日本航空の純資産

経営不振に陥った日本航空の再建問題がヤマ場を迎えた。銀行団とともに前原誠司国土交通相と24日面談した日航の西松遥社長は、政府に公的資金を使った資本注入を要請。しかし国交相が、公的資金の前提となる日航のリストラ案に実現性の根拠が足りないと不満を見せるなど、日航再建は新政権全体を巻き込んだテーマに発展してきた。
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毎日.jp 2009年9月25日

【CFOならこう読む】

「JALの経営不振の引き金は昨秋以降の世界経済の失速だが、高コスト体質や不安定な労使関係といった同社固有の問題も大きく足を引っ張っている。こうした構造問題にメスを入れない限り、公的支援で資金繰りに一息ついたとしても危機は繰り返す可能性が高いだろう。
JALの求める公的資金を利用した資本増強は産業活力再生法に基づく措置だが、この制度は金融市場の変調などで一時的に自己資本が減少した企業を念頭に置いたものだ。構造的な問題を抱え、金融危機以前から慢性的な低収益に悩んできたJALを適用対象にすべきではない。」
(日本経済新聞2009年9月25日2面 社説)

公的資金を投入するのであれば、その前提として第三者機関によるデューデリを行い、実態財務諸表を開示すべきでしょう。2009年6月末現在の日航の純資産の部(単位:百万円)は次の通りです。

20090925_01

一方、退職給付債務の状況は次の通りです(平成21年3月31日現在)

20090925_02

これは会計上引当てられていない退職給付債務が3,314億円存在することを意味しています。これを勘案するとすでに日本航空は債務超過であると言えるのです。保守的に会計処理を行ない実態財務諸表を開示した上で、公的資金投入の是非を論じてもらいたいと僕は思います。

昨夜、DVDで「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を見ました。若松孝二監督の映画ということもあり、覚悟した上で観たのですが、思っていた以上にキツイ映画でした。

閉じた集団の狂気をこの映画は描いていますが、企業の中にも多かれ少なかれその企業の中でしか通用しない常識というものがあり、その常識をいったん全部ご破算にしないと自主再生なんて不可能なのかもしれません。法的処理にはそういう意味合いもあるのだと僕は思います。

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