マツダのエクイティ・ストーリー

公募増資などで資金調達に踏み切った企業の株価で明暗が分かれている。最大958億円を調達すると5日発表したマツダは6日、7.5%高と大幅上昇した。資金使途が明確で成長力に対する期待が高まったうえ、2010年3月期の連結業績の上方修正を発表したことが評価された。
(日本経済新聞 2009年10月7日 14面)

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マツダは5日、公募や第三者割当増資などにより、最大で958億7900万円を調達する資本増強を実施すると発表した。発行済み株式総数の最大25・6%に当たる新株約3億6千万株を発行し、保有する自己株も売却します。

マツダの増資による発行済株式の推移は次の通りです。

20091007

これだけ大規模な増資に踏み切れば株式価値が希薄化し、株価の急落を招く恐れがあるのですが、市場はマツダの業績予想上方修正(営業損益が従来の500億円の赤字から130億円の赤字に、最終(当期)損益が同500億円の赤字から260億円の赤字にそれぞれ縮小)の発表とエクイティ・ストーリーを評価し、株価は逆に上昇しました。

資本コストを上回る新規投資を行うことによる、利益(キャッシュフロー)成長シナリオを、「エクイティ・ストーリー」といいます(2009年7月8日エントリー「エクイティ・ストーリー」参照)。

マツダのエクイティ・ストーリーは次の通りです。

「今回の公募増資、自己株式の処分及び第三者割当増資に係る手取概算額合計上限 95,879,000,000 円について、主として環境・安全対応車に対する研究開発費に 60,000,000,000円及び残額を設備投資資金に充当する予定であります。 当社グループにおける平成21年度から平成23年度の研究開発費計画は、平成21年10月 5日現在において累計2,920億円であります。そのうち、内燃機関の効率改善をベースと した次世代商品群に係る開発投資及びハイブリッドを含む電気デバイスの開発投資など、 環境・安全関連の開発投資に集中的に充当してまいります。 また、同期間中の設備投資計画は1,500億円であり、上掲の次世代商品群及び電気デバイ スの早期導入に向けた生産設備及び研究開発設備に充当してまいります。」(プレスリリース)

「マツダはトヨタ自動車などと比べ、ハイブリッド車で出遅れていたが、増資資金により巻き返しを図るというメッセージを市場に発信した。楽天投信投資顧問の大島和隆社長は「マツダの環境関連の技術力は市場で評価されており、1000億円程度は十分吸収できる」という。」(前掲紙)

【リンク】

2009年10月5日「新株式発行、自己株式の処分及び株式売出しに関するお知らせ」マツダ株式会社[PDF]