海外子会社からの配当非課税化に伴う繰延税金負債の取り崩し

三井物産は海外グループからの配当収入を増やすのに伴い、2010年3月期に200億円超の純利益押し上げ効果が発生する見通しだ。海外からの配当の受け取りが実質非課税にとなったのを受け、将来の税金支払いに備え引き当てていた繰延税金負債を取り崩し、その分が会計上の利益を押し上げる。同様の仕組みで2011年3月期以降も100億円規模で純利益が押し上げられる可能性がある。
(日本経済新聞2009年8月28日17面)

【CFOならこう読む】

繰延税金負債が取り崩される理由については、4月2日のエントリーで説明しています。

「2009年度の税制改正で4月から海外子会社などから受け取る配当金について95%分が非課税となった。これを受け、三井物産では国内に資金を還流させる利点が高まったと判断。海外からの配当還流を2009年3月期の1100億円強から今期は1500億円程度に増やす考え。
今回、焦点となるのは持分法対象の関連会社がからの配当。通常、持分法対象会社将来の株式売却を前提としており三井物産を関連会社が稼いだ利益のうち約40%を将来の課税に備え、繰延税金負債に計上してきた。連結子会社は同様の繰延税金負債は立てない。」
(前掲紙)

この表現は正確ではありません。

「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」35項が次のように規定しています。

「投資後、子会社が利益を計上した場合、留保利益のうち、将来の配当により親会社において追加納付が発生すると見込まれる税金額を各連結会計期末において親会社の繰延税金負債として計上する。ただし、配当に係る課税関係が生じない可能性が高い場合を除く、例えば、親会社が当該子会社の利益を配当しない方針をとっている場合又は子会社の利益を配当しないという他の株主等との間に合意がある場合である。」

したがって株式売却を前提としているか否かに関わらず、配当がないと見込まれる場合を除き、繰延税金負債を計上しなければならないのです。

これは子会社であっても関連会社であっても同様です。

【リンク】

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