担の一端を求めることも選択肢となる。日本より法人税率の低いドイツや英国では、日本より高い税率を金融所得に課していることを参考にすれば、検討の余地は十分にある。法人税率が下がることによって企業は業績を改善し、その成果を株主に還元する。それによって、企業にも株主にもよりよい結果を実現することが可能となるからである。」(日本経済新聞2013年7月9日26ページ 経済教室)
法人課税の問題は、法人レベルの議論だけでなく個人の所得税レベルの議論まで必要とすることは間違いありません。
法人税率を引き下げることで、個人レベルの投資リターンが上昇するのであれば、一定程度金融所得課税を強化することも検討の余地はあるでしょう。
ただし、その場合、金融所得課税を強化することの弊害も十分に検討される必要があります。例えば起業家は、キャピタルゲイン課税が強化されている国での起業を選択するだろうか、ということを。
【リンク】
なし
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