有価証券報告書の株主総会前提出

有報は金融商品取引法が規定する開示資料だ。上場企業は各事業年度終了後3ヶ月以内に金融庁へ提出する義務がある。これまでは総会で報告した計算書類などの添付が必要だったため、企業は事実上3ヶ月以内ぎりぎりの総会後に有報を提出していた。だが、12月11日に有報の総会前提出に関する内閣府令の改正が公布・施行され、総会前の任意開示が可能になった。
(日本経済新聞2010年1月7日14面)

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「有価証券報告書の株主総会前提出企業が有価証券報告書を定時株主総会前に金融庁に提出すること。2009年12月の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正で可能になった。金融商品取引法では有報の添付書類として、総会で提出した計算書類と事業報告を求めていたが、今後は総会で報告・承認予定の内容の添付で済む。総会で決議事項が修正・否決された場合は、臨時報告書の提出が必要だ。2009年12月31日以後の修了の事業年度の有報に適用する。義務付けはない」(前掲紙)

この改正に関し次のようなパブリックコメントとして、

「有価証券報告書は詳細な情報提供を投資家 に対して行うという目的で時間をかけて作成されるものであり、早期化を目指すべきではない」

という意見が寄せられていました。

今日の記事中にある、次の意見も趣旨としては同様のものです。

「今さら総会前に有報を提出して意味があるのか」(エーザイ幹部)
「財務部門だけでなく、内部統制委員会でも十分議論したうえで作成しており、提出には時間が必要」(花王 三田慎一取締役)

ーザイにしても花王にしてもIRに力を入れている会社なので、説得力があります。

これに対し金融庁は次のように答えています。

「本改正の目的は、株主及び投資者に対する経営者の説明責任をより徹底する観点から、有価証券報告書及び内部統制報告書を株主総会に先立って提出しようとする有価証券報告書提出会社の提出を可能とするために行なうものです」

要するに総会前に有報の提出をしたい会社はご随意にどうぞ、ということです。株主としては早い開示が望ましいわけで、同業他社が総会前に開示を行う場合、「当社は時間が必要」では通らないような気がします。

有報は「詳細な情報を正確に記載する点を重視」すべきものではありますが、さらに早期の開示が出来るのであればそれはそれで望ましいと言えます。CFOの負荷は重くなる一方ですが、早期開示に向けて努力する必要があるように思います。

【リンク】

「企業内容等の開示に関する内閣府令」[PDF]
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」[PDF]