NECエレ・ルネサス統合契約
半導体国内2位のルネサステクノロジと同3位のNECエレクトロニクスは16日、来年4月に経営統合することで正式契約した。東証一部上場のNECエレを存続会社とする合併で、統合比率はNECエレ1に対しルネサス1.189。NEC、日立製作所、三菱電機の主要株主3社は新会社から総額2000億円の増資を引き受け、リストラを後押しする。
(NIKKEI NET 2009年9月17日)
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「統合比率はNECエレ1に対しルネサス1.189」スキームは合併ですが、この比率は合併比率ではなく、統合比率である点に留意が必要です。
統合比率は、ルネサスによる本事業統合前の780億円の増資の完 了を前提として、本事業統合直前のNECエレクトロニクスの発行済普通株式の総数を 1とした場合における、本事業統合に際して日立製作所および三菱電機に対し割り当て られるNECエレクトロニクスの株式数が1.189であることを意味しています。
要するに両社の株主価値の比率が、NECエレ1に対しルネサス1.189であるということです。
来年4月1日に予定されている第三者割当増資の価格917円によってルネサスの株主価値を算定してみると、
14,684万株×917円=1,346億円
ここから統合までに行われる780億円の第三者割当増資の金額を控除すると、
1,346億円-780億円=566億円
となります。平成20年3月期の当期純利益の94.6億円を用いてPERを計算すると6.0倍という水準になります。
NECエレのアドバイザーであるゴールドマン・サックスの統合比率の算定レンジは次の通りでした。
(NECエレ1に対するルネサスの比率)
① 類似会社比較分析 0.591~1.310
② DCF分析 1.162~1.410
一方、ルネサスのアドバイザーである三菱UFJ証券の算定レンジは次の通りでした。
採用手法 統合比率の分析結果レンジ
① DCF分析 0.64~1.29
② 類似会社比較分析 0.58~1.50
③ 貢献度分析 0.68~1.32
双方ともレンジはかなり広めにとっており、本件のバリュエーションの困難さが推察されます。最終的な持分比率は、NECが33.4%とちょうど1/3を超える仕上がりとなっています。統合に至るまでのNEC、日立、三菱電機の持分比率の推移は下表の通りです。
つまり最終的なNECの持分が1/3とにするための、統合比率と第三者割当増資の負担割合の組み合わせは無数に存在する中で、NECは極力第三者割当増資の負担をしたくない(ということは統合比率はNECエレを有利にしたい)という組み合わせを強気に押していたのが、
「自らも増資のタイミングを探るNECに対し「NECエレ・ルネサスの統合をまとめないとNEC本体の増資が難しくなる、と主要取引行が圧力をかけた」(金融関係者)
「追い込まれたNECは8月下旬、500億円の出資をのんだ」(前掲紙)
ということです。
ということは500億円の負担が先に決まり、その後NECの持分が1/3となるよう統合比率が決まったということなのでしょう。