事業再生ADR中を利用した経営再建中の社債買入償還

日本エスコンは25日、大阪市の会社経営者や同社取締役などに対し総額4億7千万円の第三者割当増資を実施すると発表した。同社は事業再生ADR手続きを利用した経営再建中で調達資金で社債の一部を買入消却する。
(日本経済新聞 2009年9月26日 14面)

【CFOならこう読む】

社債買入消却の必要性について会社は次のように説明してます。

「当社が、事業再生ADR手続において成立を目指している事業再生計画案、及び本件社債の社債権者との間で協議を進めてきた本件社債の基本的な弁済計画は、いずれも、ADR対象債権者及び本件社債の社債権者に対して当社に対する債務免除をお願いする債権放棄型の計画とはしておらず、あくまで、ADR対象債権者及び本件社債の社債権者に対して借入金及び本件社債の弁済期間の猶予及び弁済方法の変更をお願いするリスケジュール型の計画とさせていただいております。
もっとも、本件社債の社債権者は、金融機関を中心とするADR対象債権者と異なってその属性も区々であるため、長期かつ分割の額面償還ではなく、額面未満であっても当社による本件社債の買入れを希望する社債権者が少なくない状況にあります。
また、本件社債の一部を額面未満で買入消却した場合は、それによって当社の負債が削減され、買入価格と社債の額面との差額において社債買入消却益が発生するため、当社の財務基盤を早期に健全化することに資するとともに、リスケジュール型の事業再生計画案及び社債弁済計画において弁済期間を短縮することができるため、ADR対象債権者及び本件社債の社債権者の利益ともなるところです。
そこで、当社としましては、本件社債の社債権者に対して、本件社債の弁済計画等において、長期かつ分割の額面償還という基本的な弁済計画のほかに、当社による本件社債の買入消却というオプションを提案させていただくことが妥当であると判断いたしました。 」

社債権者からの買入希望は買入価額ベースで12億円程度になっており、主力銀行からの融資6億円と第三者割当により消却資金の資金調達を行うとのことです。

第三者割当増資の発行価格は5,000円。これは第三者割当増資の募集事項の決定に係る当社取締役会決議日の直前取引日までの3か月間(平成21年6月25日から同年9月24日まで)のJASDAQ市場における当社株式の普通取引の終値の単純平均値である5,343円を参考 として、新株式の発行価格(募集株式の払込金額)を約6.4%ディスカウントした価格です。

この価格は、発行価格は、募集事項の決定に係る当社取締役会決議日の直前取引日の終値からは約22.1%、過去1か月間の終値の単純平均値からは約34.5%、過去6か月間の終値の単純平均値からは約17.8%ディスカウントした価格となります。

会社は直近の価格を発行価格としない理由を(つまり有利発行ではないという理由を)次のように説明しています。

「JASDAQ市場における当社株式の株価及び出来高は、平成21年8月下旬以降になって現在まで過去には見られなかった極めて大きな変動を続けており、急激な変動を生じた後である過去1か月間の平均の株価を参考として発行価格を算定し、又は取締役会決議日の直前取引日の株価という一次的な株価を参考として発行価格を算定するのは、妥当でないと考えます。また、平成21年6月22日付「事業再生ADR手続及び今後の事業再生への取り組みに関するお知らせ」にてお知らせしました通り、当社は平成21年6月22日に事業再生ADR手続の利用申請という投資家の投資判断への影響が特に大きいと思われる事項を行っており、過去一定期間の平均の株価を参考とするとしても、事業再生ADR手続開始後の期間の株価によることが妥当であると考えます。そこで、当社としましては、過去3か月間の平均の株価を参考として発行価格を算定することが最も合理性が高いものと判断いたしました。 」

なお社債の買入価格は、発行価格100円あたり10円~15円となるそうです。

【リンク】

平成21年9月25日「第三者割当により発行される株式の募集に関するお知らせ」株式会社日本エスコン[PDF]