高すぎる法定利率

2005年12月に起きたジェイコム株の誤発注事件を巡り、みずほ証券が東京証券取引所に約415億円の損害賠償を求めていた訴訟で、昨年12月、東京地方裁判所は約107億円の損害賠償の支払を命じた。この訴訟は引き続き控訴審で争われることになったが、東証は昨年のうちに約132億円を支払ったと伝わった。東証の支払額が膨らんでいるのは、4年分の金利に当たる約25億円の遅延損害金が加算されているためである。
(日本経済新聞2010年1月27日)

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「損害賠償債務のような金銭の支払いを目的とする債務の遅延損害金の場合、当事者間の合意がなければ、民法の定める年5%の民事法定利率か、または商法の定める年6%の商事法定利率によって計算される。そして、最大の問題は、この低利率の時代に法定利率が高すぎることなのである。支払い能力のある被告を相手に勝訴すれば、原告は通常では不可能なはずの有利な運用をしたのと同じ利益を手にすることになる。これに対し被告の金利負担は大きい」(前掲紙)

M&Aにおいてこの影響が大きいのは株式買取請求の場面です。株式買取請求に関し、会社法786条4項は次のように規定しています。

”消滅株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日(筆者注:効力発生日から60日)後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。”

法人株主は、会社に買取請求することで、税務上、キャピタルゲインをみなし配当に変換することができ、この部分だけキャピタルゲインを減らす(譲渡損失を増やす)ことができます。さらに、裁判所の価格決定までの間、年6%もの利息を受け取れるとなれば、買取請求が本来の趣旨(反対株主に公正な価格での株式売却の機会を保証する)から離れ、法人株主が出口戦略における選択肢のひとつとして買取請求を検討するのは当然とも言えます。

昨年のTBS・楽天のケースでは、両社が主張する価格の開きが大きく決着に時間がかかりそうということから、TBSは買取代金の仮払いを楽天に対し行なうことで、この金利負担を回避しています。

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