新会計基準適用に備え、企業年金の運用方針見直し-村田製作所

村田製作所は企業年金の運用方針を見直す。株式の配分目標を35%前後と従来の4割前後から下げる一方、現在はほとんどない超長期債券の比率を全体の1割程度に増やすことが柱。積み立て不足を即時に貸借対照表に反映させる新たな会計基準が将来的に適用されるのに備えてリスク資産を抑制する。
(日本経済新聞2009年9月12日15面)

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「国際会計基準に対応した新たな年金の会計基準では、運用の悪化などで生じた資産の積み立て不足を即時に貸借対照表に反映させる。何年かに分けて分散処理が可能な現会計基準に比べ、財務に与える影響が大きくなる」(前掲紙)

これについては、7月15日のエントリー「IFRS-数理計算上の差異の償却」でお話ししました。

村田製作所の場合、運用結果が前提条件と異なることによって発生する数理計算上の差異は、一定の年数による定額法により均等償却されているため、一般的に将来において処理される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

親会社及び国内連結子会社1社は、市場金利に連動して一定の範囲で給付水準が変動する企業年金基金制度を設けていて、金利変動によるグループの退職給付費用及び退職給付債務への影響の低減を図っていますが、今後の市場金利や年金資産の利回りの変動によっては、退職給付債務及び積立不足額の増加が予想され、グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性がある、ということを有価証券報告書の事業等のリスクに記載しています。

村田製作所は、米国会計基準を採用しており、数理計算上の差異及び過去勤務債務を資本の部のその他の包括利益に直接計上していますが、その他の包括利益で認識している金額は、数理計算上の差異と過去勤務債務の合計で前期末現在83億円(利益)しかありません。しかし退職年金会計の分野については、IFRSと米国が足並みを揃えて同じ内容の改訂を行ってくることが想定されるため、そのときに備え極力その影響を減じておきたいということなのでしょう。

それはそれで理解できるのですが、しかし運用利回りを下げてまで企業が年金基金制度を設けるメリットが本当にあるのか、というより本質的な疑問は残ります。

【リンク】

「第73期 有価証券報告書」株式会社村田製作所[PDF]