上場企業の自己資本比率低下、35%へ

自己資本比率が低下 上場企業、9期ぶり 今期末35%へ

企業の財務体質の健全さを示す自己資本比率が低下し始めた。ここ数年の増益基調を反映して上昇質続けてきたが、2009年3月期末に上場企業で35%程度と、連結決算での開示が本格化した2000年3月期以降初めて低下する見通しだ。比率そのものは依然として高水準だが、世界的な景気後退で製造業全体が今期に最終赤字に転落するなかで、財務改善の流れに変調の兆しが出てきた。
(日本経済新聞2009年3月5日13面)

【CFOならこう読む】

日本企業は、戦後銀行中心のガバナンスのもと、負債依存度の高さを特色としていました。
(例えば↓を参照してください)
http://wp.cao.go.jp/zenbun/keizai/wp-je78/wp-je78-s0003.html

しかし、ここ10年間日本企業は過剰債務からの脱却に努め、その結果財務体質は大きく改善し、自己資本比率も欧米企業と遜色がなくなってきています。

次のステップは、最適資本構成を目指すために、安全性も考慮しつつ、積極的な財務レバレッジを採用する方向に向う方向にあります。少なくともサブプライム前の段階ではそのような検討を行っている上場企業が多くあったと思います。

この点、井手正介氏は経営財務入門(日本経済新聞社)で次のように語っています。

負債依存度の低下は、とりわけ経営状態のいい優良大企業で際立っている。第14章で紹介したように、優良大企業のキャッシュ・ポジションは著しく高まっており、実質無借金企業も続出している。しかし公開企業である以上、本書で説くように適度の負債を活用して節税効果のメリットを得ることは、価値創造経営の重要なポイントである。その意味では過去10年間の大幅な事業・財務リストラの局面を乗り切った優良企業の中には、財務レバレッジを必要以上に低下させたところも多いと思われる。
メインバンク=大株主制度が破綻したこの10年間は、確かに特殊な局面であった。ほとんどの企業がメインバンクに代わる財務的なよりどころとして、事業がもたらすキャッシュフローの重要性を再認識し、「選択と集中」のために身を縮めて本業の収益力の強化・拡充に努めてきたと考えられる。本業の利益があってこそ節税効果も享受できるという意味では、合理的な行動であったといえよう。
しかし、このようなリストラを乗り切った多くの優良企業にとっては、今や適度な負債の活用を考慮した、積極的な財務レバレッジ政策を確立すべき時期にさしかかっている。

これがサブプライム直前の状況です。株主価値重視のために、自己資本比率引き下げを検討する必要があったのです。
しかしサブプライム以降状況が一変しました。

業績悪化により自己資本が吹き飛び始めたのです。エクイティで資金調達したくてもこれだけ株価が下がってはダイリューションを考えると二の足を踏んでしまいます。結果メインバンクに回帰する状況が起きています。

このような状況が重なって自己資本比率が低下しているのです。
これは最適資本構成を目指す動きと全く異なるので留意してください。
(今負債比率を引き上げても節税効果を享受できない可能性があるので、価値創造に結びつかない)

【リンク】

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