長期為替予約の評価損 – 青山商事のケース

「為替予約の損失は本業には影響がない」と言うのは青山商事の青山理社長。中国などから紳士服を仕入れる際の為替変動リスクを回避するために長期l為替予約を結んでおり、円高になれば輸入コストが減るはずだった。しかし、想定以上に円高が進んだことでデリバティブ評価損36億円を計上。4〜9月期は19億円の最終赤字になった。
(日経ヴェリタス2009年11月15日14面)

【CFOならこう読む】

青山商事の為替予約の概要は次の通りです。

「当社の仕入については、その大半が海外からの仕入れとなっているため、常に為替変動リスクに晒されており、そのリスクをヘッジする目的で平成14 年および平成19 年に、6つの金融機関との間で、期間10 年から12 年の包括的長期為替予約契約(クーポンスワップ契約)を締結し、現在実行中であります。なお、平成21 年9 月末時点において、残りの契約期間は、長いもので8 年6 ヶ月、短いもので2 年6 ヶ月となっております。
また、平均契約為替レートは102 円程度であり、予約金額は、年間平均約1 億ドルと、当社の海外からの年間仕入総額の2 割程度であります。」
(2009年11月4日 デリバティブ評価損計上及び業績予想の修正に関するお知らせ)

クーポンスワップは一般的に行われている長期の為替予約の手法です。日米の金利差分だけ有利なレートでヘッジすることができるので、何か得をしたような気にさせられますが、実態は高い手数料を払ってドル建て債券に投資しているのと変わりません。

会社はこの為替予約について時価会計で会計処理されているため、ポジションから生じる未実現損益すべてをPLに計上しなくてはなりません。しかし仕入はまとめて行うわけではないので、損益に歪みが生じています。

契約金額が年間仕入の2割程度であるならその実行はほぼ確実であり、時価会計でなくヘッジ会計を採用する方が会社の業績は正しく示されるように思うのですが・・・。

【リンク】

2009年11月4日「デリバティブ評価損計上及び業績予想の修正に関するお知らせ」青山商事