持ち合い株、信託で解消

株式の持ち合い解消を促す取り組みが官民で広がってきた。住友信託銀行は企業が持ち合い株を手放しやすいように工夫した新商品を開発。持ち合い先の議決権を実質的に持ち続けながら、株式を売却できる信託商品で、30社強が活用を検討している。政府も今年に入って持ち合い株の買い取り再開に乗り出した。経済効果見えにくく、株価下落に伴う評価損の計上リスクなどもある持ち合いの是正を後押しする。
(日本経済新聞2009年8月26日7面)

【CFOならこう読む】

「住友信託の商品は保有株を同行が管理する信託勘定に譲渡するものの、信託期間中(1年~5年を想定)は企業が議決権の行使を同行に指図できるようにして、議決権を事実上残す仕組み。同行の提携先であるドイツ証券が企業に株式の譲渡代金を支払い、信託期間の終了とともに同証券がこれらの株式を取得する。信託期間中に株式が市場で流通することはない。」(前掲紙)

株式の持ち合いは、会社の経営者支配につながるからよろしくないのです。しかしそれもひとつの村の存続を願うもので、価値創造の担い手は経営者(及び従業員)で株主なんぞにあれこれ言われたら会社はおかしくなる、といった確信に裏打ちされたものです。

もちろん、このブログで繰り返しお話ししている通りその確信は間違っているのですが、それでも多くの日本の経営者は、米国の経営者と違って私腹を肥やすためにその地位に固執しているわけではなく、村を守るための行為であるわけです。

ところがこの信託はどうでしょう。言うなら、”自ら(現在の経営者)の在任期間中だけ村は安泰であれば良くて、その後はどうなっても構わない”という商品です。こんなものに手を出そうという経営者はろくなもんじゃありません。こんなものを公器であるはずの新聞紙面で無批判に掲載する編集者も明らかにずれています。

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