2010年税制大綱 – みなし配当の際の譲渡損益

政府は22日夕の臨時閣議で2010年度税制改正大綱を決定した。子ども手当を創設することを念頭に、所得税・住民税の一般扶養控除は15歳以下の年少部分を廃止。一方で社民党などが廃止に反対していた23~69歳の成年部分は現状を維持する。高校生や大学生の子どもがいる世帯を対象にした「特定扶養控除」は、高校無償化とのバランスを取るため、16~18歳の部分を圧縮する。
NIKKEI NET 2009年12月22日

【CFOならこう読む】

問題が多いとされていたみなし配当の際の譲渡損益について次の改正が予定されています。

「(イ) 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しないこととします。(再掲)
(ロ) 自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含みます。)を適用しないこととします。
(ハ) 抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととします。」

上記はすべて課税の繰延べではない点に留意が必要です。

(ロ) については次のような事例を塞ぐことを目的としているものと思われます。

「オーナーが株式の一部を現金化したいという時に、自己株式として直接買い取ってもらった場合、個人は配当課税の対象となります。ところが、配当課税よりも譲渡所得課税のほうが、所得税は有利な仕組みとなっているんですね。そのために、法人をワンクッション噛ませて、個人が法人に譲渡し、譲渡した先の法人がさらにそれを自己株式として買い取ってもらえば、買い取った法人はさらに受取配当等の益金不算入制度などのメリットが取れるため、オーナーも会社も有利になるというのもあります」
(週刊税務通信 平成21年12月7日 24頁)

資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会  論点のとりまとめ(「資本に関係する取引等に係る税制についての 勉強会 論点とりまとめ」[PDF])では次のように記載されていました。

「抱合せ株式(合併法人が保有する被合併法人株式)については、非適格合併の場合も、譲渡損益を認識しないことが考えられる。 」

若干表現が変わっていますが、趣旨は勉強会と同様です。

TOBにより子会社化し、その後少し時間をおいて、現金対価の合併により少数株主をフリーズアウトすれば、これは当然非適格合併になります。このとき、みなし配当とそれとほぼ同額の株式譲渡損が計上され、みなし配当は益金不算入であるなら、株式譲渡損の分だけ節税メリットがとれることになります。

この改正が国会を通れば、今後このようなスキームは塞がれることになります。

【リンク】

「平成22 年度税制改正大綱」[PDF]