国際会計基準、有価証券時価評価ルールの改定案 その3

「(持ち合い株の)売却益が認められないと純利益の指標性が失われてしまう」
「配当金が純利益に計上されないのは大問題だ」
日本の会計基準作りを担う企業会計基準委員会(ASBJ)が4日に開いた定例委員会。普段は淡々と進むが、この日は一転重苦しいムードに支配された。批判の矛先は、国際会計基準審議会(IASB)が先月公表した金融商品会計基準に関する改定案だ。産業界や金融機関出身の委員から、「日本の事情が考慮されていない」と異論が噴出した。

(日本経済新聞2009年8月20日17面)

【CFOならこう読む】

「7月下旬のロンドン。米国の基準作りを手がける財務会計基準委員会(FASB)とIASBの合同会議で、互いの出方を探り合う場面が目立った。米側はこの会合で、持ち合い株など「その他有価証券」の時価変動はすべて純利益に計上させるべきだとの独自案を説明した。」(前掲紙)

「IASBが包括利益に計上する選択肢を入れたのは、日本に配慮した結果だ」(山田辰己IASB理事)

日本に配慮した結果、持ち合い株の投資損益についてはリサイクルしない、という奇異な会計処理が誕生することになるというのなら、そんな配慮は無用です。

日本は独特だからアドプションは出来ないと言えば良いのです。

そもそもこれだけ市場を忌み嫌う国が、徹底的に時価会計を押し進めることを是とする国際会計基準を受け入れることなんぞ出来るわけがありません。

かといって日本の持ち合い株式は、市場に対する防御壁として存在するという日本的経営の特異性を世界にアピールしても、到底理解を得られるとは思えません。かえって孤立するだけでしょう。

結局、この問題はどうしたって会計の領域に止まらない、日本企業の経営そのものに関わる問題なのです。

国際会計基準をアドプションすることは、市場や株主をないがしろにする日本的経営を否定することに
他なりません。

日本の多くの経営者はそのことを理解していません。理解しているのは金融庁のお役人だけでしょう。

いやむしろ、国際会計基準という外圧を利用して日本経済を変革しようと、お役人は考えているのかも知れない、とこれを書きながら思います。

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