スウェーデンモデルの核心-競争重視の福祉国家 湯元健治氏

・スウェーデン、高福祉ながら競争力も高く
・労働市場は柔軟で政府が転職を積極支援
・受益と負担、国民の選択に委ねる仕組みに

(日本経済教室2009年9月17日29面 経済教室)

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今日は備忘記録です。

本稿で説明されているスウェーデンモデルがなかなか示唆に富んでいるので要点を以下に抜粋します。

「同国が一般のイメージと異なり倒産も解雇も当たり前に生じる厳しい資本主義競争社会である点にある。
企業は、原材料を調達するのと同じ感覚で労働者を雇用し生産活動を行っている。企業は社会保険料負担が高い半面、労働者には賃金しか支払わず、仕事がなくなれば即座に解雇する。その賃金には日本のような通勤手当も扶養手当も年功序列の昇給も含まれない」

「賃金体系は、連帯賃金政策と呼ばれる政策の下で企業の生産性格差にかかわらず同じ職種なら賃金が同じという「同一労働・同一賃金」が実現している。」

「こうしたシステムは、平均水準の賃金を支払えない生産性の低い企業の整理淘汰を促す一方、平均より生産性の高い企業は超過利潤をもたらし高い国際競争力を生み出している。」

「生産性の低い企業・業種から高い企業・業種に積極的に労働移動を促すことで、産業構造の高度化と人的資本の質的向上が同時に達成できた。その結果、同国は高い国際競争力の下、高い生産性と持続的な経済成長を記録。」

「この高成長によって、税や社会保険料などの高負担と高福祉が可能になった。雇用、年金、医療、育児、教育など国民生活に不可欠の分野で非正規労働者にも漏れのない充実したセーフティーネットが構築され、これが雇用や社会保障など国民の将来不安の解消を通じて内需振興につながる好循環を生み出した。」

「スウェーデンの高福祉を支払える高負担の内訳を見てみよう。法人税負担は26.3%とわが国の39.5%より格段に低いが、企業は赤字でも支払賃金の31.4%もの社会保険料を払っている。日本の3倍近い重さだが、年功序列賃金や退職金負担などがないため、スウェーデン企業の労働コスト(賃金+福利厚生費+税・社会保険料負担)は、意外なことに、日本より若干高いがほぼ同水準であり、国際的に見ても高くない。」

「同国の高福祉を支える大黒柱は、個人所得に平均31.4%で課される比例的な地方所得税と税率25%(原則)の付加価値税であり、この2つで国民負担の過半を占める。」

「日本では税や社会保障は、所得配分の仕組みととらえられているのに対し、スウェーデンでは、税はすべての国民が普遍的に受ける受益の対価、社会保障は人生の局面で誰もが直面する失業などのリスクに対する備えと位置付けられている。」

「厳しい競争の結果出てくる失業者に対し、積極的労働市場政策で対応するとの考え方について、当初は人々を従来の生活基盤から切り離し転職を強制する非人間的発想の政策だと批判された。しかし、その後のスウェーデンの現実が評価を一変させた。それは、人々を職歴・学歴の拘束や失業の恐怖から解放する「人間中心」の政策だとみなされるようになったのである。」

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