マザーズ新たな上場廃止基準導入ー公開価格9割下落で上場廃止

新興企業が市場からの資金調達で意識改革を迫られている。新興株相場の低迷長期化や取引所による規制強化で、株式上場時の公募増資で多額の資金を調達することが難しくなっているからだ。企業は成長ステージに応じて必要な額を、その都度調達することが求められそうだ。
意識改革を迫るきっかけになりそうなのが、東京証券取引所が来月にもマザーズに導入する新上場廃止基準だ。上場時の公募・売出価格である公開価格を基準に設定。上場後3年以内に、株価が基準の1割未満の状況が9ヶ月間続けば「公開価格が適正でなかった」(東証)として原則、上場を廃止にする。

(日本経済新聞2009年10月23日14面)

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東証が8月25日に公表した、「マザーズの信頼性向上のための上場制度の整備について」の中に、この新しい上場廃止基準について記載があります。

「(内容)
・マザーズの上場会社の株価が、上場後3年を経過するまでの間に公開価格の1割未満となった場合において、9か月(事業改善計画等の提出がない場合は、3か月)以内に、公開価格の1割以上に回復しないときは、その上場を廃止することとしま す。ただし、上場後の市況の変化その他の事情を勘案して当取引所がこの基準によることが適当でないと認めたときは、この限りではありません。
(備考)
・「公開価格の1割未満となった場合」とは、終値によって算出した、1か月間の平均株価又は月末時点の株価が公開価格の1割に満たない場合とします。
・「公開価格の1割以上に回復しないとき」とは、終値によって算出した、1か月間における平均株価及び月末時点の株価が公開価格の1割以上とならないときとします。
・上場後に株式分割、株式併合等が行われた場合には、公開価格について、その影響を勘案した修正を行います。」

「新基準の背景には公開価格が企業の実力以上に高いことが、上場後の株価急落が多いことの一因という東証の見方がある。松崎裕之上場部長は「上場前の関係者の利害だけで公開価格が決まるのは問題だ」と話す。公開価格を適正水準に導き、投資家を保護する狙いだ。」(前掲紙)

それ以外にも、既存株主の価値を毀損するような大きなダイリューションを伴う資金調達が行えなくなるという効果も期待できます。

ただし上場時に創業者利得を獲得してしまえば、後は野となれ山となれというオーナー経営者に対してはあまり有効でないかも知れませんね。

なお新基準の適用対象は、施行日以降に新規上場する会社からになるようです。

【リンク】

2009年8月25日「マザーズの信頼性向上のための上場制度の整備について」株式会社東京証券取引所[PDF]