優先株式を対象にしたTOBーパナソニック・三洋電機のケース

パナソニックは4日、三洋電機の子会社化を前提としたTOB(株式公開買い付け)を5日から始めると発表した。TOB期間は12月7日までの22営業日。三洋の大株主である米ゴールドマン・サックスグループなど金融3社が合計50.13%分の応募契約を結んでいるため成立は確実。12月中旬には子会社化が完了し、売上高で日立製作所と並ぶ国内最大級の総合電機メーカーとなる。
三洋電機も4日取締役会を開き、TOBへの賛同を決めた。買い付け価格は1株あたり131円で、パナソニックが金融3社分を取得する場合の投資金額は4033億円。全株をTOB対象とするが、現時点での三洋の株価(216円=4日終値)を下回っているため、主要3社を除く一般株主は応募しない可能性が高い。

NIKKEI NET 2009年11月4日

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「買い付け価格は1株あたり131円で、パナソニックが金融3社分を取得する場合の投資金額は4033億円。全株をTOB対象とするが、現時点での三洋の株価(216円=4日終値)を下回っているため、主要3社を除く一般株主は応募しない可能性が高い。」(前掲紙)

TOBの対象となる株式の内訳は次の通りです。

普通株式  1,872,338,099株
A種優先株式 182,542,200株 1株につき普通株式10株に転換可能
B種優先株式 246,029,300株 1株につき普通株式10株に転換可能

普通株式に発行済のA種 優先株式及びB種優先株式が全て普通株式に転換された場合の当該 普通株式の総数(4,285,715,000株)を加え、対象者が平成21年6月29日に提出した第85期有価証券報 告書に記載された平成21年3月31日現在の対象者が保有する自己株式数(16,084,021株)を控除した株式数は6,141,969,078株に相当し、買付予定数の下限である3,070,985,000株は、完全希薄化後総株式数 の過半数に相当します。

買付価格の根拠は次の通りです。

「当社は、本公開買付けにおける普通株式、A種優先株式及びB種優先株式の買付価格を平成21年9月30日に再決定するに際し買付価格の決定の参考資料として、メリルリンチに対し、対象者の株式価値算定書の提出を依頼しました。当社がメリルリンチから平成21年9月30日に提出を受けた株式価値算定書によりますと、メリルリンチは、当社が提供した財務情報、財務予測その他の一定の前提及び条件の下で、市場株価平均法、類似会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下「DCF法」といいます。)の各手法を用いて対象者の株式価値の算定を行っており、市場株価平均法では、基準日の株価終値、基準日から1ヶ月前、3ヶ月前及び6ヶ月前までのそれぞれの期間の株価終値の平均値を使用し、本公開買付けに関する新聞報道がなされた平成20年11月1日の前営業日の平成20年10月31日を基準日とした場合、145円から227円、類似会社比較法では21円から98円、DCF法では126円から246円のレンジが対象者普通株式1株当たりの算定結果として示されておりました。
なお、当該DCF法の算定結果は当社が見込んでいるシナジー効果を含んでおります。また、この算定結果は、A種優先株式及びB種優先株式はいずれも1株当たり10株の割合で普通株式に転換することが前提とされております。なお、メリルリンチから、その株式価値算定の前提条件・免責事項等に関して補足説明を受けております。

当社は、本公開買付けにおける買付価格の検討にあたっては、市場株価平均法による評価結果が、対象者のA種優先株式及びB種優先株式の転換による希薄化を十分に反映していない可能性がある点、た類似会社比較法による評価結果が、対象者の将来の収益力及び成長性を十分に反映していない点、一方で、DCF法による評価結果が、対象者のA種優先株式及びB種優先株式の転換による希薄化を考慮している点、対象者の将来の収益力及び成長性を反映している点並びにシナジー効果を考慮している点等を勘案し、DCF法による算定結果を最も重視し、当該算定結果の範囲内で検討を行いました。当社は、メリルリンチによる算定結果に加え、平成20年12月19日以降の状況を検証するために実施した追加デュー・ディリジェンスの結果等を総合的に勘案し、平成21年9月30日に開催された取締役会において、本公開買付けにおける買付価格を普通株式1株当たり131円、A種優先株式1株当たり1,310円、B種優先株式1株当たり1,310円と決定いたしました。また、当社は、メリルリンチより、一定の前提条件の下、本公開買付けにおける買付価格が財務的見地から当社にとって公正である旨の意見書を平成21年9月30日に受領しています。 」(2009年11月4日 三洋電機株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ )

通常上場会社のバリュエーションでは市場株価が最も重視されますが、優先株式のダイリューション効果が市場株価には十分に反映されていないという理由でDCF法による算定結果を最も重視してTOB価格を決定しています。

そうするとTOB対象会社である三洋電機の取締役会がこの価格をサポートするかどうかが注目されます。

「当社取締役会において本公開買付けに対して賛同の意見を表明すること を決議しました。しかしながら、本公開買付けの買付価格は、最終的には公開買付者とエボリューション・インベストメンツ有限会社、オーシャンズ・ホールディングス有限会社、及び株式会社三井住友銀行との間での交渉により決定されたものであり、また、上記の通り、平成21年11月2日の東京証券取引所市場第一部における当社株式の普通取引終値、平成21年11月2日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値及び平成21年11月2日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値のいずれに対してもディスカウントを行った金額となります。そのため、当社取締役会は、本公開買付けの買付価格の妥当性については意見を留保し、また、普通株式の応募については株主の皆様の判断に委ねることを、併せて決議いたしました。」(2009年11月4日 パナソニック株式会社による当社株式に対する公開買付け に関する意見表明のお知らせ)

結論としては、価格については意見を留保するということです。ただし、三洋電機は、第三者算定機関より株式価値算定書と市場株価法に基づく株式価値算定の観点を除いた財務的見地からは不合理な価格ではない旨の意見書を入手しています。

【リンク】

2009年11月4日「三洋電機株式会社に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」パナソニック株式会社【PDF】
2009年11月4日「パナソニック株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」三洋電機株式会社【PDF】