持株会社下の経営統合→合併 – ケンウッド・ビクターのケース

JVC・ケンウッド・ホールディングスの河原春郎会長兼社長は29日の決算会見で「ビクターの業績が回復すれば来年あたりには合併したい」と述べ、持株会社のJVCケンウッドに事業会社の日本ビクターやケンウッドが連なる現在の体制を見直し、1社に合併させる意向を表明した。2008年10月の経営統合後も業績低迷が続いており、合併で意思決定を迅速化し構造改革を加速する。
(日本経済新聞2009年10月30日13面)

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日本の経営統合は共同持株会社を設立し、その下に事業会社をそのままぶら下げるという形をとるケースが多く、ケンウッドとビクターもこの形です。

こうすれば、統合前と後で人事制度等を慌てて同一にしなくてすみますし、ステークホルダーとの関係も変えなくてすみます。しかしこれをいつまでも続けることは非常に困難です。統合効果は完全にひとつになることで実現することができるからです。

M&Aには売り手と買い手がいます。

売り手の経営者は自分達が売り手であるということを明らかにすることを嫌います。経営統合というよくわからない表現もそんなニーズに合致しています。しかし、買い手は完全にひとつになることを望みます。だからこの形で統合しても、間もなくこれではこれではうまくいかないので、完全にひとつになりましょうということになるのです。

「11月1日付でビクターの吉田秀俊社長を持株会社の取締役社長補佐に異動させ、河原会長がビクターの社長業務担う人事も発表した。ビクター社長は空席になる。河原社長が自らビクターの指揮を執り、合併への準備を進めると見られる」
(前掲紙)

こういう人事をM&A後すぐに行うということであれば、なかなかM&Aは実現しません。どうしてもワンクッションおく必要があるのです。この時間は無駄と言えば無駄ですが、今のところどうしても必要な時間であると言うこともできるのです。

【リンク】

平成20年5月12日 「日本ビクター株式会社と株式会社ケンウッドとの 共同持株会社設立(株式移転)による経営統合について」日本ビクター株式会社[PDF]