企業の目的は顧客創造-ドラッカー
・「企業の目的は利益追求」と決めつけるな
・利益以外の目的掲げ、チェックを怠るな
・成長機会、見つけるのではなく自らつくれ
(日本経済新聞2009年12月30 日23面 経済教室)
【CFOならこう読む】
これだけ的外れなことを言えるのは実社会を知らないからなのでしょうか?
「バブル崩壊以降、投資家志向の会社統治制度の改革が行われ、上場企業の経営者は、熱心に利益を追求せざるをえなくなったが、その結果、かえって利益は得られなくなった」(前掲稿)
そうではないでしょう。
戦後焼け野原からスタートした日本にとって最も重要であったの は、日本人が皆食って行くこと、すなわち雇用の確保でした。この大命題のもと政官財一体となり見事な経済復興を遂げたのです。
そこでの企業の目的は、社員の胃袋を満たすことにあったのです。当時の日本企業の姿は例えばこんなものでした。
「日本企業は平均して総資産の80%にも及び額を銀行から借り入れている。しかもこのうちかなりの部分が低金利のいわゆる短期もので、3ヶ月なり6ヶ月ご とにレートを変えてゆく。
したがって、名目上は短期借入金なのだが、実際には、設備投資などに回したりして長期借入金的挙動をするものも少なくなく、さらにいえば、資金がだぶついたからといって、簡単に銀行に返済するなどというわけにもゆかぬしろものである」
(「企業参謀」(大前研一著 プレジデント社))
銀行は大蔵省の出先機関のようなものでしたから、企業は低コストの資金を容易に調達することが出来ました。
そんな時代に株主資本コストを云々する必要はありませんでした。
このような戦後の日本経済の仕組みは成長が止まるとともに徐々に綻び始め、バブル崩壊とともに立ち行かなくなったのです。
大きなパラダイムシフトが起きました。
ところがバブル崩壊から日本人はパラダイムシフトにうまく適応できていません。
日本を代表する経営学者にして、「投資家志向の会社統治制度の改革が行われ、上場企業の経営者は熱心に利益を追求せざるをえなくなった」そしてそれが「日本企業を大きく痛めつけてしまった」という程度の認識です。
派遣の問題にしても、銀行の貸し渋りの問題にしても、企業統治の問題にしても、パラダイムシフトから生じているのです。決して小泉・竹中に責任をなすりつけて済むような問題ではありません。
日本企業が「顧客の創造」を最重視しなければならないという点については異論はありません。
「顧客の創造」とは、「企業は、自分たちが何を売りたいかよりも、まずお客様が何を求めているかを考え、お客様にとって付加価値のある商品を提供すべきである、ということを意味している。洋服屋は質の高い洋服を売り、青果店は安くて新鮮な野菜や果物を売る。それぞれの事業を通じて、社会や人に貢献するからこそ、企業はその存在が許されているのだ」(「成功は1日で 捨て去れ」(柳井正著 新潮社))
つまり「顧客の創造」ができない「企業」や「企業人」はそこから退出せざるをえないのです。
ところが日本という国は「退出」して再度「参入」するということが容易にできません。
これも「雇用の維持」が大命題だった時代から転換できていないため生じている大きな問題です。
資金調達についても事情は大きく変わっています。銀行がリスクマネーを提供できない以上、資金は市場から調達するしかありません。資本のコストはただではありません。資本コストを賄うだけの利益を生まない企業は存続できないのです。
「市場」や「利益」が何より重要だと言っているのではありません。パラダイム変換が起きているにも関わらず、今までのようにこれらを軽視し続けることはできないと言いたいのです。
米国の投資家資本主義の時代の失敗を、今の日本で強調する意義はほとんどないと私は考えています。
むしろ「利益」や「株主価値」の重要性を訴え、ヒト、モノ、カネが自由に動く社会を構築することに繋げる方がよほど大切だと思っています。
いずれにしても、このブログで応援しているCFOは難しい局面に立っていることは間違いありません。どちらを向いて仕事をすれば良いか迷っている方も多くいらっしゃ ると思います。
多くのCFOと悩みを共有し、共に解決策を探りたい、そんな思いでカンファレンスの開催を思い立ちました。
今年は諸々の事情で開催を見送りましたが、来年2月25日に開催しようと現在準備を進めています。
テーマも大きく変更し、「日本企業におけるCFOの仕事とは?」とする予定です。
詳細については現在詰めているところですが、ご意見・ご要望・アイディア等があればお知らせください。
ブログの更新は今年はこれで終わりにします。
新年は1月4日からスタートします。
それでは皆様良いお年を!!
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